「む、貴様何者だ」
ピンク髪のお姉さんがおれをめっちゃ睨んでくる。それに合わせて他の3人の視線も俺に集まる。こ、こえー!!
「お、おれは……」
な、何て言えばいいんだ。職業? -ヒモ。 はやてとの関係? -居候。
あ、あるぇー。何かいい答えはないのか?
「お、おれは……おれはこの家の居候だー!!」
まあこう表現する以外ないわな。はやてさん、「ぷぷぷ」って笑うの勘弁してくれません? なんか腹立つ。
「……」
お? なんか4人の見る目が敵を見る目から残念な物を見る目になったな。それはそれで気に食わないが睨まれ続けられるよりはずっとましだ。
「ぷぷ、そんな力こめて言わんでもええのにな。コホン、まあええわ。で、あんた達いったいだれなんや?」
それから自己紹介タイムに入った。はやては危機感がないというか、警戒心が薄すぎだと思うんだよね。まあ、そのおかげでおれは寝床とおいしいご飯にありつけたわけだがな。
☆
ピンク髪をポニーテールにして女性の象徴がとっても、とーっても大きな女性。おれをあからさまに睨んできた姉ちゃん。
「烈火の将 剣の騎士シグナム」
金髪のショートヘアーで一見やさしそうに見えるが目が全く笑っておらず、おれを見つめ続けている姉ちゃん
「風の癒し手 湖の騎士シャマル」
4人の中で唯一の男性でガチムチ系。はやてを見ながらもおれに意識を向け続けている(たぶん)兄ちゃん
「蒼き狼 盾の守護獣ザフィーラ」
獣? ……!? あれは……獣耳……こいつはやばい(確信)
他の人と比べて背が低く、どう見てもおれ達と同じ年くらい。これまたおれをめちゃくちゃ睨んでる赤髪の少女。
「紅の鉄騎 鉄槌の騎士ヴィータ」
ていうかおれ睨まれすぎ。まじで精神力が削られる音が聞こえるんだけど。ピピピピピピピって。
「ところで主はやて、そこの男は信用できるのですか? 微量ながらも魔力を持っているようですが」
シグナムさんがおれを見ながらはやてに聞いている。もうやめてーおれのライフは(ry……ん? なんだって? おれに魔力がある? ていうか魔力ってなんだよ。魔法でも使えるんですか。
「うん、ハムテル君は私の家族や。だからそんな睨まんといてあげて」
おー! はやて、助かるよ。
「そうですか。わかりました。すまないなハムテル」
……
「あの、言いそびれましたが……おれの名前はハムテルではないです。坂上公輝です。ハムテルははやてがおれを呼ぶ時のあだ名です」
まあこれは仕方がないだろう。ヴォルケンリッターのみんなが自己紹介した後はやては自己紹介してたけど、おれがその間に入って「おれの名前は(ry」ってやる勇気はおれにはないね。
「む、そうか坂上」
「ああ、いいですよ。しゃーなしです」
おれは言う。そして
「じゃ、これからみんなは八神家の一員やで! やからみんな仲良くするように!」
その発言に狼狽するヴォルケンリッター(以下ヴォルケンズ)。
その発言に「やっぱりか」と思うおれ。
その発言をドヤッとして言うはやて。
なにはともあれやっぱり家族増えたね。
と、いうことは明日(実際は今日)の誕生日ケーキの取り分は減るな……
☆
ヴォルケンズの衝撃的な登場から一夜が明けてはやての誕生日当日。結局あのあとはやての「もう眠い」発言から後の説明は翌日にまわされた。 おれも体を起こしベッドから降りようとする。
「……」
目に入るのは青い毛の狼。ザフィーラさんだ。おれのことを監視するためかは知らないが今日は一緒の部屋で寝た。一緒のベッドじゃないぞ? ザフィーラさんは狼に変身して床で寝た。
「……どうも」
「……うむ」
そう一言行ってから部屋を出て行く。先に起きていたようだけど、まさか待っていてくれたのか?
特に意味もないことを考えるのをやめてリビングに行くことにする。
☆
「と、いうことです」
朝ごはんを食べ終わってからヴォルケンズによる説明を受けていた。要約すると、はやてが持っていたあのゴツイ本は闇の書といい、魔力を一定以上集めるとその本の持ち主はすごい力を得るとかなんとか。
「では、魔力蒐集の命令を」
シグナムさんはそう言ってはやてに跪くが、
「そんなんせんでええで。その魔力を集めるのって人様に迷惑がかかるんやろ? そんならそんなことしたらあかんわ。それに、シグナムもシャマルもヴィータもザフィーラも、もう私の家族なんやからそんな態度じゃあかんで?」
その発言にまたしても狼狽するような様子見せるヴォルケンズ。なんだ? 夜といい、朝ごはんの時といいなんか妙な反応だ。
どうやらはやてはすごい力には興味ないようだな。そのあとの発言ははやてらしいというか、なんというか。まあ、おれが仮に主だったとしてもそんなヤバげな力はいらないけどな。なんだよ「闇」の書って。怖すぎだろ。後で魂とか要求されそう。
あ、そういえば
「そういえば夜おれに魔力があるみたいなこと言ってたけど、魔力があったら何かあるのか? ていうかおれもしかして魔法使い?」
いままで忘れてたけど疑問に思ったことを聞いてみる。
「ああ、貴様からは確かに魔力を感じる。だが実戦に耐えうるほどではない。消費魔力の少ない魔法なら使用も可能だろう」
まじか。
答えてくれたのはまたもシグナムさん。おれ魔法使いだったのか。DTは守ってたけど三十歳にはなれなかったんだけどな……
「闇の書起動の場に主以外の魔力保持者がいれば、闇の書を利用しようとしている者の可能性があるからな」
ちょーっとぶっ飛んだ理論だけど一応納得。それだけ用心深いということで。
「じゃあはやても魔法使いなのか?」
「我々は魔導師と呼ぶが、そうだ。特に闇の書の主になるための第一条件に膨大な魔力が必要だ。故に闇の書に選ばれたというだけで主には魔導師の才能があるというのは確定している」
ほえー、そんなになのか。
「はい! 魔法のことはもうええやろ! それじゃみんなの採寸せなな!」
いままで黙って聞いていたはやてが話し出す。
「みんなその服だけじゃ不便やろ? 今まで考えとったけどみんなに似合いそうな服も思いついたし、すぐに買いに行かなあかんしな」
そうだな。さすがにあの服はちょっと困るな。世間的にも。俺的にも。今ヴォルケンズが来ている服は黒い薄地の服だ。体の線がはっきりと出るデザインの服を着ている女性三人はとてもエロい。ただ……ザフィーラさんは……うん……
「あ、主、そのようなことは……」
「ええからええから、ハムテルくんはザフィーラのやっといてな」
「へーい」
「……わかりました。では、我々の騎士甲冑をお考え下さい。我らは剣は持っていますが騎士甲冑は主からいただくのです」
「騎士甲冑? 戦う時の衣装かいな? わかったで、そっちの方もばっちりかっこええの考えたるわ」
「ありがとうございます」
どうやら話はまとまったようだ。すると、
「ほい、ハムテル君」
「っと」
はやてがメジャーを投げ渡してきた。
「じゃザフィーラのこと頼んだで」
はやては女性3人を連れて奥の部屋に行ってしまった。
残されたのはおれと無口でいかついお兄さん、ザフィーラ。
「……じゃ、すませちゃうか」
「……ああ」
おれ達は黙々と作業を進めていく。おれも話を切り出す方ではないので話は膨らまない。
「……」
「……」
女性陣はとっても楽しそうだ。
そういえば前回の石田先生のプレゼントは完全な自分の趣味