ポケットモンスターXY~あなたへ贈る百日草~   作:黒助2号

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第22話 サーチガルド

 

 

1

 

「なんでオレの名前……?」

「トモダチがキミのことをボクに教えてくれたんだ」

「トモダチ?」

「ボクはポケモンのことをそう呼んでいるんだよ」

「おかしなことを言いますね。それじゃあ、まるでポケモンと会話が成立している様に聞こえますよ」

「ああ、話しているよ。……そうか。キミにも聞こえないのだね。やはりヒトにはトモダチの声が聞こえないのが普通みたいだ。可哀そうに」

 

電波!?

 

失礼ながら、アトリがNに下した評価だった。ポケモンの声が聞こえるなど、イッちゃっているお方から逃げるべきか、滅多と食べられない豪華な朝食を優先するべきか。

天秤はしばらく左右に揺れ動いていたが、食い意地には勝てなかった。

 

キッシュを一口齧って咀嚼する。目頭が熱くなった。流石は食文化に関しては一家言あるカロス地方。美味すぎる。

雑ではない食事はいい。最高である。

 

「アトリ、キミには夢があるかい?」

「ん? まあ……、一応」

 

食べ終わったアトリはコーヒーを飲みながら答える。

借金の完済。プロのポケモントレーナーとしての成功。

どちらかと言えば実現させるべき目標だが、確かに『夢』という定義に当てはまるのかもしれない。

 

「そうか……。ボクにも、夢があったんだ。……ダレにもみえないものがみたかった。ボールの中のポケモンたちの理想、トレーナーという在り方の真実、そしてポケモンが完全となった未来……。そんな未来を夢見て突き進んできたけど、それは間違っていたようなんだ……。認めたくない事に蓋をして、誰を傷つけても構わず走り続けてきた。ポケモン達のシアワセ、そんな大義名分を振りかざして間違った数式を強引に世界に当てはめようとした。ただ、間違いを間違いと認めるだけで良かったのに……」

「へー、そうなんだー」

 

言葉を選んだ返事をしながら早口で一方的にまくしたてるNに冷ややかな視線を送る。

会話のキャッチボールというより、会話の千本ノックといったところだろうか。

彼は人と話すことに慣れていないのか。それとも電波系特有の会話が成立しないアレな人なのか。

いずれにしても厄介なのに捕まってしまった。

食事を終えて膝に乗ってきたロコンを抱き上げる。

ムックル、モココ、ケロマツ、ハッサムが食事を終わらせたのを確認すると、ロコン以外の手持ちをモンスターボールに戻して席を立った。

 

「もう行くのかい?」

「すみませんが、この後大事な予定が控えているのでこの辺で失礼させて頂きます」

 

足早にカフェを出て、路地裏の入り口に立つ。華やかな表通りからはかけ離れた雰囲気を察知してアトリの表情が硬くなる。ここから先は一切の油断が許されない。優位になると油断してしまう悪癖のあるアトリは自分を強く戒めた。

 

「ここに用があるのかい?」

「って、なんで着いてきてるんですか」

「キミに頼みたいことがあるんだ」

「入信はしませんし、怪しい壺もいりませんよ。押し売りお断り!」

「? なんの話だい?」

「あー、いや。違うなら別にいいんです」

 

キャッチセールスや怪しい新興宗教の勧誘ならタイキックだ。密かにそう決心していたアトリは一安心。ホッと胸を撫で下ろした。

 

アトリ以外の人間にあまり懐かないロコンがNの指をペロリと舐めた。

Nはロコンを抱き上げて、額を合わせる。

 

「キミは……、そうか。キミも――――、うん……。――――キミは今、幸せなんだね?優しいヒトに巡り合えたみたいで、本当によかった……」

 

宇宙と交信中……!?

 

突然始まったNの奇行に普段のアトリならば突っ込みをいれているだろうが、なんとなく彼に対しては恐れ多くて強気に出られない。

 

人間のマイナスな匂いに敏感なロコンが撫でるのを許容しているので、悪い人間ではなさそうなのだが、特別関わりたいとも思わない人種だ。

 

薄暗い路地裏へ踏み入って周りを探る。周りを見渡してもさして変わったところがあるわけではない。ロコンに匂いを辿らせても成果は芳しくなかった。

 

「やっぱ初っ端から当たり引くなんてそう都合よくはいかねえか……」

 

あの女性の話を鑑みるに何かが起こるとしても夜だろう。それまで釣りでもやってみようか。そんなことを考えていたが、

 

「さっきまでこの周辺に怪しいヒトがうろついているのは間違いないみたいだよ。まだ近くにいるんじゃないかな」

 

Nはそう断ずる。アトリは再び路地裏を見渡した。

やはり何処にも怪しい箇所は見当たらない。

 

「その根拠は?」

「あの子たちに聞いた」

 

指さした先に居たのは屋根の上にとまっていたのは2匹のヤヤコマである。

 

「あー、うん……」

 

Nの不思議ちゃん発言にどうリアクションをとったものかと、思案するも構わず彼は更に早口で捲し立てる。

 

「グレーゾーンが真っ白、というのは逆に腑に落ちない。物事は完璧であればあるほどに作り物だと宣言しているようなものだ。潔白というのは人が作り出すものだからね。とすれば、この『怪しさの欠片もない場所』っていうのは偽装によるものだと考えられる。

偽装を行う理由はただ一つ。見られたら困るものがある、ということだ」

「うーん……」

 

アトリは再び思案する。

『ポケモンの声が聞こえる』というNの電波な主張に信憑性があるかどうかはさて置き、彼の展開するロジック自体は理に適ったものだ。それを鑑みて、この周辺を探ってみる価値はあるかもしれない。

 

不意に上空のヤヤコマがけたたましく鳴き始めた。

 

「アトリ、こっちに誰か来るらしいよ」

「……隠れて様子を見ましょう」

 

二人と一匹は道端に放置してあった空っぽのゴミ箱に身を隠して外の様子を伺った。

路地裏に現れたのは青い繋ぎ姿の金髪に眼鏡が特徴の少年だった。年齢はアトリと同じか、少し下くらいであろうか。

身の丈ほどの怪しげな機械を抱えて、マッドサイエンティストを思わせるような邪悪な笑みを浮かべている。そしてやたらと息が荒い。

不審人物のテンプレートともいえる人物が現れたことで警戒のレベルを最大まで押し上げた。

 

それとほぼ同時に、ビー! ビー! ビー! と、金髪眼鏡の少年が持っている機械が鳴り始める。

 

「誰かいますね?」

 

あからさまに敵意に満ちた口調で言い放たれ、アトリはロコンに目配せをする。

それに応えるようにロコンは腹の中の炉を燃やし始めた。

ここで立ち回りを演じるのは避けたいが、こうなってしまった以上、見つかるのは時間の問題だ。幸いあの少年はまだ此方の詳しい位置は把握していない。

今なら奇襲が成立する。

あの彼が如何に使い手だろうと、機先を制すれば主導権を握ることは出来る筈だ。

 

だが、敵もさる者。

金髪眼鏡の少年も既にモンスターボールに手をかけ、臨戦態勢に入っている。自分が不利な状況に置かれていることを理解しているからこそ、油断も隙も一切見せない。

 

現状把握が上手いトレーナーは総じて強い。先制の利があろうとも、一撃で仕留めるくらいの気概で挑まなければ返り討ちにあうだろう。

迂闊な先制攻撃は出来ない。

少年も闇雲に動けば即座にやられることをわかっているからこそ迂闊に動けない。

 

勝負は一瞬。

両者の間に切迫した空気が流れる。

数時間にも匹敵する数秒間――――その緊迫を破ったのは意外な人物だった。

 

 

「シトロンさ~ん!」

 

手を振りながら元気に駆けてくる元気印の少女を見て警戒心が一気に吹き飛んだ。

 

「って、お前の知り合いかよッ!!」

「「ぎゃああああああああああああああああああああああ!!」」

 

ゴミ箱の中から突如、姿を現したアトリにサナとシトロンは腰を抜かすほど驚いたのであった。

 

2

 

流石に現場で一悶着はまずい為、路地裏から少し離れた場所で仕切りなおした。

 

「この人はシトロンさん。サナの友達なんだよ!」

「フワ・アトリです。よろしく」

「よろしくお願いします」

「シトロンさんはね、カロス地方の最年少のジムリーダーの記録を塗り替えたトレーナーでミアレシティでは『10年に1人の天才児』っていって有名なんだよ」

「ジムリーダーでしたか。道理で只者じゃないと思いましたよ」

「い、いえ。それほどでも。アトリさんもあのフラダリラボから声がかかるほどの強いトレーナーだってサナさんから聞いてますよ」

「ジムリーダーに無名の木端トレーナーの名前を憶えていただいて恐悦至極です」

 

握手を交わす。

慇懃な言葉や穏やかな笑顔とは裏腹に、『ジムリーダー』であるシトロンに向ける眼差しは野心に満ち満ちている。カロス地方のジムリーダーとして新参者であるシトロンだが、

これは挑戦者の眼だ。彼とのバトルは恐らく相当タフな展開となるだろう。

 

 

「それであっちのイケメンは?」

 

少し距離をとったところにいるNをサナが気にしている。

社交性の高いサナですら声をかけるのを躊躇うほどの人を拒絶する壁の様なものを感じる。

肩を竦めて苦笑する。意外に人見知りするタイプの様だ。

 

「あっちはN。さっき知りあった。言動は多少不思議ちゃんだけどよ、割といい奴だから大丈夫だよ」

 

『割といい奴』。無意識のうちにでたNへの評価に自分自身驚いた。

どうやらアトリは知らないうちにNへ好感情を持っていたらしい。

 

「サナさんの話では不良みたいな人を想像していたのですが、思っていたより普通な人で安心しました」

「テメエ、ゴラ……! オレについて何を吹き込みやがった?」

「あ、あはは。気にしないーい!」

 

サナに対してヤンキーモード全開でメンチをきるアトリに密かに前言を撤回する。

 

「ところでアトリさんは何故ここに? 今、ミアレシティの路地裏は治安が悪いから地元民はあまり近寄らないのですが……」

「治安を乱している元凶に用があるんだよ」

「もしかして貴方も?」

「『も』ってことはアンタも?」

「はい。僕はミアレシティのジムリーダーですから。このミアレシティの平和を守る義務がありますから」

「サナはお手伝い。アトリはどうして?」

 

少し考え込む仕草を見せたが、すぐに正直に話すことを決めた。

サナも同じ目的である以上、目的をオープンにして情報を共有してしまった方がいいだろう。その上天下のジムリーダーが味方に付いてくれるなら、アトリとしても心強い。

 

「生徒のポケモンが盗まれてな。……取り戻してやりたいんだ」

「じゃあ、アトリは生徒のために?」

「よせやい、そんなんじゃねえよ。メソメソして不登校になられたら、オレの仕事での評価が下がっちまうだろ?」

「うん、わかった!」

 

サナのいい返事をする。そして、続けてこう言った。

 

「アトリはツンデレなんだね!」

「全然わかってねえじゃねえか」

 

裏手でツッコミを入れる。

人の行動を好意的に見るのはサナの美徳なのだが、それ故にどちらかと言えば胸に一物ある言動の多いアトリとは噛み合わないのであろう

 

「手掛かりはあるんですか?」

「ここで妙な噂を聞いたからとりあえずここから潰していこうと思って。最悪、襲ってくる奴を釣って片っ端から潰していけば、適当なところで手がかりくらい掴めるだろ? うまくいけば本命が出てくるかもしれないし」

「すごーい! アトリ、頭いいね!」

「だろ? もっと褒め称えてくれてもいいぞ」

 

感嘆するサナを他所にシトロンは思わず苦笑い。

慈しみに満ちた視線がアトリに集まる。優しさからかその場にいた誰も「頭が悪すぎる」とは指摘しなかった。バカな子ほど可愛いとはよく言ったものである。

 

「懸賞金目当てじゃなくて生徒のためなんだね。私、アトリのことを見直しちゃったよ」

「懸賞金?」

「昨日、事態を重く見たミアレ警察がポケモン強盗に懸賞金をかけたのですよ。犯人逮捕に貢献すれば200万、有力な情報の提供だけでも20万の賞金が出るそうです」

 

サナの言葉を補足するようにシトロンが説明する。アトリはキラキラした笑みを浮かべた。

 

「テンション上がってキターッ!」

 

突如三次元で荒ぶるキャプションを披露し始めたアトリに3人は激しく動揺した。

 

「か、彼は一体どうしちゃったんですか?」

「アトリはお金が大好きなの」

「金が嫌いな奴がいるか! しかも200万っつったらオレの半年分の給料じゃねーか! サービス残業が200万の大仕事に化けるなんてホアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!! ハッスル失礼!」

「嬉しそうだね」

「嬉しいなんてモンじゃねー! テンション上がりすぎて軽く全裸になれるレベルだ!」

「それ、やったら通報しちゃうからね♪」

「HAHAHAHAHAHA! イッツシンオウジョークさ、サニーちゃん♪」

 

テンション鰻登りでとてもうざいアトリを見てNとロコンは深いため息をついた。

 

「ねえ、真顔で聞くよ。キミのトレーナーは本当に大丈夫なのかい?」

 

――大丈夫。アトリの良いところは全く別のところにあるから。

 

「さて、そうと決まれば善は急げ。さっさとそいつらボコって、捕まえて、市中引き回しにした上で打ち首獄門に処してしまおう」

「そうですね。それではまず、炙り出しから始めましょうか。では、ちょっと失礼して……今こそ! サイエンスが未来を切り開くとき!!」

 

眼鏡が怪しく光り、マッドでクレイジーな笑みを浮かべたシトロンは大掛かりな機械を作動させた。

 

「なんだ、それ?」

「よくぞ聞いてくれました! 名付けて電波キャッチマシーン! 特殊な音波を飛ばして人間やポケモンの持つ微弱な電波をキャッチして解析、サーモグラフィーとして表示することによってソナーの役割をはたします。他にも人間の息遣いを検知するほか、心臓の鼓動をチェックしたり、さらには人のストレスレベルも監視したりできる。壁の向こうにいる人を検知するよう設計できるという優れものなのです!!」

 

あからさまに怪しい物体を得意げに語るシトロンを見てアトリは急激に不安になった。

 

「……ホントに大丈夫なのか?」

「だいじょーぶ! シトロンさんは発明家としても有名なんだから」

「なら、いいけどよ」

 

早速現場に戻り、センサーを起動させる。……反応はなかった。

 

「反応ありません。どうやらここはハズレのようですね」

「そっかー……。それじゃあまた情報収集からやり直しだね」

「いや、待て」

 

踵を返そうとするシトロンとサナをアトリは制止した。

Nの言葉を信じるわけではないが、どうにも引っかかる。

 

「なにをするつもりだい?」

「まあ、見てろって」

 

Nに軽くそう言うと、アトリは這いつくばって石畳に耳をつけた。そして――

 

「「うっ……!」」

 

シトロンとサナはほぼ同時に顔をしかめた。

シャカシャカ――シャカシャカシャカ、と地面や壁を這い回っているのである。

 

その有り様は匍匐前進というよりも、まるで夏場に出撃しては人々を恐怖のどん底に陥れる黒い彗星Gのようだ。

 

3分ほど続けて、アトリは立ち上がった。

 

「地下、だな……」

「どうしてそう言いきれるんですか?」

 

確かにセンサーとて万能ではない。生体反応を消しさる技術で偽装されてしまえば、たちまちセンサーは役立たずと化してしまう。だが、根拠がない以上、それは可能性の低い憶測の域をでない。

にも、関わらずアトリは確信を持った様に言う。

 

「聞き取れるか、聞き取れないかのレベルだけどよ……、小銭の音がした」

 

シトロンの疑問にアトリはあっけらかんと答えた。

 

「どんだけ~……」

 

突っ込み所が多すぎて、何処から突っ込んだらいいのかわからないシトロンは使えば必ず突っ込みとして機能する言葉を発することで精一杯だった。

 

「え~、当てになるの?」

 

アトリの提示した胡散臭い根拠にサナはうろんげな眼差しを向ける。

 

「舐めるな。オレがその気になれば3㎞先の小銭の音すらも聞き分けられる。それに関してだけはセンサーよりも高い精度を叩きだせる自負がありますとも、はい」

「ブレないよね、その守銭奴っぷり」

「誉め言葉として受け取っておこうか。ちなみにお前の所持している小銭は568円」

 

サナは無言で財布を開けて小銭の額を数える。ドンピシャだった。

 

「怖いよ、アトリ! すごいじゃなくて怖い!」

 

戦々恐々としてするサナを無視して再び意識を集中して聞き耳を立てる。

 

「ここだな」

 

設置してあったダストボックスを退けると、いかにもな隠し階段が見つかった。

 

「さて、いよいよ突撃だ。レイディースエンジェントルメン、アンドおとっつぁんおっかさん。準備はいいか?」

「アトリさんっていくつなんですか?」

「ぴっちぴちのの16歳だけど、なにか?」

「いいえ、なんでも」

 

アトリの年齢詐称疑惑をとりあえず脇に置いておいて、シトロンの表情は真剣なものに変わる。

 

「隊列は僕が先頭、次にサナさん。Nさん、アトリさんは脇と後ろを固めてもらいます。

 

シトロンとサナは静かに、それでいて速やかに隠し階段に足を踏み入れる。

アトリもその後に続こうするが、

 

「来ないのか?」

 

石の様な表情のまま動かないNに気づき呼びかける。

 

「ヒトは愚かだ……。なんで一緒に生きているトモダチの痛みが理解できないのだろう……? ボクにはそれが腹立たしくて仕方がない……」

「いつだってそういう馬鹿はいる。それが現実って奴だ」

「何も思わないのかい?」

「思わないわけじゃないが、世の中の人間、誰もがポケモンの事を慮っているわけじゃない。奴らには罪の意識はないだろうさ。ただ、自分の利になり、それが出来るからやっているだけだろうよ」

「それはニンゲンのエゴだ。そんな理屈に振り回されて、一体どれだけのトモダチが傷つけられた? ボクにはそれが許せない」

「…………そうだな」

 

Nの真摯な糾弾を斜に構えずに受け止めた。

それと同時に、Nに対して尊敬の念を抱く。

アトリは余程の理由がなければ、間違っていると思ったものに噛みつかずに日和ってしまう。薄情とも言えるだろう。

それが出来るNは根が純粋なのだろう。間違っていると思ったものに対して真っ直ぐに怒りをぶつけられる。それは一種の才能だ。アトリにはできない。

 

「安心していい。人間でも、ポケモンでも、自分の都合だけしか考えていない奴はいつか必ず痛い目を見るから」

 

Nの言葉に背中を押されるように、再び諍う覚悟を決める。

アトリの言う『いつか』は今日だ。

奴らの所為でジョゼットは傷つけられて泣いている。

奴らには教えてやらなければならない。世の中には自分の都合だけで済むことなど、何一つないということ。

そして――――やったら、必ずやり返されるという事を。

 

「利息は高いぞ。3倍返しだ」

 

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