園田海未です
突然ですが私、不良になりました
なのでもう3日も家に帰っておりません
何故かと申しますと、発端は先日、鬼塚先生の部屋に先生と二人きりでいた所を2人の警官に目撃されたことです
冴島さんの先輩が私と会った事をお父様に報告されたそうです
先輩の警官の方は何もない様子だったと正しく伝えてくださったようですが、
お父様は男性の方の部屋に二人きりでいた事自体を問題視されておりました
元々お父様は昔気質の方で私がスクールアイドル活動に参加している事に難色を示しており、
また日舞のお稽古より穂乃果達とのスクールアイドル活動を楽しんでいる様子を見る度、
私に園田流の後継者としての自覚があるとかと苦言を呈する機会が増えておりました
そこに来て今回の件で堪忍袋の緒が切れ、アイドル研究部を退部するように迫られた次第です
お父様に無理やり退部願を書かされ、それを持たされて家を出ましたが、
穂乃果達にそれを見せて退部の旨を切り出す事を想像すると、どうしても学校に足が向きませんでした…
そして気づけば昼は漫画喫茶、夜はその近くのビジネスホテルで過ごすようになりました
それにしても漫画喫茶なる施設を初めて利用しましたが、これは良い物ですね
簡単な食事なら外の飲食店を利用する必要がなく、ドリンクは飲み放題♪
ゲームは…難しそうなので着手しておりませんが、漫画は素晴らしいです!
よく漫画なんて絵を見れば台詞を読まなくても話が分かってしまうと揶揄されますが、
裏を返せば絵という物はそれだけ多くの情報量を無理なく伝える手段としては非常に有効な手段だと思いました
そしてその優れた情報伝達力のお陰で小説ではあまり見られないアクション性の高い物語が多く楽しめ、小説を主に楽しんでいた私にはどれもこれも非常に新鮮な感動を与えてくれます
一生物の膂力のみで星を破壊するような神をも超える強者同士の戦い…
剣と魔法の異世界ファンタジー…
そして…先生の様な不良少年たちの喧嘩のお話…
でも…
物語に終わりがあるように…
この新鮮な楽しみにも終わりが来ます
漫画の主人公たちと違って卑近な理由…
でも私にとっては切実な理由…
もうお金がありません…
店員「ご利用、ありがとうございました!」
漫画喫茶で精算を済ませ、もう補助硬貨しか残っていないお財布の中身を見て、途方に暮れます…
これから…どうすれば…
具体的な方法を考えようとしても何も思いつきません
頭の中に堆積するのは尽きる事のない不安…
その不安に押し流されるように…
涙が溢れてきました…
そんな折――
??「ねぇ君…大丈夫?
ところで…これでどうかな?」
知らない中年の男性の方に声をかけられました
彼は人差し指だけを立てた手を見せています
…これは所謂…パパ活…というものなのでしょうか?
だとすればこの指の数は金額…ですか?
1万円…いえ、千円でも…今はお金が欲しいです
海未「…よろしくお願いします」
先日、心の中でとはいえ、冴島さんの所行を非難していたのを棚に上げ、了承しました
私は不良ですから…
私の了承を確認すると、男性は次の提案を出されました
中年「ねぇ泊まり、オッケー?
オッケーならもう3枚出すよ?」
海未「…はい、よろしいですよ」
…恐らく先日、先生の家で観たDVDと同様の行為を求められるのでしょう
正直、怖いです
…がお金だけでなく一晩の宿が得られるのなら、それも構いません
私は不良ですから…
中年「それにしても君、今時やけに丁寧な言葉遣いだね?
まるでμ'sの…ってもしかしてその制服!」
海未「!…すみません、やっぱりやめます!!」
私は不良です…
自分なんて穢れてもいいと思ってました…
ですが…μ'sを貶めるような事は…
穂乃果やことり達を失望させる事は…
やはりできません!!
中年「ちょっとw
一旦、オーケーしといてそれはないんじゃない?」
海未「ごめんなさい!
本当にごめんなさい!!
やっぱり無理です」
男性は私の手を掴んで食い下がります
私がどんなに嫌がっても強引に迫られてはもう…
ドカ!
…え!?
海未「…先生?」
中年「な、何だね?君は!
いきなり人を蹴飛ばして!」
英吉「俺か?
俺はこいつの部活の顧問だ!
俺の目の前で生徒にパパ活しかけるとはいい度胸だな!!」
中年「え?」
英吉「ここら一帯は冴島っつー俺のダチがお巡りやってんだ
手ぇ引かねぇんなら呼んで二人で追い込みかけんぞ!?
…失せろ!」
中年「ひ、ひぃーーーーっ!!」
英吉「舎弟RXからタレコミがあってな
それにしても間一髪だったな」
海未「先生…!
ひっく、えぐ…!」
私は鬼塚先生の胸の中で泣きました
先生は何も言わず、頭を軽く撫で続けてくれました…
そして私の気持ちが落ち着いた頃、
腰を落ち着けるため、カラオケボックスに誘われました
英吉「ここなら人目を気にしないで話せる
…まぁ、ちと騒がしいが、その分声が漏れにくいしな
それとも折角だから歌うか?
もう3日も歌ってないんだろ?」
海未「いえ…それよりお話、したいです」
英吉「あぁ…
まぁ大体はお前のお母さんから聞いたけどな」
それから私は既にお母様から聞いたであろう事の顛末を自分の口で話しました
先生は他の先生のような親の肩を持つような…大人の理屈で反論せず、一緒になって本気で共感してくれました
その後は漫画喫茶が楽しかった事、お金が少なくなり、不安になった事等を話しました
でも3日も家出してすっかり私も不良になってしまったと言うと、大笑いされたのは悔しいです
英吉「ププ、お前、その程度で不良とかw
せめて少年課に名前覚えられてから言えよ
あ、もちろん、悪さしてなw」
海未「そんなに笑わないでくださいっ
私にとってはこれでも大ごとなんですからっ
後、教師が生徒に悪さを勧めないでくださいっ」
すると、何故か先生は今まで見せた事がない真剣な表情になり、こう言いました
英吉「…そうだな
俺は…お前らを舐め過ぎてたよ」
ガツン!!
先生が突然、テーブルに強く額を打ちつけました!
海未「!!?…先生!何をしてるんですか!!!
額から血が…!」
英吉「これでいいんだ…
これは自分にヤキ入れたんだよ!
このままにしておいてくれ…!」
海未「…どうしてですか!」
英吉「俺のせいだからだよ
俺が…もっと信頼できる先コーなら、
お前を3日間も一人で苦しめる事なんてなかったはずだ…
思えば音ノ木坂に来てから俺は遊んでばかりだ
お前らは吉祥学苑のガキどもに比べて素直な奴ばかりで、
あいつらの様なシャレにならねぇ心の闇を抱えてるわけでもねぇ…
だからどっかでお前らの事を舐めてた
だからテキトーに思い付きで何かやって、
理事長に言われた通り、お前らをやらかし共から守りさえすりゃ良いと思ってた
ラクショーだと思ってた…
だから…
そんな舐めたやり方で信頼なんて生まれるわけがねぇ…!
だから…お前みたいに親が悩みで…友達に相談し辛い悩みを抱えている奴に…
相談したいと思ってもらえなかった…
悩みを受け止めてやれなかった!」
海未「先生…うっ、ううっ…」
違うんです!
先生を信頼していないからではありません!
むしろ先生がいっそ本当にいい加減な人ならどれだけ話しやすかったか
相談などではなく、自分の苦しみ、怒りを貴方に遠慮なくぶつけられましたよ
でも先生…先生はやらかしの方々から守るだけとおっしゃいましたが、
ただ、それだけでもどれほどありがたいかわかりますか?
女の身で猛っている男性に相対するのが、お強い先生にはどれだけ怖いのかわかりますか?
私達に代わって立ち向かってくださるのがどれだけ心強いかわかりますか?
だからどうか自分を責めないでください
それに…先生に相談できなかったのは…
海未「先生に相談できなかったのは…
私自身のせいなんです!」
英吉「?…どう言う事だ?」
海未「私…いつもいつも…先生に文句言ってばかりで…
嫌われてるって…思ってました…
それなのに自分が困ったから相談なんて…ムシのいい事できません!!」
英吉「…馬鹿
女子供なんてそれくらい身勝手でちょうどいいんだよw」
海未「…そういうものなんでしょうか?」
英吉「そーゆーもんなの!
それにお前が言ってる事は大体正しいし、
それに別に俺は嫌いじゃねぇよ!」
海未「…嘘です!
海未山田とか変なあだ名つけたじゃないですか!」
英吉「あ、あれはちょっと穂乃果達のウケを狙ったというか…」
海未「それにそもそもあのあだ名は内山田先生に対しても失礼です!
いいですか?
そもそも姓というものはその人個人だけでなく一族を示す名前であって、
それを使ってふざけるという事はその人だけでなく、その人の一族全体を…」
英吉「プッ!」
海未「何なんですか!?
急に笑って!」
英吉「あ、いや、いつもの調子が出てきたと思ってよw」
海未「それは…先生の方がいつもの調子で私をからかうからです!」
英吉「しっかし今のセリフ、ハゲ山田に聞かせてやりたいぜ!
あのおっさん、女子高生…それもスクールアイドルにかばってもらえるなんて感動モノだろうなw」
本当にいつも通り…
でも…このいつも通り…取り戻せるものなら取り戻したい…
英吉「…そろそろ帰ろうか?」
海未「…え!?」
英吉「そう怖がるなよ
話した感じじゃ、お母さんの方は少なくともスクールアイドル活動は賛成してる感じだったし…
それに親父さんは今日は緊急の任務とかで帰らないらしいぞ」
いないと言っても今日だけじゃないですか…
明日になればまた父に責められるのは目に見えてます
でも…もう行く当てもありません…
それに…心配して私を探して助けてくださった先生を困らせたくありませんでした
…結局、先生のバイクに乗せてもらい、家に戻る事になりました