それが日常   作:はなみつき

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水着回


川と水着と87話

 昨今、分別のつかない大人が年端も行かない少女に乱暴するという非常に悪質な犯罪が絶えない。奴等は自分の欲望を満たすためという理由だけで、キラキラと輝く少女の笑顔とその両親の気持ちを踏みにじる。

 

 全くけしからんな!

 

 おれはこれでも医者の真似事をしている。仕事柄色々な人たちの笑顔を見てきた。

 

 一生残るはずだった自分の怪我が治った時に見せる、未来への希望溢れる笑顔。

 大切な人が患った、今までどんな医者でも治せなかった病気が治った時に見せる、過去の絶望に別れを告げる笑顔。

 そして、病床に伏せった両親が元気になった時に見せた、少年少女達の笑顔。

 

 こんなに素晴らしいものを奪うとは、なんと言う卑劣さか。

 だがまあ、奴等が可愛い女の子を見た時に抱く感情もわからないこともなくはない。ちょっとイケない気持ちになってしまうのも仕方のない事である。男ならな。

 

 だがな! やっていいこととやっちゃいけないことの区別はしっかり付けるべきだ。

 そして、そういう感情は表にだしちゃいけないんだ!

 

 真の男ならな!

 

(ふつくしぃ……)

 

 以上、川辺で水着姿のヴィヴィオちゃん、コロナちゃん、リオちゃん、ルーテシアちゃんがキャッキャウフフしている様子を真顔で眺めている坂上公輝でした。

 あ、リオちゃん、リオ・ウェズリーちゃんはヴィヴィオちゃんやコロナちゃんの同級生の女の子だ。明るくてノリのいい性格で、八重歯とショートヘアーが特徴的な少女である。なんだか、地球一有名な魔法使いの友達みたいな苗字だ。

 

「同志マサキ。心拍数が上がっているようですが、何かありましたか?」

「なんでもないよ、ドゥーエさん」

 

 いくらそういう感情を表に出していなくても、内側の情報を読み取れる存在がいたらどうしようもないね、うん。

 

「アインハルトさんも来てくださ―――いっ!」

 

 一足先に川に入っていたヴィヴィオちゃんが未だにパーカーを脱ぎもしないアインハルトちゃんを川へ誘っている。

 良いぞ良いぞ。グッジョブだ、ヴィヴィオちゃん! ヴィヴィオちゃんの誘いに乗ったアインハルトちゃんは羽織っていたパーカーを脱ぎ、水着姿になる。

 

(な、なんと! アインハルトちゃんは紺色のビキニ……すばらしぃ……)

 

 スク水のコロナちゃんにお子ちゃま水着のルーテシアちゃんとリオちゃんは良いとして、地球で言えば小学4年生のヴィヴィオちゃんがビキニを着ているのを見た時は何の冗談かと思ったが、アインハルトちゃんくらいになれば実によく着こなしている。

 

「マサキ、さらなる心拍数の上昇を検知しました。大丈夫ですか?」

「大丈夫だ、問題ない」

 

 いかんな。ドゥーエさんの近くでは迂闊に女の子も見られない。

 

「ところで、どうですか? 私の水着姿は」

「うむ? うーむ……」

 

 おれは川遊びから鍛錬に移行し始めた少女達から視線を隣に立つドゥーエさんに移す。

 白いビキニに淡いピンク色のパレオを合わせている。その様は綺麗なビーチを歩いているお姉さんだ。

 出るところは出て、引っ込むところは引っ込むナイスバディなドゥーエさんには似合い過ぎるくらいに似合っている。大人の色気がムンムンだ。

 頭の先からつま先までじっくり観察したおれは、一つ頷き結論付ける。

 

「最高です」

「ふむ、先ほどより心拍数の上昇が少ない。同志マサキはロリコンの気がおありで?」

「ちょちょちょーっと待って、ドゥーエさん。それは誤解だ。そんな心拍数という情報だけでおれがロリコンか否かを判断するなんて早計だよ。個人の趣味や嗜好というものは、そんな上辺の情報だけで判断できるものじゃないんだ!」

 

 べべべ別に大人の色気に魅力を感じていない訳じゃないんだ。ただ、美人の水着姿というのははやてやなのはさん達と毎年海に行くから、見慣れてるだけなんだ。ありがたいことだと思う。

 一方少女達の水着姿というのはそうそう見られるものじゃ無いため、ちょっとドキドキというかドギマギしてしまっただけなのだ。

 え? 転生直後の小学生だった時に沢山見たんじゃないかって? 小学生の頃の記憶って10年も経てばかなり薄れるよね……

 

「そうなのですか? では、同志マサキはどのような嗜好をお持ちで?」

「えっ、いやー……あの、そう言うことをはっきり言うのはちょっと……」

 

 それは流石に恥ずかしい……

 

「まあ、この間ハヤテと飲んだ時にその辺のことは聞きましたから別にいいです」

「はやてええええええええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?!?!?」

 

 家に帰ったらあいつとお話しないといけないことが出来たな。

 

「先生も大変そうだな」

「ノーヴェさん……」

 

 少女達に鍛錬のアドバイスをしていたノーヴェさんが川から上がり、こちらに来たようだ。

 

「ま、いつものことさ。八神家において、おれにプライバシーは無いに等しい」

「……ほんとどんな扱いされてんだよ」

 

 はやてはおれの考えてることを悉く読んでくるからエスパーだと思うの。

 まあ、おれのことはどうでもいい。

 

「しかし、ノーヴェさんも随分丸くなったもんだ」

「う、うっせ……」

 

 そういってノーヴェさんはそっぽを向いてしまう。

 隔離施設にいた時はあんなにツンツンしてたノーヴェさんだが、ゲンヤさんの家に住むようになってから大分角が取れたようだ。今ではヴィヴィオたちに格闘技を教えてあげたりしている。

 

「なんにせよ、ツンツンされるより今の方が付き合いやすいし、良い事だ」

「ふん……」

 

 ノーヴェさんはそう言ってどこかへ行ってしまう。

 ツンツンしているように見せかけて、顔が赤くなっていた。

 

「ははは、可愛い奴め」

 

 さーてと、少女達の水遊びの様子を再び見ることにしましょうかね。

 そう考えたおれは川の方に視線を戻す。

 

「ごはっ!?」

 

 突然川の方から大量の水が飛んで来て、おれに直撃する。

 ところで、バケツ一杯分の水を掛けられた程度では人はびくともしないだろう。しかし、非常に大量の水だった場合、人は立っていられなくなるかもしれない。さらに水の量が多ければ人は水に攫われてしまうことだろう。

 水というのは怖いものだ。身をもって実感したね。

 大量の水がものすごい勢いで飛んで来たら人も飛べるんだな……って。

 

「ぐえー……」

「マ、マサキさん! ごめんなさい!」

 

 おれに謝罪の言葉を述べるのはアインハルトちゃん。

 

 これだから少女達の水遊びから目が離せないんだよな…………危ないから……

 

 

 

 

 

 あ、ドゥーエさん。いつの間にそんな遠くに……


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