それが日常   作:はなみつき

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ここからが本当の魔法少女

##この話は修正されました##


検診と真実と16話

 

 

 

 10月に入り、日に日に涼しくなってきた。そんな日に八神家全員ではやての定期検診のために病院に訪れている。はやては検査室に入るがおれ達は外で待っている。すると、しばらくしたら何故か石田先生だけ出てきた。

 

「ちょっといいかしら?」

 

 石田先生は「今だから言うわ」と言って話し始めた。

 

 

 

 

 

 

「治らない? 本当にですか!」

 

 そう言ったのはシグナムさんだろうか。しかし、その言葉はここにいるみんなの気持ちを代弁したものといってもいいだろう。

 

「ええ、はやてちゃんの足の麻痺は原因不明。麻痺の原因もわからないから対処のしようもないの。残念ながら治療の方法は今のところわからないわ。」

 

 はやての足は治らない。常々なるべく考えないようにしていたことだが改めて聞かされると堪えるものがある。

 

「でもね、良くはなってないけど最近ははやてちゃんの麻痺の進行はほとんど止まってると言っていいわ」

「それはどういうことなんでしょう?」

 

 次に聞いたのはシャマルさんだ。ヴォルケンズの治癒担当の彼女なら石田先生から詳細を聞けば何か分かることがあるかもしれないな。

 

「ええ、本当に今だから言うのだけど……はやてちゃんの麻痺があのまま進行していたら麻痺が徐々に上っていって心臓にまで達していた可能性があったわ」

 

 !?

 

「それって……」

「もしかしたら死んでしまっていたかもしれない……というわけね」

 

 こういうのを衝撃の事実というのだろうか。

 

「で、でももう大丈夫なんですよね!?」

「はい。麻痺はあれ以降進行している様子もないようですし、最悪の事態はしばらくないでしょう」

 

 みんなが安堵のため息をつく。石田先生は「でも」っと続ける。

 

「まだ安心はできません。進行が止まった理由も原因不明ならまた原因不明の理由で麻痺の進行が再開される可能性もあります」

 

 確かにそうだ。結局なにがいけないのかもわからない現状で安心してしまうなんて愚の骨頂だろう。しかし、本当に原因はなんなのだろう?

 

「ちなみに、いつ頃から進行は止まっていたんですか?」

 

 今度はおれが気になっていたことを聞いてみる。

 

「そうね、あれは……うーん……今から半年くらい前かしらね?」

 

 半年くらい前? ていうと季節で言うと春。月的には4月か5月と言ったところか……一体なにがあったんだ? もしかしなくてもおれか? でもおれの力は俺だけにしか効かないんじゃ……あの時そんなことおれは指定してないし神(仮)も何も言ってなかったな。おれに近い人(動物)にも効果が発揮されるってか? じゃあやっぱりおれか? でも、もしそうならはやての足の麻痺そのものが治ってもいいような気がするんだがな。わからん。

 

「みんなお待たせや」

 

 はやてが検査室から出てきたところでこの話は終わりになった。

 

 

 

 

 

 

 

 今あたしたちははやてとマサキが寝たのを確認してからヴォルケンリッターだけで話し合いをしている。

 

 はやての足が治らないなんて……

 今日病院で聞いたことはあたし達のすごい衝撃を与えるのに十分な話だった。それに……

 

「くっ! 私たちが主を苦しめていたとは! 仮にも主の騎士だというのに!」

「ごめんなさい、私が気づいていれば……」

「いやシャマルを責めているわけではない。これは私の落ち度だ」

 

 そう。ここ(地球)の技術で原因不明のはやての足の麻痺―もちろん今でも原因の分かっていない病はたくさんあるだろうが―だが、あたし達は分かっちまったんだ。

 

「はやてちゃんのリンカーコアが異常に収縮していること。そして、はやてちゃんの魔力は絶えず闇の書に供給されていること……」

「私達の維持のために少なからず魔力を消費していることも無関係ではないだろう」

 

 はやて……ごめんよぉ……

 

「闇の書を完成させなければ闇の書自身が主に魔力蒐集を催促する……ということなのか?」

「わからないわ。今までの主は闇の書について知るとすぐに私たちに魔力蒐集を命じていたからこんなことは初めてで……」

「しかし、魔力の蒐集を催促させるために主を動けなくさせるようでは意味がないのでは?」

「ええ、本当は少し苦しい程度でしょうね。それに魔力の蒐集を行うのは私たち守護騎士だということもあるかもしれないけど、主を殺してしまったら意味がないわ。おそらくはやてちゃんのリンカーコアが成長途中、それも本当に幼い時から闇の書に蝕まれていたからこその異常なのかもしれないわ」

 

 だったら闇の書をさっさと完成させちまえばいいってことだな!

 

「ならさっさと完成させちまおうぜ!」

「まてヴィータ。魔力の蒐集を行うとなると最も効率がいいのは人から奪うことだ。しかし、そんなことをすれば管理局の目に留まるのは確実。少し作戦を練る必要があるだろう。」

 

 そんなこと言ってる時間はないだろうに!

 

「666ページもあるんだ。幸い主の麻痺の進行はとま……ん?」

 

 ん? シグナムはペラペラとめくっていた闇の書のページをめくるのを突然やめ、話すのもやめてしまった。

 

「なっ! これはいったいどういうことだ!」

 

 な、なんだってんだよ、突然。それにそんな大声出したらはやてたちが起きちまうよ。

 

「シー! 静かにシグナム!」

「そんなことを言っている場合ではない! これを見ろ!」

 

 そういってシグナムは闇の書のあるページをあたしたちに見えるように向けてくる。ほんと、なんだって言うんだ……てっ!

 

「闇の書のページが埋まってやがる!」

「ホント! でも、なんで……誰かが勝手に蒐集していたの?」

 

 シャマルの言葉に一同が首を横に振る。

 

「では、一体何が理由なんだ」

 

 シグナムがそう言うと一同は考え込む。

 

「今までにこんなことはなかった?」

 

 シャマルが言う。

 

「ではいままでと何か違うことがあるのか?」

 

 シグナムが言う。

 

「でもそんなことあるか?」

 

 あたしが言う。そして……

 

「……あいつだな」

 

 ザフィーラが言う。

 

 あいつかー!!!!

 

 

 

 

 

 その時、ヴォルケンリッターの心は一つになった。今までの主は闇の書の力を手に入れるとどこぞの王の力のように孤独になっていった。強すぎる力は頼りにされるが、同時に恐れられもする。

 そして、今回の主はヴォルケンリッターに魔力の蒐集を命じることもなく、人柄も変わることもなかった。その主に守護騎士達が暮らし始める前から一緒に暮らしており、守護騎士達が現れてからも一緒に暮らして主といつも一緒にいる人物。今までとの相違点。

 

 坂上公輝

 

 

 




王の力は人を孤独にする・・・○
神(仮)の力は人を健康にする・・・○

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