耳郎の幼馴染にスタイリッシュをぶち込んでみた 作:バージル兄
上鳴君が予想外に彼女になる不思議。
ウチは今、駅の改札前で人を待っている。
隣では、ウチの幼馴染が壁を背を預け本を読んでいる。
何のこともない、いつもと変わらない日常だが、今日は特別な日だ。
何せ雄英高校の入試当日だ。
なのにもう一人の待ち人が来ない。
「で、上鳴はいつ来ると?」
いつもより低い声。
やはり、怒っているようだ。
基本的にバージルは時間にうるさい。
というか、約束したことは大抵守ってくれる。
約束した以外のことは、本当に自分の好きなことしかしないが。
「さっき連絡来たから、後5分くらいで見えるはず」
「あいつはホントに時計を見ないな」
ちらりと上鳴が来るであろう方向に視線を飛ばし、溜息を吐く。
「まぁ、ウチ等も分かってて、割と余裕の時間に指定したし」
「入試位は集合時間を守ると思ったが」
二人揃って溜息が出る。
まぁ、時間はある。
何なら1本電車逃しても十分間に合う。
でも腹が立つものは仕方ない。
「今日はアイツの奢りで何か食べようか」
「またハンバーガーになる未来しか見えんが」
軽く笑いながら本を鞄に片付け、軽く地面を足で蹴る。
こういう何気ない行動も、無駄に様になるから腹が立つ。
いや、見てるウチが悪いんだけど。
そんなムダ話をしていたら、バージルのスマホが高らかにロックを奏でる。
ウチの好きなアーティストの新曲が上がったので変えてみた。
たまには変えなければ延々デフォ音なので、仕方ない。
こちらに何か言いたそうな視線を向けるバージルに、そっぽを向いて口笛を吹いて誤魔化す。
取り敢えず電話が先だと思ったのか、こちらから視線を切りスマホを耳元に当て
「上鳴か。今どこに居る?」
『お前らの後ろ!』
慌てて振り向けば、こちらに片手を上げつつ近付いてくる上鳴。
「どうした?何故声を掛けなかった」
スマホをこちらに手渡してくる。
どうやら、お気に召さなかったようだ。
次は、 QueenのDon't Stop Me Nowにしようか。
それとも、AC/DCのBack In Blackにしようか?
この前勧めたエニグマもいいかもしれない。
次は何に変えようか考えていると、自然に頭を撫でられた。
というか、かき回された。
「髪が乱れるから優しく撫でてよ」
軽く唇を突き出し、不満も露に見つめると、今度はゆっくり手櫛で整えてくれる。
自然に撫でられるのに任せ、曲を選んでいく。
「お前らがそういうことばっかしてるからでしょーが!」
軽く涙目でスマホを片付けながら、ダッシュで駆け寄るバカ。
何言ってんの。
「アンタが遅れるのが悪いんでしょうが」
「誰の所為で、入試当日に20分もこんな所で待ったか分かるか?」
二人同時に睨まれ、静かに小さくなっていく上鳴。
このまま土下座でもしそうな勢いだ。
暫く睨んで飽きたのか、溜息を吐きつつ。
「時間の無駄だ。さっさと行くぞ」
「上鳴、試験終わったら何か奢りね」
後ろから悲鳴が聞こえるが無視だ無視。
「ね。バージル。どんなことするのかな入試」
「さてな。倍率300倍の壁というものを見せてもらうとしよう」
自信満々で言い切る姿は非常に様になっている。
もう受かるのは当然だと思えるのが、何とも羨ましい。
不安はないのだろうか?
「あのね、俺もいるからね二人とも」
後ろから慌てて追ってきて、態々バージルの後ろから声をかけるあたり、ホント寂しがり屋。
「お前筆記は本当に大丈夫だろうな?」
「それ、ウチも心配」
何度バージルの家で勉強会開いたことか。
いや、ウチも何度かお世話になったけど。
「俺頑張るから!」
無駄に爽やかな笑みを浮かべ、親指を立ててこちらを見てくる。
そういう態度だから心配なんだけど。
「折角面倒見たんだ。また3年しっかり付いてこい」
上鳴に振り返り、軽く頬を緩ませる。
…上鳴ズルい。
駅を降り、看板通りに道を進み角を曲がると
馬鹿みたいにデカい建造物が見えた。
正門に立ち、上を見上げれば、無駄に威圧感のある建物。
「思ってたのより、3倍はデケェ」
「ホント大きい」
二人してポカンと口を開けていたら、
「邪魔になるから、さっさと行け」
後ろから頭を軽く押され、たたらを踏む。
振り返るとバージルが、さっさと入り口に向かっていた。
ちょっとは待って欲しい。
適当に手櫛で髪を整えつつ後を追う。
「折角電車で覚えた問題が消えるでしょーが!」
軽く駆け足でバージルに追い付き、文句を言う上鳴。
おお、上鳴が吠えた。
どうせ無駄だけど頑張れ。
「付け焼刃は、お前のためにならんと前から言っているだろうに」
「耳郎ちゃん!貴方の彼氏が正論しか言わない!」
涙目でウチ等を指指すな。
外で彼氏とか言うな。
普通に恥ずかしいから。
周りの受験生の迷惑だし、ホント止めてほしい。
ほら、無駄にざわめきだした。
足を速め、さっさと指定の教室に入る。
あー顔が熱い。
◆◆◆
筆記も終わり、全員講堂に集まる様指示が出され
ゾロゾロと受験生たちが講堂に向かい、番号順に席に着く。
隣になった上鳴に先程の手応えを聞いてみる。
「筆記どうだった?」
「蒼井すげえわ。あいつが前に作ってくれたアンチョコの通りに出た」
今にもバージルに祈りそうな表情で、てか手を合わせて祈っている。
分かる。めっちゃ役に立った。
横で頷いていると、椅子を引く音がした。
「役に立ったなら何よりだ」
後ろから声がかかり、ウチの隣の席に座るバージル。
「ホントありがと!」
「ウチも助かった」
二人揃って礼を言えば、微妙に視線を逸らし
「好きでやったことだ」
小さく呟いて、鞄から朝に読んでいた文庫本を取り出す。
照れてる。ウチのバージルが照れてる。
ちょっとカワイイ。
スマホで写真を撮ろうとしたら、講堂の照明が落ちた。
どうやら、説明が始まるようだ。
プレゼントマイクの説明?が講堂に響き渡る。
「つまり、俺たちは別々の場所で受けるってことか」
「そこで指定ロボを倒せばポイントになると」
「後は、この4種類目の敵が気になるな」
プレゼントマイクの説明とプリントを確認しながら
各々気になったことを口にする。
確かに無視推奨てどんなものなのかは気になる。
「ゲー超真面目ちゃんじゃん、何アイツ」
「まぁ一人はいるよね。ああいう人」
プレゼントマイクの説明も終わり、体操服に着替え
試験会場に向かう。
先程、説明の最中に割って入り質問をした眼鏡の四角四面を思い出す。
「と、俺こっちだから行くわ」
集合場所が全員違うため、受験生が三々五々に散っていく。
「がんばれー」
「気を付けろよ」
適当な声援と微妙な応援を送る。
「おー」
と軽い調子で返事が帰ってきた。
「んじゃ、ウチもこっちだから頑張ってね」
心配は要らないだろうが、隣を歩く幼馴染に声をかける。
「お前も怪我をしないようにな」
微妙に心配なのか、頭を撫でられる。
「ウチもヒーローになるんだから心配いらないって」
「それと心配しないでいい理由にはなるまい」
まあ、そりゃそうだけど。
「じゃあな、響香。終わったら連絡する」
そう言って、バージルも背を向け集合場所に歩き出す。
「さぁ、ウチも頑張るぞ」
小声で呟き、拳を握りしめる。
気合いを入れるためにイヤホンジャックを軽く回し
軽く緊張を解しておく。
…そういや、スマホ返したっけ?
◆◆◆
「ハイスタートー」
何とも気の抜けた声が、何の前触れもなく試験場に響き渡った。
行き成り始まるのか。
集団の真ん中程にいたため、初動が遅れる。
後ろを振り向き、足に力を籠め、跳躍。
それだけで、受験集団の頭上を軽々と飛び越え、試験会場に向かう。
後方からプレゼントマイクの煽りが聞こえてくる。
集団が動き出した。
曲がり角を一つ曲がると指定されたロボだろう。
何体かがこっちに向かってくる。
左手に刀を呼び出し、走りながら斬り捨てる。
後ろで何かが落下した音が響く。
振り返ることなく、そのまま前へ前へ向かっていく。
『これ刀で斬るアイツ何!?』
後ろから他の受験生の声が響いてきたので
少しスピードを上げ、その場を離れる。
そのまま路地に入り、ロボを見つけ次第解体する。
取り敢えず、これで60か?
合格ラインが分からんな。
もう少し稼いでおくべきか?
適当なところで路地を抜け、建物の屋上部分まで飛び上がる。
自身の後方に幻影剣を展開し、周りを見渡し、ロボを見かければ射出する。
暫くそれを繰り返していたら、地面が揺れた。
地響きがするような衝撃と、何かが崩れ落ちるような轟音が響き渡り
無駄にデカいロボが見えた。
「ほう、これが0Ptのおもちゃか」
さっきまでの鉄くずよりは楽しめるか。
周りの通りや路地からは悲鳴と罵声が響き渡る。
それをBGMに巨大ロボに向かうため、地面に降りる。
「おい、アンタも逃げろって」
後ろから肩を掴まれ、強引に引っ張られる。
後ろを振り向けば無駄に暑苦しそうな雰囲気の男。
容姿としては、目元を覆う白い何かが特徴か?
「離せ、あれは俺が相手をする」
肩に置かれた手を払いのけ、向き直る。
そのまま、一歩踏み出すと慌てた様に後ろから声を荒げる男。
「いや、アレ無理だって!お前も無視推奨てのは見ただろ!?」
「問答をしている時間はないぞ、あのガラクタの所為で怪我人が出たらどうするつもりだ?」
実際、何人か逃げ遅れたのか、諦めたのか地面に丸まっているのが見える。
「お前、アレ本当に止められるのかよ」
何かを感じ取ったのか、こちらに視線を投げかける。
「何度言わせる気だ。お前はそこに這い蹲っている奴らを連れていけ」
言外に邪魔だと言いつつ、腰を落とし刀を握りしめる。
「スマン。任せる!」
何かに謝りながら、周囲の受験生を拾い集めにかかる。
目の前に生意気にも巨大ロボが迫ってきた。
一度深呼吸をして、意識を集中する。
「平伏せ!」
何度も訓練し、必殺の域にまで高めた武の神髄の一端を見よ。
こんなガラクタに避けられるものか。
刀を抜き相手を周囲の空間ごと斬り捨てる。
一瞬、周囲から音が消え、元に戻る。
巨大ロボの周りを見れば、瓦礫と鉄くずが散乱していた。
『試験終了ー』
場違いに明るいアナウンスが流れてくる。
「終わったか」
軽く刀を抜き、状態を確かめる。
目立った傷もなく、握りも問題なさそうだ。
納刀し、刀を消し帰るために振り向くと
「お前すげえな!」
「何だ逃げなかったのか?」
「お前1人置いて逃げるって、恰好つかないだろ」
初対面の人間に何を言っているんだこの男は。
「あ、そうだ忘れてた!俺、鉄哲徹鐵。よろしくな」
こちらに手を差し出してくる鉄哲徹鐵。
…何処で切るんだ?
「そうか、俺は蒼井バージルだ」
手を握ってやると、無駄に嬉しそうに腕を振ってくる。
何だこいつは
「いやー感動したよ俺!お前みたいのがヒーローになるんだな」
うんうんと何かに納得したのか強く頷く鉄哲徹鐵。
「歯応えがなくて退屈していただけだ」
真っ直ぐ出口に向かいながら、連絡をとるためにポケットを探る。
何も指に触れず、軽く眉を顰める。
そういえば、預けてそのままだったような?
「蒼井、いくつか質問いいか?」
一緒に出口に向かいながら、鉄哲が緊張したように言葉を紡ぐ。
「構わんが、待ち人がいるから手短に頼む」
「色々聞きたいんだけどよ。一番は個性についてだ」
面倒くさいことを遠慮なしに聞いてくるな。
「お前、個性複数持ちだったりするのか」
「いいや、一つだ」
何故か、大体の人間が俺や父が個性を使うと複数持ちだと想像する。
「え、さっきの刀引っ込めるのと、あのロボ倒したのが個性だよな?」
「俺の個性は『武器を持っている間、身体能力が上がる』だ」
俺の個性の説明がホントに面倒臭い。
「どういうことだ?」
頭の上に疑問符が舞っているのが、見える。
まぁ、そういう反応になるな。大体。
「説明が面倒だな。この後、時間があるか?」
「俺は大丈夫だ!試験終わったらそのまま帰るつもりだったしよ!」
無駄に声がデカい男だ。
「友人と試験終わりに飯を食いに行くつもりだ。一緒に来い」
そこで、ゆっくり話してやる。
ここから、ウチのバージルの個性説明です。
個性名は『剣士』です。
まだ闇落ちしてないんで
出来ることは
1.自分の部屋にある武器類(閻魔刀・ベオウルフ・フォースエッジ)の呼び出し
2.武器類を持っているor装備時に身体能力が5倍~10倍程度上がる。
(スタイリッシュランクによる補正)
3.幻影剣の展開・射出
4.短距離ワープ
大体今考えているのはこんなところです。