それが日常   作:はなみつき

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##この話は修正されました##


家族と天井と2話

 

 

 

 今おれがどこにいると思う? 誰かの家の物干し竿に引っ掛かっているよ。自分でもわけがわからないよ。

 するとこの物干し竿の持ち主であろう車イスの少女がこちらに来るのが見えた。なんとなく寝たふりをしてしまったおれを誰が責められようか。

 

「ふんふーん……ん? なんや、私もう布団出したんやったっけ?」

 

 ふむ、どうやらおれは彼女に布団と認識されているようだ。おや? この状況は……よし。

 車イスの少女が近くに寄ってきたところでおれは顔を挙げて少女を見る。うむ、かわいい。「とんでもない美少女がそこに居た」という表現がぴったりだと思う。

 それはそれとして、おれは言わなければいけないことを言う、

 

「お腹すいた」

 

 完璧だ。若干男と女の立場が逆な気がするがおれは満足である。ネタもわからなさそうな少女にネタを振っといていったい何がしたいんだと思うだろう。おれもわからない。本当にお腹がすいてて頭がまわらん。

 だが、彼女はおれの予想を裏切ってくれる。

 

「ごめん。うちには夏の暑さでだめになっているであろう焼きそばパンも傷んだ野菜もないんや」

 

 その時おれは理解した。この子……できる!

 

 とりあえず物干し竿から降りました。

 

 

 

 

 

「じゃあ自己紹介やな。私は八神はやてや」

「おれは坂上 (さかうえ) 公輝(まさき)です。って、えー自己紹介しちゃう? 朝起きたら物干し竿に引っ掛かってた人を家の中にふつうに入れちゃって自己紹介しちゃう? 超不審者じゃん、おれ」

 

 もしおれが彼女の立場なら即行で家の敷地から放り出すだろう。彼女はそうする事も無く、おれはそのまま家にまでいれてもらってしまった。

 

「で、なんであんなところにおったんや?」

 

 うむ、当然の疑問ですな。とりあえずありのままあったことを話すことにしよう。

 

「……ということなんですよ」

「ふーん、じゃあ公輝くんは転生してほんとは20歳で体型が維持できるんやな?」

「そうそう」

 

 どうやら伝わったようだ。

 

「またまた御冗談を」

 

 どうやら信じてはもらえなかったようだ。

 

「まあ信じてもらえるとは思ってないよ」

 

 ああ、言う機会がなかったから言わなかったけど私こと坂上公輝は二十歳でした。でも今はどう見ても小学生です本当にありがとうございました。うん? 中二病が治ったのが4年前って言ったな? そうだ、おれは高一まで患者だったよ。言わせんな恥ずかしい!

 

「まあ公輝くんがちょっと早い中二病患者だってことは置いといて」

「ちょっ」

 

 せっかく完治したのに中二病患者に見られるとは……ッ!

 

「家とかはどうするんや?」

「ちょっと今ホームレスです」

 

 知識とかは引き継げるから転生って楽できると思えたけど、無一文で知らない土地に放り出されるって結構きつくね?

 

「じゃあ……うちに住まへん?」

「君はもうちょっと警戒心を持つべきだね。そもそもこんな不審者を家に入れちゃだめだよ」

「でも私に何か悪いことせんやろ? 私これでも人を見る目はあると思ってるんや」

 

 なんかドヤ顔でこっちを見てきたけど、それは根拠にはならないとお兄さん思うな。

 

「やから、公輝くんは私の住み込みのヘルパーっちゅうことで、どうや?」

「どうやって言われても……とっても嬉しいです」

「せやろ」

「本当にいいの?」

「ええで。じゃあ決定やな! 今日からここは公輝くんの家で私は君の家族や! あ、家族なのに公輝くんっていうのもなんやな、公輝くんだからハムテルくんやな!」

 

 ……あの漫画を知っていたか。

 

「君あの漫画読んだね?」

「将来の夢が獣医やったこともあるで! ってハムテルくんは私のこと君って呼んだらあかんで、もう家族なんやから。はやてや。あだ名つけてもええで?」

 

 女の子を名前で呼ぶなんて小学校のとき以来である。え? 彼女? 独身貴族万歳。

 

「じゃあはやてで」

 

 帰る家と迎えてくれる家族ができたのだった。

 

 

 

「とりあえず何か食べさせてください」

 

お腹がすき過ぎていたことを忘れていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 おれが転生して最初の夜を過ごした。暖かいベットで眠れたことはとても幸運だっただろう。野宿の可能性が微レ存どころかほとんどだったこととを考えるとはやてには感謝してもし足りない。

 さて、こんなことも考えられるくらいには覚醒してきた。

 

 朝である。

 

「またこの天井だ」

「そこは『知らない天井だ』ちゃうん?」

 

 どうやらはやては起こしに来ていたようで、おれのすぐそばに居た。ちなみに知らない天井じゃない理由は昨夜寝る前に言ったからだよ。この一回目のセリフだけすごい有名になっちゃってるけど二回目もあるんだよね。

 

「まあええわ。いま何時やと思うてるん? もう9時やでいつまで寝とんねん」

「おれは目覚ましがないと起きるまで寝る体質なんだ」

「ほな目覚ましも買わなあかんな」

 

 どうやらおれの生活必需品をそろえてくれるようだ。だがしかし、おれとて二日前までは自分でお金を稼いで一人で生活していた身。こんな小さな子に養われるとはおれの小さなプライドが叫ぶ!

 

「お金は出すよ」

「どうやってお金稼ぐんや?」

 

 頭が真っ白になった。

 

「まあまあ、お金のことは気にせんでええんやで? 無駄遣いはさせへんけど必要なものをそろえて普通に暮らすくらいなら5,6人だって余裕や! 援助してくれるおじさんが私一人には多すぎるくらいのお金を振り込んでくれてるんや」

「出世払いで払う」

「本当に気にせんでええのに。まあ、そのことは後にして朝ごはんたべよな。私お腹ペコペコや」

 

 どうやらおれが起きるのを待っていてくれたようだ。これは悪いことをしてしまった。明日からはできるだけ早く起きるようにしよう。

 

「うん、顔洗ってくるよ」

「40秒でな」

 

 ちょっと難しいです。

 

 

 

 

「ごちそうさまでした」

「ごちそうさまでした。めちゃくちゃおいしかったです」

 

 二人ではやてが作ってくれた朝ごはんをおいしくいただきました。ていうか、はやてのごはんめちゃくちゃおいしい! 誰が作っても朝ごはんなんてたいして変わらないだろうメニュー(トースト、サラダ、スクランブルエッグ、牛乳)なのに、なんでこんなにおれが作ってきた朝ごはんと違うんだ! これはご飯を代わりに作ってあげて恩返し作戦は練り直す必要があるな……

 

「そう? そうやって言ってもらえると私もうれしいわ~」

「昼と夜も期待させてもらいます」

「期待してええで」

 

 そんなことを話しながら二人の朝は過ぎて午後になる。

 

 今日あったことはここに簡単にまとめとくよ。

 

・デパート行ったよ

・服を買ってもらったよ(短パンは買ってもらう身であるが断固拒否させてもらった)

・その他日用品を買ってもらったよ

・家に帰ったよ

・朝が遅かったから昼は軽く食べたよ

・夜はおれの歓迎会をしてもらって豪勢な夕食だったよ

・風呂入ったよ

・ゲームしたよ

 

 

「そしてまたこの天井……ってこれからはずっと見るのかな?」

 

・そして寝た

 


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