もし騎士くんが素性騎士の灰の人だったら 作:アストラの直剣
前二話加筆修正させていただきました。
誤字修正いつもありがとうございます。
アストライア大陸
そこは美しく、華美で尊き夢のような国。世界中から様々な人種の人々が到来し繁栄の一歩を辿った。獣人、魔族、エルフ、人間。それぞれ人種が違えど多くのもの達が手と手を取り合い協力し力を合わせることで天に昇る太陽のように輝かしい王都ランドソルはアストライア大陸で最も人口の多い国家へと変貌していった。
ランドソル中央に聳え立つ人の願望をかなえると言い伝えられる『ソルの塔』には絶え間なく多くの願望者達が向かっていた。
そんな街にやってきた異邦からの来訪者。忘れないで欲しい、平穏な日々そして平和は決して永遠に続くものではない。灰の人……貴方の使命はまだ始まったばかりだ。
◇
【王都 ランドソル】
「ここが王都ランドソルですか……」
王都を囲む巨大な外壁を抜けコッコロは辺りを見回し見たことない街の空気を味わい呟いた。通りすがる多くの人々の賑やかな会話に最近舗装されたであろう綺麗な街並み。
かつて自身が暮らしていた故郷では決してみることのない群衆の群れ。山奥育ちで鳥や草木が鳴く森林の風景に慣れていた彼女が大都市の雰囲気に呆気にとられるのも仕方のないことだった。
「はっ!す、すみません主さま。つい物珍しいものばかりで呆けていました」
主である火のない灰は気にしてないと言わんばかりに自身もコッコロと同じようにこの世界の中心街ランドソルを兜の覗き穴から物珍しそうに静観していた。長い間彼の過ごした世界は灰と血に塗れた場所であった。理性なき亡者が闊歩し、神々は消え去り残され僅かに生き残った人間達は未だ未来を見ることの無くただ懸命に生きていた。
この世界とはまるで別なのだ。
「主さま?あっ、見てください。あちらにあります魚屋さんはアストライア大陸で取られている新鮮な鮮魚のようです!是非見にいきましょう」
年相応に見慣れない街に少々興奮気味のコッコロに先導されランドソルの街を共に歩いて行く。しかし道中歳若いエルフの少女とボロボロの甲冑を身に纏う騎士の変わった組み合わせは道行く人に異様に視線を浴びせられていたことは二人にとって知らぬが仏というのだろう。
美味しそうな香りに釣られて灰と従者はクレープ屋と呼ばれる露店の前にやって来た。
「おや、いらっしゃい。可愛らしいお嬢さんと随分と強そうな騎士さまだね。もしかして二人は兄妹?」
「なっ!?ち、違います、私と主さまはご兄妹ではなくて」
「ん?なら恋人?」
「ち、ち、ち、違います!!!」
慌てるコッコロを揶揄う赤髪の店主は優しく微笑みながら注文を促す。
「チョコレートにイチゴね、少し待っててね」
店主が店の裏に消え、コッコロは灰の騎士に金銭を渡し主に支払いを一任する。しかし灰は見慣れない輝く金貨をじっと不思議そうに見詰めている。
「主さま?どうされましたか?」
コッコロが声をかけた瞬間、何を思ったか灰は右手に金貨を目線まで掲げて力強く握り締め粉々に割ろうとしているではないか。
「んん?!主さま!?これはお金です!決して握り締めて割ろうとしてはいけません!」
金貨が粉々になる前に慌ててコッコロは主の奇行をなんとか制止させた。
「はっ!主さま異邦からのお方とアメスさまより聴いております。知らないでしょうがこの世界では金貨を使って物々交換をしているのです。他にも紙幣などもありますのでお気をつけて下さい」
コッコロの説明を聴いた灰は申し訳なさそうに頭を下げる際に自身の持つ大量のソウルでは物々交換出来ないことに哀しみを覚えた。そして直ぐに新しい知識を覚えた主を褒めたたえるコッコロ。傍からみたらかなり異様な光景であるが出来上がったクレープを持ってきた店主は普通に料金を頂いた。
[赤髪店主のクレープ]
異国の地にて灰の英雄が初めて食した甘味。
花柄の赤い包装紙に包まれたクレープやお店の赤い外観は店主の拘りなのだろうか。
味は至って普通。しかし初めて食した時の感覚は子や大人までも歓喜に噎せることだろう。灰の幼き従者が大変美味しそうに食べる姿はなによりも嬉しきことである。
体力が小回復しFPが僅かに回復する
◇
【ランドソル中心街】
日が沈み夜が世界を包む。
主人と従者は宿泊する場所を求めランドソルを歩いていたが、残念なことに安息出来る場所を中々見つけることが出来ずにいた。
「ごめんよお嬢ちゃん、ウチも商売だから。お金が入ってきたらまた来てくれよ、それじゃ」
最後の施設を辿ったがここも値段が高くコッコロの所持金では到底出せる値段ではなかった。
「申し訳ございません……主さま……まさかここまでランドソルの宿泊施設の価格が高いとは……かくなる上は、父より貰ったこの杖を!」
意を決して敬愛する父から貰った杖を質屋に売りさばいてしまおうとするが、すかさず灰の騎士によって止められてしまう。
「きゅっ?!主さま?!一体何処へ?」
コッコロは主に連れられランドソルの壁外の草原にて柔和な火の音をたてる焚き火の前で火の中心をぼんやりと見詰めている。その姿はまるで気苦労の止まない長旅でようやく一息をつける安息の地を見つけた者のように火に全身を預けているようにも見える。
──案内役としての役目を失敗をした私を一切責めることなく、目の前の不都合が起きることを当たり前のように受け入れるとても大きな器をもつお方。
「主さま……あの……よろしければなにかお話をして頂けないでしょうか?」
旅の外套に包まり焚き火に対面する主に質問をする。主のことをもっと知りたい。単純だがそれだけの気持ちでコッコロは呟いた。
灰の騎士はゆっくりと自身の体験した郷愁ある思い出について話を始めた。
───騎士と心のある巨人の物語
『貴公の勇気、我が剣、我らのそれぞれ使命に太陽あれ』
騎士は巨人と友になりたいと言う変わった男であった。絶望の拡がる世界にて彼は灰の騎士の行く道に幾度か手をかしてくれた人情のある心優しい男でもあった。
そんな彼にも火のない灰としての苦しき使命があった……薪の王となった古き旧友を殺す。そのために幾度となく生と死を繰り返し旧友より貰い受けた巨人殺しの剣を持ち
『ヨーム……古い友よ』
『カタリナのジークバルト約束を果たしに来たぞ』
そして騎士と灰の騎士は、嵐の力を持つ二振りの剣を互いに持ち、罪の都の孤独な巨人の王を打ち倒したのだ。しかし騎士は火のない灰としての使命を果たした直後、旧友の倒れ伏した玉座の間にて命を終えた。
「主さま……その方は幸せだったのでしょうか?」
憐れで儚い夢の騎士の物語。
主さまはゆっくり縦に頷く。使命を果たしたのち、最期に盃を交わした時の彼はとても満足感に満ち溢れていた、と。
長い話を聞き終えたコッコロは人恋しく思ったか主の元に近づき隣に座る。お互いに薪の焚べられた焚き火の火をじっと言葉を話すことなく見つめる。
火とは人類の叡智だ。火を使い獣を狩り、暖をとり寒く厳しい世界に踏み入れることを可能とし人類の文化を発展させた。火と人は決して切っては切れないモノであり、かつて灰と古竜そして大樹しかない世界で『はじまりの火』に見出された名もなき小人を含む数多くの神々はみな火に惹かれ『王のソウル』を見出したのだ。しかし古龍を討伐したイザリスの魔女達は『火』に惹かれ模倣した結果、混沌のマグマに呑まれそこからデーモンが誕生した。火の時代の王、大王グウィンにいったては消える火を消さない為に身一つで『はじまりの火』に焚べられ燃え滓となってしまった。
それから1000年後、不死院からやってきたロードランの英雄が大王グウィンの後を追い『はじまりの火』を継ぎ世界は再び照らされた。しかし時が流れ灰の騎士が復活した時代では火は残り火しか残っておらず火継ぎをしても世界を維持することなど不可能だった。選択肢はあった、再び火を継ぎ世界を僅かに照らし終わらない火の時代にその身を捧げるか。それとも「ロンドール」の勢力に手を貸し亡者の『王』となり火の簒奪者となり闇の時代に君臨するか。しかし彼は親愛なる火防女と共に世界の裏切りを選択した。火を消した彼であってもあの鮮烈な世界を歩み終えた灰の騎士にとって火は何よりも大切な存在であることに変わりない。
────それが『火のなき灰』なのだから。
「……主さま?どうしましたか?」
考えにふけってしまったようだ、心配そうに見つめてくる少女の頭を灰の騎士は優しく撫でた。コッコロは一瞬驚いたが次第に受け入れ心地良さそうにつぶらな大きな瞳を閉じた。
「えっと……主さまは随分と撫でるのが上手でございますが……あの……他の方にもこのように撫でたりした経験があるのでしょうか?」
『ある』
『ない』←
「私が主さまの初めて…………」
コッコロはその言葉を何度も心で復唱し頭を撫でられることにとても大きな幸福を感じていた。
「ふにゃあ……あるじ……さまぁ……」
暫く時間が経過すると余程心地良かったのだろうかコッコロは灰にもたれかかり膝の上で睡魔の世界へ旅立ってしまった。灰の騎士は落ち着き深い眠りに陥った幼き少女の柔らかい髪を優しく梳かしつつ
『乾杯』←
夜はまだ続きそうだ。そしてこの旅も。
アンケートご協力ありがとうございます。
結果として……自分自身が納得出来る作品にしていきます。なので投稿スペースは遅くなりますが、読者の皆様の楽しみになるように精進して執筆させていただきます。ではまた会いましょう。