それが日常   作:はなみつき

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ハッピーエンド主義

Wikiより引用あり。

##この話は修正されました##


融合と28話

 

 

 

 

 

 

 長く、暗い夢が終わり、ようやく私の現実が始まった。そんな気分だ。だが、私に残された時間は限りなく少ない。現実と言うのはなんと残酷な物なのだろうか。だが私はそれに抗う。なぜなら、私は会ってしまったからだ。あのやさしい主に。まだ生きたいと思ってしまった、願ってしまった。

 それでも、わたしにはただお願いすることしかできないから……

 

 

 

 

 

 

 

 

「……そんなことおれにできんの?」

 

 あんなに畏まって助けを請われた経験なんてないからつい聞き返してしまう。

 

「できる、むしろマサキしかできないことなんだ」

 

 他の人にできなくて、おれにしかできないこと。はて、そんなすごいことをおれにできただろうか。

 あ、ひとつ心当たりがあるな。

 

「今まで夜天の書を闇の書たらしめていた防御プログラムはアルカンシェルによって蒸発させられた。それによって今は私が主導権を握っている状態だ。だが、しばらくすると防御プログラムは再生し、私が握っている夜天の書のコントロールは再び奪取されるだろう。それを防ぐためには過去の主たちによって改変された夜天の書を元あった正しい姿に戻さなければならない」

「戻すことはできないのか?」

 

 この話の流れならそれはできないのだろう。だが、一応相槌としてわかりきったことを聞く。

 

「ああ、恥ずかしながら、私が元の夜天の書を思い出すことができないのだ。元の夜天の書について調べるにしても防御プログラムが再生するまでに調べることは無理だろう。だが、君なら……君ならそれができる! 私は夜天の書の中から君の事を見て、君のレアスキルについて考えていた。君の能力は生き物をその個体が考える最高の状態へとするものなのだろう。その最高の状態とは、理屈でも、理由でもない、その個体が考えるふわふわとしたものなのだろう」

「まあ、そんな感じなんだろうな」

 

 おれが転生する時にもらったこの能力、おれが快適に生活するためだけの能力のつもりだったんだがな。おれのお願いが大雑把過ぎたから、あの時この能力をくれたやつが拡大解釈したのだろうか? 今となっては何も分からない。もういっぺん死んでみるか? さすがにお断りだ。この世は何が起こるか分からないものだな、本当に。……ん? おれの能力で夜天の書が直せるなら……

 

「夜天の書が闇の書だった時に、夜天の書はおれとずっと一緒にいたじゃないか。それで夜天の書は正常にならなかったのか?」

「あの時は防御プログラムが夜天の書のコントロールを持っていた。そのため、君の能力は防御プログラムのいいように使われていたというわけだ。だが、そのコントロールを私が持っている今なら、私の認識によって夜天の書を元に戻すことが可能だ」

 

 なるほどねー。防御プログラムに上手く使われていたものを、こんどはこっちが使ってやろうっていうのか。

 

「で、その方法はどうするんだ? 夜天の書が直るまでずっとおれが抱いてるのか?」

「それでも直すことはできるだろうが、おそらくとてつもない時間がかかるだろう。もっと君のレアスキルの根源に近づいた方がいい。つまり……」

「つまり?」

「私とユニゾンしてもらう」

 

 ユニゾン……ユニゾン? なんだろう、新しい言葉が出てきたな。

 

「ユニゾンとは?」

 

 おれはリインさんに聞く。

 

「まず、私は闇の書の管制人格であると同時に融合型デバイスでもある。融合型デバイスは状況に合わせ、術者と『融合』し、魔力の管制・補助を行うものだ。」

「へー、そりゃ便利そうだな」

 

 今までおれが見てきたデバイスはパソコンのように使用者を補助する道具のようなモノと思っていたが、意思を持つデバイスっていうのもあるんだな。

 

「しかし、融合適性を持つ者の少なさや術者に合わせた微調整・適合検査の手間、そして何よりデバイスが術者をのっとり、自律行動を始めてしまう『融合事故』というものが起こり、ユニゾンデバイスはあまり普及しなかった」

「適性が必要なのか、それはおれにはあるのか?」

 

 まあ、この流れならあるんだろ。

 

「いや、ない」

 

 ないんかーい。

 

「私とのユニゾンで必要なことは夜天の書との繋がりだ。だが、君とは特にその繋がりはない。しかし、君のレアスキルによって私が君を乗っ取ることを許さないだろう。なぜならばそれは君の考える正常な状態ではないからな」

 

 ふむ、適性の方もおれの能力がゴリ押しで何とかしてくれるってわけね。

 

「だが、この世に絶対なんてものはない。万が一君に危険があるかもしれない。それでもやってくれるか?」

 

 危険があるかもしれないからおれがリインさんを助けることをやめるって? 違うな、間違っているぞリインさん! もともと一度死んだ身、死ぬのなんて怖くはない! ……って言いたいところだが、正直言って、おれという人間が消えてしまうということを考えると、それはとても怖いことだと思う。むしろ、一度死んだ身であるからまた同じ喪失感を味わうのはいやだ。それでも……

 

「やるよ、リインさんとユニゾン」

 

 答えなんて決まってるじゃないか。リインさんは八神家の一員だ。リインがいなくなるのははやてが悲しむ。そんなことはさせたくない。半年ほど一緒にいて、彼女にはたくさんの恩がある。だが、そんなこと関係なく、おれははやてを助けるし、ヴォルケンズもリインさんも助ける。だって、おれも八神家の一員だからな!

 

「ッ! ……そうか……ありがとう……ありがとう……」

 

 どうか、この選択によってみんなが幸せになれる未来に行けたらいいと思う。

 

 

「ユニゾンイン!」

「ユニゾンイン!」

 

 

 




公輝くんはこのために生まれたと言っても過言ではない。

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