耳郎の幼馴染にスタイリッシュをぶち込んでみた   作:バージル兄

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耳郎ちゃんを膝に乗せた兄さんが見たかった話し


個性把握テスト -test‐

目指すは、徒歩3分程のウチの大好きな人の家。

 

今日、雄英から手紙が届いた!

雄英合格!ウチもヒーローになれる!

いや、まだなれると決まった訳じゃないけど。

その一歩を踏み出すチャンスを得た!

 

走ったら、本当にあっという間に玄関に辿り着き、大きく深呼吸をして息を整える。

押し慣れたインターホンを押し、しばし待つ。

パタパタと軽い足音が聞こえ、扉が内側から開かれる。

 

「はーい?あら、いらっしゃい」

 

こちらを確認するや笑顔になり、手招きするのは彼の母であるエヴァさん。

金髪碧眼の見るからに白人女性。いつ見ても美人だ。羨ましい。

今日は真っ赤なベルトを腰に巻いて、黄色のフレアスカートで決めている。

上は緩めのTシャツなのでスパーダさんのものだろうか?

「お邪魔します」

軽く頭を下げて、一緒に中に入る。

 

2階からギターの音色と歌声が響く。相変わらずの腕前に聞き惚れる。

 

「あの子、今ギター弾いてるからちょっと待っててね」

 

そう言い残し、階段を駆け上がる。

…もうちょっと聞いていたかったな。

 

軽い足取りで勝手知ったる廊下を通り、リビングに向かう。

見ればスパーダさんがソファに身を沈め、雑誌を捲っていた。

こちらの視線に気付いたのか、目線で座るよう促される。

スパーダさんの対面に座りながら、軽く頭を下げると手を振られる。

 

「いらっしゃい」

 

雑誌を適当に机に置き、笑顔で迎えてくれる。ちらと雑誌の表紙を見れば、音楽雑誌だった。

そういえば、今日発売の雑誌にウチの両親の記事が組まれるはずだったか。

こういうマメなところも、モテる秘訣だろうか?

 

この人に笑顔を向けられて、近所の奥様方がファンクラブを作ったのをウチは知っている。

やっぱ顔がいいというのは大事なのだろう。

見るともなしに幼馴染の父親を眺める。

相変わらずバージルとよく似た顔だ。いや逆なんだけど。

 

歳のころは確か、43か4だったはず。

今日は、柔らかな銀髪を適当に前に垂らし、バレッタ(多分、手作り)で邪魔にならないように纏めている。デザイン自体はシンプルな物で、表面に軽く星が散っている程度だ。

その下から覗くのは、見え方によっては青く輝く綺麗な瞳。

頬のラインも滑らかで、通った高い鼻筋の下には薄い唇。

服装自体は、黒のパンツに白のワイシャツの普段着。

首から下げたネックレスには、金銀の縁取りで真ん中に赤い宝石が嵌め込まれている。

 

ボーッとスパーダさんを眺めているとギターの音色が止み、二人分の足音がこちらに近付いてくる。

「何かあったのか」

リビングに入り、当然の様にこちらの隣に腰掛けるバージル。

ちょっと、いやかなり嬉しい。

 

「ウチ雄英受かったよ!」

 

ソファから身を乗り出し、バージルに笑顔で手を振る。

 

「そうか。良かったな」

 

軽く微笑んで頭を撫でてくれる。

もっと撫でて欲しくて頭を軽く突き出すと、耳の後ろを撫でられ慌てて頭を逃がす。

 

「耳は止めてって言ったじゃん!」

 

慌てて耳を隠しながら、ジャックを突き出すと、笑いながら謝ってくる。

軽く一睨みしつつ、乱暴にソファに座り直す。

 

「もう発表か」

 

こちらの様子を楽しそうに眺めながら、隣に座るエヴァさんの肩を抱きダイニングに視線をやる。

 

「見てみるね」

 

軽やかに立ち上がり、ダイニングに向かい足を向けるエヴァさんとスパーダさん。

郵便物を確認に行ったのだろう。カサカサと紙を捲る音がする。

 

『あーこれか』

 

どうやら見つかったらしい。

 

「あったよ響香ちゃん」

 

ダイニングから戻り、一枚の手紙を軽い調子でウチに手渡すスパーダさん。

思わず受け取ると、もう要件を済んだとばかりに椅子に座り雑誌を読み直している。

キッチンでは、エヴァさんが紅茶を淹れているらしく、エヴァさんお気に入りの茶葉の匂いが鼻を擽る。

パタパタと軽い足音と楽し気な鼻歌が響く中、意図が分からずスパーダさんの顔をジッと見つめる。

 

「響香。開けていいぞ」

 

隣に座ったバージルから軽い調子で言われ、慌てて手紙に目線を落とす。

 

「いいの?」

 

ウチが開けても?

 

「誰が開けても結果は変わらん」

 

軽く肩を竦めながら、詰まらなそうに手紙を眺めている。

大きく息を吐き出し、慎重に手紙の封を切り、中身を取り出す。

良かった。ウチのと一緒だ。なら受かっているはず。

机の上に板切れを置き、端に配置されたボタンを押す。

 

『私が投影された!!』

 

途端、オールマイトが中空に表れながらポーズを取る。

 

「最近の学校は随分派手なんだな」

「色んなとこでオールマイト見るわねー」

 

オールマイトを呆れた様に見るスパーダさんに、エヴァさんの緩い感想が重なる。

ウチ等の前に紅茶とクッキーを置き、そのままスパーダさんの横に座り、手を重ねて体を預ける。

…いいなあ。自然にああいうこと出来て。

 

『初めまして蒼井バージル君!私はオールマイトだ!何故、私が投影されたのかって?ハハハ!それは私がこの春から雄英に教師として勤めるからさ!さあ早速、君の合否を発表しよう!』

 

オールマイトの無駄にデカい声がリビングに響き、段々とバージルの眉間に皺が寄っていく。

うるさいの苦手だもんね。

軽く体を寄せ、膝に手を置くと怪訝そうな眼で見られた。

い、いいじゃん偶には。

 

『おめでとう!合格だ!筆記試験は問題なく合格!合格者の中でもトップクラスの成績だ!』

 

映像のオールマイトはクルクルと周り、合格のカードを見せている。

合格!

 

「バージルおめでとう!」

 

嬉しくて思わず飛びつくと、危うげなく受け止められる。

そのまま膝に乗せられ、腰に手を回してくれる。

 

「危ないぞ」

 

上から振ってくる優し気な声。

 

「だって嬉しかったから」

 

軽く見上げれば、こちらを見下ろす青い瞳とばっちり合う。

何となく照れて下を向けば、タイミングよく携帯が鳴る。

 

「killer queenか」

 

ウチが来るまで、バージルが弾いてた曲。

 

「今日はそんな気分だったから」

 

逞しい胸板に背中を預け、確認すると上鳴からの電話だった。

 

「出る?」

 

バージルに手渡すと、露骨に顔を顰め携帯を目一杯顔から離して耳を抑える。

同じように耳を抑えると、意味が伝わったのかスパーダさん達も耳を覆う。

 

『耳郎!耳郎!!耳郎!?俺雄英受かった!!』

 

騒がしい上鳴の声が居間に響く。

 

「少し黙れ」

 

顔を顰めながらも楽し気なバージルの声が耳に心地いい。

 

『あっるえ?蒼井じゃん。耳郎は?』

「膝の上に居るが」

 

通話を聞きながら、軽く彼の手に指を絡め、目を閉じて背中を預ける。

 

『えぇ。それカレカノとかがやるやつじゃん』

「何処かおかしいか?」

『何でもないです』

 

向こう側で大きな溜息が聞こえてくる。

 

『取り敢えず、二人とも受かったんだろ。おめでと!』

「お前もな。よく頑張った」

『ありがとー!ちゃんと耳郎にも伝えてよ』

「ん、言いたいなら変わるか?」

『いいよ別に』

 

じゃまた後で、と軽い挨拶と共に携帯が切られる。

携帯を置き、こちらを抱き締める腕が少し強くなる。

 

「上鳴も受かったそうだ」

「また3人一緒だね」

 

クラスも一緒だと退屈しないで済むけど、どうだろうか。

 

「あ、そうだ。今晩ウチで合格祈念パーティやるから来てね」

「分かった」

 

何かあれば、ウチで騒いでる気がするなあ。

 

 

 ◆◆◆

 

 

雄英へ通う道すがら、下らない話を延々とする。

教室に向かう通路を歩いていると、正面に見知った顔が立っていた。

 

「おー鉄哲!お前も受かったんだな」

 

上鳴が真っ先に反応し、馴れ馴れしく肩を抱いて一緒に跳ねている。

 

「おうよ!俺が受かったんだから、お前らも受かったと思ってよ」

こうして待ってたんだ、と言いつつ上鳴を思いっきり抱き締めている。

 

「何故、直ぐ知らせなかった?」

 

上鳴の悲鳴を背景に、バージルが首を傾げている。

 

「どうせなら、教室で会いたくてな!」

 

こちらに拳を突き出し、豪快に笑う。

その下で上鳴が悶えている。

 

「だけど、お前ら3人ともA組でよ」

 

と残念そうに笑う鉄哲。

 

「まぁ、これから何かあったら宜しくな!」

「こちらこそ」

 

笑顔で手を振り、A組への道を歩いていく。

 

「良かったね。バージル」

 

隣を見れば、やはり知り合いが受かって嬉しかったのか。微妙に足取り軽く歩く彼の姿。

 

「全くだ」

 

撫でられるのが気持ちよくて、そのまま眼を細めて受け入れる。

 

「てか、教室遠くね?」

 

何時の間に復活したのか、上鳴がウチの横を歩いている。

 

「アンタ最近、復活早いな」

 

頭を撫でられるままに、片目で見れば何故か親指を立ててくる。

 

「電気くんが居ないと寂しいでしょ!」

 

聞かなきゃよかった。無駄に爽やかな笑顔が何か腹立つ。

 

「刺していい?」

 

ゆらりとジャックを向ければ、面白い様に表情が固まる。

 

「マジで止めて!?お前のそれ結構痛いんだからな!」

 

ギャアギャアと一人と騒ぐ上鳴を横目に、ウチとバージルは『1-A』と書かれた教室の前に立つ。

校舎も廊下も大きいと思ったが、扉まで大きいとは流石天下の雄英。

異形系の子のためだろうけど、こんなに大きな扉いるのだろうか?

 

「着いたぞ」

 

上鳴に一声をかけ、さっさと中に入ってしまう。

 

「じろーちゃん。どうせなら、一緒に入る?」

 

さりげなくこちらの肩に手を回してきたので、軽く睨むとこえーと小声で呟くのが聞こえてきた。

 

「あのね。誰にでもそういうことしないの」

 

この微チャラ男はホント。

扉を抜けると、席順は五十音順らしく、苗字が『蒼井』のバージルは出入り口直ぐだ。

 

「俺のモットーは『女の子に優しく』なの知ってるでしょ」

 

知ってる。いつもウチ等で遊んでる時、さりげなく席を譲ったり、扉を開けてくれてるのは分かってる。

モテるんだろうなぁ、とは思うけど。

 

「知ってるけど、上鳴に女の子扱いされるのは何か嫌」

 

大体、彼氏持ちにも優しいのは違うのでは?

席を探すと教室ど真ん中だった。しかも隣上鳴だし。

 

「何でよー。耳郎さんも可愛い女の子ですよ」

 

隣の席に腰を降ろしながら、だらしなく笑う。

アンタ、ウチのこと女の子扱いしたことないじゃん。

 

「バージルに叩かれても知らないよ」

 

小声で注意してやれば、あからさまに顔を青くしてバージルの方を見ている。

 

「どうした上鳴」

 

わざと聞こえない振りをしていたらしく、明らかに意地が悪い顔をした彼の姿。

 

「いやー俺も可愛い彼女欲しいなあって…」

 

思いまして、と段々声が小さくなる。

 

『頑張れ』

「やる気のない応援ありがと!」

 

いや、だってウチら関係ないし。

 

暫く暇潰しに話していると、段々教室の席が埋まってきた。

軽く見渡せば、女子の姿も何人か見つけることができた。

どんな子だろうか?仲良くはできるだろうか?

ウチが新しいクラスメイトのことを想像していると、後方から大声が聞こえてきた。

 

「机に足をかけるな!雄英の先輩方や机の製作者方に申し訳ないと思わないか⁉︎」

「思わねーよてめーどこ中だよ端役が!」

 

思わず振り返ると、髪が爆発したガラの悪い少年といかにも真面目といった風体の少年が言い争っていた。

 

「入試の時の真面目くんじゃん」

「一緒のクラスなんだ」

 

上鳴と二人揃って溜息を吐く。

真面目なのはいいことだ。大変素晴らしいことだと思う。

だけど、ウチは出来る限り自由でいたいと思う。雁字搦めはゴメンだ。

見てる間に眼鏡の、飯田?の話相手は、今来たばかりの野暮ったい天然パーマの少年に変わっていた。

 

あ、バージルの眉間に皺が寄った。

まあ、席の近くであんな大声で話されたら嫌だろうなぁ。

背中を見ていたら、バージルの肩が軽く跳ねた。

珍しいこともあるものだ、と思い視線を下にずらすと寝袋が居た。

思わず眼を擦り、もう一度見直す。

寝袋だ。何度見ても寝袋だ。

寝袋が動いたと思ったら人が出てきた。

上鳴も気付いたらしく、息を呑んだのが聞こえてきた。

暫くもぞもぞと動いたと思ったら、話始めた。

周りも気付いたのか教室は静まり返っている。

 

「ハイ静かになるまで8秒かかりました。時間は有限、君たちは合理性に欠くね」

 

はい?

 

「担任の相澤消太だ。よろしくね」

 

寝袋から担任が出てきたと思ったら、小汚いおっさんだった。帰りたい。

それから、寝袋から体操着を出し、手近に居た少年に手渡し。

 

「早速だがコレ着てグラウンドに出ろ」

 

 

 ◆◆◆

 

 

迫力にというか雰囲気に飲まれたのだろう、クラスの皆はそのまま大人しく体操着に着替えグラウンドに集合した。

 

周りが騒がしいが、要は個性ありで体力測定をするらしい。

…ウチの個性、身体能力関係ないんだけど。

 

隣を見れば、上鳴の顔色も悪い。

こいつも個性あんま関係ないもんなあ。 

反対に、バージルの方を見れば軽く体を解している。

いいなぁ。増強系の個性はこういう時有利で。

でも、ウチだって負けてられない!

除籍なんてされてたまるか!

 

ウチ的には順当に消化していき、何かハンドボール投げで一悶着あった。

何か緑谷?が個性を使って投げたと思ったら、個性が消えた。

先生が消したそうだ。そんな個性もあるのか。

てか、先生ホントにプロヒーローだったんすね。

失礼なことを考えていると眼が合った気がするので、そそくさとバージルの背中に隠れる。

 

今度は爆発頭?爆豪?が突っかかって、先生に拘束されてる。

 

「変わった個性だな」

「なー。自分の個性で怪我するって、キッツイよな」

 

アンタも使いすぎるとアホになるじゃん。

てか、このままの順位だと緑谷除籍になるな。

何となく不安になり、バージルに声をかける。

 

「ホントに除籍にすると思う?」

 

こちらに顔を向けて軽く頭を撫でてくれる。

 

「大丈夫だろう」

 

何でもないことの様に笑う彼の姿を見て少し安心する。

隣で上鳴が口笛を吹く真似をして、こちらを煽る。

…蹴りでもいれてやろうか。

 

そのまま全種目が終了し、先生の前に全員が不安そうに並ぶ。

いや、何人かは余裕そうにしてるな。ウチの隣の愛しい銀色とか。

握力測定で万力出したポニテとか、無表情紅白頭とかは特にそうだ。

 

結果が、中空に映し出される。自分の順位を探していると、

 

「ちなみに除籍はウソな」

 

はい?

 

「君らの最大限を引き出す合理的虚偽」

 

この先生、割といい性格している様だ。

こちらの反応を鼻で笑いながら、さっさと自分は説明を終えて帰っていく。

…これからの学校生活大丈夫だろうか?

 

 

 

 

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