だってwikiにこうやって書いてあるから……
「そう言う訳でこれからよろしくお願いします」
そう言ってソファに座りながらお辞儀をしている女性はドゥーエさん。金髪長髪の美人さんだ。彼女はスカさんの娘たちの中でも更生施設組であり、おれ自身は初対面の紅茶についての講義から何度か会話したことがある程度だ。その時の印象としては礼儀正しく、なんでもそつなくこなす委員長みたいな人という物だった。
しかし、本当はかなりのいたずら好きのようだ。
「
更生施設を出て保護観察期間に入ったとはいえ、彼女たちは一応犯罪を犯した身。そのため、彼女たちの力は魔力から個人の能力まで大幅に封印されている。
「はい、私の
はやて……
おれははやての方を見る。
「てへっ」
職権乱用するんじゃないよ。
はやてのあの顔は知っていてドゥーエさんが家に来ることを話さなかったな。ペコちゃんみたいな顔しやがって。
「あ、そうや。これからドゥーエは家族になるんやから私のとこは八神二佐やのうて、はやてって呼ぶんやで?」
「よろしいんですか?」
「もちろんや」
はやてめ……一見良い話をしているようでおれからの追及を逃れやがった。
「しかし、なんでドゥーエさんははやてを保護者に選んだんですか?」
おれはドゥーエさんが八神家に滞在すると知った時から不思議に思っていたことを聞くことにした。
「よくぞ聞いてくれました」
ん? なんか変な流れだ。
さっきまでおしとやかに座っていたドゥーエさんはすっくと立ちあがる。
「本当のところ、私は保護者としてマサキ先生を指名していたのです」
「おれを?」
何故だろう。正直ドゥーエさんがおれを保護者として指名するほど親しくなった覚えはない。
「ええ。私はドクターの唯一の友にして、理解者のあなたをもっと知りたいと思った!」
唯一とか言ってやるなよ。スカさん可哀想だろ。スカさんにだっておれ以外に友達くらい……いるのかなぁ……
「そうです、マサキ先生、いえ、同志マサキ!」
「同志!?」
その称号はびっくりだ。
ドゥーエさんのテンションゲージが目に見えてどんどん上がっていくのがわかる。
「私の創造主にして親であり、友であり、理解者のドクター! そのドクターの友であり、理解者である同志マサキ! ならば、なればこそ! あなたと私は同志ではありませんか!」
「あ、はい」
すごい理論だ。友の友は友理論とでも言おうか。しかし、実際に友達の友達と言うのは微妙な立場だろう。それをここまでポジティブに受け取れるドゥーエさんは流石としか言いようがない。
ドゥーエさんは手をこちらに向けて、おれに手を取るように促すような体勢になる。
「これは運命! 私とあなたが出会うのは前世より定められたこと!」
ドゥーエさんはおれに向けていた手を空へ向けて、歌うようにして話し続ける。
あ、おれドゥーエさんのことがなんとなくわかって来た。
「しかし! 私たちの出会いの運命に対し、残酷な神は試練をもたらしたのです!」
あーはいはい、試練ね。
「ハムテルくんて今回の事でちょっと微妙な立場になったやん? そんな人に事件の当事者の保護者をさせるのはどうなんやろうってことになったんや」
あ、そこではやてが続きを話すのか。
まあ確かに、おれは自覚していなかったとはいえ、一応事件の関係者と言うことになっている。そんな人物に事件の当事者を預けるというのは無理な話だろう。常識的に考えて。
ドゥーエさんは今度ははやての方に手を向けて再び話し始める。
「そこで! 私はマサキの保護者であるはやてに私の保護者となることを要請したのです!」
ちょっと待って……おれの保護者がはやて? ……いや、深くは考えないでおこう。
「こうして、私のこのパーペキな作戦によって同志マサキと共にいることが可能になったのです」
ドゥーエさんは言いたいことを全て言い切ったのであろう。またソファに座り直しておれが淹れたミルクティーを優雅に飲む。そのままだったらただの美人さんだったのに……
「これからドクターが作り変えたこの世界をともに観測していきましょう! オーッホッホッホッホォ! オエッ、ゲホッ! ゲホッ!」
「そ、そうですね……」
おれの周りにはこんな人しかいないのか。
おれの友人(ドゥーエさん視点では同志)にまた一人中二病が追加されたのだった。
「これから楽しくなるな?」
「楽しすぎるのもどうなんだろうな」
おれに小声で話しかけてくるはやてにおれはそう返す。
☆
風呂。
そこでは体の汚れを洗い流し、湯船につかることで体と心の両方に癒しを与える場所である。そんな場所にいる人は気分が緩み、歌を歌いだしたり、独り言を呟きだしてしまうのは仕方のない事だ。
「ふいー……やっぱり風呂は良い……」
疲れ知らずなこの体とはいえ、風呂につかることで味わえるポカポカ感は相変わらず体に癒しを与えてくれる。風呂は心の洗濯だと言う。ここまで的を得た表現はないだろう。
リリンの生み出した文化の極みだよ……
「しかし、まあ……これからどうなることやら……」
おれは今日の出来事を思い返す。
ドゥーエさんが八神家で暮らし始めるという出来事。このドゥーエさんが中々の曲者で、スカさんに負けず劣らずの中二病患者。一体スカさんは彼女に何を教えたんだ。残念美人という言葉がこれほどまでにぴったり合う人物に始めて会ったよ。
「ま、退屈はしなさそうだな……」
これからの日常は今までより悪くなることは無いだろうと結論付けて、おれは一息付く。そして、湯船に深く浸かる。
はぁ……落ち着く……
風呂場に漂う蒸気が天井に凝縮し、再び湯船に帰る時の音だけが響くこの空間に別の音が割り込んでくる。
「同志マサキ! ここはお互い丸腰、肉体以外の障壁をとっぱらい、心と心をぶつけ合いましょう! 裸の付き合いというやつです!」
「ふぁっ!?」
風呂場に裸で突入してきたドゥーエさん。残念ながら(幸い)風呂場に漂う大量の湯気によって大事な部分は見えなかったが、残念美人の『美人』の部分をまじまじと見てしまった。
「前をタオルで隠しなさい!」
ついつい敬語になってしまうのを誰が責められようか。
「そんな物、私たちの間には必要ないでしょう。さあ! 朝まで語り尽くしま……あら?」
興奮気味に話していたドゥーエさんにバインドが仕掛けられる。そして、疑問の声を挙げたと思ったらすごい勢いでドゥーエさんは風呂場から退場した。
「ドゥーエのことは気にせんと、ハムテルくんはゆっくりしててええからな」
「お、おう」
ドゥーエさんを強制退場させたのははやてだろう。正直助かった。
「ふぅ……これから騒がしくなりそうだ」
おれはこれからの騒がしい未来を想像するのだった。
「……ていうか、はやて……おれの入浴シーンを見て平然としてたな」
それでいいのか、21歳乙女よ!
ドゥーエさんはこの小説のエロ担当となりました。