ブラウンシュヴァイク公が転生したけど、転生先はフォーゲルだった件   作:ひいちゃ

10 / 19
第六次ティアマト会戦のメインです!

各艦隊の動きは、例のごとく、後で掲載しますね。




第10話『みたび、ティアマト』

 ティアマト星域に入ると、わしはさっそく、偵察隊を星域の内部へと進めた。

 驚くべきことに、叛乱軍は惑星アンシャルに艦隊を置いてはいなかった。ティアマトを攻略した艦隊は、全てラームのほうに展開していたのだ。

 

 これを見てわしは考える。

 果たして叛乱軍はどう来るのか……。アンシャルを囮に、それに我らが食らいついてきたところで一気に襲い掛かる腹か、それともラームで決戦に挑む気か……。

 

 ここはわしの独断で決めずに、他の諸将にも話を聞いたほうがいいかもしれんな。よし。

 

「バルトハウザー、再び各艦隊の司令官を呼び出してくれ」

「はっ」

 

 ほどなくして、通信スクリーンに、ファーレンハイト、レンネンカンプ、アイゼナッハ、ミュラーの各提督の姿が映し出された。

 さっそく口を開いたのはファーレンハイト中将だ。

 

「フォーゲル提督、いかがなされた?」

「うむ。偵察の結果、叛乱軍は艦隊をラームに集中させているらしい。これについて、諸将の意見を聞きたいと思ってな」

 

 それを聞いて、四提督がほぼ同時に、まったく同じ表情……驚愕の表情……を浮かべた。それ見て、わしはかつてのフォーゲルは、他の提督の意見を求めず、自分の考えで物事を推し進めるタイプだったのかと悟り、反面教師にしようと思ったのだった。

 

 さて。

 

「わしの考えではありますが、やはりここはラームの前で迎え撃つ腹積もりではないかと思います」

 

 というのはレンネンカンプ提督だ。それにまだ若い提督・ミュラー少将も同意する。

 

「私もそう思います。分散配置すれば、ただでさえ少ない艦隊を各個撃破されてしまいます。それを避けるためにも、ラームで迎え撃つつもりではないでしょうか?」

 

 それとは別の意見を述べるのはファーレンハイト提督だ。

 

「しかし、正道通り迎え撃っては、数のうえで向こうの方が不利。叛乱軍がそのような凡策を打つとは考えにくい。何か他の思惑があるのではないだろうか?」

「……」

「はっ。フォーゲル提督。アイゼナッハ中将の副官・グリース大佐であります。中将に代わり、小官が中将の意見を代弁させていただいてもよろしいでしょうか?」

「お、おう」

 

 そういえば聞いたことがある。アイゼナッハ中将は非常に無口でほとんどしゃべらない。なので、副官のグリース大佐が、彼の代弁をしていると。本当にご苦労なことだ。

 

「それでは……。ファーレンハイト提督の言う通り、叛乱軍が、不利とわかっている作戦をあえてとるとは考えにくい。ここは機先を制するため、アンシャルを囮に、我が軍がこれを攻略しようとした途端に、一気に攻撃をかけるつもりではないか?とのことです」

「そうか……ふむ……」

 

 つまり、わしの前者の推測と同じか。とすると、最悪の場合を考え、敵がその手をとってくることを前提に、作戦を修正したほうがいいな。

 

「よし、諸将の意見はよくわかった。ここは、もしものことを考えて、アイゼナッハ提督がおっしゃっていた、アンシャルを囮にする作戦を叛乱軍がとろうとしているという前提で作戦を組み立てようと思う」

『……』

「レンネンカンプ提督、アイゼナッハ提督、ミュラー提督は、このままアンシャルに向かい、これを攻略してくれ」

「なるほど。提督の考えが読めてきました。つまり、我々が敵の攻勢正面を受け持つわけですな?」

 

 レンネンカンプ提督の質問に、わしはうなずくことで答える。

 

「その通り。そして私の艦隊とファーレンハイト提督の艦隊は、それぞれアンシャルの3時方向と9時方向に展開し、敵が正面担当に襲い掛かった時に、これを側面、あるいは背後から襲う。ファーレンハイト提督は、聞くところによれば、このような迂回奇襲戦術に長けていると聞く。その武勇、頼りにさせてもらう」

「了解しました」

「それでは、異論がなければ作戦はこれで決定する。各提督の健闘に期待する」

『了解!』

 

 そして作戦会議は終わり、通信は切れた。果たしてこの戦い、結果はどう出るか……

 

* * * * *

 

 結論から言おう。すんなりうまくはいかなかった。

 

 我が艦隊はアンシャルを攻略にかかった。そこに叛乱軍艦隊が襲い掛かる。これはその通りになった。

 だが、叛乱軍艦隊の動きは、こちらの想定より早かった! ファーレンハイト提督の艦隊が予定宙域に展開する前に、叛乱軍艦隊はこれを射程内にとらえるどころか、両艦隊が重なり混在する位置まで突出してきたのだ!

 我が艦隊はなんとか予定宙域に展開できたが、正面担当とファーレンハイト提督の艦隊は、そのまま正面から敵艦隊と撃ち合う形になってしまった。

 

「これは予想外の展開だな……。叛乱軍の司令官は、よほどの猪か、それか猛将と見える」

「どちらも変わらないような……。というかそれどころではないかと」

 

 バルトハウザーの進言に、わしはうなずく。

 

「仕方あるまい。敵艦隊の攻勢正面は四提督の艦隊に任せ、我が艦隊は敵艦隊を攻撃しながらラーム方面に移動。敵艦隊を後方から攻め立てる」

「了解!」

 

 かくして我が艦隊は、戦闘機動を取り、時計回りに移動しながら、敵艦隊に砲火を浴びせた。

 

 それを見て、ムーア提督は笑う。

 

「なんだあの艦隊は。ちょろちょろ俺の艦隊のケツをたたくような真似して。正々堂々とした戦いができないとは、情けない奴だ」

「しかし提督、あの艦隊をこのままにしておくわけにはいかないかと」

 

 副官のラップがそう進言するが、ムーア提督はそれを笑って一蹴する。

 

「放っておけ。あんなこざかしい艦隊に何ができるものか。今は、正面の奴らへの対処のほうが重要だ」

「……」

 

 とりあえずこの場は、ムーアに従うラップだが、なぜか彼は胸騒ぎがするのを止めることはできなかった。

 

 一方そのころ、我がフォーゲル艦隊は、なんとか惑星ラーム近く、敵艦隊の後背に移動した。

 

「よし、まずはラームを攻略。敵の動揺を誘い、続いて後背から総攻撃をかけるぞ!」

「了解!」

 

 かくしてまずは、強襲揚陸艦を降下させ、惑星ラームの占領にかかる。時間との勝負だ。敵との正面から撃ち合いで、ファーレンハイト提督の艦隊をはじめとする正面担当艦隊も、かなり消耗している。ミュラー提督の艦隊などは、二個分艦隊しか残っていないほどだ。

 ラームの占領が済むまでは、こちらは戦闘に参加できない。わしは他の艦隊が必死に敵艦隊と戦う姿を見守りながら、占領が済むのを待つしかなかった。

 

 その後も戦いは激しさをまし、ミュラー艦隊は、旗艦分艦隊がかろうじて残っている状態。アイゼナッハ艦隊も、かなりの損害を受けているようだ。

 

 その時だ! ナイゼバッハが待ちかねていた報告をもたらした!

 

「提督、惑星ラーム全土の占領、完了しました」

 

 ついに来たか、よし、ここから逆転だ!

 

「よし、ただちに前進! 敵艦隊を後背から撃つぞ! 総攻撃用意!」

「了解!」

 

 かくして、ラーム占領を終えた我が艦隊は、狼のごとく、敵艦隊に後方から襲い掛かった!

 

* * * * *

 

 一方、叛乱軍艦隊。

 

「また後背から来たか。こざかしい艦隊めが」

「ムーア提督! 嘲笑している場合ではありません! 惑星ラームからの通信途絶! どうやらあの艦隊に攻略されたと思われます!」

「な、なに!?」

 

 自軍の惑星をすべて奪われる。それは、この星域において、補給などの支援を受けることが全くできなくなるということだ。

 その状況に陥った――ティアマトのすべての惑星を奪われた――と知った叛乱軍艦隊は、たちまち動揺した。

 

 もちろん、この機を逃す我らではない。わしはおいとくとしても、ファーレンハイト提督も、レンネンカンプ提督も、アイゼナッハ提督も、そしてミュラー提督も、みんなこの世界では鳴らした猛者たちなのだ。それをわしは、前世の記憶で知っている。

 

「よし、敵は動揺しているぞ。この機に一気にたたく!」

「この機を逃すな! 奴らに今までの借りを一気に返してやるのだ!」

「……」

「はっ。敵は崩れつつある。一気に攻勢をかけよ!」

「フォーゲル提督の采配はさすがだな……よし、この機を逃すな! 我が艦隊も、残った力を一気にたたきつけるのだ!」

 

 動揺しているうえに、前後からの挟み撃ちを受けた叛乱軍艦隊は崩れ、ここに形勢は一気に逆転した。

 

「おのれ……してやられたか……!」

「ムーア提督。今はなんとか耐えられていますが、このままでは壊滅するのも時間の問題かと……!」

 

 戦艦ペルガモン艦橋。悔しさに歯噛みするムーア提督に、副官のラップがそう報告する。

 

「俺がうかつだった。あの時、お前の言う通りにしていれば……済まなかった」

「いえ、とんでもありません。それに今は謝っている場合ではないと思います」

 

 ラップの言葉に、ムーア提督はうなずくと姿勢を正した。

 

「その通りだ。おい、ルグランジュ提督とパストーレ提督の艦隊はどうだ?」

「はい。そちらも攻勢を受けていますが、いまだ健在です」

 

 索敵士がそういうと、戦術スクリーンに各艦隊の位置が映し出される。見ると、敵艦隊は主にムーア艦隊のいる右翼に偏って展開しているようで、ルグランジュ艦隊とパストーレ艦隊が位置している左翼には、大きな空きがあるようである。

 

「よし、二人の艦隊に撤退を打診しろ。俺たちは、奴らの目を引き付けるため、正面の敵艦隊に対し、中央突破を図る! 俺たちの奮闘如何であの二艦隊の奴らの命運が決まるんだ。気合を入れろよ!」

 

 その言葉に、ペルガモンのブリッジクルーに緊張が走る。

 それを見て取ったムーア提督は、再びラップに向きなおった。そして頭を下げる。

 

「済まないな。お前まで地獄に同行させることになって。婚約者もいたのにな」

 

 そのムーア提督に、ラップは首を振った。

 

「いえ提督。まだやられると決まったわけではないでしょう。悔やむのは、あの世に行ってからにしましょう」

「そうだな。よし、目標は、あのほぼ壊滅寸前の敵だ! 砲火を集中して、あそこから突き破るぞ!!」

 

* * * * *

 

 戦局に大きな動きが生じた。前後から我が艦隊に挟撃されていた敵右翼の艦隊がこちらに突進してきたのだ。

 

「フォーゲル提督。どうやら敵は、ミュラー提督の艦隊を突き破って、突破するつもりのようです。それと同時に、左翼の艦隊が9時方向に移動を開始。こちらはどうやら、ティアマトからの撤退を図っていると思われます」

「そうか……。だがこちらは、それを阻止する余裕はない」

「突破しようとしている艦隊への対処で手一杯ですからな」

 

 ナイゼバッハの言葉に、わしはうなずく。そして号令!

 

「うむ。全艦、敵艦隊の左右から、敵艦隊へ砲火を集中! 奴らを通すな!」

 

 ファーレンハイト提督が右から、レンネンカンプ提督が左から、そして我が艦隊が背後から、敵艦隊に砲火を浴びせる。その猛攻の前に敵艦隊はたちまち数を減らしていく。

 そしていよいよ、敵旗艦にも砲火が及びようかというその時!

 

 我が艦隊後方の艦のいくつかが火の玉と化した!

 

「な、なんだ!? 撤退しようとしていた艦隊が戻ってきたのか!?」

 

 わしの質問に、オペレーターが首を振って返す。

 

「いえ提督。これは新手です! その新手の艦隊の中に、戦艦リオ=グランデの所在を確認! ビュコック提督の艦隊と思われます!」

 

 それは、我が宿敵と言っても過言ではない老将の帰還であった―――。

 




※何度も誤字報告してる方がいますが、その箇所のナイゼバッハはこれで合っています。艦隊内のナイゼバッハが話してることなので。アイゼナッハではないですよ。

ふと思ったんだけど、銀英伝全巻読破済みの人がヤンに転生したら、最強なんじゃなかろうか?

さてさて、満を持して再びやってきたビュコック提督! 次回、そのビュコック爺さんが、今までの借りを返すような活躍をしちゃいますよ!

次回『老将、再び』

転生提督の歴史が、また1ページ

=追記=
誤字報告、ありがとうございます。ただ、『リオ=グランデ』の『=』と、『正面からの撃ち合い』の部分は訂正しないでおきました。前者は、『艦隊旗艦・リオ・グランデ』となると紛らわしくなるからつけたもので、後者のほうは、こちらのほうがしっくりくると思ったので。報告してくれたのにすみません^^;
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。