今回からアニメの一話に入っていきます。
ミーシャがよく喋ってる気がしますが気にしないでください。
おっす、おらアドルフ!
数日前から魔王学院デルゾゲードで働くことになったピッチピチの新米教師。これからの暮らしのことを考えると不安や戸惑いがあるけどそれと同じくらいに希望を持ってる22歳の混血魔族。
上司や同僚からは「これだから混血は」だの、「クズがっ」とか、「貧弱、貧弱ぅ!!」なんて言われて心が折れそうな日々。
でも、そんなことで負けたりなんかしないんだから!!
だってうち、男の子やもん!!
…………………………………………………いや、まあ慣れてますけどね。そういったことには。昔通ってたからね、母校なのよ。
問題はそこじゃない、そこじゃないんだよなぁ。
今日行われる入学試験でアノスが何かやらかさないか心配なんですよ。あ、心配って言ってもアノスのじゃないよ?俺の胃ね。それ以外に何があるって言うんだよ、ハハッ(白目)
1日1日と、入学の日が近づくにつれて胃にかかる負担が大きくなっていってるような気がする。入学すれば何かしらが起きるのは間違いない。ラノベってそういうもんじゃん?
しかも今年はあのネクロン家から"破滅の魔女"が入学するらしいからな。
お嬢様、ということは高飛車だろう(偏見)。これが示すことはすなわち、入学してから最初の方の授業でアノスとの決闘が起こるということ。う~ん、どこの無限の成層圏だよ。
あーー嫌だ嫌だ。神様、どうかその時までは私の心と生活に平穏をお与えください。
神様死んでたわ。じゃあ誰に祈ればええねん。魔王?元凶じゃん。
「サボってないで早く仕事をしなさい」
嫌悪感隠す気/Zeroで話しかけてきたのが俺の教育係のエミリア先生。俺はこの人の補佐、とは名ばかりの小間使いとして働くことになったんです。
最初に顔合わせしたときの顔が忘れられないんですよ。どんな顔だったのかは彼女の尊厳を傷つけかねないので言わないけど。
「全く、これだから混血は。七魔皇老の方々のお口添えがあったためにあなたのような身分の低い者でもデルゾゲードにて働けるという大変名誉な立場を得ることができたのです。そのことをゆめゆめ忘れないように。だいたい、混血というのは――――――――――――」
また始まったよ。いつもであればここからが長いんだが今日は違う。試験の準備があるからな!!
いやー残念だなーー!!まだまだ聞いていたかったけど試験があるからなーー!本当、残念で仕方ないよ!!
「――――であるからして、あら。もう時間ですね。それではあなたも持ち場に向かいなさい」
「了解です。(イヤッフーーーーー!!)」
あばよーとっつぁん!!
「ああ、それともう一つ。本日の予定がすべて終了したら私の所へ来るように。あなたにはいい加減純血と混血の立場をわからせる必要がありますから」
「え?」
それでは、と言ってこちらに背を向けこの場から立ち去っていく彼女を俺はただ見ることしかできなかった。
「調子乗ってすいませんでした」(ボリボリ)
今日初めての胃薬タイムはいつもより塩っぽい味がしました。
デルゾゲードの入学試験は受験生たちが一対一で戦い5回勝てば合格。その後は魔力検査を行い最後に魔王に関する質問にいくつか答えるだけというものだ。
俺がこの試験を受けた時はこれでいいのかデルゾゲードと思ったが試験をする側に立ってみるととっても楽。やることと言ったらせいぜいが案内整理くらい。
「それでは試験を受ける方はお進みください」
これだけの人数を一人でさばけとかブラックすぎる。
「おお、アドルフではないか」
「ん?アノスか」
ついに来たかアノスヴォルディゴード!
だがこの時のために準備はバッチリだからな。様々な状況をシミュレーションして既に覚悟はできている。
行くぞ魔王、武器(胃薬)の貯蔵は十分だ!!!
「アノス、この人知り合い?」
「ん?」
「ああ、こいつはアドルフ。俺の叔父だ」
気づいたらアノスの隣に守ってあげたくなるような銀髪美少女がいた。
え?なにこれ。コイツ生まれて1か月でナンパしたの?とんだプレイボーイじゃねえか。
「そしてこっちはミーシャだ」
「ミーシャ・ネクロン。よろしく」
「紹介されたとおりこいつの叔父のアドルフだ。あと今年からここの教員になったからよろしくな」
こんなかわいい子と学院生活を送りたかった。
今思い出してもろくなものではなかったあの日々。純血に喧嘩を売られてはそれを買い続け皇族に目をつけられるわ、それが原因で同じ混血からは恐れられていた日々。
四面楚歌、孤立無援、"ぼ"で始まって"ち"で終わるあれである。
苦い思い出ではあるがそれがあったから今があるんだよな。
うん、それならよかったよかった。………………………………なんて思うわけないだろバァカ。
「ん?ネクロン?」
「………………うん」
ネクロン家から二人も来るとか聞いてないのだが、おかしいな。
七魔皇老の一人"アイヴィス・ネクロン"の直系であるから話題の一つや二つあるもの。実際、一人はいろいろと有名になっている。
だというのにこのミーシャにはそういったものは一切無い。表情が暗くなったことも踏まえてなにか事情があるんだろうがそう言ったものには踏み込まないのが平穏への一歩なのです。
アノスがどうにかしてくれるでしょ(他人事)
「それはそうとして、二人とも試験がんばれよ」
「もちろんだ」
「うん、ありがとう」
会場へと並んで向かう二人を見送る。アノスがミーシャの歩幅に合わせて歩いてるのか、イケメンじゃねえか。
まあ、それよりも
「アノス」
「どうした」
「頼むからあまりやりすぎないでくれよ」
「………………」
「………………………………」
「フッ」
せめてなんか言ってから行けよ。
「アノス、あの人と知り合いだったんだ」
「アドルフのことか。何だミーシャ、会ったことがあったのか?」
「ううん、名前だけ。有名だから」
「有名?アドルフがか」
「うん。数年前に多くの皇族を相手に圧倒的な力を見せつけた為に純血魔族と混血魔族の間で戦争が起こるんじゃないかって言われてた」
ふむ、そんなことがあったのか。
純血である皇族たちは混血だと見下していた相手にやられたのだからあまりいい顔はしないだろう。
こういった話は母さんたちはもちろん、アドルフ本人も黒歴史だなんだと話さないからな。
ちょうどいい、二千年後であるこのディルヘイドで何が起こったのか知るいい機会だ。
「それで、結局どうなったのだ?」
「その後も対立は続いてた。だけど最終的に七魔皇老と話し合うことで解決した」
「七魔皇老が直接出向くほどだったのか?」
「うん。最初は数人での言い争いでそこからどんどん過激になっていった。そんなある日、ディルヘイド全域を襲う事態が起こった」
ここから先は一般には知られていない。私も偶然知っただけだからあまり詳しいことはわからない、とミーシャが言う。
興味深い話だ。あの七魔皇老が関わっているだけではない。異世界から来たアドルフがこの世界ではどのようなものなのかはこの俺でも知りえないことだ。
「皇族が彼の逆鱗に触れた。そしてディルヘイドが雲に覆われ各地に雷が落ちた。
その雷は森を焼き、山を崩し、建物を崩壊させた。
幸いなことに死者はでなかったものの傷を負った者が数えきれないほど出た」
「それをアドルフがやったと。そういうことか」
「うん。表向きは滅多に起こることはない最大級の災害として扱われてる」
「ならばミーシャよ。お前はどこでそれを知ったのだ」
「………………ネクロン家本家で、アイヴィス・ネクロン様がおっしゃっていたのをたまたま聞いた」
アイヴィスか。奴に出会ったならば聞くことが増えたな。
奴とは近いうちに会いそうな気もするしな。
「あともう一つ。アイヴィス様は彼のことをこう呼んでた」
――――――――雷帝