ブラウンシュヴァイク公が転生したけど、転生先はフォーゲルだった件   作:ひいちゃ

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今回は、フォーゲルのちょっとした出世と、後、1期の最終章であるリップシュタット戦役編への前振りみたいな話です。

フォーゲルもここまで出世しました(笑 まだ中将ですが。


第13話『フォーゲル機動艦隊群』

 さて、第六次ティアマト会戦から1カ月が過ぎた。あれから、ティアマトとアルレスハイムで我が軍が勝利したことで、敵も不利を悟ったのか、叛乱軍がヴァンフリートに攻めてくることはなく、叛乱軍の一大攻勢は終わりを告げたのだった。

 

 それからは、皇帝の健康状態が良くない、だの、水面下で貴族たちが、次の皇帝擁立のために動き出してる、だのといったうわさが耳に入ってくるが、わしは動じず、いつもの日常を過ごしていた。

 何しろ、この先の展開は目に見えているからだ。皇帝が崩御なされれば、国務尚書のリヒテンラーデ侯爵が、エルウィン・ヨーゼフ2世を皇帝に擁立し、それに反発した門閥貴族どもが叛乱を起こしてリップシュタット戦役が起こる。そしてその末、門閥貴族は敗れる。前世のことを知ってるわしからすればわかりきっていたことだ。

 ミューゼルが未だ大将で、ローエングラム公を継いでいない、という差異はあるが、それはささいなことだろう。起きるとわかっていることに対してうろたえても仕方がない。

 

 そんな風に過ごしているころ、わしは突然ミュッケンベルガー司令長官から呼び出しを受けた。何事だろう? また、叛乱軍が攻めてきたのだろうか?

 

「司令長官、フォーゲル中将、参りました。もしかして、また叛乱軍が攻めてきたのでありましょうか?」

 

 司令長官のオフィスに入り、わしがそう言うと、窓を眺めていた司令長官は、こちらに向きなおり、椅子に座った。その顔にはやはり、複雑な表情が浮かんでいる。

 

「いや。実は卿に、我が軍初の機動艦隊群司令官の職が内定したのだ」

「はぁ……。不勉強で申し訳ございませんが司令長官。機動艦隊群とはなんでありましょうか?」

 

 わしが手を挙げてそう聞くと、司令長官はひじをつき、口の前で手を組んで説明を始めた。

 ……ナントカゲンドウ?

 

「うむ。これまでの帝国軍の艦隊は、いくつかの分艦隊が集まり、1艦隊を構成している。これは知っておるな?」

「はい」

 

 そう、我が帝国軍も叛乱軍も、艦隊は旗艦分艦隊と、いくつかの(少将は3個、中将以上は7個)分艦隊から成り立っている。階級による分艦隊数による違いはあれど、この構成は変わらない。

 

「機動艦隊群とは、それをさらに発展させ、各艦隊を分艦隊に見立て、いくつかの艦隊で、大きな艦隊群を構成する、というものだ。独自の府を持たない元帥府のようなものと思えばいい」

「なるほど……でも、そのような話、今まで聞いたこともありませぬが」

「そうであろうな。この話が上がってきたのが、数日前だったからな。最近の状況の変化と……あと、これはちと複雑な気持ちだが、卿の第六次ティアマト会戦の戦果を受けて、艦隊をまとめて運用することの重要性とやらについて、参謀本部の研究会が研究をはじめ、つい数日前に案を提出してきた、というわけだ」

「はぁ……」

 

 今司令長官、「複雑な気持ち」とおっしゃいましたか?

 

「そして、小官がその初の機動艦隊群とやらの司令に……というわけですか」

「うむ。どうだ、やってくれるか? あの戦果を受けて研究会の面々も、卿ならその役にふさわしい、と言ってくれているのだが」

「そう評価されたのなら、断る理由はございません。まだ力不足な身ではありますが、引き受けさせていただきます」

「それはよかった」

 

 おっと、その任を引き受けるなら、色々と聞いておかなくてはな。

 

「それで、我が艦隊群に組み入れる艦隊の選定や、指揮下の艦隊の運用などは……?」

「うむ。それらは全て、卿に一任される。もちろん、指揮下の艦隊を集中運用したり、分散して運用したりなど、卿の裁量でやってくれてかまわん。ただし、運用にあたっては、統帥本部と艦隊司令部に、運用にあたっての作戦案や艦隊出撃案を出してもらうし、基本的にこちらの作戦案や出撃案には従ってもらう必要はあるがな」

 

 なるほど。どの艦隊を入れるか、や、どう使うかは、わしのフリーハンドというわけか。ということで、まずどの艦隊を組み入れるか、は決まった。

 

「それでは、まず組み入れる艦隊の案ですが、今提案してもよろしいでしょうか?」

「うむ、かまわん」

「それでは……。前回の第六次ティアマト会戦でともに戦った、ファーレンハイト提督、アイゼナッハ提督。それとあとメ」

「おっと一つ忘れていた。組み入れられるのは、卿と同じか、下の階級の提督の艦隊だけだ」

 

 ……釘を刺されてしまった。それなら……。

 

「こほん、では改めて。ファーレンハイト提督、アイゼナッハ提督、そしてミュラー提督の艦隊を組み入れたいと思うのですが」

 

 この三人はいずれも、前世ではミューゼルの指揮下になる者たちだが、このぐらいのことはさせてもらってもいいだろう。彼にはミッターマイヤー提督やロイエンタール提督がいるしな! 決して、ミューゼルへの嫌がらせではないぞ!

 

「わかった。さっそく手続きをしておこう。卿のこれからの活躍に期待する」

「ははっ!」

 

 だから前にも言いましたが、司令長官、訓示しながら胃薬をごくごく飲むのはやめてくれなさい!

 

* * * * *

 

 そしてわしらはイゼルローン要塞にやってきた。

 ミュッケンベルガー司令長官が、駐留基地のある星域なら、どこでも艦隊群の拠点に決めていいというので、ここにさせてもらったのだ。

 何しろここは、叛乱軍との戦いの前線拠点。奴らとの戦いを展開するなら、ここが一番、という考えからだ。

 なおそれにあたって、前にここに駐留していたゼークト提督には、艦隊とともにオーディンに帰ってもらった。その時のゼークト提督の、ハンカチをくわえながら去っていく様子は忘れられない。

 

「フォーゲル提督、また一緒に戦うことになったな。再び、卿の采配を見れることを楽しみにしている」

「あぁ、ファーレンハイト提督。まだまだ非力ではあるが、期待に応えられるように奮闘するつもりだ。よろしく頼む」

 

 そう、やってきたファーレンハイト提督と言葉を交わすと、いつの間にか後ろに気配を感じた。振り返ると……。

 

「……」

「うわっ! あ、アイゼナッハ提督……」

 

 そう、無表情のアイゼナッハ提督と、その副官のグリース大佐。そして苦笑を浮かべたミュラー提督が立っていた。

 

「……」

 

 アイゼナッハ提督は、無言のまま、手を差し出してきた。握手かな?

 

「あ、アイゼナッハ提督、これからよろしく頼む」

「……」

「フォーゲル提督。ミュラー少将です。これからお世話になります」

「あぁ、こちらこそよろしくお願いする。噂によれば、ミュラー提督は防御戦に長けているとか。その力、頼りにさせていただく」

 

 そう言って、ミュラー提督とも握手を交わす。

 と、そこに、いつもは冷静はナイゼバッハ少将が大慌てで駆け込んできた。どうしたのだ?

 

「ナイゼバッハ、どうした? 急いてはことを仕損じるというぞ。少し落ち着け」

「そ、それどころではありません! こ、皇帝陛下が……皇帝陛下が崩御されました!」

『な、なに!?』

「……!」

 

 皇帝陛下崩御の報を受け、ファーレンハイト提督、アイゼナッハ提督、ミュラー提督の表情が、驚愕に彩られる。

 その一方、わしは平然としていた。前々からこうなることはわかっていたことだからな。

 

 だが、それとは別に、わしは大きな動乱の嵐が来る前兆を感じ取っていた。

 

 果たして、この先の戦いはどうなるか、それはわしにもわからない―――。

 




次回からいよいよ、今の1期の最終章『リップシュタット戦役編』が始まりますよ!
この戦いで、ブラ公がどのように活躍するのか、ご期待ください!

次回『決別』

転生提督の歴史が、また1ページ
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