ともだちひゃくにんできるかな 作:漢の娘
私は問いたい。
人は何を以てして人とするのかを。
学術的、生物学的に分けることは可能だが本当に一般に人間とされるものは人なのか。
例えば人と関わりを持たない者がいるとしよう。人は親や知人、周囲の人々など多くの人から情報を仕入れ成長していく。しかし人と関わりを直接持たない者はどうだろうか。感情は獣ですら持っているが、彼らにも仲間や親はいる。
では親も仲間もいない、孤独な人間は果たして人と呼べるのだろうか。命令されたことをただ遂行するだけの機械に成り下がっている【
その問いの答えを私には答えられなかった。
いや、自分自身の考えすら持っていなかったのかもしれない。
だからその問いを見つけるために学校へ行く。あの人がこの学校、【高度育成高等学校】に行けばわかると言っていたから私はこの学校へと足を踏み入れる。
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「綾小路という名前の生徒に気を付けなさい。今の彼は君にとって悪影響しか及ぼさないからね」
何故あの人は私に忠告をしたんだろうか。ただの普通の学校へ三年間通うだけというのに。
あの人の言うことだから何か意味があると熟考しようとしたが彼はやんわりと止めた。
あの人は今考えてもわからないだろうから考えなくていいといった。
そう言うなら私も気にすることではないと考え、覚えるだけに留めておいた。
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4月。入学式などがある出会いの月。
私は今学校に向かうバスの中、席に座らずに吊革を握り立つ。車窓からは次々と変わる景色を眺め目的地まで着くのを待っていた。
優先席は空いていたが、何を基準として譲るのかわからなかったため空けておいた。優先席は身体に不全があるもの、妊婦、老人に優先をお願いすると書いてあったが、老人はいくつから老人扱いなのか、身体不全が有るものというのは軽い症状でも優先するのか、妊婦といっても、たった数か月程度の相手にも譲るべきなのか分からなかった。
もしもそれらに該当する者が乗ってきたときに譲る判断がつかないから私は座らないようにしておいた。
とあるバス停に着いたときに一人の男が乗ってきた。その男は屈強な身体をしている金髪の若い男性だった。私と同じ学校の指定された制服を着ていることから同級生だということが分かった。その男は数人ほど立っている乗客がいるため、同調し立つかと思えば、周りを意にも介さず真っ先に優先席へ座った。2つほど座る空間があったが彼は2つと使うようにどっしりと座り、自分の手入れを始めた。
景色が移ろい続け老婆が乗ってきた。そのころには車内はサラリーマンや私と同じ学生が多くいたため、老婆には座れなければ身体に負担がかかるだろうなと考えた。その老婆は杖も突いていたので自力で歩くことは困難だと考えられる。ましてや揺れるバスの中では立つことさえ難しいだろう。老婆が乗ってきたことで多少詰めるようにして老婆に優先席への道を空けた。しかし優先席には妊婦と思われる子連れの女性と、先ほどの金髪の若い男性が座っていた。老婆は何も気にすることなく手すりに摑まり立っていた。
バスが揺れる。老婆も少し姿勢を崩したようで周囲の乗客にぶつかり謝罪していた。いつまで経っても譲らない青年に痺れを切らしたのかOL風の女性は
「席を譲ってあげようって思わないの?」
と青年に注意した。青年は意にも介さず不敵な微笑を浮かべ続ける。
「そこの君、お
OL風の女性は彼に優先席を譲ってほしいと考えているようだ。静かな車内では彼女の声はよく通り、自然と注目が集まる。
「実にクレイジーな質問だね、レディー。
何故この私が、老婆に席を譲らなければならないんだい?どこにも理由はないが」
女性は反論する。
「君が座っている席は優先席よ。お年寄りに譲るのは当然でしょう?」
だがその反論には穴がある。その青年のことを詳しく知らないため、持病がある可能性がある。だが青年はそんなことよりも自分の感性による反論を始める。
「理解できないねぇ。優先席は優先席であって、法的な義務はどこにも存在しない。この場を動くかどうか、それは今現在この席を有している私が判断することなのだよ。」
青年の反論は正論であり、暴論であった。
「若者だから席を譲る?ははは、実にナンセンスな考え方だ。私は健全な若者だ。確かに、立つことに然程の不自由は感じない。しかし、座っている時よりも体力を消耗することは明らかだ。意味もなく無益なことをするつもりにはなれないねぇ。それとも、チップを弾んでくれるとでも言うのかな?」
女性はムキになって
「そ、それが目上の人に対する人の態度!?」
感情だけで反論してしまった。これでもう青年の言い分が正しいことは決定してしまった。
女性はさらに反論され、遂には
「も、もういいですから.....」
と老婆に言われてしまった。しかし女性に対しては称賛をあげるべきだろう。老婆が不自由でいるのに気づいていない人物は車内にはほとんどいないだろう。
しかし彼女は勇敢にも青年に進言したのだ。例え、その時に年上だから意見を聞くだろうと思っていたとしてもその行動は、車内の誰にも出来なかったことなのだから。
女性は悔しそうに涙を堪えながら、「すいません.... 」と老婆へ謝罪をする。これだけで彼女は善意の行動であったことがわかる。不憫に思いながらもこの論争は青年の勝ちである。
しかし、そこに待ったの一手が入った。
「あの.......私も、お姉さんの言うとおりだと思うな。」
私と同じ制服を着ている可憐ながらも朗らかな雰囲気を持つ少女だった。青年も無視はせず相手のことを見る。
「今度はプリティーガールか。どうやら今日の私は思いのほか女性運があるらしい」
またもや始まった青年との論争。車内の注意が青年に集まる。
「お婆さん、さっきからずっと辛そうにしているみたいなの。席をゆずってあげてもらえないかな?その、余計なお世話かもしれないけれど、社会貢献になると思うの」
今度ははっきりとした立つことによるメリットを掲示した。
「社会貢献か。なるほど、中々面白い意見だ。確かにお年寄りに席を譲ることは、社会貢献の一環かもしれない。しかし残念ながら私は社会貢献に興味がないんだ。私はただ自分が満足できればそれでいいと思っている。」
しかし、青年にとってのメリットにはなり得なかったようだ。
「それともう一つ。このように我関せずと居座り黙り込んでいる者たちは放っておいていいのかい?お年寄りを大切に思う心があるのなら、そこには優先席か優先席でないなど、些細な問題でしかないと思うのだがね」
静かなバスの車内で青年の声はよく通る。
「皆さん、どなたか席を譲ってもらえないでしょうか?誰でもいいんです、お願いします」
この発言によって今まで無関係であった者たちも土俵に挙げられてしまった。
先ほど青年が言った通り、優先席かそうでないかなど些細な問題でしかない。
だが青年の話は彼らにも当てはまる。今の日本社会で善意による社会貢献などどれほどあるのだろうか。先ほど彼が言ったように乗客もメリットを考え、静観することに決めたのだ。
現に絶対に譲る気がないであろう人物が一人いた。他の者たちも譲ってあげようか悩んでいるみたいだが、そこはあくまで普通席。普通席の割合が圧倒的に多い中で誰かが譲ってあげるだろうと考え、周りを見渡している人たちもいた。
「あ、あの、どうぞっ」
少女の訴えから程なくして、一人の女性が立ち上がる。老婆の比較的近くにいた彼女は、居た堪れなくなったのか席を譲った。その女性に対して「ありがとうございますっ!」と少女は礼を告げた。老婆も何度も感謝しながらその席に座った。そしてまた、車内は静かになった。
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私は今自分のクラスへと向かっている。
私のクラスはDクラスだそうだ。教室の中を見る限り半分ほどの生徒はすでに入室していた。
教室の中はフローリングなどもなく、近代的な印象やビルの会議室を思わせる作りとなっていた。監視カメラもあるため教室内では安全に過ごせそうだ。監視カメラのような証拠がないといじめられたときに怖いからな。常にボイスレコーダーを使うわけにもいかないし、取られた時のリスクもある。だから監視カメラがあるというのは常に相手に対する脅しとなる。
自分は対人関係を入学する一か月前から練習していたが、そのある程度の関係の持ち込み方は人それぞれだと言われ練習できていない。
つまり、私は過程や結果のみを知っており始め方はわからないのだ。人というのは千差万別、話すのが好きという人もいれば、人と関わりたくないという人もいる。
そのため人と関わりを持つというのは難しいのだ。講師の一人は自分の思うままに行動すればいいと言われたが、自分には理解ができない。自分の思うままに行動するというのはリスクがあることだ。
例えば話すのが苦手な人物に積極的に話しかけたとしよう。その人物は過去に人間関係で不利益を被り心理的障害を患っている可能性があり、無遠慮に話しかけてくる初対面の相手というのはストレスを感じるかもしれない。
だから初対面の人に話しかける際は気を付けなくてはいけない。
しかし私はあの人に成長した姿を見せたいため、友人関係の構築に積極的に努めよう。
女子はグループというものを作って自分たちだけのコミュニティーを作り、外敵を威圧しあうらしい。
そのため私もできるであろうグループに属する必要がある。まだ半数ほどしか来てないため判断はできないが、先ほどのバスの一件に口を挟んだ女と、浮足立つこともなく自分だけの空間を作っている女子生徒のどちらかに入るべきだろうか。友人をたくさん作りたいならバス女子、親密な関係を築きたいならボッチ女子だろうか。
他はリーダーになれそうなものはいない。可能性から除外していたが、男女混同グループもできるかもしれないため、クラス内の動きには目をはらしておこう。
どうやら人数が揃ってきたみたいだ。あのボッチ女子も隣の席の男と会話している。
数分ほどたち始業のチャイムが鳴る。
ほぼ同時にスーツを着た一人の女性が入ってきた。
「えー新入生諸君。私はDクラスを担当することになった茶柱佐枝だ。普段は日本史を担当している」
どうやら担任という先生は少し不愛想のように見える。
「この学校にはクラス替えが存在しない。卒業までの3年間、私が担任としてお前たち全員と学ぶことになると思う」
クラスは変わらないのか......これは何としてでも友人関係を作らなくてはいけないな。もし作れなかったら3年間の青春というものが良い思い出として残ることはないらしい。クラス外では部活や生徒会以外では関係を持つことが難しいらしい。当初は入らないことに決めていたがどうやら再考の必要がありそうだ。
「___この学校の特殊なルールについて書かれた資料を配布する。以前入学案内と一緒に配布はしてあるがな」
前の席から渡された資料、それには様々なルールが書いてある。
・学校に通う生徒全員に敷地内にある寮での学校生活を義務付ける
・在学中は特例を除き外部との連絡を一切禁じる
・学校側の許可なく外部と連絡を取ること、学校の敷地外から出ることを禁じる
・本学校はSシステムを導入している
私はあの人と話すことが出来なくなってしまうのか......入学前から覚悟していたことだが本当に私一人で生活できるのだろうか。担任の話は続き
「今から配る学生証カード。それを使い、敷地内にあるすべての施設を利用したり、売店などで商品を購入出来るようになっている。クレジットカードのようなものだな。ただしポイントを消費することになるので注意が必要だ。学校内においてこのポイントで買えないものはない。学校の敷地内にあるものなら、何でも購入可能だ」
学校の敷地内にあるものを何でも購入できる.....ということは土地も買えたりするのだろうか。土地を買ってしまえば自分だけの領地となり、勝手に入ってきた人物を不法侵入で訴える。なかなかいいのではないか.... そうすれば示談金や賠償金で10万円以下の罰金で10万円に当たるポイントを得ることが出来るのだろうか。まぁ仮定の話だから今は説明を聞くか。
「施設では機会にこの学生証を通すか、掲示することで使用可能だ。使い方はシンプルだから迷うことはないだろう。それからポイントは毎月1日に振り込まれることになっている。お前たち全員、平等に10万ポイントが既に支給されているはずだ。なお、1ポイントにつき1円の価値がある。それ以上の説明は不要だろう」
教室の中はざわついた。
入学してきた自分たち高校生に月10万は多いだろう。毎月1日に振り込まれるらしいが、光熱費などは学校が負担してくれるため基本的に食費のみで考えられる。その他にも生理用品や生活必需品などを考えて、4万ほどで生活は可能だろう。切り詰めていけば二万ほどで生活できるかもしれない。普通の学校生活を送る分には確かに多い数字だろう、10万円は。
私だったら何を買おうか.....この敷地内にはドールは売っているだろうか。あの人が私にくれたドールは持ってこれなかった。どうやら荷物は指定の大きさの箱1個分しか私物をもっていけないらしく、私のドールを入れると一杯になるので泣く泣く諦めたのだ。その代わりあの人がくれた小物は全部持ってきた。ヘアピンやシュシュ、ナイフに小さなぬいぐるみと、様々なものをいれた。早く寮へ向かって荷物の整理をしたいが今は学校のことを知ることが優先だ。
「ポイントの支給額の多さに驚いたか?この学校は実力で生徒を測る。入学を果たしたお前たちには、それだけの価値と可能性がある。そのことに対する評価みたいなものだ。遠慮することなく使え。ただし、このポイントは_____」
担任である茶柱先生の言ったことをまとめると、この学校は実力で測っており入学をしたことに対する評価が10万ポイント。毎月1日にポイントは振り込まれる。これは毎月10万なのだろうか?毎月10万では私が買いたいものが買えないかもしれない。しばらくは節約した方が良さそうだ。
「質問は無いようだな。では良い学生を送ってくれたまえ」
茶柱先生が教室から去ったあと教室では10万ポイントという金額の多さに驚いているようだ。私も少なからず驚いている。すぐに買い物に誘えるような相手が既にいることだ。教室内では放課後に買い物に行くことを約束している者もいれば隣同士で会話している男女も見られる。まずい、行動しなくては
「皆、少し話を聞いて貰っていいかな?」
ある男子が全員に話しかけた。教室は少し静かになるとその男子は話し始めた。
「僕らは今日から同じクラスで過ごすことになる。だから今から自発的に自己紹介を行って、一日も早く皆が友達になれたらと思うんだ。入学式まで時間あるし、どうかな?」
うれしいことに友達になる機会をくれるみたいだ。よし、彼とは友達になろう。
1人が賛成の意思を示し、迷っていた生徒が後に続いて賛成する。
初めはさっきの男子から始めるらしい。
「僕の名前は平田洋介。中学では普通に洋介って呼ばれることが多かったから、気軽に下の名前で呼んでほしい。趣味はスポーツ全般だけど、特にサッカーが好きで、この学校でも、サッカーをするつもりなんだ。よろしく」
ありがとう洋介、君の模範的自己紹介のおかげで私も自己紹介が出来そうだ。洋介とは是非とも友達になりたいな。
洋介の提案により端から自己紹介を行うことになった。
「わ、私は、井の頭,こ、こ_____っ」
どうやらこの女子生徒は緊張したのか、次の言葉が出ないようだ。
クラスメイトからも「がんばれ~」「慌てなくても大丈夫だよ」と優しい言葉が飛んでくる。
しかし逆効果だったのかさらに言葉が出にくくなっている様子だ。
「ゆっくりでいいよ、慌てないで」
そんな言葉は彼女の緊張をほぐした。 彼女は意を決し
「私は井の頭…心といいます。えと趣味は裁縫とか、編み物が得意です。よ、よろしくお願いします」
この子は裁縫が得意なのか、私は人形が好きだから彼女と仲良くできるかもしれない、後で話しかけよう。
「俺は山内春樹_____」
どうやら私はこの男子生徒が苦手らしい。彼の話し方は知り合いの詐欺師を思い出させるからか、彼の話しを聞いてるだけで鳥肌が立ってくる。できれば彼とも仲良くしたいが私は嫌悪感を払拭できるだろうか。3年間同じクラスだから何とかしないとな。「じゃあ次は私だねっ」次はバス女子のようなので彼のことは置いておこう。
「私は櫛田桔梗といいます。中学からの友達は1人もこの学校には進学してないので1人ぼっちです。だから早く顔と名前を憶えて、友達になりたいって思ってます。私の最初の目標として、ここにいる全員と仲良くなりたいです。皆の自己紹介が終わったら、是非私と連絡先を交換してください。それから放課後や休日はいろんな人と沢山遊んで、沢山思い出を作りたいので、どんどん誘ってください」
彼女はこの場にいる全員と友達になりたいらしい。私とも仲良くしてくれるのだろうか、自己紹介が終わったら真っ先に連絡先を交換しにいこう。だけど全員と友達なんて大きな目標を立てるなぁ。このクラスにはボッチ女子と金髪の青年がいるからできないと思うが.......
そんなこんなで自己紹介が続く。「じゃあ次____」と促す洋介を睨む赤髪の男がいた。その生徒は気に入らなかったようでイライラしながら教室を出て行った。他にも数名が後を続くように出て行く。ボッチ女子もその中の1人だった。
多少アクシデントがあったが自己紹介は続く。金髪の青年の順番となったが自由に自分の手入れをしている様子から腰を低くして
「あの、自己紹介をお願いできるかな___?」
「フッ。いいだろう、私の名前は高円寺六助。高円寺コンツェルンの一人息子にして、いずれはこの日本社会を背負って立つ人間となる男だ。以後お見知りおきを、小さなレディーたち」
そんなことを考えていると私の番になった。
さてどうするべきだろうか。私の情報は仕事柄、守秘義務が生じる。守秘義務といっても私のことを知っている可能性があるのは高円寺六助くらいだろうから気にしなくていいのだが、自分の情報を知っている可能性がある相手がいるというのはいささか居心地が悪い。私の仕事はどんな特技でも仕事に役立つ可能性があるため、様々な技は得とくしている。だから特技については話せない。やはりここはバス女子のように目標について話すべきか。目標は何にしようか。私の当初の目標は友達を作ることだった。ならば目標もバス女子と同じようなものでいいのではないか、特色がないかもしれないが私はそもそも個性というものを持っていない。ならば____
「__あの、大丈夫かい?無理して自己紹介をしなくてもいいんだよ」
どうやら考えすぎていたようだ。いけない洋介に心配させてしまった。
「大丈夫、洋介。私は
以上だ」
そんな私を見つめる視線が少し痛かった。
オリ主設定
140cmの少女
顔も一般的に整っている部類に当たる
ひんぬー
学校側からの能力評価いりますか?
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