鬼畜提督与作   作:コングK

94 / 124
ようやく宗谷が掘れた。今までで一番本気出しました。
暇な時間があればひたすら堀り。執筆時間もとれませんでしたね。
とにかくギミックが多すぎる! 一応甲でクリアしましたが、いや間宮伊良湖を
溜めていた分が全て吹っ飛びました。

早くLV60にして南極観測船にしたくしてくてしょうがありません。

ホーネットさんは来てくれませんでしたが、なぜか矢矧と高波が出ること出ること!
高波は分かるのですが、謎の矢矧のドロップ率でした。

イベントと戦果上げに勤しんだ一月でしたが、なんだか人が離れている印象なのが寂しいですね。



第六十五話 「それぞれの道」

ばっども~にんぐ。

やれやれ。

とんでもねえ朝になったもんだぜ。

 

これもあの英国から来たがきんちょ探偵が

「調査が終わったわよ、ダーリン!!」

なんて言いながら俺様の寝込みを襲いやがったせいよ。

深夜0時には寝る健康優良児の俺様を捕まえて、べらべらべらべらべらべらべらべら。まあしゃべるしゃべるしゃべる。

思わず、

「お前なア。いい加減にその口のチャックを閉じてやろうか!」

と頬っぺたをつまみ上げたら、

「にゃにしゅるの、でぃやーりん。むらなていこうよ!」

じたばたともがき、あげくの果てには強烈な頭突きをかましてくる有様だ。痛いじゃねえか、この野郎。どこの世界に頭突きが得意な探偵がいるんだよ! とんだ脳筋探偵がいたもんだ。

こんな調子の奴と4日間も一緒にいたのだから、さぞジョンストンも苦労したのだろうと、一緒にやってきた奴を見ると疲れからか舟をこいでやがる。

 

「おい、大丈夫か、ジョンストン」

声を掛けられてはっとする様子に思わずほろりとしちまったぜ。

こいつ真面目だな。本当にあのフレッチャーの妹なんだな。

「ご、ごめんなさい。どうレポートをまとめたらいいのか混乱してしまっていて」

本当に大丈夫か、こいつ。来た早々とんでもない奴に相棒認定されちまったもんだ。同情するぜ。やるとは思ったが、まさか俺様も新顔のこいつがここまで過激な奴とは思わなかったからよお。

「とんでもない奴とは何よ! 私は依頼を一生懸命にこなしただけよ!」

ぷんぷんと頬を膨らませるジャーヴィスだが、お前は少しは黙るということを覚えた方がいい。

沈黙は金。雄弁は銀というだろうが。

「無口探偵って響きも良いけれど、金よりも銀の方が好みだもの!」

 

尚もしゃべろうとするくそ探偵を、レポートを読んで分からなかったら呼ぶと説き伏せてようやく解放されたのが午後三時よ。あのなあ、6時起床だぞ?3時間睡眠なんてどこのナポレオン状態だ。寝不足は美容の大敵。がきんちょの成長にも6時間以上の睡眠は欠かせねえってわかってんのか、全く。

 

「全く。眠くて眠くて仕方がねえぜ」

大あくびをする俺様が、工廠の前を通ると何やら朝からひと悶着起こしてやがる。

『この馬鹿! アホ!! 何を考えているんです!!』

居並ぶ工廠妖精を前に血相を変えて怒鳴り散らしているのは・・・・・・もんぷちだあ?

あいつが人に怒られる所なんざ見慣れているが、あそこまで怒ることは珍しいぞ。いつもは逆に叱られている親方にまで食って掛かって一体何があったってんだ。

 

「おう、どうした。朝っぱらから」

『ああ、提督、助けてください!』

天の助けとばかりにやってきた工廠妖精が慌てて俺様に説明を始める。

普段は寝坊ばかりしているもんぷちが何やら気になることがあるとかで工廠にやってきたのがつい先ほど。そこで、普段目にしている工廠とは違うと気づき、親方たちからすりぬけくんとまじめくんの入れ替えの件を耳にするや激怒したらしい。

 

『なんて、なんてことをするんですか! この馬鹿! アホ!! 工廠妖精!!』

『工廠妖精は関係ないでしょう! 落ち着いてください!』

『仕方なかったんですよ、女王。それしかドックを守れなかったんです!』

『そうそう。露骨に建造ドックを狙っていたんで、提督さんは一計を案じたんですよ!』

『提督が!?』

ぎろりとこちらを睨むもんぷち。おいおい、お前いつものあのだらしない表情はどこへ置いてきたんだ。今日は当社比10倍くらいシリアスモード満載じゃねえか。

 

『提督! なんでそんなバカなことしたんですか!!』

「それしかすりぬけくんが守れなかったんだよ。お前に伝えてなかったのは悪かったがな」

『そういうことじゃありません! あれは戻ってくるんですか?』

「あれ? まじめくんのことか? 明後日の金剛達とのお話合い次第だ」

俺様の答えにいつもつまみ食いばかりしている奴とは思えない真剣な顔つきを見せるもんぷち。

どうしたんだ、こいつ。もんぷち改二になったってのか?

 

『・・・・・・』

「何だ、お前。本気で怒ってんだな。取り戻すつもりでいる。安心しろ」

『・・・・・・本当ですか?』

「この手の話で俺様は嘘はつかないぜ」

『分かりました。今回は提督を信じてあげましょう。でも、その前に・・・・・・』

なんだ、もんぷちの野郎。ぐるぐると猫をジャイアントスイングで回したと思ったら俺様に向けて投げつけやがった。

「ぎにゃあああああ!」

「危ねえええええ!!」

猛スピードで迫りくる猫を間一髪よけた俺様の脳天に、続けて回転しながら落ちてくる妖精女王。

ドカッ!!!!

「ぐおおおお!」

こ、こいつ。か、かかと落としだと!? 

『私と提督の仲です。それで許してあげましょう』

「てめえ、何しやがる!」

ふんと、鼻息荒くすたすたと工廠を後にするもんぷち。

 

普段の様子とのあまりの違いに戸惑う工廠妖精達と俺様。

「一体全体何があいつの癇に障ったってんだ。親方、分かるか?」

「さあ。なにせこの鎮守府で一番女王と付き合いの長い提督に分からないんです。我々にはとんと見当がつきませんや」

いやいや。そもそも俺様だって未だにあいつが何を考えて生きているか、なんてさっぱり分からねえぞ。あいつのフリーダムさ加減は筋金入りだからな。にしても、何だってんだ、あの野郎。

どうしてあそこまでかっかしてやがんだ。まさか、妖精のくせにあの日とか言うんじゃねえだろうな。ただでさえ、がきんちょの面倒で手一杯なんだ。これ以上俺様の心労を増やすんじゃねえ。

 

                   ⚓

静まり返った室内で、ぱちぱちと目を瞬かせながら、私は現在の状況を確認する。

今朝、ヨサクに呼ばれた時には、明日の金剛との会見のメンバーにジャーヴィスと共に同席させると言われた時には有頂天になり、またかと不満を露わにするグレカーレと、こちらをじっと見つめてくる姉からの羨ましそうな視線に思わず苦笑したものだった。

だが、それは大したことではない。ここに来てからそんなに経ってはいないが、既に慣れた日常の一コマだ。

 

私を大いに戸惑わせたのは、そのありふれた風景の中にごく自然に溶け込んでいる彼女の存在だ。

 

駆逐艦響。

 

原初の艦娘の生き残りにして、およそ20年前に行われた鉄底海峡の戦いの生き残りである英雄。偉大なる七隻と尊敬をもって呼ばれるこの世界でもっとも有名な艦娘達の内の一人であり、今はお台場にある艦娘博物館近くに居を構えているという彼女は、今回の金剛との件に一枚かんでおり、双方の調整役として江ノ島鎮守府にやってきた。

 

既に鳳翔に会い、時雨や北上とも話し大分耐性がついてきた私だが、彼女に気付いた時点で叫ばなかった己を褒めてやりたいと思う。

また、偉大なる七隻が追加された。いつまでこのバーゲンセールは続くのか。

やれやれと頭を抱える私に対し、相棒認定をしてくる自称名探偵は目を輝かせている。

そればかりかこの反応は我が鎮守府では例外であるらしい。アトランタや我が姉フレッチャーなど同郷の艦娘たちでさえいつものことだと慣れた表情をしており、環境というものがいかに艦娘に影響を与えるのか考えるに十分な有様だった。

 

「先方から条件が一つ提示された。偉大なる七隻の同席は認めないそうだ」

無表情に見える響が投下した爆弾に激しく反応したのが、時雨と北上だった。

それも当然のことだろう。大湊への演習の隙をついて行われたすりぬけくん強奪未遂事件(ジャーヴィス命名)では一番にしてやられたのは彼女達なのだ。

響からの金剛との会見のセッティングについての電話の時でさえ、側で耳をそばだて、ヨサクが了承の旨を伝えると、怒りを露わにしていたのだ。昔馴染みとは言っても、いや、昔馴染みだからこそ、どうしてそんなことを受けてきたのかと言いたいのだろう。

 

「名指しで除外とは。随分と嫌われたものだね」

「散々こちらに仕掛けてきておいて、まだ条件を出せるつもりでいるなんておめでたいね、全く」

忌々しそうに吐き捨てる時雨と北上は、内心の苛立ちを隠そうともしない。

 

「おい、北上。時雨じゃねえんだ。笑顔で怒るんじゃねえ。うちの数少ない常識人枠がこれ以上減ると俺様が大変になるだろ。」

ヨサクの言葉に思わず後は誰だろうと考えてしまったのは仕方がないことだろう。身内びいきとうぬぼれではあるが、我が姉フレッチャーと自分は入れておきたいところだ。もちろん、ジャーヴィスは除外である。

 

「ちょっと、与作。僕みたいってどういうことだい。向こうが一方的に悪いんだから怒って当然じゃないか」

「お前たちの気持ちは分かるし、俺様もむかっ腹が立って仕方がねえがよ。話をまとめてきた響のことも考えてやれや」

このヨサクの反応は正直意外だった。大湊からの帰りには仕掛けてきた金剛に対して激しい憤りを見せていたのに、一体どういった心境の変化だろうか。

 

「ふん。まあ、この響とも知らない仲じゃねえしな」

「今の私はヴェールヌイだよ」

白い帽子をこれこれと見せつけるヴェールヌイ。無表情な人かと思っていたが、予想外の茶目っ気にくすりと微笑んでしまう。

 

「北上に時雨。二人の憤りは分かるよ。君たちの提督に対する金剛のやりようは明らかに常軌を逸しているからね」

 

「だったら!」

椅子から立ちかけた時雨を、ヴェールヌイがまあまあと制した。

 

「そういうところががきんちょってんだ。ヴェールヌイのが大人だぜ」

「んな!? ぼ、僕の方が成長しているよ!」

ヨサクの言葉に時雨が胸をそらしてアピールする。なぜだろう。ものすごい人なのだが、とてつもなく残念な気分がするのは。

 

ヴェールヌイは穏やかに微笑むと、そっと胸に手を当て目を瞑った。

「時雨、君は本当に変わったね。すっかり鬼頭提督の艦娘だ。だからだろう、提督を第一に考えるのは」

「どういうことさ」

そっけなく聞いたのは北上。

「そのままの意味だよ、北上。君たち二人は鬼頭提督を提督として受け入れた。だから彼のことを一番に考える。でも私は違うんだ」

「響、どういうことだい」

 

「私の提督は、まだ始まりの提督なのさ」

静かに目を開き、ヴェールヌイは二人を見つめた。

 

それは明確な線引きだった。

ヨサクの艦娘として働くことになった時雨や北上。未だに新しい提督を認めていないヴェールヌイ。

かつては共に戦った仲間だとしても。

仕える提督が違ってしまえば、考え方が異なるのは当然だ。

「だから、あの人だったらどう考えるかなというのが私の判断の基準なんだ。あの人なら、提督なら。きっと味方同士揉めるくらいなら、そんな訳の分からないドックあげてしまえと言うんじゃないかな」

「それは・・・・・・」

「・・・・・・」

 

ふんと面白くもなさそうに、ヨサクがヴェールヌイの頭に手を置いた。

「お前、よく分かってるな。そうだな、あのおっさんならそう言うだろうぜ。物に頓着しねえし、おまけにくだらない内部での争いなんか嫌がるからな。ある程度話をして納得したらすんなり渡すだろう。まあ、散々恩を着せて、見返りに色々なものをふんだくるとも思うがね」

「ふふ。鬼頭提督。本当に君は提督の息子なんだね。その場面が目に浮かぶよ」

心底嬉しそうにヴェールヌイが頷くのを見て、ああ、やはりこの人は始まりの提督の艦娘なんだと再認識する。

 

「私自身、これ以上知り合いが傷つくのを嫌がったこともある。けれど、どこからその考えがでてきたのか。それはやはりあの人の、提督の影響じゃないかと思うんだ」

 

「響・・・・・・。僕や北上は、変わってしまったと君は言いたいのかい?」

自分達がその考えに至らなかったからか。

寂しげに問いかける時雨に、ヴェールヌイは静かに首を振った。

 

「『人の一生は重き荷を背負いて遠き道を行くが如し』。この国の有名な武将の言葉。提督が好きだった言葉さ。私達は同じ道を歩いているよ。時雨達は一緒に歩く人が変わり、私は思い出と共に歩いている。ただ、それだけの違いさ」

 

「あんたは、そのままでいいのかい?」

北上の言葉が優しく響く。

「もうしばらくはね。宗谷もいるし、寂しくはないかな。鬼頭提督もよく来てくれるしね」

 

「まあな。あそこは俺様の行きつけだからな。最近がきんちょが出没するんでうんざりしているんだけどよ」

「がきんちょって誰のことだい!」

「失礼ですよ、しれえ!!」

『そうですよ、よっちゃん!!』

今まで黙っていた雪風と雪風の中のぜかゆきが反応する。

 

「ふふっ、実際に目にすると驚きだね。まさか、君がこんな形で戻ってきているなんて思いもしなかった。海は本当に繋がっていたんだな」

ヨサクから話を聞いていたのだろう。ヴェールヌイはさして驚く様子もなく、ぜかゆきを受け入れているようだ。

 

「君はどうなんだい、雪風。時雨や北上と同じ考えかい?」

『雪風はよっちゃんを助けると決めましたから。よっちゃんのやりたいようにしてくれればいいです!』

「よっちゃんって、鬼頭提督のこと?」

『そうです。無謀でお馬鹿なので、雪風がついてないと無茶しますから』

「本当にそうなんです、響さん! 馬鹿なしれえが無茶するのが心配で、雪風がお願いして雪風さんは残ってくれたんです!」

「おい、こら。俺様をなちゅらるにでぃするんじゃねえ! それによっちゃん呼びしてくる方はぜかゆきって俺様が名付けただろうが!」

「しれえはネーミングセンスが無さ過ぎます! まだスノーウインドの方がマシです!」

「雪風、それもどうかと思うわよ」

私が思わず突っ込むと、ヴェールヌイと目が合った。

 

「元気なようで何よりだ。君はいい鎮守府に来たと思うよ」

優し気な、温かみの感じる眼差しだった。

「え!? わ、私のこと、知っているんですか?」

驚く私に、ヴェールヌイは肩をすくめてみせる。

「そりゃ有名だもの。それにあれこれ情報をくれる知人がいるんだ。私のことをやたらちっこいと言いたがるのが玉に瑕だけど」

「そ、そうなんですね・・・・・・」

「宗谷もいるから君も一度遊びに来てあげてよ。月に一回は鬼頭提督が来るから、連れて行ってもらうといい」

「バカ! 余計なことを口走っているんじゃねえ!」

 

ヴェールヌイの言葉に、期待の眼差しをヨサクに向けると、多方面から同じ視線が集中しているのが分かった。

「時雨と雪風に権利はないわよ。まあ、みんなで行くのなら構わないけど」

「みんなで行くのですか? お台場なら近くに公園があるからピクニックもいいですね! 私、サンドウィッチ作ります!」

「提督、いつ行くかも? みんなで行くなら用意が必要かも!」

「海沿いをドライブも悪くない」

「そういうことなら北上さんも久しぶりにみんなに会いに行くかねえ」

「提督と遠足ですか? 楽しみです・・・・・・」

「ダーリンはモテモテね!」

 

「ふふ。鬼頭提督はすごい人気なんだね」

微笑むヴェールヌイにヨサクは渋い顔をみせた。

「お前分かって言ってんだろ。冗談じゃねえ。あそこは俺様の数少ない憩いの場なんだぞ」

「何か、色々大変そうね。何かあったら言って」

私の言葉に感動したのか、ヨサクはがっしりと手を握ってくる。

ちょ、ちょっと、ちょっと。みんな見ているじゃない!

「お前、ほんと~~うにいい奴なんだな。歓迎するぜ、お前みたいな常識人はよ」

その言葉が癇に障ったのか、あちこちから非難の声が上がる。

 

「まるで僕たちが常識が無いみたいじゃないか!」

「テートクが一番非常識じゃない!」

「しれえ! そういうのを目くそ鼻くそを笑うって言うんですよ!」

 

皆がぎゃあぎゃあとやかましく言い合う。

ああ、もう本当にこの鎮守府は。

ため息をつきながら困ったもんだと頭を抱えていると。

その様子を少し離れたところから、ヴェールヌイが頷きながら見ていた。

 




登場人物紹介

与作・・・・・・余計なことを言いやがってとヴェールヌイにでこぴんをする。
ヴェールヌイ・・人生初でこぴんにびっくり。微笑みながらやり返す。
もんぷち・・・・マジ切れモード。金平糖を与作がやるも収まらず、フレッチャーお手製のパンケーキをやけ食いする。
フレッチャー・・怒り狂う妖精女王を見て、お腹が空いているのかしらとパンケーキを焼いて上げた天使。
グレカーレ・・・ジョンストンとの話で、自分が常識人枠にいないことを知り、激怒。
ジョンストン・・怒るグレカーレに困惑。いや、だってこの鎮守府で普通そうなのって後神鷹と秋津洲(二式大艇除く)くらいじゃないと反論。
二式大艇・・・・ジョンストンの普通じゃない発言に若干しょんぼりするも、大人物なので気にしない。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。