※ゲロ注意
##この話は修正されました##
下見と花見と52話
「今日は楽しむでー!」
「おー!」
中将とのオハナシから時は流れ、今は新暦75年3月。今日は間もなく稼働する、はやてが立ち上げる新部隊の庁舎の視察に来たのだ。
「花見では無礼講やでー!」
「いえーい!」
ええ、視察ですよ。真面目な仕事ですよ。
「今日は飲みまくるでー!」
「よっしゃあああああああぁぁぁぁぁあ!!」
ここミッドチルダでは酒タバコは18歳からOKなので、今年で19歳のおれたちは法的に何の問題も無いのである。
「なぁハヤテ、本当に良いのか?」
「ええんや、ええんや。これは空間シミュレーターのテストを兼ねた立派な仕事なんや。起動は確認したから、次はちゃんと規定の時間起動し続けるかの確認や。少なくとも花見の時間分くらいは動いててもらわなあかんからな」
ヴィータの質問に答えるはやての言う通り、この花見はただ花見をするのではなく、これから新人たちが訓練する大切な施設が正常に動くかどうかを確認するための大切な仕事なのである。大切な仕事なのである。3月なのに花見? と、思った人も多いだろうが、秘密はこの空間シミュレーターにある。これは言ってみれば本物のようなホログラムを空間上に映し出すという代物なのだが、これのすごい所は映し出されたホログラムは触った感触があるということだ。そこにあるものを壊そうとしたら本物の様に壊れるし、そこに瓦礫が落ちていたら持ち上げて移動させることだってできる。ちなみに、遠くから見るとぼんやりとした蜃気楼のように見える。これを使って季節外れの桜を満開にさせているということだ。
「それでは、機動六課設立とハムテルくんの二佐昇進を祝ってかんぱーい!」
「「「「「「乾杯!!」」」」」」
そうです、私、はやてと同じ階級の二佐になりました。確かに、一尉相当医務官への昇進のお話はもらっていたのだが、いつの間にかこんなことになっていたのだ。二尉から二佐への昇進だから驚きの三階級昇進である。なんだろう、おれは英雄になったうえで殉職したのかな?
「それにしても、マサキが二佐って管理局大丈夫なのかよ」
「どういう意味だよそれ。それだとおれがバカみたいじゃないか」
「バカじゃねーか」
うるさいよ。
まあ、冗談は置いといて、原因は100%ゲイズ氏であろう。ゲイズ氏をマッサージした時、ついでに機動六課で実質働くことを黙認してもらう言質は取ったのだが、ゲイズ氏がそれでもなんとか六課、ひいてははやての邪魔をしようとした結果だとおれは考えている。おそらく、おれの階級をはやてと同じかそれ以上にすることで、はやてがおれに好き勝手命令することを抑制しようとしたのだと思う。外から見て二佐が二佐をホイホイ命令して従わせるというのはアレだからな。
どうやら、もともとおれの働きに階級が見合ってないのではないか? と言う声が管理局内であったのも助けとなり、ゲイズ氏が提案したおれの昇進もすんなりいったのであろう。ちょっとすんなりしすぎだと思うけど。
「まあ、私はそんなん気にせずハムテルくんは顎で使うけどなー」
「知ってた」
ゲイズ氏の誤算はおれとはやてが親しい関係であることと、はやての精神はそんなことで躊躇うほど細くなかったことだな。
「まあ、その話はいいじゃん。ん? シグナムさん! な~に持ってるの?」
「ん? さっき公輝がついでくれたビールだが」
もしかしてシグナムさん分かってないのか。
「な~に持ってるの!」
はやてが乗ってくる。
「飲み足りないから持ってるの? ハイ! いっきっきのきーいっきっきのきー」
「一気だと? するわけないだろ」
まったく、シグナムさんは堅物だな。だが、その調子でいられるかな?
「いっきっきのきーいっきっきのきー!」
はやてが乗って来たということは逃げられないということなのだよ。
「なっ!? 主まで……んぐっ!」
ゴクゴクといい音を出してシグナムさんは紙コップに注がれたビールを飲み干していく。
「ぷはぁ!」
「おーみーごーと!」
ビールを一気に飲み干したためかシグナムさんの頬が少し赤くなっている。ここから畳みかけるぜぇ!
「とーこーろが、隣の、シャマルさんも、飲み足りない! そ、こ、 で、いっきっきーのきーそこでいっきっきのきー!」
「えっ! 私ですか……えい!」
一瞬戸惑っていたシャマルさんだが覚悟を決めたようにビールを一気飲みしていく。勢いよく傾けたせいでシャマルさんの口の端からビールがこぼれていく様がなんともエロくて素晴らしい。ていうかシャマルさん、勧めたおれが言えたことじゃないから言わないけど、医者として一気に応じるのはどうなんだろうか?
「ふいー」
「おーみーごーと!」
一気飲みによって頬を赤らめているのと、さっき口元からこぼれていたビールと合わさりエロさ倍増でベリーベリーグッドね。
「ここで飲まなきゃ男が廃る! ザフィーラさん! それそれそれそれ、それそれそれそれ」
「……」
何も言わずに飲んでいく。
「ふぅ……」
「おーみーごーと!」
うーん、流石ザフィーラさんだ。ビールをコップ一杯一気飲みしたというのに顔に全く現れていない。
「リインさんのちょっといいとこ見てみたーい。飲め! 吐け! 飲め吐け死ぬまで! そーれ、イッキ、イッキ、イッキ、イッキ!」
「えっ!? なんか私の時だけ激しくないか!」
そりゃおれとリインさんの仲だからじゃないですか。
「むぅ……そぉい!」
おお! リインさんが行った!
「どや」
「おーみーごーと!」
リインさんのドヤ顔がなんか可愛い。可愛いから携帯で撮っておこう。
「やめんか」
「あーおれの携帯がー」
リインさんにおれの携帯を没収されてしまった。
「ハムテルくんの友情一気が見たーい!」
今度ははやてがおれに一気を振ってくる。良いだろう、やってやろうじゃないか! だがはやて、お前も道連れだ! おれははやての腕を持ち上げてむりやり組む。そして、おれとはやてはコップの中身を乾かしていく。
「おーみーごーと!」
「おーみーごーと!」
おれとはやてでお互いの健闘を称え合う。
「よし、とりあえずこれで全員やったかな?」
「むー、ツヴァイも飲みたいですよー」
「私! 私まだやってねーぞ!」
おれの質問に答えるリインちゃんとヴィータ。
「仕方ないだろ、二人はまだ子供なんだから」
「私は大人だ!」
そう言って反論してくるヴィータ。
「ああ、そういえばヴィータはおれより年上っちゃ年上だったな」
「なんかそういわれると私が年増みてーじゃねーか」
えぇ……じゃあどうすればいいんだよ……
こうして楽しい花見の時間は過ぎていく。
☆
「うー飲み過ぎた~気持ち悪い~」
気持ち悪さを訴えるはやて。
「くっ、流石にこれだけ飲むと堪える……」
目を瞑りながら座って休んでいるシグナムさん。
「……」
小型ワンコフォームで伏せているザフィーラさん。
「ぐおおぉぉ……頭が割れるぅ……」
頭痛に苦しまられているヴィータ。
「でへへ……」
上半身薄着になって緩んだ顔をしているシャマルさん。
「……」
「……」
白目をむいて気絶しているリインさんと騒ぎつかれて眠ってしまったリインちゃん。この面白い顔は是非とも記録に残しておきたい。
「全く、みんなだらしないなー」
はやて達から少し離れたところで腰を90度にまげて口を大きく開けているおれ。
「マサキは……何……やってんだ?」
ヴィータがおれに聞いてくる。何をやっているかだって? そんなの決まっているだろ。……来た!!
「ケロケロケロケロケロケロケロケロ」
「うわああああぁぁぁぁマサキが吐いたああああぁぁぁ」
吐いたんじゃない、吐いてるんだ。何をそんなに騒いでいるんだ。酒を飲んだら吐く。基本だろ。
「ペッ……飲んで吐いて飲む! これが花見での酒の飲み方だろ。よく訓練されたドリンカーは指突っ込んでえずかなくても自分の意思で吐くことが可能なのだよ」
「あれ? ハムテルくん前世は二十歳やったんやろ? 今世も酒解禁は去年やし、そんなにすぐ習得できるもんなん?」
「…………フッ」
「なんや今の「フッ」って。ハムテルくんまさか!」
はやてよ、そこに突っ込むのは野暮ってもんだぜ……
「ていうかマサキ、お前のレアスキルで酔うことなんてないんじゃないのか?」
「おれの力は使わないこともできるんだ。それに、酒は酔うために飲むもんだろ」
ヴィータが指摘してくるが、おれの能力はおれのことに関しては大分自由が利く。そういうわけで、能力を使いたくない時はOFFにすることが出来るのだ。
「とにかく、みんなもゲロって楽になっちゃいなよ」
「いやや、そんなん……うっ……まだきぼぢわどぐなっでぎだ……」
本当にやわだな~。
その後、ザフィーラの腹筋を枕にした公輝、公輝の右腕を枕にしたはやてとリインフォース・アインス、左腕を枕にしたヴィータ、お腹の上で寝るリインフォース・ツヴァイ、右太ももを枕にしたシグナム、左太ももを枕にしたシャマルが寝ている姿が海上訓練施設で見られた。
お酒の一気飲みは大変危険です!
近くに公輝君がいない方は絶対に真似しないでください!
追記
マサキの能力がOFFにできるという説明を追記しました。