それが日常   作:はなみつき

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物語は加速しない

##この話は修正されました##


ⅠとⅡと36話

 

 

 

 春には花見をし、夏には海や山に行き、秋には紅葉を見に行き、冬にはスキーをしたりと、おれたちは色々なことをした。

 時間の流れと言うのはその時の状況とその人の年齢によって変わってくるという。本来なら少年少女たちは次々と新しいことを知っていって1日の密度がとても濃いため、1年と言う時の流れはとても長く感じるものであるが、おれはすでに20年の人生を過ごしているため1年という単位はそれなりに早いものだと感じるようになった。さらに、人は楽しいことをすると時間が過ぎるのを早く感じ、面白くない時は時間の流れは遅く感じる。春夏秋冬とイベント盛りだくさんで楽しいこといっぱいの日常を過ごしているとだな……

 

「もうおれたちも5年生か。時の流れのなんと早いことか」

(ええ、この1年は今までで一番充実した1年でした)

 

 リインさんが来てから1年の記念日はとっくの前に終わらせ、八神家は2度目の春を経験しようとしている。

 

「春と言ったら花見だよな~おしゃべりをして、おやつを食べて、はやてのテラウマ弁当を食うのは至福の時だったからな~」

(はい、あれはとても素晴らしかった。そして、公輝は花も見ましょう)

 

 ちゃんと見ていたさ。散った桜の花びらがコップの中に舞い込んできたと来た時とか。すぐに出したけど。

 

「はやて、頼んだぞ」

(主、私も楽しみにしています)

「任せとき。それにしても二人ともほんま仲ようなったなぁ」

 

 はやてがそう言ってくる。そう言ったはやての顔からはうれしさと少しだけ複雑? いや違うな、とにかく微妙な表情が混じっている。

 

「なんだはやて、妬いてるのか?」

(そ、そうだったのですか主! 申し訳ありません! 私がこのような状態でなければ……)

「あ、いや、ちゃうちゃう! ちゃうで! ただ、二人のそういう関係をちょっとええなって思っただけやで」

 

 

 せっかく軽くサラッと言ったのにリインさんの所為で、はやてが本気で受け取っちゃったじゃないか。

 

 はやては手を振りながら言う。はやての表情から見えた感情は嫉妬ではなく軽い羨望といったものだったのか。確かに仕方ないとはいえ、今の状況はリインさんをおれが独り占めしているようなものだしな。あれ? リインさんを独り占めって世の中の男達なら誰もが羨むようなすごいことをしている気がしてきた。リインさん、超絶美人だしな。

 

(しかし、夜天の主として、夜天の書の管制人格であり、融合機でもある私とユニゾンしてこそ真の力を発揮できるというもの。私のふがいなさの所為で主をこのままにさせるわけにはいきません。主、もう一人融合機を自作してみるのはどうでしょう)

「もう一人融合機を?」

 

 リインさんの提案にはやては少し考えるようなしぐさをする。

 

(はい、きっと主の力になってくれるでしょう。夜天の書の修復が終わり、私が公輝とのユニゾンが解けるようになってからは状況に応じて主と守護騎士の誰か、もしくは守護騎士の2人をユニゾンさせるなどの戦略の幅が広がります。もちろん、私たち融合機が単体で何かを行うことだって可能です)

「うーん、そうやな~。聖王教会ってところから古代ベルカの話を聞かせて欲しいって話もあったしちょうどええかもしれんなぁ」

 

 ここで出て来た聖王教会というのは古代ベルカの王の一人である聖王を祭っている宗教団体だそうだ。だが、その宗教団体はただものでなく、時空管理局と深い関係にあり、管理局において大きな発言権があるとても大きな組織なのだ。

 

「よっしゃ! このはやて、リインの妹作ったるで!」

(はい! 私もこの身を以てお手伝いいたします!)

 

 こうしてリインフォース二号機、否(ツヴァイ)の製作が決定した瞬間である。

 

 これはどうでもいいことだが、リインさんがはやてと協力してリインさんの妹を作るというのは、わかっているんだがイケナイ妄想が捗……んんっ! いや、なんでもない。

 

 

 

 

 

 

「みなさん初めまして! マイスターはやての手により、新旧の技術を融合させて生まれたユニゾンデバイス、リインフォースⅡです! 私のことはツヴァイって呼んでくださいです!」

 

 イケナイ妄想捗る決意から約2か月。はやてと聖王教会の協力により完成したツヴァイは今日初めて八神家にやって来た。

 

「へー、こいつがツヴァイか。よろしくな」

「ツヴァイは小さいのだな。よろしく頼む」

「かわいい~! よろしくねツヴァイちゃん!」

「これからよろしく頼むぞ」

 

 ヴォルケンズに取り囲まれていたリインちゃん(ツヴァイのことはそう呼ぶことにした)は今度はおれの方に飛んでくる。

 

「初めましてです! お姉ちゃん! キミテルさん!」

(ああ、初めまして。主のこと頼むぞ)

「はいです!」

 

 そう言ってリインちゃんはこぶしを握って、フンスッと言う擬音が見えるかのように答える。リインさんとリインちゃんのあいさつも終わったようだ。だが、これだけは言わなければいけない。

 

「リインちゃん、僕の名前はキミテルではなく、公輝です」

「ああ、そうでした。キミテルさん!」

 

 こやつ……やりおる。

 

「今日はツヴァイの歓迎会や! おいしいごはん作ったるで!」

「やったーです! ありがとうございます、はやてちゃーん!」

 

 今度はそう言ってはやての方へツヴァイは飛んでいく。忙しい奴である。はやてに飛んで抱き着くリインちゃん。二人とも笑顔でこれはとてもいい絵になりますね。おれに画力があったなら。

 

 

 新たにリインちゃんを加えた八神家は今日も楽しく、これからも楽しく過ごしていく。

 

 

(……いいなぁ、私もツヴァイみたいに主に……)

 

 今度はリインさんかよ! まったく、八神家のみんなはあまえたがり屋さんで困る。(ザフィーラさんはちょっとわからないが)

 

「まあ、後5、6年の辛抱だ。そしたらリインさんだって」

(…………うん)

 

 おれ達は毎日楽しく過ごしているんだ。こんな時間が続けば5、6年なんていうものはあっという間だろう。それに、おれもリインさんも子供じゃないからさらに時の流れは早いだろう。このユニゾン生活を懐かしむ日が来るのもそう遠くじゃないと思う。

 

 ちなみにこの時、「はやてちゃーん」と、言いながらはやてに抱き着くリインさんを想像して萌えたのはおれの心の中だけの秘密でいいし、とてもどうでもいいことである。

 

 

 

 




それが日常は今日を以て終わり!(エイプリルフール)

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