それが日常   作:はなみつき

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##この話は修正されました##


自主練と妹と63話

「夜風が気持ちいいな……」

 

 今日は六課でしっかり仕事をした後、自分の部屋で自慢のミルクティーを楽しんでいた。そうしていたら一体どこでかぎつけてきたのか、はやてとヴィータとリインちゃんが現れたのだ。その後はおれも含めて4人でクッキーをつまみながら駄弁っていた。2時間ほど経つと3人も自分たちの部屋に帰って行ったので、おれももう寝ようと思ったのだ。しかし、なんとなく寝つきが悪かったので夜の散歩としゃれ込もうと思ったわけだ。隣を歩いてくれる彼女でもいれば言う事なしなんだがな。

 

「お、先生じゃないっすか」

「ん? おー、ヴァイスさんじゃないか。ヴァイスさんも散歩かな」

 

 向こうから歩いてきたのは機動六課のアッシーこと、ヘリパイロットのヴァイス陸曹だ。彼の妹を以前おれが治療した時がヴァイスさんとの初対面だが、まさか機動六課で再会することになるとは思っていなかった。

 ヴァイスさんは妹のラグナちゃんを誤射してしまった時のトラウマで自身のデバイス、ストームレイダーを用いた射撃をすることが出来なくなってしまったのだ。おれも彼のトラウマを何とかしてみようと思ったことがあるが、ダメだった。おれがヴァイスさんに触れている間はストームレイダーを使うことが出来たが、おれが触れるのをやめてしまうとまた使うことが出来なくなってしまったのだ。心の病というのは本当に難しい。やはり、最強の万能薬「時間」か、最強の劇薬「必要に迫られる」に頼るしかなさそうだ。

 

「あー、俺はちょっとな。ところで、先生の方からティアナに言ってやって欲しいんすよ。おれが言ってもあまり効果は無くて」

「何かあったのか?」

 

 おれが何か注意しないといけないようなことを真面目なティアナさんがするとはちょっと思えない。一体何なのだろうか?

 

「あいつ、最近遅くまで自主練してるんだけどよ、ちょっと頑張り過ぎてるっていうかな。とにかく、先生から休憩も大切ってこと言ってやってくれませんかね?」

 

 なるほど、真面目だからこそでしたか。

 

「わかった。じゃあ差し入れでも持って行くよ」

「お願いします」

 

 そう言って、おれは部屋に置いてある差し入れにするものを取りに帰ることにした。

 

 

 

 

 

 

「よう、精が出ますな」

「ハァ……ハァ……先生?」

 

 ティアナがデバイスを次々に光の球体に向ける動作をする訓練をしている。おれは訓練の区切りがよさそうなところで声を掛けることにした。

 

「こんな時間にどうしたんですか?」

「ああ、ヴァイスさんにティアナさんの様子を見てくれって頼まれてな。ほら、あそこに覗きのごとく木の上から君を観察しているヴァイスさんが居るだろ」

「……」

 

 ヴァイスさんの居る位置はここに来るまでに把握していた。そして、やっていることがやっていることだったので、ついティアナさんに教えてしまった。あっちを向いた瞬間にヴァイスさんが勢いよく木から降りて行く様子は大変面白かった。

 

「まあ、ヴァイスさんも妹がいるからな。ティアナさんのことが気になるんだろ。妹みたいで」

「私の兄は兄さんだけで十分ですよ。……色んな意味で」

 

 ティーダさんもそうとうのシスコンだからな。きっとティーダさんとヴァイスさんとクロノさんと恭也さんを一堂に集めたら妹自慢で1日が終わるに違いない。その場には絶対居たくないものだ。

 

「シスコンのことは置いといて、ティアナさん、そろそろ寝ないと明日に疲れが残っちゃうよ? 昼もいっぱい訓練してるから、もういいんじゃない?」

「あたしは、人一倍どころか3倍でも4倍でも訓練しないとみんなに追いつくことができないんですよ」

 

 ティアナさんは努力をすることが出来るんだな。おれだったら「そこそこでいいや」とか言って妥協するところだ。こんなことだから前世で2浪してるんだよなぁ……

 

「そうか……ティアナさんはすごいな」

「い、いいえ! そんなことありません。でも、こうして訓練をすることによって自分が強くなれていることが分かったので楽しくなっちゃって。それに、もう少しで何かが掴めるような気がしているんですよ」

 

 あー、勉強して、模試でいい結果が出るとそれが嬉しくて、楽しくてもっともっと勉強する。もっともっと勉強したから模試でもっともっといい結果が出るっていうあれか。そんなサイクルに嵌まった経験はおれには無いがな!

 

「なるほどねー。その感じだと、ティアナさんはまだまだ強くなれそうだね」

「そ、そうですか?」

「でも、もう今日は寝なさい。早く寝ないと六課のアッシーこと、六課のシスコンにずっと見られちゃうよ?」

「……今日はもう休もうと思います」

 

 それが良いと思います。

 ティアナさんは傍に置いていた訓練用の道具などを片付け始める。

 

「では先生、失礼します」

「あ、ちょっと待って」

 

 ティアナさんが自分の部屋に帰ろうとするのを引き留め、おれが自分の部屋から持ってきた差し入れを渡すことにする。

 

「これ、差し入れな。おれ印のエナジードリンクだ。疲れ、眠気、病気、その他諸々の体の不調をふっとばし、体調を万全に整える自信作だ」

 

 おれが作ったわけじゃないけど。

 

「注意事項として、寝る前には飲まない方が良いぞ。寝れなくなるから。明日の朝起きてから飲むと良い。そうすれば、明日の訓練に疲労を持ち込むことなくこなせるから」

「ありがとうございます。おやすみなさい」

「はい、おやすみ」

 

 おれからエナドレを受け取ったティアナさんは自分の部屋へと戻っていく。

 

「さて、おれも散歩でいい具合に疲労感が溜まってきたことだし、寝ることにしよう」

 

 おれも六課の宿舎の自分の部屋に向かうことにする。

 すると、向こうからヴァイスさんが小走りでこちらに向かってくる。

 

「ちょっと先生! 酷いじゃないですか! なんで俺のことティアナに話したんっすか。あそこは俺の存在は隠して、先生がティアナのことを心配する場面でしょ!?」

「大丈夫だってヴァイスさん。ちゃんと、ヴァイスさんがティアナさんのことを妹として心配しているって言っておいたから」

「ちょっ!? 何も大丈夫じゃないですよ!」

 

 こうして、なんの問題も無くおれは今日は寝ることにした。

 

 

 

 

 

 

 

「先生に注意されちゃったな」

 

 あたしは部屋に戻りながら一人つぶやく。

 

「それにしても……ヴァイス陸曹……」

 

 ヘリパイロットの彼との付き合い方を少し考え直す必要があるのかもしれない。

 それはそれとして、このエナジードリンク……何なんだろう? ただのエナジードリンクが病気まで治しちゃうってどういうことなのだろう。一体なにでできているのか大変気になる。先生がくれたものだから疑っているわけではないが、なんとなく飲むのが躊躇われる。

 ちなみに、ここでの「疑う」はこのエナドレの効果のほどではなく、果たして体内に取り込んで良いものなのかという事だ。

 

「とりあえず、明日起きてしんどかったら飲もう」

 

 そう結論付けて、あたしも寝ることにした。

 先生からもらったエナドレにスバルも興味を示していたようだったので、今度先生にもらえばいいと言っておいた。

 

 

 




追記

次の話は話の都合上邪魔になってしまったので削除させてもらいました。

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