ブラウンシュヴァイク公が転生したけど、転生先はフォーゲルだった件 作:ひいちゃ
奴の野望のはじまりを、特にご鑑賞ください……
いえ、鑑賞してくださったら嬉しいです(平伏
別の銀河、別の太陽系にて―――
「ジ・O、な、なぜ動かん!」
私は焦っていた。グリプス2での戦闘にて、私は愛機ジ・Oにて、賢しい小僧ことカミーユ・ビダンの駆るZガンダムと戦っていたが、奴のZが赤い光を放ったかと思うと、突然ジ・Oが動かなくなったのだ。そう、それはまるで、金縛りにあったかのように。
その私に向けて、ウェイブライダー形態に変形したZガンダムが突っ込んでくる。私はなんとか、それを回避しようとするが、操縦桿は動くものの、機体はそれに反して全く動かない。
そして、ジ・Oの腹部装甲、そして、メインスクリーンを突き破り、ウェイブライダーの機種部が突っ込んできて、私の腹に突き刺さった!
「ぐおおおおおお!!」
想像を絶した、初めて感じる苦痛に、思わず絶叫をあげてしまう。その私の脳裏に、声にならないカミーユ・ビダンの声が届く。
『女たちのところへ帰るんだ!!』
「女だ……と……?」
それ以上は言えなかった。苦痛、そして出血の前に、急速に意識が薄れていく。
だが……私はパフテマス・シロッコ。ただで終わるわけにはいかん。カミーユ・ビダン、貴様の魂も……!
私は自分の最期の力をカミーユ・ビダンに放った。だが、その力の奔流は、まるで柳の枝が風になびくように、むなしく奴の心に受け流されていく。
バカな……この天才が……このパフテマス・シロッコが……カミーユ・ビダンに……この賢しい小僧に完全敗北を喫するだと……認められるものか……認め……
そして私……パフテマス・シロッコは死んだ。
* * * * *
だが次の瞬間、私は見知らぬ街に立っていた。
どこだ、ここは……? それに良く見ると、貫かれたはずの腹の傷もない。それで私は悟った。
私は、別の世界に転生したというのか? 馬鹿げたことだが、それがこうして起こる以上、信じるしかあるまいな。
そう思って、この町を歩いてみる。
色々見たり聞いたりしたところ、この町のある星はフェザーンといい、銀河帝国という大国の自治領だという。なんでもこの世界は、銀河帝国と自由惑星同盟という国が激しい戦争を繰り広げられているそうだ。それを聞き、私は気持ちが高揚するのを感じていた。
二大国のぶつかりあい、そしてその狭間にあるこのフェザーン……なんと、私の力の活かしがいがある世界ではないか!
私の才能なら、この世界を渡り歩き、この世界全てを奪い取ることもできよう。しかも、この世界には、あの忌々しいカミーユ・ビダンもいない。大きな障害なく、我が野望を達せられそうである。
さて、ではまずは野望のために足掛かりを得なければな……と思っていると、視界の片隅に、故障か何かで止まっている車と、困っている男が映った。男は若いながら何か高い位……社長か何か……についているようだ。
私はさっそく、その男のほうに行ってみた。
「もしもし、どうなさったのですか?」
「あぁ。車の調子が悪くてね」
「そうなのですか? どれどれ……」
男の話を受けて、車の中を見てみる。ふむふむ……どうやら、制御系の故障のようだな。だが、この程度の故障なら、この天才の力なら、大したことなく直せる。
私は、男から工具を借りると、さっそく修理に取り掛かった。そのついでに、手を加えて、性能をさらに向上させる改造も加えてやる。
修理と改造が終わり、男に車を運転させると、彼は愛車の性能強化に感嘆したようだった。彼は私の手を握っていった。
「君のその技術力と知力、なかなかのものだ。よければ、私の会社で、技術主任として働いてみないか?」
これは思わぬ幸運。野望のための足掛かりができた。私は心の中でほくそ笑みながら、彼の手を握り返した。
* * * * *
男の名はルバート・ケッセルリンク。ケッセルリンク重工という、戦艦や宇宙戦闘艇のメーカーの社長であると同時に、このフェザーンを治める自治領主、アドリアン・ルビンスキーの補佐官でもあるという。これはなんという幸運であろうか。
そこで私はその技術力と頭脳を駆使して、帝国側の戦闘艇ワルキューレや、同盟側のスパルタニアンの、大幅に性能が向上したモデルを開発したり、新兵器を開発したりして過ごした。
本当は戦闘艇を可変MSにしたかったのだが、ミノフスキー粒子というものが存在しないこの世界ではMSの必要性は極めて低い。心の中で泣きながら、それは断念した。
そうしているうちに、ルパートは私に深い信頼を寄せるようになった。いつの間にか重役にまで出世していたし、私のための大型武装商船『ジュピトリスⅡ(ツヴァイ)』を作ることも許可してくれたし、プライベートでいろいろなものを作っても、批判したりすることはなかった。
MSは諦めたとかいいながらも、半ば自分の趣味で、ジ・Oを再開発したのもこのころだ。
そのうちに、ルパートはプライベートなことや機密に属することも、私に話すようになった。それはありがたいのだが……済まないが、私はルパートに、そこまでの感情は持っていない。彼は私の上司であり、さらにいえば栄達するための踏み台に過ぎないのだ。
私は面従腹背で、ルパートの良き理解者を装いながら、彼を追い落とす機会を狙っていた。
* * * * *
そしてついにその時はきた!
ある夜、ルパートは荒れた様子で帰宅してきた。私は、ウイスキーを出しながら、彼にどうしたのか聞くことにした。
それによると、彼はルビンスキーから、自分がルビンスキーの隠し子であることを聞かされたという。前に聞いた話によれば、ルパートは、顔も見たことのない父親に捨てられた母親から生まれ、そしてとても貧しい生活を送ってきたという。
それはわかる話だ。自分が仕えてきた相手が、実は自分をそんな環境に追いやったとわかれば、それも荒れもするだろう。
だが、それと同時に、私はチャンスが舞い込んできたのを感じた。私がさらに上に行くための。
ルパートには悪いが、自治領主ルビンスキーの補佐官という格好の位置にいたのが運のつき、と思ってもらおう。
私はさっそく、ルパートを唆すことにした。
「ルパート様、なんなら私が策略にて、ルビンスキーを暗殺いたしましょうか?」
「!? できるのか、そんなことが?」
「はい。世の中には、地球教徒とかいうテロリストどもがいるとか。そいつらのテロを装って、ルビンスキーを襲えば」
「だが、それでは、私が首謀者ということが露見しないか?」
ルパートが心配そうに聞いてくるが、できるならやってほしい、と強く顔に出ていた。
「それなら、ルパート様がその場にいれば問題ないかと。実行犯には、ルパート様には弾を当てないように伝えておきます。いくらなんでも襲われた者を首謀者とは思わないでしょう」
「そうか……そうだな。それに成功すれば、私がフェザーンの自治領主に……」
顔には、強く期待の色が浮かんでいる。かかったな、と思いつつ、それは顔に出さずに、とどめにかかる。
「えぇ。ルビンスキーなどより、ルパート様がもっとフェザーンの自治領主にふさわしいと存じます。あなたなら、ルビンスキーよりよほど、帝国と同盟を動かし、銀河の黒幕となれるでしょう。銀河の黒幕という名前がふさわしいのは、ルパート様しかおりません」
「そうか、そうか……。ついにこの時が……。シロッコ、ありがとう、感謝する。さっそく手配をしてくれ」
「了解しました」
そして私はその場を退席し、通信室へと向かう。
だが、私は先に連絡したのは、暗殺の実行犯たちにではない。真っ先に連絡したのは―――。
* * * * *
その二日後。私は、自治領主ルビンスキー、ルパート。そして数人の護衛とともに、ある工場を訪れていた。
ここは、ケッセルリンク重工の工場の一つで、ルビンスキーとルパートが、謀略を使って、ある中小企業から奪い取ったものだ。そのような後ろ暗い背景があるここは、まさに襲撃の舞台にふさわしいところだろう。
そして予定通り、数人の黒ずくめの男たちが、私たちのもとにやってきた。護衛たちは銃を抜こうとするが、それより早く男たちが機関銃を放ち、護衛たちを撃ち殺した!
そして彼らは、ルビンスキーに銃口を向け―――
「死ね、『ルバート・ケッセルリンク』!!」
次の瞬間に銃口を向け、ルパートを撃った。
数発の弾丸を受けたルパートは、たまらずその場に倒れこむ。
「な、なぜ……?」
「ふふふ、愚かだったな、ルパートよ。お前の企みは既にシロッコから聞かされておったのだ」
「それで、計画を密かに書き換えていたのですよ。ルビンスキー様にではなく、お前を殺すようにね」
「な……?」
私を見たルパートの表情が、驚愕に彩られる。
「し、シロッコ……お前は私の理解者だったはずでは……」
「甘かったな。お前は最初から、私が成り上がるための踏み台に過ぎなかったのだよ。どうやらお前は、俳優の演技を観察するよりは、自分自身のつむぎだした幻想を俳優に投影させて酔ってしまうタイプの、センスの悪い観客だったようだ」
ジャミトフのほうが、まだ歯ごたえがあったぞ。
私は心の中でそう評価した。
「というわけだよ、ルパート。せいぜい、お前の人を見る目のなさを、あの世で嘆くがいい」
最後にルビンスキーはそう言うと、ルパートの眉間に銃弾を叩き込み、とどめを刺した。
「これで終わりましたな、自治領主」
「そうだな。だが、わしがお前も排除するとは思わなかったのか? お前も甘かったな」
そう言ってルビンスキーは私にも銃口を向けた。だが、私はこれぐらいで動じない。こんな修羅場は、宇宙世紀で散々あってきていたし、何より……。
「本当に私を射殺する気ですかな?」
「なぜ、わしがお前を撃たないと考える?」
「私のような、野望と才能にあふれた者を、あなたのような方が利用しないわけがない、と思うからです」
「……」
銃口は動かない。だが、そこから弾丸が出てくることもなかった。
「それに、私の持つ頭脳と技術は、非常に利用しがいがある。そう考えているはず……違いますか?」
「……」
私がそう言ったところで、銃口が下りた。
「ふ……。よくぞぬけぬけとそこまで言ったものだ」
「恐縮です」
「よかろう。お前をわしの補佐官に任命し、手駒として散々使ってやろう。どんな修羅場をくぐってきたかは知らんが、わしはお前が乗り越えてきた者たちとは違うぞ。甘くみないことだ」
「わかりました。あなたも、くれぐれも油断なさいませぬよう」
「わかっているさ」
かくして、私は自治領主ルビンスキーの補佐官となり、野望の入り口に立つことができた。
この時、私は自分の野望の結末が、あのような結末になるとは思っていなかったのだ―――。
-追記-
先ほど、UA数を確認してみたら、なんと300UA越え!
いやはや、びっくりです。
これはもしや、DNT効果なのでしょうか? それとも、シロッコのネームバリュー効果?
もし前者としたら、もうひいちゃは、藤崎先生に足を向けて眠れませんOTL(封神演義も好きでしたし
本当に読んでくださり、ありがとうございます!!><