まあ、そこまでのことは書いてないですがトイレの話ですから。
##この話は修正されました##
人間というものは不思議なものである。風土、言語、文化が違っていても同じ価値観を持つのだから。もちろん、その土地特有の価値観だってある。外国のことわざを調べてみたらそれはよくわかることだろう。日本人のおれにとっては信じられないことを言っているものもたくさんある。しかし、逆に表現の仕方は異なるが、まったく同じ内容を言っていることわざもたくさんあるのだ。例えば、『覆水盆に返らず』は『It's no use crying over spilt milk.』つまり、『こぼしたミルクのことを嘆いても無駄だ』と言う感じになる。表現の仕方は異なっているが言いたいことは同じだ。やはり、人間というものは人種が異なろうと同じなのだということを再認識させられる。
ここでちょっと話は変わるが、例え地域が異なろうと、国が異なろうと、世界が異なろうと、トイレの基本的な構造は同じものなのだ。何故なら、人間の考えることというものはそう変わらないから。それはここミッドチルダとて例外ではない。レバーを引けば水が流れるし、匂いや蛆虫の逆流を防ぐために排水管は複雑な形をしている。それ故、ビッグでハードな排泄物、大量のトイレットペーパーやトイレに流すことを想定していない物を流せば詰まるのは道理というものだ。つまりだな……
「うわああああああああああああ、トイレの水が溢れる溢れる溢れるうううううぅぅぅぅぅ」
「だから、詰まった時に水を流すのは拙い!って言ったじゃないか!」
「なにぃ! マサキだって「流せば詰まりも流れるかもしれないな(ボソッ」って最後は賛成したじゃんかよ!!」
ミッドの家のトイレが詰まった。詰まらせた犯人はヴィータ。いつものごとくトイレットペーパーをカラカラカラカラカラ使って便器にそれをシュート。水を流そうとしたら流れるどころか便器内の水位が高まりだしたそうだ。どうすればいいのか分からなくなったヴィータが家にいたおれ達に助けを求めてきたのだ。
「どどどどどどうすんだよマサキ。なんとか溢れなかったけど、いつも通りに流れる様子もないぞ?」
「まあ、待て。今シャマルさんにスッポンを買いに行ってもらっている。それで何とかなるかもしれない。が、おれたちでできることをしてみよう」
最終手段はミッドの暮らし安全に電話するしかないが、トイレの詰まりと言うのは自分で何とかできる場合が多いのだ。さっきネットで色々調べたからやってみようと思う。
「スッポンを用いない対処法その1! 50度前後のお湯を便器に流し込む!」
「そんなことで何とかなるのか?」
わからん。が、それで直ったという人も確かにいるようだ。
「じゃあヴィータよ、バケツをこっちに渡したまえ」
「え? こっちの家にバケツはねーよ」
え……あっ、こっちの家に来てまだ間もない。バケツが必要な機会に迫られたことがないからまだ買ってなかったんだった。じゃあ洗面器でも使うか……ってこっちはシャワーで全部済ませるから洗面器もねぇ。鍋を使うのは少し躊躇われるしなー。
「ならばその2! 重曹と酢を使う作戦だ! ヴィータ、重曹と酢をこっちにくれ」
酢は勿論、重曹もはやてが買っていたはずだ。
「酢はいいんだがよ、重曹ってどこにあるんだ? はやてがいつもどこにしまってるか私知らないぞ」
掃除洗濯は基本全部はやてが担当していることだから、それに使う道具もはやてが管理している。ちょっと探さないといけないのだ。
「じゃあちょっと探すか」
「おう」
☆
「はぁ? 見つからない? そんなはずはないんだが……」
「もしかしたら切らしてるのかもしれねーな。しょうがない、ほかに方法はないのか?」
「後はもうスッポンを使うしかない……」
くっ、万策(2つ)尽きたか……
「ただいま帰りました~」
来たか!
「しゃあ! おらぁ! いくぞぉ!」
「おー!」
スッポンの力を見せてやる!
「ただいま~」
む? はやてが帰ってきたか。だが、スッポンがおれの手にある今、はやての手伝い(重曹)など不要!
「そりゃああああ!!」
スッポンを便器の穴の開いた所に勢いよく押し込む。一度引いて、また力強く押し込む! その行動を何度も何度も繰り返す。
「ハムテルくん、ちょっと聞いてほしいことがあるんや」
「おう、なんだ」
押しては引くの一連の行動を繰り返しながらおれははやてに返事を返す。……はじめてこれ使うんだが、結構体力使うんだな。
「私、自分の部隊を持ちたいんや。この間の空港の件で強くそう思うようになったんや。海、陸、空に縛られることのないフットワークの軽い部隊をや。その部隊でハムテルくんにも協力して欲しいんや!」
はぁ……はぁ……本当にこれ結構疲れるな。
「な、何? もうい、もう一回言ってくれ」
「……」
いかんな。作業に没頭しすぎてはやての話が頭に入ってこなかった。だが手は止めない。なぜなら詰りが解消される気がしないから。
「ふんっ!」
「あ! はやて、何するんだよ!」
突然はやてがおれの手からスッポンをひったくる。
「……スッポンはやな……こうやって使うんやあああぁぁぁぁ!」
そう言いながらはやてはスッポンをぐぐっと奥に押しこんだ後に力強く引っ張る。おお、そうか! スッポンは押す時じゃなく引くときに力を入れるのか! その動作を何回かするとトイレの奥の方から「ごぼごぼ」っという音がし始めた。はやてがレバーを少しずつ引いて水がちゃんと流れるかどうかを確かめる。どうやら正常に排水できるようになったようだ。流石はやて! おれにできないことを平然とやってのける!
スッポンを横に置いたはやてがゆっくりとこちらに向く。
「ハムテルくん!!」
「は、はい」
なんだ、突然大声出して。
「ハムテルくんは私が作る部隊に強制参加や! これは決定事項やで!」
「あ……はい……」
まあ、はやてに頼まれたら無茶なことでない限りは手伝うつもりだからいいけどね。
「あ、マサキ直ったか?」
ヴィータの奴、途中から飽きてどっかに行ってやがったな。
トイレの水が迫り来る時の絶望感は半端ない。