ブラウンシュヴァイク公が転生したけど、転生先はフォーゲルだった件   作:ひいちゃ

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さぁ、いよいよリップシュタット戦役、戦闘開始です!


第15話『フレイア星域会戦』

 リッテンハイム星域を貴族軍から奪還した我が艦隊群に新たな情報が入った。

 貴族軍は、帝都オーディンの攻略を目指し、フレイア星域への侵攻を狙っているとのことだ。

 

 このフレイア星域は、オーディンのあるヴァルハラ星域のすぐ隣にあたり、そのため、ここを守るためにここにレンテンベルク要塞という宇宙要塞が作られたのだが、それだけにここを落とされると、こちらにとって大きく不利となる。なんとしてもここは守らなくてはならない。それに、レンテンベルクを獲られると面倒だ。

 しかし、フレイア星域で、枢軸側について戦うことになるとは……なんとも皮肉な。確かここは、前世において、枢軸側のミッターマイヤー提督が、貴族軍を破ったところだったはず。そういえば、ヒルデスハイム伯もここで戦って散ったんだったな。

 と思ってふと彼の方を見ると、前世の記憶がふとよぎったのか、ヒルデスハイム伯も顔をしかめていた。

 

 さて、急いで駆け付けてきただけあり、まだ貴族軍はこちらに襲来してはいなかった。レンテンベルク要塞が無事だったのは、本当に幸いである。あと、布陣して準備する時間があるのもありがたい。

 さっそく我が軍は、艦隊の布陣を開始した。防御力に優れたミュラー提督の艦隊と、それとアイゼナッハ提督の艦隊を、惑星ニフルヘイムに、そして我が艦隊と、機動力の高いファーレンハイト提督の艦隊をレンテンベルク要塞に配置する。

 貴族軍がやってくるのはニフルヘイムの方向だ。なので、ニフルヘイムの艦隊で、貴族軍を受け止め、私とファーレンハイト提督が、その横腹を襲う、といういつもの作戦である。

 

 さて……。

 

「偵察部隊からの報告は?」

「はい。まだ、敵艦隊を発見した、という報告はありません」

「そうか……。だが、敵がここに侵攻する作戦を立てたことは判明している。それを実行しないとは考えにくい。引き続き、情報収集に努めさせろ」

「御意」

 

* * * * *

 

 それからさらに数時間が経ったが、やはり、敵艦隊を発見した、という知らせはなかった。まさか諦めたのか? それとも矛先を変えたか……? そう思った、その時!

 

 我が旗艦・シェルフスタットの艦橋に、警報が鳴り響いた!

 

「どうした!?」

「敵艦隊発見!」

「来たか、距離は!?」

 

 わしがそう尋ねると、レーダー手は動揺した様子で答えた。

 

「そ、それが……既にニフルヘイムの至近です!」

「なんだと!? なぜにそんな近くに……通信妨害か」

 

 自分で聞いて、自分で答えを出していれば世話ないな。

 レーダー手もうなずいて、わしの答えを認めた。

 

「はい。おそらく、通信妨害をかけて、気づかれないように接近していたと思われます!」

「貴族軍め、なかなかやるな……。敵艦隊は誰のものかわかるか!?」

「は、はい。戦艦ノートゥングと、戦艦ハイデンハイムを確認!」

「メルカッツ提督と、エルラッハの奴か……」

 

 まさか、さっそく彼らと対峙することになろうとは……。だが感傷に浸っている暇はない。やることをやるだけだ!

 

「よし、ミュラー艦隊とアイゼナッハ艦隊は、ただちに敵艦隊に攻撃を開始、奴らをニフルヘイムの衛星軌道上から押し出せ! 我が艦隊とファーレンハイト提督の艦隊は、ただちに出発! 敵艦隊に横撃を加える!」

 

 そして戦闘は開始された。ミュラー艦隊とアイゼナッハ艦隊は、さっそく敵艦隊に猛攻をしかけ、敵艦隊をニフルヘイムから後退させた。その敵艦隊にわしの艦隊とファーレンハイト艦隊が横から攻撃を加える。

 

 戦艦ノートゥングにて。

 

「なかなかやる……。この戦術は……フォーゲル提督か。よろしい、本懐である。だが、このままでは終わらん。盟主閣下の艦隊と、シュターデン提督の艦隊、ランズベルク伯の艦隊は?」

「はっ。予定通り侵攻してるようです。盟主閣下の艦隊は、予定より早く前進しているようですが……」

「そうか」

 

 戦いはまだ続いている。メルカッツ提督の艦隊はなかなか粘っているが、一方のエルラッハ艦隊は、正面がミュラー提督とアイゼナッハ提督の艦隊、側面がファーレンハイト提督の艦隊では荷が重いのか、かなりの損失を出しているようだ。

 このままいけば、エルラッハ艦隊はじきに撃破できるだろう……そう思っていたその時!

 

 我が艦隊の後方の工作艦のいくつかが火の玉と化した!

 

「な、なんだ!? 背後からの奇襲か!?」

「そのようです! 後方の艦隊に、戦艦アウグスブルク、戦艦メーテルリンクを確認! 背後から襲ってきたのは、シュターデン提督の艦隊と、ランズベルク伯の艦隊と思われます!」

 

 さらに悪いことは続くようで。凶報がさらに舞い込んでくる。

 

「ニフルヘイムから救援要請! 衛星軌道上に来襲した敵艦隊からの攻撃を受けていると!」

「な、なんだと!? 敵艦隊は誰のだ!?」

「戦艦ベルリンを確認! 貴族軍盟主、ブラウンシュヴァイク公の艦隊です!」

「むむぅ……」

 

 こんなに早く、今世のわし……ブラウンシュヴァイク公と対峙することになるとはな。なんという運命の皮肉か。

 だが、皮肉を感じてばかりもいられない。早く対処しなければ。

 

「よし、ミュラー提督とアイゼナッハ提督は、このままニフルヘイムの敵艦隊を抑えろ! 我が艦隊は、このまま奴らの背後を突く! ファーレンハイト艦隊は背後の二艦隊を抑えてくれ!」

 

『了解!』

「了解しました。しかし、戦力が足りませんな……」

 

 ファーレンハイト提督の意見に、わしも渋い顔をする。彼の言う通り、4個艦隊では、敵の5個艦隊を相手に、戦線を維持するのが手一杯で、とても攻勢に出る余裕はない。もう少し戦力があれば……。

 

 でも、今のところはこの手札でなんとかするしかない。

 わしは引き続き、敵艦隊への迎撃を指揮し続けた。

 

 そしてその時はきた!

 通信士が、歓喜と安堵に声を弾ませながら報告してくる。

 

「援軍です! オーディンから、ミューゼル討伐司令官の艦隊と、疾風ウォルフの艦隊と、ロイエンタール艦隊が!」

「やっときてくれたか……!」

 

 これでやっとこちらも、攻勢に出ることができる。一気に反撃だ!

 

「よし、ミューゼル討伐司令官に、ニフルヘイムの敵艦隊を後背から襲うように打診せよ! こちらも攻勢にうつる!」

「御意!」

 

 ミューゼル艦隊とミュラー艦隊、アイゼナッハ艦隊、そして我が艦隊が、貴族軍のメルカッツ艦隊、エルラッハ艦隊、ブラウンシュヴァイク艦隊を半包囲し、ファーレンハイト艦隊が、ランズベルク艦隊とシュターデン艦隊と対峙する形となった。

 ファーレンハイト提督は、二個艦隊を正面から相手どることになったが、ランズベルク伯が軍事の素人だったことが幸いしてか、互角以上の戦いをしているようだ。

 

 一方の、ニフルヘイムの艦隊は、半包囲され、援軍の0時方向、ミュラー提督たちの3時方向、そして我が艦隊の6時方向から砲火を浴びせられたことで、次々と、構成している艦が我らの餌食となっていく。こちらの勝敗はほぼ決したようだな。

 

* * * * *

 

 戦艦ノートゥングの艦橋、そこでメルカッツ提督がある報告を聞いていた。

 

「メルカッツ提督、戦艦ハイデンハイム撃沈……。エルラッハ提督、戦死の模様……」

「そうか……」

「盟主の艦隊も、敵の猛攻を受け、損耗率が50%を切っております。我が艦隊はなんとか持ちこたえていますが……」

「我らより先に、盟主がやられかねんか……」

 

 メルカッツ提督は、しばし瞠目すると、静かに目を開いた。その目にはある光が満ちている。哀しき決意に満ちた光だ。

 

「よし。盟主の旗艦に通信をつなげ」

「はっ」

 

 メルカッツ提督が命じてすぐに、ベルリンに回線がつながり、ブラウンシュヴァイク公の姿がスクリーンに映し出された。

 

「盟主閣下、もはやここでの戦いは、無念ながら、我が軍の負けのようです。盟主はただちに退却し、態勢を立て直してください。ここは小官が殿となり防ぎます」

「なんだと!?」

「迷ってる暇はありませぬ! このままでは盟主も、奴らに一矢報いる暇もなく、わしと命運を共にすることになりましょうぞ! そうなれば我がリップシュタット盟約軍は終わりです。早くご決断を!」

「ええい、わかった、わかったわ!」

 

 通信は切れた。

 

「よし、盟主が離脱するまで、敵の進撃を食い止める。全艦、方形陣に展開。突破しようとする敵を迎撃する」

「……了解」

 

* * * * *

 

 敵軍の動きが明らかに変わり始めた。ブラウンシュヴァイク公の艦隊が、転回し退却をはじめ、メルカッツ提督の艦隊は、こちらが追撃するのを阻むように方形陣に展開して立ちはだかっている。

 他方、シュターデン提督とランズベルク伯の艦隊も、退却の動きを見せ始めた。U字コースを取って退却したシュターデン提督とは違い、ランズベルク伯はその場で敵前回頭しようとしたせいで、ファーレンハイト艦隊の餌食となり、壊滅しかかっている。

 

 ともあれ、ここでの戦いは勝ったな……。でも、まだ気を抜くわけにはいかない。まだメルカッツ提督の艦隊が、この星域に残って立ちはだかっている。

 おそらく、盟主であるブラウンシュヴァイク公を逃がすために、殿となる気だろう。悲壮な覚悟が見てとれるが、こちらとしても、同情して気を抜くわけにはいかない。明るい帝国の未来のために、相手がエルラッハでもメルカッツ提督でも、討ち取ると決心したのだからな。

 

「全軍、前進! メルカッツ艦隊を突破し、ブラウンシュヴァイク公の首をあげるのだ! ファーレンハイトは引き続き、シュターデン提督の艦隊を追撃せよ!」

 

 かくして、我が艦隊群は、猛然とメルカッツ艦隊に襲い掛かった。ミューゼル討伐軍司令が率いる艦隊も、メルカッツ提督を突破し、撤退を図ってるブラウンシュヴァイク公の艦隊に食らいつこうと、猛攻を仕掛けている。

 しかし、それでもメルカッツ提督は揺るがなかった。陣形が崩れることなく、我が軍の攻撃をはねのけ続けている。さすがは歴戦のメルカッツ提督だ。

 だが、それでもやはり数が違いすぎる。我が軍の集中砲火の前に、その陣はたちまち薄くなっていく。そして―――

 

* * * * *

 

 戦艦・ノートゥング。

 メルカッツ提督は戦力が激減したことを受け、艦隊を後退し、再編しなおすことを指示した。彼の乗艦が直撃を受けたのはその時である。

 艦橋に大爆発が起こり、吹き飛ばされた壁材がクルーに襲い掛かる。メルカッツ提督も、例外なくその餌食となった。

 シュナイダー少佐が気が付いた時、メルカッツ提督はがれきの下敷きになっていた。皮肉にも彼の致命傷は、前世において命を失った時と同じものであった。

 彼は慌てて、がれきの下敷きとなったメルカッツ提督を救い出した。必死に呼びかける副官に、彼はやっと目を開けた。

 

「……盟主閣下は、無事にフレイアから撤退されただろうか……?」

「どうやら無事に撤退されたようです。それより閣下、脱出のご用意を……」

「撤退されたか……。それでは、心残りはないといえば嘘になるが、もうよいな……」

「閣下!」

 

 そう声をかけるシュナイダー少佐を、メルカッツ提督は手で制する。

 

「ラインハルト・フォン・ミューゼルとフォーゲルという、非凡な戦術家たちとの戦いで死ねるのだ……。満足して死にかけている人間を、今更呼び戻さんでくれんかね……。またいつ、こんな機会が来るかわからん……」

「閣下……」

「後悔はしておらんよ。これまで多くの戦場を駆け抜け、そして最後にこんな素晴らしい戦いで最後を迎えられたのだからな……。卿にも苦労をかけたが、これからは自由に身を処してくれ……」

 

 そして老将は目を閉じ、二度と開かれることはなかった。

 

* * * * *

 

「フォーゲル提督。戦艦ノートゥングを撃沈しました……」

 

 バルトハウザーの報告に、わしは沈痛な面持ちで振り返った。

 

「そうか……。メルカッツ提督は……?」

「我が軍の駆逐艦が、ノートゥングから脱出し、投降してきたシャトルを回収しましたが、乗員の中にメルカッツ提督の姿はなかったそうです。副官のシュナイダー少佐の話によれば、艦橋で重傷を負い、そのまま亡くなられたとのこと。おそらく、ノートゥングとともに……」

「そうか……」

 

 少しの間、わしは瞠目する。本当に惜しい人を亡くした。これまでの彼との交流や、ともに戦ってきた戦いが思い浮かぶ。だが、悲しんでばかりはいられない。このまま悲しみに沈むのは、彼の死を無駄にすることに他ならない。

 わしは目を開いて、再びバルトハウザーに向きなおった。

 

「それで、他の艦隊は?」

「はい。ブラウンシュヴァイク公の艦隊は、メルカッツ提督の艦隊が殿となって戦っている間に、この星域を離脱しました。また、ファーレンハイト提督からの報告では、ランズベルク伯の艦隊を撃破した後、シュターデン提督の艦隊を追撃しましたが、逃げられてしまった、のことです」

「そうか。貴族軍の戦力の大半を撃破したのはいいが、この後、どうするかが問題だな……」

「ガイエスブルグに籠られたら厄介ですからね」

「あぁ。いくら大軍で攻めようが、あの要塞の主砲、ガイエスハーケンの一発でおしまいだからな。アルテナ星域で戦わずに、奴らをブラウンシュヴァイク星域におびき出して艦隊決戦に持ち込めれば最高なんだが……」

 

 わしがそう話したところで、ナイゼバッハがやってきた。

 

「提督。ミューゼル討伐軍総司令から通信です」

「そうか、わかった」

 

 わしは、色々と暗い気持ちを振り払い、回線を開くように命じると、スクリーンに向きなおった。

 




メルカッツ提督、そしてエルラッハはここで退場と相成ります。
次回は、リップシュタット戦役編開始から3話目ですが、ついに決戦です!

次回『黄金樹は倒れました、本日~ブラウンシュヴァイク星域の決戦』

転生提督の歴史が、また1ページ
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