もし鬼塚英吉がアイドル研究部の顧問だったら   作:特級厨師

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第10話 お父様です

園田海未です

お父様が返ってまいりました

 

いずれは帰宅され、件のお話をしなければならなかったとはいえ、

今は正直、心の準備ができておりません…

 

ひょっとして今日は帰らないといったのは、

私を帰ってこさせるための方便かとお母様とお婆様を疑いましたが、

その驚き様からお二人にとっても予想外の事態のようです

そして慌ててお母様がお父様を迎えに行きます

 

…逃げ出したい!!

 

頭の中がその気持ちでいっぱいになった刹那――

 

トン!

 

急に背中を軽く叩かれました

叩いたのはやっぱり先生

 

無言でしたが任せろと言わんばかりの頼もしい笑顔を私に向け、

力強く拳から親指を突き出して見せてくれました!

 

先生の向こうから穂乃果もガッツポーズで笑顔を見せてくれます

穂乃果も無言でしたが、ファイトだよ!…と目が語っています

 

二人のお陰で勇気が出ました!

 

でも…

お父様が迎えに行ったお母様を伴って現れました

 

その眼光は明らかに私達三人を射抜くように向けられています…!

折角二人に頂いた勇気が一瞬で霧散しました

 

ふと穂乃果を見ると私と同様に怯えています

 

無理もありません…

時折、私を訪ねてくる穂乃果をお父様は嫌っていたようには思えませんでした

幼い頃はよく私達の遊び相手になって、

穂乃果ちゃんと呼んで私と同じように可愛がっていましたから…

余りに穂乃果を可愛がるので、私は焼きもちを焼き、

二人を困らせた事もあるくらいです

それなのに今は…

 

私と関係を持っていると疑っている先生に向けるものと同様の敵意を向けているのです

今までとあまりに違う様子に恐れを抱かない筈がありません…

 

そして先生は…

 

流石の一言です

先生より二回り程大きく、スーツの上からでも判る隆々たる体つきのお父様を見ても恐れるどころか不敵な笑みを浮かべています

先生が立ち上がり、お父様と向き合います

 

英吉「初めまして!

   園田海未さんが所属するアイドル研究部の顧問の鬼塚英吉です!」

 

盛男「…園田盛男です」

 

堂々と名乗る先生に対し、一言だけ返すお父様…

でも先生に気圧されているわけではなく、ただただ煩わしいといった風です

 

盛男「鬼塚先生…それと高坂君

   今日の所はお引き取りください」

 

!?

 

園田母「あ、貴方!

   先生はこの子を連れ戻してくださったんですよ!?

   お礼の一言くらいは…!」

 

盛男「若造…聞こえなかったのか?

   失せろと言っている…

   貴様の様な不逞の輩と交わす言葉などない!」

 

お母様の忠告を無視して、お父様は先生にお礼を言うどころか侮辱しました!

礼を欠いたお父様を恥ずかしく思うと同時に怒りを覚えます!

 

どうしてこんな失礼な事が言えるのですか!?

私と先生との間に何もなかったのは報告を受けている筈です!

 

英吉「…すんませんが、お父さんの方になくてもこちらにはあるんすよ

   海未さんはここにいる高坂を含め、部員全員に必要とされています

   そして彼女に退部の意思がない以上…」

 

盛男「退部は認めないというわけか?

   なら…海未は転校させる!」

 

お父様…そこまでして私にスクールアイドルを辞めさせたいんですか?

 

穂乃果「そんな!

    私達には園田さんが…海未ちゃんが必要なんです…!!」

 

盛男「君達に必要であっても、海未には君達は必要ない」

 

もう…黙っていられません!

 

海未「そんな事はありません!

   どうして私の気持ちをお父様が決めつけるのですか!!?」

 

皮肉にもお父様への怒りがその恐怖を打ち消してくれました

…思えばお父様に本気で反抗したのはこれが初めてです

 

でも…お父様はそんな私の初めての反抗にも驚いた様子もなく、冷たい表現で言い直しました…

 

盛男「ならばこう言おう…

   園田流の後継者に君達は必要ない!」

 

穂乃果「でも…でも…!」

 

穂乃果の眼には大粒の涙が止めどなく溢れ出ています…

そしてそれは私の眼にも…

 

穂乃果…ごめんなさい…

貴女まで泣かせてしまって…本当にごめんなさい

 

盛男「そもそも高坂君、君を海未に近づくのを許したのは間違いだったよ

   日々の稽古の息抜きになると思っていたが…

   

   スクールアイドルなどと言う浮ついたものに海未を巻き込むのは流石に捨て置けん!

   そもそもアイドル自体破廉恥極まりないものだというのに、

   ましてやプロでもない素人のスクールアイドル等…」

 

許せない…!

穂乃果は私の初めてのお友達…

 

始めて穂乃果と出会った時…手を差し伸べて友達の輪の中に入れてくれなければ…

内気でお稽古ごとに追われる日々の私は…ひょっとしたら今も友達がいなかったかもしれません

穂乃果のお陰で私の世界は開けました!

そんな穂乃果を…侮辱するなんて…!

 

…許せない!!!

 

 

 

バキィィィ―――――――――――――ィン!!

 

 

 

英吉以外「!!」

 

先生の肘から先が畳を貫いて床に埋まっています…!!

私の怒りを代わりに体現してくださいました

でも…

 

…怖い!!!!

 

こんなに怒りに満ちた先生の顔は初めて見ました…!

先生がやらかしの方々相手に暴力を行使するのは何度も見ています

でも圧倒的に強いためか、そんな時でもほとんど真顔で戦っておられました

 

…先生が静かに発言します

 

英吉「おっさん…いいかげんにしろよ?」

 

盛男「何だ貴様!

   それが目上の者に対する口の利き方か!」

 

英吉「テメェの方こそ散々礼儀を欠いて、どの口がほざいてんだ!」

 

盛男「下衆が…何にせよ、これは園田家の問題だ

   口を出すな!!!」

 

英吉「…口を出すなだと!?

   その部外者お断りの家の問題に他所の家の穂乃果を…

   俺の生徒を引き合いに出して泣かせて…

   揚げ句、スクールアイドルを…穂乃果の尊厳を踏み躙っておいてなぁ…

   

   都合のいい事言ってんじゃねぇよ!!!」

   

穂乃果「先生ぇ…」

 

盛男「言わせておけば…!」

 

英吉「それにな!

   園田が…海未があんたの娘だろうが、俺の生徒でもあるんだ!!

   たとえ親だろうが…俺の生徒である以上、泣かす奴は絶対に許さねぇ!!」

 

海未「…先生!」

 

盛男「チンピラが…!

   どの口がほざく…!」

   

英吉「どの口がほざくだと?

   そっくりその言葉、返すぜ!

   

   海未は…あんたの娘は何日、行方不明だった?

   

   …3日だよな?

   あんた、一体この3日間何をしてたんだ?

   

   人探しの素人の普通の家じゃない、

   警視正の…人探しのプロ集団のお偉いさんが何で3日も娘を見つけてやれないんだ?

   海外に高飛びしていたわけでもない…

   そこらの漫喫やビジネスホテルにいただけの…

   制服姿のままの女の子を何故見つけられないんだ!?

   

   …結局、海未を見つけたのは俺の舎弟

   そしてここに連れてきたのは俺だ!

   

   そんな体たらくで家の問題だから口を出すなとか…よくも言えたな!!」

   

盛男「…箝口令がかかっているので詳しくは言えないが、

   重大な任務に就いていて娘を探す時間がなかった

   当然、私的な理由で部下に協力を頼めるはずがなかった…」

   

英吉「おっさん…言い訳はそれだけか?」

 

盛男「何だと!?

   本当に重大な任務なんだ!

   下手をすれば東京が…!」

 

英吉「テメェの娘の一大事より重大な任務なんてあるかぁ!!!!!!」

 

盛男「!…もういい!!

   貴様の様なヒラに話しても無駄だ!」

 

英吉「はっ、うちの理事長にでも泣きつきますか?

   貴女のヒラの部下に言い負かされたので助けてくだちゃいってw」

 

盛男「そんな無様なまねをする必要はない

   貴様、その体つき、眼光…チンピラなりに腕に覚えがあるんだろう?

   道場に来い!

   鼻っ柱をへし折ってやる!」

 

英吉「いいっすねぇ、分かりやすくてw

   …上等だ!」

 

先生が受けて立つ旨を聞いたお父様は支度のため、自室へ向かわれました…

 

海未「先生!

   先生がお強いのは分かってます!

   でも…お父様は…!」

 

英吉「言いてぇ事は分かる

   あのガタイ、俺よりは二回りはデカいし、

   職業柄、格闘技だって素人じゃねぇはずだ…」

 

海未「!…そこまでお分かりでどうして!?」

 

英吉「何度も言わせんなよ…

   俺の生徒を泣かす奴が許せねぇんだよ!!

   

   …たとえお前らが許しても…な!」

 

穂乃果「先生…!」

 

英吉「それよりお前らに頼みがあるんだ…」

 

海未・穂乃果「え!?」

 

……………………………………………………

 

英吉「…というわけだ

   絶対に頼む

   頼むから…萎えるような事は勘弁な」

 

穂乃果「うん!

    わかった!

    絶対…絶対、守るね!!」

 

海未「…難しい要求ですね」

 

英吉「そこを何とか!」

 

海未「本当に…先生は私を困らせてばかりです」

 

英吉「ホントに勘弁w」

 

海未「いいです

   もう慣れっこです…

   その代わり…」

 

英吉「任せとけ!」

 

何だかんだで先生は頼もしいです

特に今日は今までで一番…!

 




登場人物紹介

園田盛男(イメージCV:石井康嗣)
警視庁警視正
身長185cm
体重110kg
柔道三段、ボクシング(プロのヘビー級の試合経験有)、レスリング

往年の格闘家のドン・フライに似ているので裏で部下達にそう呼ばれている
そう呼ばれているのを知らないが、自身も似ていると自覚があり、
強い有名人に似ているのはむしろ誇らしかったりする

最近、逮捕した筈なのに留置所を自由に出入りする規格外の凶悪犯に振り回され続けて機嫌が悪い
ちなみに穂乃果に道を尋ねた老人も別人だが同等の凶悪犯
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