ブラウンシュヴァイク公が転生したけど、転生先はフォーゲルだった件 作:ひいちゃ
あと、サブタイ、指摘があったので調べた結果、「フォーゲルinブラ公」の部分が間違ったので訂正しておきました(平伏
その後、副官から、改めて状況の確認ということで話を聞いてみると、どうやらここはティアマト星域らしい。
そういえば前世でアンスバッハから聞いたことがあるな。金髪の孺子……いや、もうこの呼称はやめよう。あいつがとんでもない戦術の天才だということはあの最期で思い知った。それを知った後では、もうそんな呼称では呼べん……ローエングラム公がまだミューゼル姓を名乗っていたころ、帝国と同盟双方に名を知らしめた戦いであった、と。
一瞬、うまく艦隊を誘導して、ミューゼルめを謀殺できないかと思ったが、思い直した。そう簡単に奴を謀殺できるなら、前世でわしがあんな最期を迎えることはなかったろうし、ましてや今は戦闘中。変なことをして、その結果わしが吹き飛ばされたらたまらん。
ここはこの戦いを無事に生き抜くため、普通に戦おう。そして、順調に出世して、奴を指先一つで使い倒せる立場になれば最高……と思って戦術スクリーンを見ると、フォーゲルめの頭脳と、わしの……こう言ってはなんだが……悪だくみに長けた頭があわさったことによる化学反応か、一つの考えが浮かんだ。
わしはさっそく副官に命じた。
「副官。本隊から離れ、大きく迂回するのだ」
「は、フォーゲル提督、何を? まさか、敵前逃亡ではありますまいな?」
わしは首を振ると、指で航路図を描く。
「違う。艦隊をこう動かして、敵の背後に出るのだ。敵がそのまま主力に集中していれば、我らが敵の背後から攻撃できる。もしこちらを向けば、今度は主力が敵の背後を思いっきり叩ける。どちらにしても有利になるだろう?」
「な、なるほど! 提督とは思えぬ作戦! この副官、感嘆いたしました。ではそのように!」
……フォーゲルの奴、副官からこんな風に思われていたのか。心の中で奴に合掌するわしであった。
ああ、そうだ。
「副官、航路には気をつけろよ。奴らの索敵範囲内に捕まって、所定ポイントにつくまえに、奴らから攻撃されることのないように」
「はい、わかっております」
それにしても、以前のわしやフォーゲルめとは思えぬくらい、そこそこよい戦術指揮ができているな。あのミューゼルやその幕下ほどではないが、前世のわしとは思えぬくらいだ。
そういえば、地球時代の「らのべ」では、転生した時にはチートがつくことがあるという。能力がいくらか上方修正されることらしいが、わしにもそれが適応されたのだろうか?
何はともあれ、目の前の艦隊を迂回するように大回りに移動する我が艦隊。だがそこにイレギュラーが!
「提督、7時の方向に敵艦隊!」
「なに、まだいたのか!? 相手は誰だ!?」
すぐにスクリーンに敵艦隊旗艦の情報が映し出される。
「旗艦照合……確認! 戦艦アイアースと判明! 7時方向の艦隊は、ロボス叛乱軍宇宙艦隊総司令の艦隊と思われます!」
敵の大ボスと遭遇と聞いて、わしはさすがに腰が引けたが、敵艦隊の編成を見て踏みとどまる。
そのロボスとやらの艦隊は、ほとんどが輸送艦で戦艦はあまりいないではないか。
「よし、航路、さらに修正! ロボスとやらに気づかれぬよう、うまく奴の背後に出ろ!」
「了解!」
指示を飛ばすわしに、副官が心配そうに声をかける。
「しかし、大丈夫でしょうか? 戦艦の数は少なくとも、相手は総司令官ですが」
「なぁに、気づかれることがなければ、先手は我らがとれる。それに、後方の輸送艦をつぶせば、奴らの継戦能力は大きく下がる。もしこちらに向けば、主力は二個艦隊のうちの片方だけを相手どればよくなる。どう転んでも、我が軍の状況はひどくなるまいよ」
それに無力な輸送艦でも功績は功績だしな、と心の中でつぶやく。
「な、なるほど! 我が軍全体の勝利のために、私情を排して自らの艦隊を使おうというその気概、この副官、改めて感服いたしました! やっと提督の中の守護天使が目覚めたのですね!」
……本当にフォーゲルの奴がかわいそうで仕方なってくるな。
さて、我が艦隊は無事にロボス艦隊の後背につくことができた。ここからが勝負だな。
「よし、行くぞ。ファイエル!!」
わしの号令一下、艦隊は攻撃を開始する。敵の様子を見る必要があるため、最初の一撃は通常攻撃だ。その結果、敵がこちらを向いたらそのまま通常攻撃。もしそのまま我が主力のほうを向いているようなら全力攻撃する予定だ。
さて、我が艦隊の第一撃は見事敵艦隊に突き刺さった、が……。
「まぁ、こんなものか」
思わずつぶやいてしまった。副官がこちらを複雑そうな表情で見返したので、「いや、何でもない、独り言だ」とごまかす。
さすがに、ミューゼルの艦隊のようなすさまじい戦果までは出せなかった。まぁ、いくらフォーゲルの戦術能力とわしの悪知恵とチートが化学反応を起こしたとはいえ、もとがもとだけあって実際の戦術指揮はよく言えば並みレベルのものであった。まぁ、高望みはいかんか。
戦術スクリーンを見ると、主力や、ミューゼルの艦隊、そして後の彼の幕下になるミッターマイヤーとロイエンタールの艦隊も、必死に敵艦隊と戦っている。
一瞬、ロボス艦隊が我が方向に回頭しかかったときは、一瞬びびってしまったが、もう一方の艦隊が戦況不利になってきたからか、すぐにそっちのほうに向きなおった!
「よし、今だ! 全艦、総攻撃開始だ!」
この機を逃さず我が艦隊は総攻撃をかけた! ロボス艦隊の艦が、次々と直撃を受けて火の玉になっていく。
とはいえ、その火の玉の数は、他の艦隊と比べると少ないがな!
だが、やはり細心の注意を払って奴らの後背に出ただけあり、我が艦隊は大きな損害を受けることなく、ロボス艦隊を打ちのめしていくことができた。
他の艦隊も必死に攻撃していき、やがて敵艦隊は、士気が尽きたらしく、ティアマトから撤退していったのだった。
次回、意外な人物が幕下に加わりますw