小説更新ギアがローに入りました。
##この話は修正されました##
「くっ……このままでは……」
おれは大きな機材の影に身をひそめ、息を殺し、存在感を極限まで薄くする。
「だが、捕まるわけにはいかない……」
この場所に来てから結構時間が経ったおれは、隣に置いてあるコンテナまで移動しようとする。隠れるとき、同じ場所に居続けるのはあまり良くない。かと言って、移動の際に追跡者に見つかってしまっては元も子もないが。
「よし……今……!?」
「キミテルさーん。どこですー?」
身を低くしてすばやく移動しようとしたが、追跡者はおれの想像を上回るスピードで接近していたようだ。コンテナの影に移動するのを中止し、再び機材の影で身を潜める。
「むー、大人しくはやてちゃんの前に突き出されるのがいいですよ。そんなに隠れるのならはやてちゃんに教えてもらった秘策を使わせてもらうですよー」
ひ、秘策? はやての奴、いったいリインちゃんに何を吹き込んだんだ。おれに対する弱みか? おれを脅すつもりか? だが、おれは脅しには屈しないぞ! 必ずこの場を逃げ切ってゲイズ氏との契約を履行しなければいけないんだ。
「良いんですか? いくですよ?」
来いや!
「あなたは……そこにいますですか?」
え……
「あなたは、そこにいますですか?」
こ、これは……
「あなたは、そこにいますですか?」
「あなたは、そこにいますですか?」
「あなたは、そこにいますですか?」
「あなたは、そこにいますですか?」
「あなたは、そこにいますですか?」
「あなたは、そこにいますですか?」
「あなたは、そこにいますですか?」
「あなたは、そこにいますですか?」
ぐわあああああああああああああああ
「あなたは、そこに……」
「いるぞ! おれは……ここにいる!」
おれは隠れていた機材の影から飛び出し、リインちゃんの前に立ちはだかる。
「確保ですよー!」
「しまったー!」
リインちゃんのバインドがおれの手足を縛り、身動きが取れなくなる。
「まったく、手間を掛けさせるな」
そう言いながらこちらに来たのはシグナムさんだ。
「主の元へ行くぞ」
「はいですー!」
「はーなーせー」
おれはシグナムさんとリインちゃんにはやての前まで連行されて行った。
☆
「やっぱり、ハムテルくんはアレでおびき出すことができたんやな」
「はいです! 効果は抜群でした!」
もうあれは条件反射と言ってもいい。はやての「せやけど」って言ったら「工藤」って続けないと気が済まないアレみたいなものだ。
「ほんで、ハムテルくん。何か言い訳はあるか? これは私に対する嫌がらせ、いや、裏切りと取ってええんか?」
さっきまでの家にいるときのようなはやての様子は一変し、厳しい顔をしたはやての、いつになく厳しい言葉がおれを攻めてくる。
「……」
「黙秘は肯定とみなすで?」
おれははやての質問に答えず、黙り込んでしまう。しかし、これでは話が先に進まないのでおれははやての質問に答えることにする。
「おれは、おれができる最善の選択をしたと思っている」
「それがレジアス中将が示した選択肢で、その選択が私たちの部隊に悪影響を与える可能性があるとしても、か?」
確かに、おれが取ろうとしている行動は六課に悪影響を与えかねない行動だ。だが、これは契約。ゲイズ氏と交わした契約なのだ。契約は履行しなければならないのだ。
「おれは……それでも、おれは……」
バンッ!
飛び込んできた音は扉が勢いよく開く音。
「マサキ! マサキがはやてを裏切ったなんて嘘だよな!」
おれが言葉をつづけようとしていたところに、はやての執務室に飛び込んで来たのはヴィータだった。
「おれは有給休暇を取らなければいけないんだ」
「え?」
「せやけど工藤……んんっ、ハムテルくん、1週間はやり過ぎや。せめて3日……いや、2日くらいにせえや。せやないとハムテルくん目当てに六課に来る患者さんに何言われるかわからへんねん」
「え?」
さっきからヴィータが何か言っているが気にしない。
そう、今回の論争の原因はおれの有給だ。おれが六課に異動する条件としてゲイズ氏に出された1年の有給休暇をできるだけ迅速に消費するというもの。しかし、1日ずつちまちま有給を取っても全く減らないので、おれはできるだけまとめて有給を取ろうとしたのだ。もちろん、他のみんなに迷惑が掛からないように配慮したつもりだったが、はやて的にはまだまだ足りなかったようだ。
ちなみに、何でおれが逃げ回っていたのかと言うと、有給の申請を出した瞬間にはやてに呼び止められたので、つい逃げ出してしまったのだ。
「それの対処法もちゃんと明記してあるだろ。比較的症状が軽い人は後日来てもらって、重症、重体の人にはおれ印のエナジードリンクを患者に飲んでもらえばいい。飲むことが出来ない人にはそれをぶっかければいいって」
このエナジードリンクはスカさん監修、協力おれで作られたものだ。そのエナジードリンクを飲む、もしくは全身に浴びると、その人の体調を最高の状態にするドリンクだ。これを作った経緯と苦労はまた今度語るとして、協力のお礼としてこのドリンクをスカさんから30本ほどもらったので、これをおれの代わりに使えばいいというわけだ。
「だから、そのハムテルくん印のエナドリってなんやねん。どっから湧いて出たんや? 製造者は? 原材料は? もしかして体液か? ハムテルくんの体液なんか!?」
「それは……言えない……」
スカさんにこのエナジードリンクを貰った時に言われた注意として、製造者が誰かを言わないでくれと言われているのだ。おれは約束は守る男だからな。
「やっぱり言えへんようなもんなんやな! なんやねんそれ!」
そう言われても、おれにはスカさんの無駄に洗練された無駄のない無駄な技術から生まれた物は理解できないからな。
「ともかく、おれは有給をとるぞ!」
「最高3日間しか許可せんで!」
おれとはやての論争は続く。
「そんなことだったのかよ!!」
執務室の中心で叫ぶヴィータがそこに居た。
久々の地球帰省は3日間だけということになりました。
次回はみんな大好きお風呂回