無気力学生が配信を始めてみた。   作:16色のレイン・コーラス

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 前書きで自己紹介を始める作者が嫌いなんですが、下らない前書き自体は嫌いじゃないんですよね。多分、分かれ目は自分の名前を出しているかどうか。

 尤も、この前書きは客観的に見ていらない話ですけど。


3 蝉ですよ

「……それでは実況を始めていきたいと思います。【Cicada(シケイダ)】というゲームでして……蝉のお話ですね」

 

 ダウンロードファイルの中には自分で分類したものでないゲームもあるのですが、このゲームはその中でも特に評価が高かったものです。せっかく実況するなら面白いゲームの方が良いでしょう。

 

”物騒な名前だ”

”蝉の英語名やぞ”

”そうなの?”

 

 そういえば、海外の蝉は日本の蝉とは違う種類なんですよね? やっぱり大きかったりするのでしょうね。

 

「『彼は地下室で目を覚ます。滴り落ちる雫の音が、彼を地上へと誘う。』……ノベル要素もあるのでしょうか? 『新しい自分になる日だ。殻を破り捨て、じっくりと翼を広げていく。』……蝉ですからね。『パーティ会場へと急がなければ。』避けゲーですか。でも蝉がそこまで長い距離を飛べるとは思えないのですが……どうでしょう?」

 

 蝉が空を飛んでいるイメージはあまりないですけど。

 

「これは……操作が難しいですね。入力した方向へかなりの速度で進んで行きます」

 

 やってみるとこれはかなり難しいですよ。そうこうしていると接敵してしまいます。

 

「何とも言えない気色悪さの敵が……。蛹の中に入っている蜂みたいな見た目をしています。ああ、後ろからも。……飛び過ぎて画面外に出ると駄目なんですね。理解しました」

 

”どんなイメージだ”

”分からんでもない”

”まっくろ……”

 

「ブロックを貫通してくるのはどういう了見なんですかね」

 

”了見で草”

”いや分かるよ、理不尽だもんね”

 

 いや、だって石の中ですよ。すり抜けてくるのは平面ゲームとはいえどうなんでしょう。洞窟物語にあるような網の足場ならまだ分かるんですけど。出現の直前まで分からないですし。

 

「……よく見たらずっと向こうから見てるんですね」

 

 うっすらと、障害物の陰になっていて分からないのですが、黄色がかった怪物の顔がじっと主人公の蝉を見つめています。

 

”ん?”

”本当だ、怖え”

”何が?”

”背景に目が浮かんでる”

”ああ! フクロウっぽいな”

 

 フクロウっぽいという意見は斬新ですね。見え……ません、残念ながら。

 

「うわっと、変なところを触ってしまいました……。変換ですかね。半角を。使わないボタンは削り取りたいですね」

 

”あるある”

”なんて?”

”発想が物騒”

 

「うわ、挙動がバグっているのが来ましたね……。これは、なんでしょう。ハチスズメ? スズメバチ? いやスズメバチではないですね……」

 

”これ正常なんか?”

”ハチスズメとスズメバチは全然違うんですが……”

 

 集中が必要な場面のためチャットを見る暇もありません。

 敵Mobはいろいろな方向へ曲がりくねった挙動をしながらも、少しづつ近づいてくるようです。

 

”ハチドリ的な?”

”追尾してきてる?”

 

 幸いある程度の時間制限があるのか、自機*1が画面の中を逃げながら一週した後は風に流されるようにして画面の外へと去っていきました。

 

「今度は群れを成してきましたよ? 上からも来ますね。虫って上下に飛行できるのですか? いったん画面外ぎりぎりにまで出て、……無理して抜ける必要はありませんでしたね。体力を半分ほど持っていかれました」

 

 やっぱり操作が難しいです。僕はゲームが好きですけど、得意だというわけではないんですよね……。

 

”上から来るぞ、気をつけろ!”

”ほんとに上から来るやつやん”

”細かいことは気にするな”

”右腕と左足持ってかれてそうなダメージだ”

 

 進んで行くと、今度は様々な高低差の足場に乗ったカエルが現れました。

 

「カエルが……痛い。カエルの正面に近づいてはいけないんですね。コースがかなり限定されますね。……そもそもカエルって、蝉を食べるんですか?」

 

”大きいカエルなら食べるんじゃね?”

”あいつらバッタとか食べてるからなぁ”

”指も食べるし”

”なにそれこわい”

”かわいいやで”

 

 チャット欄を流し読みしてみてもよく分かりませんでしたが、食べないということはないのでしょうか? アマガエルより大きなカエルは見たことがないのですが、都市部にある両生類館にでも行ってみましょうか。

 ……そういえば、このカエルの見た目はアマガエルですね。それなら蝉は食べないということで……。

 

「蜂がテーマなのでしょうか。また別の種類の蜂の群れが……顔が怖いですね。これはどこにいても当たりませんか? ライフが……よし、残りました。僕の勝ちですね。赤ゲージ*2ですけど。到着です。ここからはずっとEDですか?」

 

”おつおつ”

”よく残った”

 

 本当にぎりぎりでした。初見殺しが多かったので慣れればもっと効率よく進むことができるとは思いますけれども。

 

「あとはエンディングが流れているだけのようですね。燃え尽きました……融ける」

 

 エンディングの陽気なサンバのような音楽が流れています。疲れているときに音楽流されるとちょっとイラッとしませんか? クラシックにしてください。そもそも蝉も関係ないですし。

 

「今日の配信はここまでにしておきます。中学生なんで、8時前に終わらないと……どうなるんですか?」

 

”自分で分からないのかよw”

”そうだね労基だね”

”収益化もしてないし平気じゃない?”

”そもそも本当に中学生かどうかは分からないし”

”免許証出せや!”

”だから中学生だって”

 

「免許証は持ってないです。……そういうわけなんで、次もよろしくお願いします。チャンネルのご登録もよろしくお願いします……」

 

 今日の配信も無事に終了しました。

 

 久しぶりに、最近参加していなかった放送部のチャットでも見てみましょうか。

*1
自分の操作しているキャラクター。

*2
残り体力がほとんどない

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