ブラウンシュヴァイク公が転生したけど、転生先はフォーゲルだった件 作:ひいちゃ
どこまで続くかわかりませんが、どうぞよろしくです!
「無礼な、離せ!」
必死にわしは振りほどこうとするが、哀しいかな。
わしの筋力では、わしの両腕を押さえつけている屈強な兵士を振りほどくことはできなかった。
それでもなんとかこの場を脱しようとするわしに、腹心であった男・アンスバッハが盃を近づけてきた。そして奴は、まるで滅びの美学に自己陶酔しているような表情で、冷酷に告げた。
「ブラウンシュヴァイク公爵家最後の主として、どうか潔く自決なさいますように」
毒入りの酒が、わしの喉に流し込まれる。これが固形物なら吐き出すこともできようが、液体となればそうはいかない。まぁ、吐き出したとしても、彼らは次は銃を抜き出して、わしを射殺しようとするだろうが。
続いて、毒がわしの体の機能を停止させていく。眠気が深まるのに合わせて、天上(ヴァルハラ)への階段を上っていくのがわかった。
そしてわし……ブラウンシュヴァイク公爵は死んだ。
ああ、どうしてこんなことに……。
だって、門閥貴族の総力を結集したんだぞ? それだけではない。金髪の孺子やその取り巻きほどではないが、一応軍事の専門家も参加させた。シュターデンめはちと頼りないが、ファーレンハイトやメルカッツは、とてもよくやる軍人だった。それに、イゼルローンと並んで難攻不落と呼ばれたガイエスブルクを拠点とした。
少なくとも、ここまで無様な最期を迎えるほどの要素はなかったはずだ。
ん?
「金髪の孺子やその取り巻きほどではない」
……ああ、そうか。全てはあいつらがチートすぎたのか。
人は死を迎えると、急に頭脳が明晰になるという。そのためなのか、ここに来て急に色々なことがわかってきて、わしは全てを理解した。
答えはいたってシンプルだった。わしらがバカで弱くて、あいつらが強すぎたのだ。
確かにこちらにも、ファーレンハイトとメルカッツという良将はいるが、向こうにはそのクラスの指揮官がそれ以上いる。そりゃどうしても勝てんわ。
と考えると、やはりあの金髪の孺子とやりあうのは過ちだったか。最初から、わしも枢軸軍側についておればよかった……いや、リップシュタット軍はわしが盟主だったから無理か。ということは、最初からやりあわなければよかったんだ。
最後の最後にそれに気づくなんて、よくやったわし。だが、もう死ぬのでどうしようもないのだが……。
ああ、リバー・オブ・サンズが見えてきた。どうか地獄に行きませんように……。
* * * * *
「フォーゲル提督! まもなく、叛乱軍艦隊が射程内に入ります。ご指示を!」
「え?」
気が付くと、わしはなぜか、帝国軍戦艦の艦橋にいた。副官らしき男がわしに指示をお願いしておるようだが……。
え? フォーゲル? なんでこいつが、わしをあの頼りない提督の名で呼ぶのだ? わしは、ブラウンシュヴァイク公爵オットーだぞ? どういうことだ? それにわしは死んだはず……。
「提督、いかがなさいましたか? 早く指示を!」
「お、おう、そうだな。とりあえず、敵が射程に入り次第、攻撃を開始せよ!」
「はっ!」
あ、そうだ。一応お願いしておこうか。
「それと副官。わし……私に鏡を持ってきてくれんか」
「は、はぁ……」
副官は侍従に鏡を持ってくるよう命じ、それから時を経ずして、侍従が持ってきた手鏡をわしに渡してきた。
それをのぞきこみ……わしは衝撃を受けた!
鏡に映ったわしの顔は、あのフォーゲル提督だったのだ!
な、なんなのだこれは!? 地球時代の「らのべ」とかいう文献に散見されていた「転生」というものなのか!?
だが、あの金髪の孺子か、そうでなくても奴の配下の提督に転生すればいいものを、なぜにフォーゲルに転生したのだ!?