ブラウンシュヴァイク公が転生したけど、転生先はフォーゲルだった件   作:ひいちゃ

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※メルカッツとフォーゲルの旗艦の名前が史実と変わってますが(史実では、前者はネルトリンゲン、後者はバッツマン)、そこは、メルカッツのほうはそれまでに積み重ねた武勲を賞して授与された、フォーゲルのほうは第四次ティアマト会戦での奮戦を賞してと、再編成にあたって旗艦が新しくなった、ということで(平伏
(今になって、二人の旗艦に名前があったことを知りましたが、なんかこちらの名前のほうがかっこいい(特にフォーゲル)と思ってこのままにしました)


第4話『第五次ティアマト会戦』

 帝都オーディンに帰還し、再編成してから数カ月後。我が艦隊は他の艦隊とともにティアマト星域への途上にあった。

 わしの提案が通り、メルカッツ上級大将を指揮官とした、ティアマト星域奪還作戦が始動したのだ。

 わしがこの作戦を提案したのは、雪辱を期したいからだけではない。この星域を取っておかなくては、叛乱軍どもがイゼルローン要塞にやってくるからだ。確かにイゼルローンは難攻不落ではあるが、やはり前世において、これが叛乱軍のヤン・ウェンリーに攻略されたことを考えると、そうなるリスクはできるだけ避けたいというのが、わしの考えだ。この考えを統帥本部のシュタインホフ元帥に話したら、とても驚かれたがな―――。

 

 今回参加する艦隊は、さんざんプッシュした結果として8個艦隊。しかも、指揮官はメルカッツ提督だ。前世で提督の手腕を知っているわしとしては、この布陣なら問題はないと思う。

 なお、ミューゼルめはこの戦いには参戦させていない。あいつを通り越して元帥になり、ミューゼルをあごで使うというささやかな野望を抱いているわしとしては、彼が戦いに参加し、功績を上げるのはよろしくないのだ。

 

 さて、ティアマト星域に入ったところで、さっそくわしは命じた。

 

「ナイゼバッハ少将、偵察艦隊を、惑星の方向に出してくれ」

「了解であります!」

 

 そこでやはりというべきか、ヒルデスハイムが騒ぎ出した。

 

「なんでそんなまどろっこいことをされるか! 突撃、とにかく突撃あるのみですぞ!」

「ヒルデスハイム伯、お気持ちはわかりますが、敵の位置などがわからねば、思わぬところで罠にかけられるかもしれませぬぞ」

「そんな情けないことでいかがなされるか! 罠など踏みつぶして通ればいいのだ!」

 

 前世でわしが言っていたようなことを喚くヒルデスハイムに、わしはため息をひとつ突くと……。

 

「バルトハウザー」

「は、ははっ」

 

 ヒルデスハイムの背後のバルトハウザーが腕時計のついた腕を奴に向けると、その蓋のようなものがぴょこんと起き上がる。バルトハウザーはそれで狙いをつけて……

 

 ぷしゅっ!

 

「突撃、とにかくとつげ……ぐー……」

 

 ヒルデスハイムは突然ぶっ倒れ、大きないびきをかきだした。そう、これこそ対ヒルデスハイムの秘策。腕時計型強力睡眠薬針射出機だ! この睡眠薬は超強力で、1カ月は目を覚まさないほど。これでヒルデスハイムのことは気にせず、艦隊指揮に集中できるというものだ。なお、解毒薬もあるので、肝心な時に眠ったままということはない、というのが安心だ。

 

「ではナイゼバッハ少将。改めて、偵察部隊を惑星のほうに出してくれたまえ」

「ははっ」

 

* * * * *

 

 偵察の結果、叛乱軍の艦隊は、惑星ラームに1艦隊、惑星アンシャルに2艦隊があるという。

 その索敵情報を見て、わしは考える。現在、メルカッツ提督が立てられた作戦では、2個艦隊をラーム、残りをアンシャルに向けるとなっているが、ここは8個艦隊全てをアンシャルに向けたほうがいいのではなかろうか。それで一気にラームの艦隊が急を知って駆け付ける前にアンシャルの二個艦隊を叩き潰し、それからまた全力でラームの艦隊をつぶしたほうがいいような気がする。

 

 となれば善は急げ。

 

「バルトハウザー。メルカッツ提督に回線をつないでくれ」

「はっ」

 

 バルトハウザーが、通信士に指示を出す。少しして、通信スクリーンにメルカッツ提督が映し出された。

 

「何用かな、フォーゲル提督」

 

 聞いてきたメルカッツ提督に、さっそくわしは自分の考えを話し出す。

 

「はい。現在の作戦では、艦隊を分ける、となっておりますが、私としては全艦隊をもって、我らに近いアンシャルの艦隊を叩き潰し、しかる後にラームの艦隊に当たるのがよいかと考えます」

 

 そう話すと、メルカッツ提督はやはりというべきか目を丸くなされた。

 

「い、一体どうなされたのだフォーゲル提督? 何か悪いものでも食べなされたか? ……いや、まさに理にかなったご提案、さすがです。ではさっそく、そのようにいたしましょう」

 

 そしてメルカッツ提督の姿はスクリーンから消えた。メルカッツ提督まであんなことを言ったことに、わしは苦笑いしか出ない。やはり、それまでの人望や評価というのは大切なのだな、と改めて思い知った次第だ。

 と、そこに、ナイゼバッハが報告書を持ってきた。

 

「提督、偵察隊から新たな報告が入りました。アンシャルの艦隊に、戦艦リオ・グランデと戦艦ペルーンを確認。どうやら、ビュコック提督の艦隊と、ボロディン提督の艦隊のようです」

「ふむ。ラームのほうは?」

 

 わしの質問に、ナイゼバッハはよどみなく答える。

 

「はい。戦艦・盤古(バン・グゥ)を確認。ウランフ提督の艦隊と思われます」

「そうか。よし、ナイゼバッハ少将。我が艦隊は前回のように、両艦隊の6時方向を通って、奴らの後方に出る。そして、メルカッツ提督らの主力と挟み撃ちにするぞ!」

「はっ!」

 

* * * * *

 

 一方、メルカッツ提督の旗艦、戦艦ノートゥングにて。

 

「シュナイダー少佐、フォーゲル提督はどうされたのだろうな? 突然、あのように有能になって」

「そういえば、前回の第四次ティアマト戦役の時にも、フォーゲル提督はかなり有能な働きをされた、と聞いております」

 

 副官のシュナイダー少佐の言葉に、メルカッツはただうなずいて、言葉を続けた。

 

「宇宙人に頭の中をいじくられたか、変なものを食べてしまったか、それとも彼の守護天使が今になって目を覚ましたのか……。まぁ、有能になったのなら、それは喜ばしいことだ。今回の戦いでも期待させてもらうとしよう」

 

* * * * *

 

 そして戦端は開かれた。ただ今回は、前回とはちょっと違っていた。

 

 わしの旗艦・シェルフスタットの艦橋内に、警報が響く。

 

「何事だ!?」

「申し訳ありません、提督。航路の設定に失敗したらしく、敵艦隊の索敵網に引っかかってしまったようです」

「むむぅ……。敵艦隊の動きはどうだ?」

 

 わしの質問に、バルトハウザーが答える。

 

「はい。こちらを警戒している様子ではありますが、今のところ、こちらを攻撃する様子は見せていません」

「そうか」

 

 奴らは今のところ、我が軍の主力に集中してるってところか。それはありがたい。

 それなら……。

 わしは熟考の末、指令を下す。

 

「よし、航路はこのまま。奴らの6時方向に達したところで回頭。敵に攻撃を浴びせながら、そのまま奴らの後背に出るぞ。だが、6時方向に達する前に敵がこちらを攻撃するそぶりを見つけたら、その時はすぐ奴らに回頭できるようにしておけ」

「了解しました!」

 

 そして我が艦隊は指示通り動いた。幸いにも、それからも敵艦隊はこちらに回頭することはなかった。まぁ、既にメルカッツ提督らの主力と砲火を交えているし、こちらに向きなおる暇はないか。

 

「提督、所定ポイントに到達しました!」

「よし、全艦90度回頭! 敵艦隊に砲火を浴びせつつ、時計回りに戦闘機動。奴らの後背に出るのだ!」

 

 かくして我が艦隊は叛乱軍艦隊に向きなおり、砲火を浴びせた!

 今回は、有力な幕僚(一人除く)を入れたかいあって、前回より火球の数が多いような気がする。

 

 一方、同盟軍・戦艦リオ・グランデ。

 

「まさか、痛い横腹を突かれるとはのう。一個艦隊だけとはいえ、甘く見ていたか。ファイフェル少佐、ウランフ提督は?」

 

 ビュコック提督の質問に、副官のファイフェルが淡々と返答をする。

 

「はい。急いでこちらに駆け付ける、とのことです。既に艦隊移動を開始したとのこと」

「そうか。合流するまで持ちこたえれば、なんとか戦線を維持することはできよう。あとは援軍が来てくれれば……む?」

 

 とそこで、ビュコック提督は、戦術スクリーンに映し出された艦隊の動きに違和感を抱いた。

 

「わしらに横撃を加えている艦隊、時計回りに流されているような気がするが、気のせいか?」

「そういえば……。ですが、このあたりに艦が流されるような宇宙気流はないはず……」

「あれが宇宙気流など外的要因によるものではなく、故意だとすると……」

 

 と、そこで彼は一つの可能性に思い当たる。

 

「しまった! まんまとしてやられたわい!」

「提督?」

 

 こちらに視線を向けたファイフェル少佐に向きなおると、ビュコック提督は再び指揮コンソールに向きなおり、戦術スクリーンを操作する。

 そのスクリーンの一角が切り替わり、両軍の配置と、さらに彼が予想した艦隊の動きが映し出される。

 

「あの艦隊はこちらを攻撃しながら時計回りに移動し、こちらの後背を突くつもりじゃ!」

「な、なんと!? それではただちに回頭し、その艦隊への対処を……」

 

 慌てたように言うファイフェルに、ビュコック提督は首を振ると、再び指揮コンソールを操作する。

 

「いや、それはできん。今でさえ、敵の7個艦隊と相対し、なんとか持ちこたえておるんじゃ。これでわしらが回頭したら、こちらと敵主力の戦力バランスが崩れてしまい、一気に押し負かされてしまう……よし」

 

 ビュコック提督は、操作を終えると、コンソールからディスクを抜き取り、ファイフェルに渡す。

 

「ファイフェル少佐、すまんがこの作戦案を、盤古のウランフ提督に送ってくれんか」

「はっ、ただちに!」

 

 ディスクを受け取ったファイフェルは、大急ぎで指揮フロアを出て、下の管制通信フロアへと向かう。

 それを見送ったビュコック提督は、目の前を見据えてつぶやいた。

 

「あとは、ウランフ提督が駆け付けるまで、わしらが持ちこたえられるかじゃが……」

 

* * * * *

 

 一方、我がフォーゲル艦隊。我が艦隊は無事に、敵艦隊の後背に出ることができた。

 

「提督、所定のポイントに到達しました」

「よし、全艦、総攻撃開始! 敵艦隊の尻を思いっきり叩いてやれ!」

 

 わしの号令一下、所属の各艦が一斉に中性子ビームやミサイルを発射しまくる。有能な幕僚を迎えたことで強化された攻撃力、しかも後背からの攻撃とあって、敵艦隊に少なくない損害を出すことができた。

 

「よし、バルトハウザー大佐。総攻撃は停止、通常攻撃に切り替える」

「はっ」

 

 わしは初撃を加えたところで、総攻撃を停止し、通常攻撃に切り替えるよう指示を出した。我が艦隊の戦意は他の艦隊ほど高くない。総攻撃をやみくもに続けただけでは、すぐに士気が尽きてしまう。攻撃は効率的にしなければ。

 我が艦隊の攻撃に、敵艦隊はいくらか動揺しているのが、その敵艦の動きからわかる。メルカッツ提督率いる主力艦隊も、この機を逃さず攻め立ててくれているようだ。

 

 8個艦隊対2個艦隊という戦力差もあり、敵艦隊はどんどん数を減らしていき、気が付けば、二艦隊とも、残すは旗艦分艦隊だけとなった。

 

 

 勝ったな……。わしがそう思った時だった!

 

「提督! 敵の攻撃! 強襲揚陸艦分艦隊が壊滅しました!」

「なんだと!? もしや、ラームにいたという、ウランフとかいう提督の艦隊か!?」

「どうやらそのようです。0時方向から攻撃を仕掛けてきています!」

 

 しまった! 敵二個艦隊に気を取られていて、ラームの艦隊への注意を怠っていた!

 

 一方、ウランフ艦隊、旗艦・盤古の艦橋。

 

 褐色の肌の偉丈夫、自由惑星同盟軍のウランフ提督は、腕組みしたまま号令を出した!

 

「ビュコック提督たちは持ちこたえられなかったか……。仕方あるまい。前面の敵遊撃艦隊に痛撃を与え、両提督の離脱を援護する。奴らを全滅させるつもりでかかれ!」

 

 第五次ティアマト会戦は、まだ終わらない……。

 

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