もし騎士くんが素性騎士の灰の人だったら   作:アストラの直剣

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大変遅くなりました。
リハビリも兼ねて執筆しました。



茸人

 

 

 夜の帷が堕ちた闇夜の森に多くの影が蠢く。

鳥の囀る音に、不規則に揺れる動く長々と生えた木々から現れた怪異を屠り歩み続ける一人の騎士。地中より現れる「樹人」は前へ進む騎士の行く手を阻むが如く絶え間なく襲いかかる。

 

 騎士は斬り飛ばし、叩き伏せ、そして体力がある限り迫り来る敵を倒す。幾度も繰り返し遂には樹人達の群れは消え去り自身と敵の遺体だけが残った。騎士は懐に隠した一杯の盃(エスト瓶)を飲み干し体力の回復に勤しみ一息をついた。

 

 身に纏う銀に輝く兜と鎧は至る所に傷跡が残っているが未だその鋼の光沢を失ってはいなかった。鎧の上に羽織る蒼色の軍衣は僅かな劣化しかしておらず、騎士の持つ上質な一振りの直剣と金に描かれた紋章の盾はこの荒んだ世界であろうと身に纏う者の身分の高さを意識させた。

 

カジャリ、ガシャリ、ガシャリ。

 

 重厚な鎧を着込んでいる故になる鋼の音色。

 

 騎士は一切疲れた様子を見せることなく淡々と荒れた野道を時折走り休みを繰り返し淡々と先へ先へと独りで魑魅魍魎の住まう『黒い森の庭』と呼ばれる危険地帯を進んでいく。道中に朽ち果て潰えた人間の遺体から「ソウル」を見つけ自らの糧にするべく入手したその瞬間、何かが迫り来る音が森に響いた。騎士は警戒心を高め武具を構えようとした瞬間………

 

「───────ッ!!!!!」

 

 突然、雄叫びと共に騎士に向けて漆黒の針鼠が高速回転を描き猪突猛進してくるではないか。騎士は咄嗟に遮蔽部のない右手側に身体を遅いながらも回転し、針鼠の奇襲の一撃をなんとか回避し終える。即座に武器を構え針鼠ではく、巨躯の黒猫に向かい追撃を始める。

 

「───────」

 

 小回りの効く直剣で敵の僅かな動きから攻撃を観察、そして回避、隙をみて刺突による攻撃で着実に身の丈以上はある化猫に対して一切怯むことなく勇猛果敢に挑む騎士。

 

 敵もただ斬られるのを良しとせず鋭利な爪で鎧を切り裂く。後方に吹き飛ばされるのと同時に騎士から鮮血が飛び出る。彼はすぐさま剣を取り再び敵に襲いかかる。すかさず攻撃に転じられたことによる驚きと余りの連撃によって怯む化猫にさらに容赦なく連撃を加え攻め続けることで騎士は遂に黒猫を倒したのだ。

 

そして黒猫を自らの「ソウル」の糧とした。

 

 騎士は黒猫を殺めたことに対して一切感傷に浸ることもなく、己の為すべき事を為すために先へ先へと森の奥へ進む。

 

 

 道中、二足歩行をする不思議な茸を見つけ彼等についていくと小さな湖の中心にある宝箱を発見した。しかし秘宝を護るように立つ二体の巨大な茸人に遭遇する。彼等は騎士の方へと非常に鈍足ではあるがゆっくりと前へ進んでくるではないか。騎士は警戒心を高め盾を構え後方に下がりつつ敵を観察する。しかし観察すればするほど敵が弱く見えてくる。鈍重な速さに切断しやすいであろう貧弱そうな肉体、敵は二体ではあるがこれならば容易に勝てる。

 

「───────」

 

 好機を見出した騎士は走り剣で切り伏せるべく盾を背に背負い、両手に持った剣の重い一撃で茸人に襲いかかる。体力の続く限り茸に対して剣を何度も何度も繰り返し振り続けたが、しかし……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

          YOU DIED

 

 

 

 

 

 

 

 幾度も繰り返される剣撃をものともしない茸人から腰から腕にかけて美しく放たれた右ストレートの拳によって騎士は地面に地を伏せた。

 

 たった一撃の拳。

 

 その一攻撃により騎士は生身を失い、ソウルと血痕を残し黒い森の庭から霧散した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【ランドソル中心街 】

 

 

 

 

「主様、私働きに出ようと存じます」

 

 昨夜野営をし終えたランドソルの壁外から都市に戻ってきた幼き従者は、鎧を着込んだ主にそうしみじみと申し上げた。コッコロの表情は何処か奇妙な焦燥感に満ちているが、その理由を灰の騎士は知る由もない。

 

 現在の二人の状況はほぼ無一文に等しい金銭状態で、これからの活動拠点となる王都ランドソルで生活するとなれば日々の路銀稼ぎは必須である。

 

 不死人として永く人としての生活を忘れた灰の騎士にとっては大変瑣末な問題であるが普通の生者の者ならば、三食しっかりと食べ、屋根のついた宿に泊まり、そして収入を得るのが生きていく中で最も重要なことである。

 

 しかしコッコロには金銭以外にもとても大きな問題があった。昨夜コッコロはあろう事か主の膝の上で頭を神父の如き優しい手触りで髪を撫でられ野営をしていたにも関わらず、翌日には疲労感を忘れるほどぐっすりと熟睡してしまったのだ。

 

 自身はアメス様より遣わされたガイド兼案内人、そんなことでは従者失格だと。コッコロはこの世界の案内人として主に役立つことを証明するべく働き出ることを懇願しているのだ。

 

 

 ………決して主と二人きりで眠るまで、安閑するまで談話し膝の上で安心しきって熟睡をまたしたいなんて口が裂けても言えない。優しく慈愛に満ちた手触りに、冷たいはずの重苦しい甲冑すらなぜか温かさを感じてしまう…………

 

 そんなことは言えないったら言えないのだ。

 

 

「主様はお心のままにその辺で遊ぶなり美味しい物を食べるなりご自由にお過ごし下さいまし」

 

「こちらが本日のお小遣いです!夕刻にはここに戻りまのでここで待ち合わせとしましょう」

 

 

 

 [コッコロの全財産]

 

 

それは、灰の従者コッコロが持つ全財産。

使用すれば一時の路銀となるなるが、これを使用するのは、かつて世界蛇に誑かされ深淵に呑まれたのち狂気に堕ちた魔術師の呪われた深淵の業を使うのに均しい。

 

不死人とはいえど尊厳は護らればならぬ。

それは何よりも遵守するべきことである。

 

使用する度に徐々に呪いが溜まる。

 

 

 

 

 

「主様はこのお金を使って遊ぶなり食事を楽しむなり自由にお過ごして下さいまし」

 

「……主様如何なされましたか?もしかすれば、こちらのお金では物足りませんか?すみません…それが全てなのです。はっ!私の装飾品を売って少しでも…………にゅ!?」

 

 

《コッコロの全財産を返す》←

 

《コッコロの全財産を返さない》

 

 

 迷うことなくすぐさま質屋に向かおうとするコッコロの身体を抱き締め制止させ止める灰は、彼女の手を引き別の方法で金銭を得る方法を探すことにした。

 

 

 

 

 

 

【カド遺跡】

 

 

「主様こちらです!」

 

 灰の人とコッコロは街の掲示板から情報を得て、ランドソルのギルド管理協会へと向かいギルドを仲介する形で初心者にもオススメされたカド遺跡にて(きのこ)を採取するクエスト(任務)を受けたのだ。

 

 ギルド管理協会に行った際に、ランドソル周辺に住む人的被害を行う(ドラゴン)退治など討伐隊募集などといった高難易度かつ危険なクエストの張り紙を見て、灰の人はこれを無意識に挑もうとしたがコッコロに制止された。

 

『お独りでドラゴンを退治に向かうのはめっ!ですよ主様』

 

 と、言われ灰はしぶしぶ依頼の書かれた紙を戻した。そしてギルド管理協会の『カリン』にオススメされた茸採取へ向かっている最中なのだ。

 

「このような場所に茸が沢山生えていますので沢山採取いたしましょう」

 

 落ち葉の積もった葉を避けると手のひらサイズの成熟した茸が生えている。湿った場所などは茸にとってよく育ちやすい場所なのだ。

 

 コッコロと灰は二手に別れ、カド遺跡周辺に生えた茸の採取に務めた。その際、コッコロは「プチプチ」と声を発する茸を発見し、プチペちのプチ子と名付けポーチに入れた。

 

 そんなことをしてる間に灰は不思議な人物と出逢う。腰まで伸びた黄金色の頭髪に銀の装飾品を身に纏っているが、腹の音を響かせ情けなくうつ伏せに青空の下で地に伏している女性を。

 

 

「お腹ペコペコペコ…………」

 

 

 とりあえずこの場に行き倒れを残すのは危険なため灰は彼女を背負いコッコロの下へ合流しに向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はむ!はむはむ!美味し〜です!」

 

 先程採取した茸を焚き火で焼き、コッコロが持参した食べやすいサイズのおにぎりを物凄い速さで咀嚼し飲み込み、そしてまた別の食糧に手を伸ばす元行き倒れの娘に対して対面するコッコロと灰は驚いて何も言えなかった。

 

 しかし彼女はよく食べる。

 陽気な笑顔で大変美味しそうに食べている。見ているこちらも次第に微笑ましい気持ちになってきた。などと思っている内に二人前の料理を食いしん坊の少女は食べ終えてしまった。

 

「ご飯は生命のエネルギー!見ず知らずの私にご飯を恵んでくれるなんて、ありがとうございます!一生恩に着ます!」

 

「あの、どうしてあのような場所に?」

 

「えぇ、実は────」

 

 曰く、彼女は旅人で故郷のランドソルに帰ってきたそうだ。そして道中、病気に苦しんでいる人が居て助ける為に薬を取りに向かい帰ってくると病気(嘘)だった盗賊に所持品を盗まれてしまって追いかけてきたのだ。さらに夢中で追いかけていた為食事を取らなかったのが原因で空腹感に負けてしまい森で倒れていた所を灰の人に救われ現在に至るとのことだった。

 

 

「─────ふぇ〜コッコロちゃんに火のない?灰の人?灰の騎士さん?ですか!不思議なお名前をしているんですね!ヤバいですね☆」

 

 そんな至って普通なほのぼのとした会話をしている最中に突如、森からざわめきが響く。

 

 重音な足音が森に響く。

 敵意を剥き出しにしたモノがやって来る。

 

 何かが走ってやって来てた。

 茸である。否正しくいえば茸人が群れをなして食事をしている娘の前にやってきたのだ。あきらかに瞳は敵意に染まっており少女の顔を見ると素早い拳で襲いかかってくるではないか。

 

「わわわ!?灰の騎士さん!?」

 

「あ、主さま!?」

 

 灰の騎士の動きは素早かった。茸人が攻撃してくる動作をした瞬間にすぐさまコッコロと食いしん坊の娘を両脇に抱え後方に勢いよく下がった。

 

 茸人が殴ったせいで先程座っていた地面はヒビが割れ土埃が舞う。

 

「た、多分私を狙って襲ってきたんだと思います。ごめんなさい……って灰の騎士さん?」

 

 抱えた二人を降ろし携えた直剣を抜刀し中盾を構え二人の前に立つ。

 

「えっと、お腹ペコペコのペコリーヌ様、っと仮にお呼びしますね。乗りかかった船です、共に窮地を脱しましょう」

 

「おやおや?ペコリーヌって私の事ですか?可愛い名前です!ヤバいですね☆ それにお二人のお気持ちとても嬉しいです!」

 

 

『──────────!!!!』

 

 ペコリーヌが発言した瞬間、武器を持った大勢の茸人が三人へ向かって猪突猛進と言わんばかりに一斉に襲いかかってくる。灰の人は素早く腰のポーチから炭のような黒松脂を包んだ『炭松脂の薬包』を取り出し右手に持つ直剣に振りかけると、直剣の刀身が炎に包まれ燃え盛る剣とかした。

 

 これはかつてロスリックの『不死街』で不死人を火葬する際に使用された松脂であり火を嫌う者に対して有効なのだ。

 

 

 襲いかかる茸人を直剣で横薙ぎに切りつけ、進んでくる茸人を体力(スタミナ)の続く限り片っ端から容赦なく燃やしたたっ斬る灰の騎士。

 

「はああぁぁーーー!!!」

 

 灰の騎士に便乗し、ペコリーヌは身に纏う銀の装飾の輝きと共に勢いよく跳躍し茸人の中心に拳を掲げ流星の如き速さで落下する。大量の茸人は彼方へと吹き飛び残った敵を持ち前の武術で応戦している。

 

「主様に光の御加護を」

 

 コッコロは主に力を付与し援護に回る。

奇跡により灰の騎士の動きが俊敏になりさらに勢いよく敵を蹂躙していく……が、しかし。

 

 慣れない俊敏さに身体が追いついて行かず体力を減らしてしまった。灰の騎士は懐から新たなアイテムを取り出そうとした瞬間。

 

 突如、灰の騎士の両脚を地中に隠れた茸人が掴み一瞬身動きが取れなくなってしまった。

 

「主様!!!」

 

 茸人達はその一瞬の隙を見逃すわけもなく、強力な拳で灰の騎士の兜を風切る音と共に殴り飛ばした。

 

───ゴン!

 

 金属の叩かれる音に灰は後方に吹き飛ばされ、地面に一直線の軌跡を残し仰向けに倒れ血を吹き出してしまった。

 

「主さ……ま!?」

 

 主が殴られ倒されたことに動揺し駆け寄ろうとしたコッコロに茸人はすぐさま襲いかかり彼女身柄を拘束する。

 

「コッコロちゃん!灰の騎士さん!」

 

 ペコリーヌは敵の武器を奪いとり二人の元へ向かおうとするが敵の数が多く中々向かうことが出来ずにいた。

 

『─────────!!!!』

 

 茸人は拘束したコッコロを突き刺そうと槍を構え攻撃を加える。

しかしすぐに立ち上がった灰の騎士がコッコロを護るように前へ立ち塞がる。敵の動きと攻撃にタイミングを合わせ槍の一撃を盾で受け流し(パリィ)をしガラ空きの胴体に直剣で必殺の一撃を深々と突き刺した(致命の一撃)

 

灰はすぐさまコッコロを拘束した茸人も切り倒す。

 

「主様!ご無事ですか!?」

 

 コッコロに無事を伝え、灰の騎士は己の手に持つ直剣の真の力を解放する。

 

 

 

 

 

 騎士は天に祈りを捧げた。

 なんの変哲もないただある剣、しかしそれは呪われた者達が今際に「太陽」を掲げそして宿した力は決して輝きを喪うことなく現在まで忘却されることなく人々に力を与えた。

 

 

 

《戦技 太陽の誓い》←

 

 

 真珠のような輝きの光と共にコッコロとペコリーヌの身体は黄金の光に包まれた。

 

「…………凄い」

 

 コッコロは小さく呟いた。

 掲げた剣はなんの変哲もない直剣だが空に輝く太陽のような光を放っている。まるで地上に降り立った神の導きの光。風景に愛情を与え希望を与える様はまさに奇跡。

 

 アメス様……これが主様の力の一つなのですね。

 

 

「力が溢れてきます!これなら!」

 

 ペコリーヌは茸人から奪った刃こぼれだらけ剣に力を蓄え、蒼空へ跳躍しそして全身に蓄えられた力を一気に解放する。

 

 

 

「プリンセス・ストライクー!!!」

 

 

 

 その日、カド遺跡に銀の王冠が降り立った。

 

 

 

 

 

 

        QUEST CLEAR

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 灰の騎士はポーチからエスト瓶を取り出し身体を回復させつつ倒し終えた茸人をコッコロ、ペコリーヌと共に森の中心に寄せギルドに回収の依頼を頼んだ。

 

「すごいです!この茸ナマでもいけます!ヤバいで…………ぷしゅうううう」

 

「ペ、ペコリーヌ様!?」

 

 作業の終わりランドソルに帰ろうと帰路に向かうなさいにペコリーヌが小さな茸人をナマで食べて倒れてしまったのだ。

 

「わたしはおなかペコペコのペコリーヌ……うへへへ」

 

 顔を真っ赤にしながらうわ言を呟くペコリーヌペコリーヌを背負う灰の騎士と従者コッコロは朱色に染まる夕陽の世界を三人で歩んでいく。

 

 コッコロは初めての主と共にクエストを達成を心の底から喜び、そして今後もこの方の為に共に歩いて行こうと心の底から願った。

 

 

 

 

 

 






次回も気長にお待ち頂けると嬉しいです
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