過度な期待はせず、気楽~に読んでください。
きっかけは弟子の些細な一言であった。
「そう言えば師匠って映画以外は見ないんですか?」
彼、弦十郎の弟子である響が特訓を終えた後そんな疑問を投げ掛けた。
「ん?そうだな、映画はジャンルに関係無く見るがそれ以外だと見る事はないな」
映画鑑賞を趣味としている彼からしたら当然の答えである。
「唐突にどうしてそんな事を聞くんだ響君?」
「いや~、実は私の友達からオススメの漫画を借りたんですけどなんとなく師匠に合いそうだなぁ~って思いまして」
そう言いつつ響は自身のカバンの中を漁り、一冊の
「これです!」
響が手渡した
廃墟と化した高層マンションと天から落ちる雷をバックに鍛え抜かれた筋骨粒々の体をした男の絵がそこにあった。そしてその本のタイトルにはこう書いてあった。
[北斗の拳]
と。
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「ふ~む…」
弦十郎が自宅の寝室で胡座をかきながらそう唸っていた。彼の前には一冊の
結局あのあと
そして自宅に戻り寝間着を着て後は寝るだけの状態になった所で現在の状況に戻る。
「まぁ、漫画だし十分くらいで読めるだろう…」
その程度なら明日に支障は無い。形はどうあれ借りてしまった訳だし読まないのはかえって失礼だろう。今日読んで明日返せばそれで済む話だ。
彼はそう自分に言い聞かせ
『一九九X年 世界は核の炎に包まれた!!』
記念すべき漫画の第1巻・第1声がこれである。
舞台は核戦争によってあらゆる生命体が死滅し僅かながらの人類が地上を生きると言う何ともバイオレンスな世界。
読み進めていくとこの世界では二つの人種がいることが分かった。一つは貧しいながらも支え合いながら生きていく者達、もう一つは暴力で全てを支配しようとする者達。世の中から秩序が無くなればこんな風にもなるのかと弦十郎は少々真面目に考える。
そんな世界の中でとある一人の
だが弦十郎はそれよりも目を奪われるモノを見る。旅の道中には暴力によって数少ない資源を奪おうとする
気づけば弦十郎はケンシロウが[北斗神拳]を振るうシーンをページを戻しては読み返し細かい描写などをつぶさに見ていた。漫画の中の平面な動きを自身の体を使って動かし
そこからの弦十郎の行動は早かった。身支度を整えた彼は
放課後になり本部に足を運んだ響に「素晴らしい作品をありがとう」と感謝の言葉を告げ、後日焼き肉の食べ放題を約束した。その後、仕事が終わり急ぎ足で自宅に戻り早速DVDを再生。漫画では分からない立体的な動きをその場で
翌朝、珍しく有給を取った彼は風鳴家所有の山へと向かう。理由はもちろん己を鍛える為である。思い描くのはあの
余談ではあるが、形から入る弦十郎はケンシロウの私服であるあの肩パット付きの裸皮ジャンをしっかりと再現して鍛練していた。
それから数日が経過する。
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とある日の都内にて…
ドガァァァン!!!
爆発音が響いた。
「ヒャッハー!!俺様達は[ネオ・フィーネ]!この世界をメチャクチャにして俺達の住みやすい世界にしてやるぜぇ!!」
リーダー格と思われる派手な色をしたモヒカン男が高らかにそう宣言していた。モヒカン男の後ろには同じく派手な色の奇抜な髪型に何故か上半身裸の上に無駄に突起を付けた痛々しい肩パットを付けた男達(以後はヒャッハーと呼称する)がわんさか居た。
ヒャッハー達は町の公共物を破壊したり、飲食店に無断で押し入り金銭を奪う…かに思えたが何故か料理を盗み食いしたり水道水の水をがぶ飲みしたり、子供や老人などの明らかに自分達より弱者な人種を暴行…はせずにその者がたまたま持っていた菓子類や種モミを奪ったりなどを他人の迷惑など知ったこっちゃないとやりたい放題である。そしてこの時何故か警察や自衛隊の出撃が遅れており、市民は[ネオ・フィーネ]の暴挙に恐怖する。
このまま日本は、世界は、[ネオ・フィーネ]の支配を受け入れてしまうのか…!?
だがその時!
「待ていっ!!!」
ヒャッハー達が一斉にその動きを止めその叫びが聞こえた方角を見る。
そこには赤いYシャツが今にもはち切れん程き耐え抜かれた筋骨粒々の男(弦十郎)が立っていた。
※ここからはBGM有りきでお楽しみ下さい
「なんだぁテメェ?」
「貴様らの様な悪漢共に名乗る名などない!!」
ヒャッハーの問いかけにそう答えた男は右手に持っていたレンタル屋のロゴが入った手提げ袋を投げ捨てると何かの武術と思われる構えを取る。
「はあぁぁぁ…」
「なんだか知らねぇが俺様達の邪魔しよってんなら容赦しねぇ!野郎共やっちまえ!」
「「「「「ヒャッハー!!!」」」」」
リーダー格のヒャッハーの号令と共に弦十郎に突っ込んでいくヒャッハー達。手には斧やマチェット、中には鎖や釘バットといった不良が持ちそうな武器を構える。だが…
「ヒャッハー!汚物は消毒だ~!!」
一人だけ圧倒的に違う物を持っていた。周りが近接武器を構えているなかソイツは何故か火炎放射器を構えていた。
まぁそんなことはさておき、ヒャッハー達は弦十郎に一斉に飛び掛かる。
「死ねぇぇぇ!」
ヒャッハーの一人が弦十郎にマチェットを振り落とす。対して弦十郎は武術の構えのまま微動だにしない。そのままマチェットは弦十郎の体にめり込み、体に傷を付け…られなかった。
「な、なんだぁ!?」
ヒャッハーの一人が摩訶不思議な感覚にさらされる。マチェットは確実に弦十郎の体に触れた筈なのにまるで空振りしたかの様な感触であったからだ。
「オイ!何トロトロしてんだよ!」
「い、いや何か変な感触で…」
「ドケ!こうヤんだよ!」
斧を持ったヒャッハーがマチェットを持ったヒャッハーを押し退け、再び弦十郎に切りかかる。だが結果は先程のヒャッハーと同じく空振りの様な感触。その後もヒャッハー達が代わる代わふる弦十郎に殴りかかるが全く当たらない。終いには火炎放射器を持ったヒャッハーが痺れを切らし弦十郎に向け炎を放つがこれも当たらず弦十郎の後ろに陣取っていたヒャッハー数人のモヒカンに引火しちょっとした惨事になった。
「チクショウどうなってやがる!?なんであの野郎に当たらねぇ!?」
ヒャッハーの一人が何故弦十郎に攻撃が当たらないか思考する。そしてある事に気づく。武術の構えのままその場を動かない弦十郎の体が半透明に見える事に。見間違いかと思い目を擦るもやはりそれは変わらない。いったい何が起きているのかヒャッハーの頭では見当もつかない。
「誰にも俺を捕らえる事は出来ない…」
すると唐突に弦十郎が口を開く。弦十郎は変わらず武術の構えのまま静かに語る。
「これこそ俺がこの数日で勝ち得た北斗神拳の極致…」
【北斗神拳究極奥義・無想転生】
語り終えた瞬間、弦十郎の体が武術の構えのまま、残像を残すほどの凄まじい速度でヒャッハー達の間をまるで縫う様に移動する。ヒャッハー達は突然の事による動揺も相まって弦十郎の姿を目で追うことすら出来なかった。
やがて元の位置に戻ってきた弦十郎は一呼吸入れると武術の構えを解く。すると…
ドタドタドタッ
弦十郎を囲んでいたヒャッハー達が一斉に白目を向いて倒れ伏す。
「ど、どうしたお前ら!?テメェ何しやがった!?」
少々離れた位置にいたリーダー格のヒャッハーが部下のヒャッハー達に何をしたのかを弦十郎に問う。
「安心しろ殺してはない。[
人間の身体に708個あるとされる経穴、通称[
「さて、残るはお前だけだ」
「ちぃ!こんなところで終わってたまるか!こうなったら奥の手を出してやるぜ!」
ヒャッハーは懐から召喚石を取り出すと思いっきり地面に投げつける。地面に叩きつけられた召喚石は砕け、そこを起点に陣が形成、異形の姿をした何かが現れる。
「アルカノイズか?」
「ヒッヒッヒッ、違うなぁ~こいつはアルカノイズじゃない。この俺様が錬金術士どもと共同開発した聖遺物の持つ特殊なエネルギーを取り込む事でありとあらゆる攻撃を吸収出来るようにした特別仕様のアルカノイズ、名付けて[ハートノイズ]!テメェがいくらおかしな拳法を使おうとコイツの前じゃ手も足もでねぇだろ!」
ヒャッハーは自慢げにそう語る。因みにだが錬金術士と共同開発と言っているが実際はアイデアを出したのがヒャッハーなだけで開発は全て錬金術士達が行っていた。
「行けぇ[ハートノイズ]!あの拳法野郎をバラバラにしちまいな!」
ヒャッハーは[ハートノイズ]に命令し弦十郎に突っ込んでいく。[ハートノイズ]は手の形をした解剖器官を使い弦十郎を分解しようと攻撃する。
だが弦十郎はその攻撃を完全に見切っており半歩横にズレるだけでそれを回避する。
「ワァタタタァ!」
ドドドカァ!
回避後、隙だらけとなった[ハートノイズ]の懐に侵入しその豊満な腹に拳を数発叩き込む弦十郎。だが[ハートノイズ]はまるでダメージが無いかのようにたたずんでいる。
「ヒャハッハッハッ!だから言ったろ!テメェの拳法なんて[ハートノイズ]の前じゃ無力なんだよ!」
ヒャッハーは勝ち誇ったかのようにゲラゲラと笑う。それに対して弦十郎は…
「フッ…、それはどうかな?」
弦十郎も笑っていた。
「ハァ?テメェなに言ってやがる、負け惜しみか?」
「それはそこにいるノイズを見てから言うんだな」
「は?…はぁぁぁ!?」
弦十郎の言葉道理に[ハートノイズ]を見て驚愕の声をあげるヒャッハー。
何故ならそこには…
「■■■■■!?■■■■■!?」
異様の姿をした[ハートノイズ]の放漫な体がまるで内側から溶かせれたかの様に垂れ下がっていたのだ。
「い…いったい何が!?」
「北斗神拳の前では恐れるに足らん。そのノイズに触れた瞬間俺は北斗神拳奥義の一つ[北斗
ヒャッハーにそう説明した弦十郎は肩幅に足を広げ、気を溜め始める。
※処刑用BGMタイム
「はぁぁぁぁぁぁ!!」
ビリビリビリ
弦十郎が気を溜めると同時に膨張した筋肉が弦十郎の赤いYシャツを破り鍛え抜かれた肉体が現れる。
「さぁ、覚悟を決める時だ[ハートノイズ]とやら!」
「■■■■■■■■■■■!!」
武術の構えをとった弦十郎の言葉に反応してか[ハートノイズ]は弦十郎に再び襲い掛かる。伸ばされた解剖器官を弦十郎は紙一重でかわし懐に入り込んだ瞬間…
「ワァタ!!」
ドスッ!
鋭どく重い拳がブヨブヨとなった[ハートノイズ]の腹に命中する。だがこれだけで終わりではない。
「アタタタタタタタタタターーーっ!!」
弦十郎の拳がまるでいくつもあるかのように見えるほど素早い拳の猛攻が[ハートノイズ]に襲い掛かる。この時、弦十郎は3秒間に50発ものパンチを繰り出しその衝撃によって弦十郎の身長より2倍はある[ハートノイズ]の体は宙に浮いていた。そんな途方もない攻撃を[ハートノイズ]はなす術もなく受け続ける。そして…
「ホォワッチャア!!!」
【北斗百裂拳】
止めの一撃を[ハートノイズ]に打ち込み、[ハートノイズ]はそのままビルの壁に体をめり込ませた。
「■■■…!■■■…!」
だが辛うじて息があったらしくめり込んだ体を剥がそうと身じろぎをする[ハートノイズ]。
だがそれは弦十郎の残酷な一言により出来なくなる。
「無駄だ。お前はもう死んでいる…」
瞬間…
ピクッ
[ハートノイズ]の体に異変が起こる。体のあちこちに歪みが起き始め、最早原型を留めていなかった。やがて体の歪みが臨界に達すると…
ドバッ!
まるで風船が割れたかのように[ハートノイズ]の体が破裂した。幸いノイズであるため血などは飛び出ておらず赤い砂のようなモノが舞うもののあまり見ていて気分の良いものではなかった。
「そ、そんなぁ~…俺様の[ハートノイズ]が…」
ヒャッハーは膝から崩れ落ちショックを隠しきれない。すると自分に大きな影が覆い被さっているのに気づく。上を向くとそこには仁王立ちの弦十郎がいた。
「ひぃいいい!?お助けぇえええ!!」
ヒャッハーは情けない声をあげる。弦十郎はそんな引け腰のヒャッハーの額にデコピンを一発打ち込む。
バゴンッ!
およそデコピンで出せる音では無い程の轟音を鳴らし、デコピンを打ち込まれたヒャッハーはそのまま衝撃で後頭部を地面に叩きつけられ脳震盪を起こし気絶する。
「まったく、レンタル屋の帰りにとんだ迷惑だな」
ため息を一つ吐いて弦十郎は、投げ捨てたレンタル屋のロゴが入った手提げ袋を拾いそのまま本部へと戻っていった。
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同時刻、S.O.N.G本部作戦指令室。先程までの弦十郎の行動をモニタリングしていたオペレータースタッフとシンフォギア装者達は
「…もうオッサン一人でいいんじゃねぇか?」
静まり返った指令室の中、クリスの一言に各々無言で頷くしかなかった。
好評なら続き書くかも…(ボソッ)
もしも続編があれば誰のが見たい?
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響
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翼
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クリス
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緒川
-
?(シークレット)