短めですが、どぞ(´・ω・`)つ【新話】
さて問題です。今おれ達はどこにいるでしょうか?
正解は……
「いやぁ……今年も観光が捗るなぁ」
「そんなに良い所なのですか?」
「おう、あの世界は一年中ポカポカ温かいし、ルーテシアちゃんの家はまるで別荘みたいだし、メガーヌさんの料理はギガウマだし。言うこと無しだな」
「ほう、それは楽しみですね」
あっ、正解は無人世界カルナージに向かう途中の臨行次元船の中でした。
目的はカルナージで行われる、毎年恒例の合宿兼旅行である。
次元船の中ではある人は会話を楽しみ、ある人は読書に耽り、ある人は睡眠をとる等思い思いに道中の暇な時間を過ごしている。
そんな中、窓側の席に座ったおれは窓の外の流れる景色をぼんやりと見つめている。景色と言っても、見えるのは暗い色の絵具を沢山混ぜてぐちゃぐちゃにしたような次元の海だけであるが。ちなみに、おれの隣にはドゥーエさんが座っている。
「しかし、次元の海ってのはいつになっても慣れないな」
「そうなのですか? 同志マサキとて、魔法に触れて十年以上経つでしょうに」
「それはそうなんだが……なんとなーく、見てると不安になるんだよな」
その不気味な色合いの所為だろうか?
地球人たる自分にとって馴染みの無いものだからだろうか?
それとも、この次元船で事故が起きたら乗客乗務員共々全滅だからだろうか?
「あ、そういえば、おれ飛行機も船も嫌いだったわ」
「ああ、怖いんですね」
端的に言わないでほしい。恥ずかしくなる。
「こういうときは寝てしまうに限る。おやすみ」
「おやすみなさい」
生温かい目でこちらを見てくるドゥーエさんの視線を振り切るかのように夢の世界に逃げた。
☆
夢の世界に逃げてから三時間ほど経った頃だろうか。おれ達を乗せた次元船は無事に目的地へと到着したようだ。到着したことに気が付かなかったおれはドゥーエさんによってやさしく起こされた。これが隣にいたのがはやてだったら叩き起こされたに違いない。
次元船から降りたおれ達はルーテシアちゃん宅に向かう。この星は本来無人世界であり、ここに住むのはルーテシアちゃんの家族だけだ。よって次元船はルーテシアちゃんの家の近くに泊めてくれる。究極の駅近である。
「みんないらっしゃ~い!」
「こんにちはー」
「お世話になりまーすっ」
家の前でおれ達を出迎えてくれたルーテシアちゃんとメガーヌさん。これからお世話になる挨拶をするなのはさんとフェイトさんの大人二人組。
あれ? ここは年長組の一人としておれも一緒に挨拶をすべきなのではなかろうか? ヴィヴィオちゃんやアインハルトちゃん達年少組と一緒に並んでるおれって……そんなに若く見えるのかぁ、照れちゃうなぁ。
と、そんな感じで照れていると、アインハルトちゃんを知らない子たちに対して彼女の紹介も滞りなく終わったところ。
「むっ」
「ん?」
ルーテシアちゃんがおれに気付き、こちらにスタスタやって来る。
こちらにやって来るルーテシアちゃんを捕捉したおれは、懐に忍ばせたある物に手を伸ばす。そして……
「あああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁおいしいいいいいぃぃぃぃぃムシャムシャムシャムシャ」
「たい焼きちょーだ……ってあああああ! ずるい! ずるいよ!」
おれはおもむろに懐から取り出したたい焼きをルーテシアちゃんに見せつけながら背びれからバリバリと食べていく。おれより背が低いルーテシアちゃんはおれの服の裾を掴み、すごい勢いでゆすって来る。
「分かってるって、こいつが欲しいんだろ?」
「わーい!」
懐にしまっていたもう一つのたい焼きをルーテシアちゃんに渡してあげる。
これはルーテシアちゃんと会った時のお約束である。何でこんなことを始めたのかと聞かれたら、それは初めの出会いが理由だろう。
それにしても、あの時と比べてルーテシアちゃんは随分と明るくなったな。一体どんな心境の変化があったというのか。まあ、どっちのルーテシアちゃんでもいい友達になる自信はあるけどな。
「じゃ、着替えてアスレチック前に集合にしよう!」
「「「「はいッ!」」」」
「こっちも水着に着替えてロッジ裏に集合!」
「「「はーいっ!」」」
と、ルーテシアちゃんと戯れて居たらいつの間にか話がまとまっていたようだ。
元機動六課組はなのはさんのパーフェクト訓練教室に、ノーヴェさんを含めた年少組は川遊びと言う名の訓練に向かうことになった。もちろん、心も体も若くありたいおれは年少組と共に川遊び組だ。
「むあーい! ムグムグ」
「ルーテシアちゃん、物を食べながら話してはいけません」
たい焼きをたっぷりと頬に詰めて喋るルーテシアちゃんであった。