そうです。今日は3/14 264時58分。
つまりホワイトデーです。
なんとか間に合いましたね。
一日の始まりを象徴する朝の時間帯。
基地の外では遠征から帰ってきた人形達の乗ったヘリコプターのローター音に整備員達のかけ声、朝からトレーニングに励む人員達の声が響く、いつもと変わらぬ朝の様相。
代わり映えのない朝の雑音が閉じられた窓越しに流れ込む中、自室で佇む戦術人形が一人。月の光を束ね編み込んだような銀色の長髪に瞳を閉じて尚整った顔立ちの神秘的な女性、否人形であるAK-12。
彼女の瞼は平時と変わらず閉ざされ、一見すると眠りに落ちているように思えるが、
「うーん」
彼女が腕を組み、眉を寄せて唸っている事から彼女が眠っている事は簡単に否定できる。
何故、彼女が唸っているのか?
高度な演算能力を持つ彼女なら簡単な予測から『答え』に辿り着くのだって容易にできるはず。
それが出来ないのは、その答えは客観的な事実に基づいて出される推論ではなく、自発的に出してこそ『答え』となる行動が必要となっているからだ。
要は、彼女は自分がしたことの後始末の仕方を考えているのだ。それも、ほぼ毎日のように。
では、彼女のしたこととはなんだろうか?
AN-94を揶揄ったことか?それとも、指揮官に過度な弄りや悪戯をしたことか?
前者は恐らく彼女が反省する事はまずないだろう。
AK-12は他の誰より、AN-94の自立を願っている。どんな言葉や冗談であれ、彼女が自分から考え行動する事が出来ることを望んでいる。
それ故に、彼女の反応を引き出すための行動は反省する理由がまず存在しない。
自分で考え行動するようになる。『自分』を見つけて貰うのが、AN-94に課したAK-12からの大きな課題だ。
次に指揮官への悪戯だが、これも反省する事はないだろう。
AK-12は戦術人形の中では数少ない人間に『深い興味』がある戦術人形だ。
同じように興味がある戦術人形は彼女と製作者を同じくするRPK-16が居るのだが、彼女とは犬猿の仲なので今はこの話は控えさせて貰おう。
ともかく、人間に深い興味がある彼女が今『一番興味を抱いている』のが指揮官だ。
彼は弄ったり揶揄ったり悪戯する度に新鮮なリアクションを提供し、作戦の時は打って変わって的確な指揮を彼女達に提供するし、どんなことをしても完全にAK-12を無下にするような事だけはしない。
そんな、面白く優しく甘く時折厳しくも真面目で素直じゃない彼に彼女は『興味津々』であるのだ。
この二つが理由でないのなら、他に上げられる要因はあるのか?
答えはある、だ。それも、他ならぬ彼女自身を要因としたもので。
本日はある日からちょうど一ヶ月が経ってしまった。
「……はぁ」
AK-12は机に手を置いて一つ大きな息をつく。その中には珍しく後悔の念が込められているように思える。
地域や国によって多少は違うが、彼女のいる場所では女性が男性へ贈り物をする日から一ヶ月が経っていたのだ。
この時点で予測が出来た者も居るかも知れない。答えは、バレンタインデイ。
彼女達がいる地域では主に女性から男性、特に『気になる異性』にプレゼントとしてチョコレート菓子を贈る日とされている。
彼女がしでかしてしまった要因、その証は今彼女が向き合っている机に置かれている。
ハート型で結ばれた桃色のリボンのワンポイントが可愛らしい白い包装紙が施された箱。
中身は何かおわかりだろう。彼女が指揮官のために用意したチョコレート菓子だ。
何故、指揮官に渡すために用意したチョコレートが今も彼女の手元にあるのか?
理由は単純。結果的に彼女は『何もしなかった』からだ。
つまり、
「……どうしましょう」
AK-12は指揮官に贈り物を渡さなかったのだ。
彼女の持つ『興味』と『好奇心』によって。
好奇心は猫をも殺す。
猫のように気まぐれな彼女には、まさしくその言葉が合う状況に置かれていたのだ。
指揮官宛のチョコが今も彼女の手元にあるのは、彼女の興味が抑えきれなかった結果だ。
バレンタインの当日に自分がチョコを渡さなかったらどうなるかを見てみたかったのだ。
彼女自身、普段は折り合いが悪いように見えるが指揮官とは他の誰よりも近い仲で一番の信頼を置かれている自負はある。
他の誰かが彼の隣に立っていたとしてもすぐに自分が彼の隣に戻る自信があるくらいには、彼に認められている自覚はある。
だからこそ、信用し信頼し合っているからこそ見てみたかったのだ。
信頼と愛情の日にその証であるチョコレートを贈らなかったら、どのような反応を見せてくれるかを。
焦るだろうか?慌てるだろうか?がっかりするだろうか?
チョコを渡さないことでどのような顔を見せるか、胸をときめかせ流れ彼の横で反応を見ていた。
結果は出た。
「なにも反応しないなんて酷いわ」
バレンタインの指揮官を思い出しながらぷくっと頬を膨らませるAK-12。
そう何も反応がなかったのだ。
普段通りに呆れ、普段通りにため息をつき、普段通りに笑い。普段と違うのは贈り物をくれた者にだけ、柔らかな笑顔を向け返礼の品を渡したこと。
本当にそれだけであった。
そして、そのリアクションすら去年と同じもの。
当日の時点で指揮官の表情をモニタリングするのを止めてチョコを渡せば、彼女の手元にチョコが残る事態は避けられたのかも知れない。
しかし、『オマエはなにもくれないんだな』という嫌みも一つ言ってこなかった指揮官に少しだけ悔しさを感じ、そのまま渡さなかったのだ。
もしかしたら、翌日に『そういえばオマエはなにもくれなかったな』と言ってくるかも知れない。
そう言われたら、「そんなに欲しかったの?」と散々からかってから渡すつもりだった。
残念なことなその予測という名の自分の願望も外れ。
本当に普段通りの指揮官しかそこには居なくて、特別な所と言えば贈り物をくれた者に感想を聞かれ、『ありがとう』や『美味しかった』、『まだ食べてない』と返しただけ。
それ以外はいつもの指揮官だ。AK-12が贈り物をくれなかったことに苦言一つ漏す事はなく、いつも通りに彼女に構ってくれる彼が居た。
そこからは意地だ。指揮官が何か言うまであげはしない。そうメンタルに刻み込んでリアクションを待った。
その結果がチョコを渡せなかった一ヶ月間。彼はバレンタインにAK-12がなにも贈らなかったことになにも文句は言わず、普段と違うリアクションをとることもなかった。
「……失礼ね。私が行事を忘れる薄情者だと思っているのかしら」
指揮官は素直ではない時も多いが、AK-12が内心誰かに騙されないかと心配するときがあるくらいには心優しい性格の持ち主だ。
AK-12がバレンタインという特別な日のことを忘れていてなにも用意出来なかったと感じ、彼女のプライドを重んじてなにも言わなかったのかも知れない。
AK-12が特別な日や行事を忘れたことなど一度もない。ハロウィンやクリスマス、それにバレンタイン、指揮官の誕生日も祝った。つい最近は元旦だって共に祝ったものだ。
だが、このバレンタインだけ指揮官が何も言わなかったのは一つ心当たりがある。
指揮官ととある年のバレンタインにAK-12はしでかした事がある。
「今思うとあれはよくなかったかしら」
彼女はAN-94に渡されたチョコをそっくりそのまま指揮官に渡したのだ。
あの時の指揮官の表情は今思い出しても頬があがる。まさしく引きつった表情を浮かべていた。チョコレートの処理に困ってそのまま渡されたのだからそれは当たり前の反応だろう。
これは『AK-12チョコレート横流し事件』として、未だに指揮官とAK-12の間で印象深い。幸いにもこの事件の概要はAN-94には伝わっていないし、最終的には指揮官が受け取りを拒否しAK-12が食べたからセーフだと思いたい。
印象深いこの事件を指揮官も覚えているからこそ『AK-12はバレンタインにそこまで興味がない』と思い込んでも仕方ないだろう。
――本当は久しぶりに調理台に立って、何度も思考を重ねながら指揮官に合いそうなチョコレートを作ったというのに。
チョコを渡せなかった経緯を思い返しているうちになにも言わなかった指揮官と渡さなかった自分に腹立ってきた。
しかし、その気持ちをぶつけていいのは自分だけ。
「はぁ……」
一つ息をつくとAK-12は指先でチョコレートが収まった箱を小突く。
小突かれた箱は彼女が贈り物に込めた想いを反映させたように微かにしか動かなかった。
「さて、どうしましょうか」
考えるべき事はチョコレートの処理について。
このチョコレートを『気まぐれな贈り物』として指揮官に渡すか、自分で食べてしまうか、最後の手段としてAN-94にプレゼントするか。
朝起きて一番に考えてしまうのはそのことで、しかも結論はずっと出ず結局はとりあえず今のままでと自室に置いていって変わらぬ日々を送ることに。
一番無難な選択肢は間違いなくAN-94に食べて貰う形なのだが、指揮官のために作ったものをあげるのは流石に今の彼女も気が引けるし、AN-94にはバレンタインにチョコをあげた。
純粋なAN-94とは言え、怪しまれることは予想できる。
だからと言って自分で食べるのは、完全に指揮官に負けた気もするし(そもそもAK-12が勝手に試して自爆しただけなのだが)、虚しさが余計に募るだけだ。
小一時間ほど考えたが今日も答えが出ず、指揮官の部屋に乗り込む準備を始めようとしたところで、
「入るぞ」
無遠慮な、けれどどこか安らぎを感じる低い男声がAK-12の聴覚に届くと同時に部屋のドアが開く音がした。
「っ!?」
突如現れた、けれどどこまでもなじみ深い気配。その根源を辿るように顔を向ける。
「おはよう」
そこには未だ眠たげに瞼を半分だけ開いた――彼女が深く信頼を置いている興味深い人――彼女の指揮官が私室へと脚を踏み入れていた。
「お、おはよう」
AK-12は思わずチョコレートをもって後ろ手に書くしながら立ち上がり、いつも通りの穏やかな笑みを貼り付けて挨拶を返す。
慌てて取り繕った笑顔だからか、若干頬が引きつっている。
指揮官もそれに気づいたのだが、頭がまだ寝ぼけ半分のようで珍しく見せた隙につけいる事は出来なかった。
「ああ、おはよう」
「朝早いわね、どうしたの?」
AK-12の演算・記録通りなら今の時間はまだ起きて居ない。朝早くから仕事が舞い込んでくれば話は別だが、前日から大きな仕事を受け持っている訳では無く、緊急事態となった記憶もない。
ならば、彼が起きる時間は平均的なそれになるはずなのだが、今日はあまりにも早い。
贈り物が渡せず悩んでいたAK-12の思考回路は突如舞い込んだ想定外によって論理がストップ、彼がここに来る理由を導き出せない。
彼女が口に出した問いかけは、いつものような正確な答えを予測できて出したものでは無く、本当の意味での答えを求める問いかけだ。
「ああ……その……」
AK-12に質問されて目が覚めてきたのか、指揮官の瞼が徐々にあがる。それと同時に何故か頬の血色がよくなるのも。
「今日はいい天気だな」
頬を人差し指で掻きながらの当たり障りのない言葉。しかし、
「今日は曇りで、午後には一雨降るそうよ」
ネットワークに接続されたAK-12は正しい予測がわかってしまう。
「げっ……」
指揮官は意表を突かれたように小さく声を漏す。
戦術指揮は天候も大きな要素となる。グリフィンの指揮官業が板についた指揮官が天気予報を見ないはずがない。
それは彼の腕を買っての信頼からくる当たり前の結論。
「あー……今日は暖かくていい日だな」
「今日は12℃。昨日の方が温かいわ」
「風も爽やかで」
「窓は開けてないわ」
「その……あー……」
当たり障りのない言葉。実態のないやりとり達。
だが、それを連続されては本題が見えてこない。
いつまでも本題に進まない指揮官にAK-12は少しばかりの怒りと、このチョコレートをこのタイミングで渡すかどうかの逡巡からくる焦りを覚え、チョコレートを隠した指先に力を入れてしまう。
そこでAK-12は一つの結論に辿り着く。辿り着いてしまう。
「今日が何の日かわかるか?」
指揮官の喉が動き、生唾を飲み下したのをAK-12の視野が捉える。
今日は何の日か?それはバレンタインから一ヶ月経った日。
「え、えぇ、わかるわ」
AK-12はいつも通りの笑顔という名のポーカーフェイスで、声色だけはいつもと違って少しばかり弱気に返す。
指揮官は100を超える戦術人形に一人一人向き合い、対話し、相互理解を日頃から深め続けている。
全てがお見通しという訳では無いが、人形の大まかな行動は頭にいれてる筈だ。
「流石だな」
指揮官は何処か諦めたようにふぅと小さく息を吐く。それは、諦めというよりかは期待が外れたことを憂うようで。
そこでAK-12は違和感を覚える。何故なら、彼がこれから行おうとしている行動の予測は『バレンタインになにもくれなかった事への苦情』だと思っていたからだ。
彼の表情は今から苦言を呈すようには思えない。眉根は緩み、吐かれた吐息は何処かリラックスしたような場の弛緩を感じさせ、剰え彼は自信を取り戻したように表情が朗らかになっている。
違う。これは予想していた事態ではない?
AK-12は思考に乱れを感じながらも、3月14日について検索を開始する。
円周率の日?違う。そんな自慢をしたいなら朝早くにやってきてまで指揮官が言いに来る日だとは思えない。
指揮官の尊敬する人物が生まれた日だろうか?それもあり得ないだろう。指揮官は自分のことに関しては自発的に口にすることが少ない。
候補を調べに調べ、冷静さを取り戻しつつあるAK-12は改めて一つの事に気がついた。
それは、指揮官もAK-12と同じように手を後ろに組んでいることに。
「驚かそうと思ったがやっぱり知ってたか」
先程までの緊張した面、安堵した様相、朗らかな今の表情、後ろ手に隠しつつも微かに見える紙袋の端。
指揮官から得られた要素達が、彼女を本当の答えへと導く。
「今日はホワイトデーと言って世話になってる人に贈り物をする日らしいぞ」
頬が目に見えてわかるくらい赤く色づいた指揮官が、後ろ手に隠していたものをAK-12に差し出した。
――今日はホワイトデー。確かに指揮官の言うようにお世話になっている人物に贈り物をする日ではあるが、東にある国ではバレンタインデーのお返しをする日と記録されている。
「あっ……ありがとう」
AK-12はおずおずと手を伸ばして、指揮官からの贈り物を片手で受け取る。
自分の元にたぐり寄せ、一瞬だけ目線を移して中身を見てみると、そこには包装されリボンでラッピングされた長方形の贈り物が入っていた。
「知らないと思ったんだがな。流石に知ってたか……」
指揮官は気恥ずかしそうに頭を掻く。相も変わらず、顔の温度は上昇し続けたまま。
指揮官の贈り物を受け取ったAK-12には、彼の言葉の多くは正確に耳に入ってこなかった。
何故なら彼女の中には感謝の気持ち以上に別の感情が渦巻いていたからだ。
彼女を支配していたのは情けなさ。
自分の興味が上手く実を結ばなかったからと、そのまま小さな意地を勝手に貼り続けて結局今も渡せてない自分への嘆かわしさ。
普段は素直でないながらも、勇気を振り絞って、普段の意地らしさを抑え込み、『特別な日』にプレゼントを渡してくれた指揮官の誠意。
自分の小さな、それでいてつまらない対抗心と癇癪が、後悔しか生まない今の自分を創りあげてしまったのだ。
情けない。嘆かわしい。哀れで憐れな今の自分。
「いつも世話になっているからな。渡すもの渡せてよかった」
指揮官が背を向ける。ここから立ち去ってしまう。
今の惨めな自分を払拭するために行動するなら今しかない。
彼の勇気に報いるときだ。
AK-12は後ろ手に隠していた手を自由にし、彼の背中に飛びついた。
「のわー!!」
突如のし掛られた形になったが流石は指揮官と言うべきか、前に片足を強く踏み出してなんとかバランスを保った。
「な、なんだよ……」
指揮官が思わず背後を振り返って確認してくる。
今のAK-12の表情はあまりにもらしくない。
緊張で唇周りの人工筋が硬い。それでも言葉を発するために瞳を解放し深度演算モードを起動。口を閉ざそうとする感情達を無理矢理高度な演算処理で抑え込んでいるから。
あまりにもらしくない。戦場以外ではまるで感情の赴くまま、興味の赴くまま振る舞う彼女らしくない。
それにまだ言葉が出てくれない。だから、一時のしのぎとして今まで後ろ手に隠していた『贈り物』で彼のお腹を叩く。
「ん……?」
お腹に当たる手や腕、骨格とは違う堅い感触に違和感を覚えた指揮官の顔が背後ではなく腹部に誘導され、
「……あっ」
AK-12が押しつけている『贈り物』に気がついた。同時に彼の背中にあがるAK-12の顔の温度が上昇傾向にあることも。
彼は言った。『今日は世話になっている人に贈り物をする日』であると。
それなら、彼が与えてくれた免罪符に今は使わせて貰うべきだ。
「これ……私からの……お世話になってる……贈り……モノ……」
深度演算モードによって溢れ出る感情を抑えつけた抑揚のない声で、顔の廃熱が間に合わず、おぼろげな思考ながら紡いだ言葉。
それがAK-12が発した無機質な言葉で、冷たいように捉えられてしまう声色でも、彼には彼女の『想い』はしっかりと伝わっていた。
「ありがとう」
彼からの返礼を受けたAK-12は冤罪が晴れた罪人のように脱力すると、その場でへたり込んでしまう。
AK-12が床に着地した音が耳に届いた指揮官は、敢えて何かをするような事はせずに黙って、何処か浮き足だったような足取りで彼女の部屋から退出した。
「ふぅ……」
指揮官が居なくなった部屋で大きく息をつき、瞼を閉じるAK-12。
そのため息は長らく彼女を苦しめた悩みから解放されたモノから出たのか、ようやく指揮官に渡せたことへの安堵から出たのか、そのどちらも、或いはそれ以上の何かも作用したかはわからない。
一つ言えるならば、彼女の気持ちはふわふわとして不明瞭で、その中には不快感と呼べるモノはなかった。
メンタルの安定感を取り戻したAK-12はテーブルに戻ると手に持っていた『贈り物』の紙袋を机に置き、中に入っていた物を取り出す。
包装紙を丁寧に外すと中からは高級感溢れる布製で重厚感のある箱が。
――指揮官の贈り物、ワクワクするわね。
自分の中の機関部の高鳴りを聞き取りつつ箱を開ける。
中に入っていたのは髪留め。
AK-12が普段着けている黒を基調とし赤と白でチェック柄が描かれたリボンがついた可愛らしい髪飾り。
「指揮官はこういうのが好きなのかしらね」
口調は冗談めかしているが、彼女の視線は雄弁で髪飾りから目を離せない。
一通り眺めた彼女は指揮官の贈ってくれた髪留めをつけるようとしたが、箱の底に一枚の小さな紙が入っていることに気がつく。
「うん?」
訝しみながら紙を捲って確認してみると、そこには指揮官の手書きでメッセージが。
「You're my ――」
彼のメッセージ。普段は素直に言ってくれない『深い信頼が置かれているとわかる言葉』にAK-12は無意識に頬を持ち上げ、目元を緩ませる。
「素直じゃない人」
呆れたような口調で言いつつも、AK-12はいつもより喜びを湛えた笑みで束ねていた髪を解き、指揮官の贈ってくれた髪留めで髪を纏め直した。
近くにあった鏡で自分の髪を確認する。
月光を編み込んだ彼女の銀髪には指揮官の贈り物がいつもと違った彼女を演出させてくれていた。
「さて、そろそろ行かなくちゃ」
髪留めを眺めているうちに思わず時間が経っていたらしい。
AK-12は手早く準備を整えると、いつもより浮き足立ちながら自室を後にし、いつも通りに、悩みなどなかったように指揮官の元へと向かうのであった。
AN-94「AK-12、今日はいつもと違った髪留めをしているのですね」
AK-12「そうよ。たまにはおしゃれもいいと思ってね」
AN-94「とてもにあってます」
AK-12「ありがとう」チラチラ
指「……」
AN-94「指揮官はどう思いますか?」
指「んー?……よく似合ってる」
AK-12「ふーん?ふぅーーーん」ニマニマ
指「な、なんだその顔は!?」
AK-12「そうよね。似合ってるでしょ?」
指「……似合ってるよ」
AK-12「ふふっ」ニコニコ
指「あーそうだ」
AK-12「なぁに?」
指「……美味かったぞ」ボソ
AK-12「そう。なら、よかった」
指「……もっと早く食べたかった」ボソボソ
AK-12「何かいった?」
指「なんでもない」
AN-94「そういえば指揮官。先程貰ったマドレーヌ、とても美味しかったです。ありがとうございますした」
指「んっ、よかっt」
AK-12「……」ポカッ
指「あいたぁ!?」
AK-12「……浮気者」
指「はぁ!?」
AN-94「??????」