それが日常   作:はなみつき

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##この話は修正されました##


クロノと闇の書と19話

 

 

 

 時空管理局巡航L級8番艦アースラと呼ばれる艦に乗る時空管理局執務官クロノ・ハラオウンは考えていた。

 

 

 

 

 

 

 最近本局からおかしな情報が上がってきている。様々な管理外世界で原生生物が異様に活発になっているということ。今までそのような兆候は見られなかったのだが、しばらく前から見られるようになったらしい。一つの世界で起こっていることなら偶然の一言で片付けられてしまっただろうが、同様のことが様々な世界で起こっているというから何かが起こっていることは間違いが無いだろう。

 

「クロノくんはこの件どう思う?」

「ああ、それは僕も考えていたんだ」

 

 僕の同僚であり、アースラ通信主任兼執務官補佐のエイミィ・リミエッタがそう言ってくる。

 

「やっぱりなにかの間違いじゃない?」

「いや、これだけ様々な次元世界で同様なことが起こっているということを考えると偶然という言葉で片付けてしまうのはまずいだろう。誰かが何らかの思惑をもって行動を起こしていると考えたほうが合点がいくよ」

 

 さて、ここで何故管理局が管理外世界のことに首を突っ込み始めたかの説明をしよう。事の発端はある救難信号だった。その救難信号はある管理外世界から発せられたものであった。そして、それを発したものは違法物の運び屋である。管理外世界ということで管理局の目の届きにくい場所というのは同時に犯罪者にとっても格好の隠れ場所ということである。

 

「でもなーその現象が起こってる世界にこれといった共通点があるわけでもないしなー」

「そうなんだよ。強いて言う共通点だって原生生物の活発化くらいだ」

 

 それで、その犯罪者はいつものように隠れ家にいたところその世界の原生生物が多数で襲ってきたらしい。1匹程度なら逃げることも可能だったのだろうが数が多過ぎてそれもできなかったらしい。

 

「それにしてもよくあれだけの原生生物に囲まれて生きてたもんだよね」

「それも不思議なんだよ」

 

 多数の原生生物に囲まれた犯罪者は死を覚悟するが原生生物は一向に危害を加えようとはしなかったらしい。しかし、逃げようとするとどこまでも追ってきたという。その謎の緊張感から脱するために仲間に救援を求めるも助けは誰も来てもらえず、普段ならありえないが全方位に(管理局にももちろん届く)念話の救援信号を出したらしい。

 

「うーん……わからん!」

「まあ、そうかっかすることもないだろう。まだ可能性があるかもしれないって程度なんだから。僕たちにできることは近隣の世界の異変に出来るだけ気を向けることくらいだよ」

 

 これ以来管理外世界からのSOSはかなりの頻度で確認されるようになり、どこで起こるかもわからないので次元航行中の全艦には「出来るだけ気に留めておくように」という通信があったのだ。

 するとエイミィはパンっと手を打つ。

 

「ま! 考えたって仕方がないことはしょうがない!」

「全部が全部そういうわけにはいかないけどね」

 

 僕は苦笑いをすることしかできない。しかし、今の情報が少ない状況ではそれも仕方がないことだろう。

 

「そろそろフェイトちゃんはなのはちゃんに会えたかな?」

「そうだね、そろそろそのくらいの時間になるだろう」

 

 エイミィはこの話題はここまで、というように話題を転換する。

 フェイトとは少し前に起こった事件の重要参考人であったが情状酌量の余地が十分にありということで基本的に無罪となった少女である。また、なのはとはその事件に関わり事件の解決へと大きな役割を果たしたと言える少女であり、フェイトの友達である。

 

「なのははフェイトと合流したらアースラにも来るそうだよ」

「わーお! またなのはちゃんに会えるんだ! クロノくんも嬉しんでしょ? このこの!」

「なっ! そりゃ嬉しいけど、そういうのは全然ないからな!」

 

まったく、僕の相棒には困ったものだ。

 

 

 

 

 

 

「久しぶりなの! クロノくん! エイミィさん! リンディさん!」

「久しぶりだな」

「久しぶり、なのはちゃん!」

「久しぶりですね、なのはさん」

 

 今ここには僕たちアースラ組となのは、フェイト、フェイトの使い魔のアルフ、ユーノが揃っている。ああ、リンディというのは僕の母で、ユーノはなのはに魔法を教えたスクライア一族の少年である。

 

「今日はフェイトと積もる話でもして、ここに来るのはまた今度でも良かったんだが」

 

 ぼくがそう言うと、

 

「会えるんだったらまた早くみんなに会いたかったの! それに、フェイトちゃんとはこれからもたくさんお話ができるしね」

「うん、なのは」

 

 なのははフェイトに向かってそう言っている。この子は相変わらずのようだ。

 

「それじゃ、再会を祝してお茶でも飲みましょうか?」

 

 母さんがそういう。本当ならこのあと久しぶりにあったなのはとお茶を楽しむところだったのだが、どうやらそういうわけには行かないようだった。

 けたたましくなるアラームがアースラ全体に何かあったことを知らせる。いち早く、アースラクルーとしての役目を果たすためにエイミィが自分の指定席に座り詳細を伝えてくる。

 

「近隣の管理外世界に魔力反応を確認! 場所は98管理外世界! 5名の無許可転移を確認!」

「行ってくれる、クロノ?」

「了解です艦長」

 

 僕はそう言ってバリアジャケットを展開する。

 

「あの……私も行っていいですか!」

 

 なのはが艦長に出撃の許可を貰おうとしているようだ。しかし、彼女は局員ではないためそんな義務もない。だというのになにかせずにはいられないらしい。僕は彼女には何を言ってもしょうがないことを前回の事件でなんとなく分かってしまっているがこれは言わなければならない。

 

「何があるか分からないし、君はここに残るべきだ」

「でも……」

 

 と、そこへ、

 

「私も出ます」

「そう、フェイトちゃんも行ってくれるのなら大丈夫よね?」

 

 母さんがそういうこともわかっていた。ハァ……

 

「……分かりました。それじゃ、行くぞみんな!」

 

「「「「はい!」」」」

 

 出撃するみんなの返事が艦内に響く。

 

 

 

 

 

 現場に到着した。まだ奴らはなにかしているようではないが。無許可の長距離転移魔法の使用は違法だ。

 

「こちらは時空管理局執務官クロノ・ハラオウンだ。おとなしくしてもらおう」

 

 その時僕は気づいた。今対面している奴らに見覚えがあるということを。バリアジャケットは以前と違うかも知れない。本の上に座っている少年はつばが大きい帽子を深くかぶっているため顔は確認できないが、おおよその見当はつく。

 そう。その少年が座っている本。闇の書と言われる魔道書。その本の主を守る守護騎士。闇の書。闇の書。……父さんが死んだ原因となった闇の書!

 

 

 

 




地球に1番近い管理外世界での出来事ということで

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