グレカーレ建造の二日後、我が江ノ島鎮守府では反省会が開かれていた。
「第一回。『何で駆逐艦ばっか出てくるんだよ、ふざけんじゃない会議』を開催する!」
「会議の名前じゃなくて、あたし達駆逐艦へのただのディスりじゃないの!」
やかましい。ピーピーとうるさいグレカーレは無視して会議を進行しよう。もちろん会議の出席者はこの鎮守府の全メンバー(俺様、雪風、グレカーレあともんぷち)だ。
「雪風、あんたも言われているのよ。何とか言い返しなさいよー。」
グレカーレが雪風に声を掛ける。当の本人は下を向いて元気がない。
ははあ。俺様の言葉を気にしてやがるんだな。
「しれえ・・。気を付けますからトランプを返してください~・・」
前言撤回。てんで気にしていなかった。どころか、トランプを返せだと?ダメだ。あれは後一日預かっておく。
「そんな~しれえ。お願いします。もうしませんからあ。」
ぐいぐいと俺様を引っ張るビーバー。まるでゲーム機を取り上げた親の心境だな。うるさい。恨むなら、欲望を抑えきれなかった自分を恨め。
「ゆ、雪風・・。さすがに、あれはテートクの言う通りだとあたしも思うわよ。」
「返して欲しければきちんと仕事しろ!いいか、この会議はとても重要だ。」
そう。初めの雪風は仕方ない。だが、次のグレカーレの建造がおかしすぎる。織田の話だと建造では出ないどころか、通常海域でのドロップ報告もない超レア艦なのだという。意気揚々と俺様が教えたレシピで建造したロリコンからは昨日、
「龍田でした~(泣)。鬼頭氏運良すぎですぞおお!」
との連絡がきた。
「とすると、だ。うちの建造で何か特別なことがあるのかもしれない。思い当たることはないか。」
「はい、司令!」
おっ。気持ちを切り替えたのか、雪風が勢いよく手を挙げる。いいぞ、そういう態度は重要だ。
「建造をする人によって違うんじゃないでしょうか。」
期待した俺様がバカだった。そんなのは当たり前だ。問題はなぜ二回とも駆逐艦か、ということだ。俺様が期待しているのは戦艦、空母、おまけで重巡だ。
『確率ってありますからね~。』
もんぷちが素っ気なく答える。そんなもんは分かっている。それにしてもお前むくれてないか。ははあ、ダメ女王と名付けられたのが嫌だったのか。
『もちろんですよ!どう考えても、グレカーレさんは当たりですよ!!それがなぜダメなんです!』
「そーだよ、テートク。もっとあたしの貴重さに気付いてもいいと思うな!」
「あのなあ、例えばお前が重課金者でピックアップガチャを回したとするだろ?虹回転で星五が来てうきうきしてたらすり抜けていつも見慣れてるバーサーカーが来やがったんだぜ。そりゃ怒るだろ。」
「ごめん、よく分からない・・。あんたは分かる?雪風。」
「トランプ・・・。」
ああもう、しつこい野郎だな。分かった分かった。二日間預かったから、この会議が終わったら返してやる。だが、次同じようなことが起きたら二度と返さないからな!
「しれえ!!ありがとうございます!!雪風は建造ドックが怪しいと思います!!」
「建造ドックだあ?ふうむ。確かにそれはあるかもしれねえな。」
施設が万全とか抜かしていた割には入渠ドックも建造ドックも一つずつしか使えないこの江ノ島鎮守府。事実が分かった時には大本営の相談室に善意の一般市民からのクレームをわんさと入れてやったもんだ。その江ノ島鎮守府唯一の建造ドックは、長い間埃をかぶっていただけあって、微妙に俺様の好みから外した船を建造する。
「すりぬけくんが原因かもしれねえな。よし、調査してみるか。」
「すりぬけくん?なあに、それ。」
「建造ドックのあだ名だそうです!しれえ、いつ返してくれるんですか?」
『提督はあだ名のセンスがなさすぎますね・・・。』
わちゃわちゃと騒ぐ面々を従え工廠へ着くと、そこにいたのは床に寝そべる工廠妖精達だった。
「おう、どうした、お前ら。休憩か?」
『どうしたもこうしたもないですよ!』
責任者らしい親方みたいな妖精がぷんすかと俺様の前にやってくる。
『建造ドックの様子がおかしくて、仕事にならないんです。』
「ドックの様子がおかしい?初耳だぞ。建造できないってことか?」
『分かりません。建造してみてないので』
「そりゃあそうだな。よし、グレカーレ。お前建造してみろ。」
幸い昨日香取教官から200ずつ資材が届いている。少しくらいなら余分があるはずだ。
「えっ?あたしが。ふふん。テートクもようやく分かってきたのね!」
「いや。超レア駆逐艦とやらの運に期待するだけだ。」
「ええーっ。あたし改装されないとてんで運ないんだけど。」
「なんだそりゃ。出世魚みたいだな。まあいい。やってみろ。」
「りょーかい。ほんじゃ、77、77、77、77。建造っと。」
ラッキー7か。ゲン担ぎにはぴったりだな。
ぶいーーーーーん。
うなりを上げる建造ドック。さてどうなるかな。わくわくするぜ。
ぶいーーーーーーーーーーーーん。ぷしゅー。
すぐさま開く建造ドック。中から出てくるのはまた駆逐艦か?と思いきや誰もいない。
「なんだ、こりゃ?」
『あー。資材だけ飲まれたっぽい。』
親方妖精が答える。資材だけ飲まれる?開発ドックだと開発失敗で変なものが出ると聞いたことあるが、建造ドックでそんなことあるのか。ふざけるな。少しは余分があるとは言ったが、少ししか余分はないんだ。飲み込んだ分は吐き出せ。
「もしもーし。もしもーし。聞こえているかな、すりぬけくん。仕事しようなー。もしもーし。」
某タイムトラベル映画の敵役並みのうざさで煽ってみるが、すりぬけくんはうんともすんとも言わない。
「親方、これは故障してんのか?見て分からないか。」
『うーん。提督さん申し訳ないが、後何回か建造してみてもらっていいかな。普段の様子と比べないと・・。』
ぐぬぬぬ。少ない資材を無駄にせよということか。だがまあ、仕方ない。これをしないと俺様のにこにこ鎮守府ハーレム計画が台無しだからな。
「よし、雪風とグレカーレが交互に二回ずつ回せ。」
「了解!」
「まっかせてー!」
ぽちっ。ぶいーーーーーーん。ぷしゅー。
ぽちっ。ぶいーーーーーーーーーーーん。ぷしゅー。
ぽちっ。ぶいーーーーーーーーーーーーーーーん。ぷしゅー
ぽちっ。ぶいーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーん。ぷしゅー。
『あー・・・。何かわかったかも。』
多くの資材を犠牲にしただけあって、ようやく親方が原因を突き止めることができたようだ。点検のために建造ドックの中に入っていく。
『全く。工廠妖精なのに、自慢の建造ドックを壊すなんてとんでもないですね。』
おいおい。お前仮にも女王なんだから気を遣ってやれよ。
『羅針盤妖精と工廠妖精は仲がよくないんです。こっちは開発で失敗するぐずと言うし、向こうはこっちを羅針盤も操れないクズと言い返すし。』
うん。お前ら口悪いな。同じ妖精なんだから仲良くやれよ。
しばらくしてから建造ドックから出てきた親方は怒りに顔を真っ赤にさせていた。
『女王!!中で適当にあれこれ計器をいじくったでしょう!なんで押すなといった四番ボタンが 押されてるんですか!』
『ええ!?押すなと言われたら押すのは仕様では!?』
『そのせいで、計器が異常な数値を叩き出してたんですよー。』
「ってえことは、もんぷちが今回の元凶ってことか?」
『元凶ってなんです!超レア駆逐艦のグレカーレさんが来たじゃないですか!』
「そうよそうよ!テートクはもっとあたしの扱い方に気を配るべき!」
やかましい。ピックアップで望みのものが来ないからってすりぬけの星五でお茶を濁すなんてカスがすることだ。望みのものが当たってないのだから、俺が満足する筈がない。
「建造沼に足をつっこんじまったみてえだな。いいぜえ、すりぬけくん。お前がそのつもりなら俺様はチャレンジするだけさ。」
がたごとといまだうなりを上げるすりぬけくんに対し俺は宣言する。そして親方、ドックのメンテを頼む。このダメ女王はしばいておくから。
『了解。数日はかかるよー。』
「すまんな。よーし、お前ら戻るぞー。」
「しれえ、ババ抜きしましょう!!憲兵のお爺さんに習いました!!」
こいつとババ抜きだあ?嫌な予感しかしねえぞ。一瞬目が合ったグレカーレが頷く。
「ね、ねえ。雪風。違うカードゲームもやってみない?UNOとかさ。」
「へ?なんですそれ?」
俺たちが己の愚かさに気付いたのはそれからすぐのことだった。
登場人物紹介
与作・・・・・山札からカードを引くのに飽きる。
グレカーレ・・与作とのビリ争いに勝利するも、己の発言を大いに悔いる。
雪風・・・・・UNOの面白さに目覚めて、与作達を度々誘うが断られ、憲兵のお爺さん
に泣きつく。
もんぷち・・・「私は建造ドックを壊したダメ女王です」との札を首からかけて一日過
ごす。
すりぬけくん・『すりぬけくんは力を溜めている』