それが日常   作:はなみつき

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久しぶりに書きました


BBQと天然温泉と88話

 水に浸かる予定は無かったが、年少組の強烈な水遊びによって濡れ濡れのぐちょぐちょになったおれはもう何も怖くない状態となったので、濡れた服も脱がずに年少組に混ざって水遊びをすることにした。

 

 波にのまれてひどい目にあった。

 

 

 ☆

 

 

「さー、お昼ですよー! みんな集合──!」

「「「はーいっ!」」」

 

 年少組は川へ遊びに、年中組(なのはさん、フェイトさん率いるスターズ、ライトニングの子達のこと)は山へ訓練に行っている間に昼食の準備をしていたメガーヌさんから号令がかかる。どうやらなのはさん達は遊んでいたおれ達より早く訓練を切り上げて手伝いをしていたようだ。

 

「はーい!!!!」

 

 ま、当然おれは子供たちに混ざって元気に返事する訳ですわ。

 だって、おれは紅茶くらいしか淹れられないし(最低限の料理はできるけど)、なにより人手は足りてるみたいだから素人は黙って母鳥が餌を運んでくるのを巣で待つ雛鳥のごとく食事を待つのだ。

 

「体冷やさないようにあったかいものいっぱい用意したからねー」

 

 メガーヌさんが言うように庭のデッキに設けられた昼食会場のテーブルにはBBQがずらりと並び、エリオ君が『それ魔女と給食のおばちゃんくらいしか使わなくね?』ってくらいデカイ鍋でスープが焦げ付かないようにぐるぐるとかき混ぜている。

 

「なんで公輝君はそんなにびしょぬれなの?」

「クールビズ」

「あ~……え?」

 

 串に刺さった肉にタレをぬりつつなのはさんがおれに言う。おれの思考停止の返答にちょっと納得しかかってるあたりなのはさんも訓練で疲れてるのかな? 彼女の場合99割素の様な気もしなくもないが。

 

「着替えて来なよー……」

「着替えは持って来ていない!」

 

 おれはキメ顔でそう言った。

 

「えぇ……? なんでそんなに自慢げなの……」

 

 いやだってさぁ、ゲーム(ビデオ)とかゲーム(ボード)とかゲーム(カード)とか鞄に詰めたら空きが無くなって……。はやてもおれの荷物チェックした時に「うん、100点満点や!」って言ってたし、大丈夫かなって。後ろでヴィータが「ガキかな?」とか言ってた気がするけどおれには聞こえなかったな。

 替えの服くらい宿泊施設としてさらに進化を果たしたホテルアルピーノにあるやろ(適当)と高を括って来たのだ。

 

「マサキ先生、部屋のクローゼットに浴衣があるのでそれを使っていいよ!」

「え? まじであんの? すげーなホテルアルピーノ」

 

 すげーな。期待を裏切らない。ていうか、浴衣て。

 そういうことなら、ルーテシアちゃんの助言通り、部屋の浴衣を借りることにしますかね。

 

「それじゃあ着替えて来ます」

「あ、マサキ先生」

 

 借りている自室に向かおうとしたおれをメガーヌさんが呼び止める。

 お? おれも年少組に対するみたいに風邪をひかないように気にかけてくれてるのかな? 

 

「家にあがるときは床を濡らさないようにしてくださいね?」

「あ、はい」

 

 誰もおれの健康状態なんて気にしてくれないのだ。知ってた。

 だって風邪ひかないもん。

 

 

 

 ☆

 

 

 訓練合宿としてカルナージまで来ている面々は空かした腹を満たした後、腹ごなしもそこそこに再び訓練へと向かっていった。いや、むしろ訓練自体が腹ごなしみたいな部分もあるのだろうか。あれだけ食った後に動き回るとか、おれだったら吐く自信しかない。

 なのはさんやフェイトさんはもちろん、彼女たちに育てられた部下たちももう向こう側の人間となってしまったか……

 

 さて、みんな目的をもってここにきている一方で完全な休暇の旅行としてカルナージにやって来たおれはというと……

 

「メガーヌさん! 男湯のブラシ掛け終わりました!」

「はーい! それじゃあお湯張っちゃってくれる?」

「了解っす!」

 

 風呂掃除をしていた。

 

 

 ??? 

 

 

 あれ? きゅう……か……? まあ、いいけどさ。ホテルアルピーノは別に営利企業でも何でもないただの家だし、合宿の宿として提供してもらってるから手伝うのは当然だ。

 それに、今回はエリオくんとおれという男が二人もいるために、普段は使っていない男湯を稼働させている。手伝わない理由がない。

 

「しかし、まあ……ルーテシアちゃんの趣味もここまでくると感心するなぁ」

 

 おれはすごい勢いで溜まっていくお湯をぼーっと眺めている。

 計画案では男湯と女湯を分けずに全部ぶち抜いて一つの大きな風呂区画にする計画もあったとかなんとか。

 もしそうなったら、男と女の風呂の時間が分けられて滅茶苦茶デカイ風呂に対しておれとエリオ君だけという悲しいことになってただろうな。ああ、もしそうなってたらルーテシアちゃんの召喚獣のガリューとフリードも付き合ってもらってただろうか。それでも4人か……まだまだ広すぎて寂しいことになったろう。

 

「……静かだ……」

 

 いつも横には大抵はやてか、はやてが居なかったらヴォルケンズの誰かが居るのが常だったから、こうして仕事でもないのに一人で居るととても静かに感じる。たまにはこういう時間も悪くはないと思いつつもついつい物足りなさを感じてしまう。

 

「あ」

 

 今のなんだかフラグな気がする。すごい面倒なことに参加させられる気がしてきた。主にはやてのせいで。

 

 まあ、そんなことはどうでもいい。

 今はこのめずらしい状況を楽しもうじゃないか。

 みんなが帰ってきたら風呂だ。温泉だ。温泉は大好きだ。

 

 

 

 ☆

 

 

 

「あ゛~~~~~~……」

 

 この風呂場を自分で洗ったこともあって気持ちよさも倍増してる気がする。

 

「先生、おじさんみたいですよ」

「二十歳越えたらもうおじさんに片足突っ込んでるみたいなもんよ。年々時間の流れが早くなっていく感覚が怖い怖い」

「そんなもんですか?」

「そんなもんなんです」

 

 訓練を終えて戻ってきたエリオ君と一緒におれは温泉に来ている。

 厳しい訓練には慣れているのか、エリオ君の動きに疲労からくるぎこちなさのようなものが見えないのは大したものである。

 

「10代は全力で楽しんでおいた方が良いぞ? 華の10代って言うし」

「毎日楽しいですよ? 訓練もやりがいがありますし」

「……まあ、本人が満足ならいいか」

 

 なのはさんもだが、こんなに若い頃から仕事仕事ですごいなぁ。(小並感)

 

「とはいえ、普段は女所帯で過ごしてるエリオ君には経験が足りないと思うんだよ」

「経験……ですか?」

 

 エリオ君は何のことを言っているのか全く想像がつかないのか、首を捻って考える。

 

「ああ、経験だ。ここにはおれとエリオ君の男だけの空間だ。……まあ、向こうの女湯では女性陣がキャイキャイしてるけど……」

 

 さっきから隣の女湯が賑やかだ。あれだけ女性が集まればそうもなるか。

 

「それは置いておいて、ここは男だけの空間だ」

「は、はあ……」

 

 やはり検討がついていないエリオ君。

 そんな彼におれはこう言った。

 

「男同士で恋バナしようぜッ」

「こっ!?」

 

 恋バナのこの字しか言えずに口をパクパクしてるエリオ君。やはり彼の周りでこういう話題はあまり出ないらしい。

 修学旅行の寝る直前にやるバカ話みたいなものはやっておいて損はないよなぁ? 

 おれ自身も普段は女所帯に挟まる男だからこういう話をする機会が中々ないため、少しはしゃいでしまっていることは自覚している。え? ザフィーラさん? あの人と恋バナしても……あれ? ちょっと面白そうだな。今度話題振ってみるか。

 

「やっぱりエリオ君はキャロちゃんの事が好きなん?」

 

 男と女がちょっと仲良くしているからと言ってそういう関係だと邪推するような年齢ではないが、つっつきやすい的が目の前にあるのでとりあえず話の種として投げてみる。

 

「な、な、なッ」

 

 ななな? ナナちゃんという女の子がいるのだろうか? 

 

「ぼ、僕は別にキャロとはそういう関係では……」

「そうなのか? 確かに、相棒としての面が強いか」

「そうですそうです! キャロは相棒です!」

 

 人生の? っと切り返してやろうかとも考えたが、ちょっとかわいそうなので言わないでおく。

 

「せ、先生こそ、はやてさんとの関係はどうなんですか?」

「はやて? はやてかぁ……」

 

 エリオ君からの返球はおれとはやてについてだった。

 だがしかし、はやてか。そういう目ではやてを見たことは無かったな。だって……

 

「はやては、なんというか……おかんじゃん?」

「おかん……」

「もしくは手のかかる妹? いや、姉?」

「妹……」

「おれとはやては血がつながってないけど、なんというか、過ごした時間が長いうえに距離が近すぎて……最早半身?」

「えぇ……家族とかも超越してるんですね」

「うん、冷静に考えてみるとおれとはやての関係ってなんなんだろうな」

 

 考えれば考えるほどわからなくなる。血がつながってないからこそ余計にこの関係性が不明である。とはいえ、その関係が心地よいのでおれは満足しているが。

 

(あれ? 半身ってそれは所謂……)

「昔はおれがあいつの足代わりだったし、半身ってのは間違ってないかもな。うん。おれ、あいつの下半身だったわ」

「その言い方はちょっと」

 

 なにか考えて居たようなエリオ君だったが、おれの言葉を聞いて苦笑いしている。

 

「おれの事は置いておいて、そうかぁ……エリオ君にはまだ好きな女の子は居ないのか」

「ははは、そうですね」

 

 もう14歳とも思ったが、まだ14歳だもんな。地球で言えば中学生。ませたガキンチョならそれくらいから彼氏彼女だの言うやつも居たけど、まだまだ早いか。

 おれだってそのくらいの時は……スッー……??? 学校と管理局の手伝いが無い時ははやてたちとスマブラやったりマリカやったりポケモンやったりした記憶しかねぇな……

 

 それはそれとして、

 

「エリオ君、あの衝立にある扉をくぐれば女湯に行けるぞ?」

「ぶふっ!?」

 

 おれは男湯と女湯を隔てる衝立にある業務員用の扉を指さしてそう言う。とりあえず創作の中でしか起こりえない覗きイベントを消化することにした。

 

「犯罪ですよ!」

「まあそうだけどさ、エリオ君なら許されるんじゃね?」

「許されませんよ!」

 

 そうかな? むしろフェイトさんなんか喜びそうな気がするけど。あれ? そもそも今フェイトさんは風呂に入ってないか。確かなのはさんと打ち合わせしてるっぽいし。じゃあだめか。

 

「いつだったか、地球でスーパー銭湯に行った時は結局女湯に移ってたじゃん。ちょっと大人になった今こそまた入ってみたいんじゃない?」

「な、ないですよ……」

 

 声音が弱弱しくなっていくエリオ君。何を想像しているんだか、彼の顔は風呂の熱気も合わさって真っ赤になっている。

 やれやれ、初心というかなんというか。まあ、保護者がフェイトさんだしな。フェイトさんもそういう話題には弱そうだ。ここは男としてフェイトさんでは教えづらいこともエリオ君に教えるべきだろうか? とりあえずそこは将来の課題としておこう。

 

 エリオ君を一通り弄って満足した俺は大分体が暖まって来たので風呂の縁に腰かけて足だけ湯につける。暖かい気候だが、温泉で暖まった体にこの風は心地よい涼しさを感じさせる。

 

「ん?」

 

 絶 招 炎 雷 炮

 

 さっきまでおれとエリオ君でワイワイやっていたためあまり気にしていなかった女湯からドゴンッという尋常じゃない音が聞こえて来た。

 

「ぁぁぁぁぁああああああああ!!!!」

「な、なんだ!?」

 

 誰かの叫び声とともに何かが湯舟へと墜落してきた。

 ていうか、落ちてきた場所がさっきまでおれが居た場所なんだが……え? なに、こわ。

 

「おや? よく見たらセインさんじゃないか」

 

 落ちて来たなにかはスカさんの娘の一人であるセインさんだった。お湯に対してうつ伏せの状態で浮かんでいるため顔は見えないがその特徴的な髪色と体格で判断できる。

 彼女は保護観察終了後は教会に勤めていたはずだが、どうしてここに? そしてなんで水着? 

 

「同志マサキ」

「わお! びっくりした。ドゥーエさんか」

 

 空から落ちて来たセインさんを見ているといつの間にか後ろにドゥーエさんが立っていた。さっき話題に出した扉を通って女湯からこちらに来たのだろう。

 彼女も今の時間に風呂に入っていたようで、体にはバスタオルを巻いている。八神家に来た当初は男のおれに全裸を視られようが気にしないような人だったが、ある程度の慎みというものを知ったらしい。

 

「こちらにセインがお邪魔してきたかと思い、回収に来ました」

「ああ、うん。なんか目回してるっぽいから連れて帰ってあげて」

「はい」

 

 そういうとドゥーエさんはセインさんを俵のように持ち上げて女湯の方へと戻っていく。……え? ちょっと? その扉ちゃんと閉めてってくんない? 

 

 あ、ルーテシアちゃんが扉から顔だけ出して手を振っている。おれも手を振って返しておこう。あ、そのままルーテシアちゃんが扉を閉めてくれたようだ。よかった。

 

「ふう……とんだトラブルだったなエリオ君……?」

 

 エリオ君に声をかけてみるが、彼からの返事がない。

 湯舟に視線を戻すとそこには仰向けの状態で浮かぶエリオ君。彼の顔はのぼせた以外にも原因がありそうなほどに真っ赤になっている。

 

「エリオ君!?」

 

 セインさんに押しつぶされて気絶したらしいエリオ君を救助するため、おれは風呂を上がった。

 

 

 ……あれ? そういえばエリオ君はさっきまでセインさんの落下地点とは少しずれた位置に居たような気がしたんだが。これがラッキースケベかぁ。




久しぶりに書いた話が野郎とのお風呂回なの笑う

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