ブラウンシュヴァイク公が転生したけど、転生先はフォーゲルだった件   作:ひいちゃ

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お待たせしました! いよいよアスターテ会戦です!


第7話『永遠の夜の中ですが、いつ明けるのでしょうか?』

 第五次ティアマト会戦から数か月後、再び侵攻作戦が発動した! しかも、目的地はアスターテ星域だ!

 

 確か、わしの前世の記憶によれば、この星域は、先のティアマトと並んで、ミューゼルが名を上げた戦いがあった地であると同時に、わしの宿主であるフォーゲルが、戦いの末、命を落とした地だという。

 

 いささか怖いものはあるが……だがなんの! 確かに体こそフォーゲルではあるが、わしには悪だくみと、前世での知識があるのだ! 前世の二の舞にはならぬわ!!

 

「……フォーゲル提督、夕焼け空に向かって、何をわめいているのかな? 金髪の孺子の悪口なら、私も付き合うぞ?」

「……いや、ヒルデスハイム伯、それは気持ちだけ受け取っておく」

 

 ともあれ、作戦は発動したのであるが、前世と違うところもあった。ミューゼルではなく、メルカッツ提督が総指揮官になっていることだ。確か、前世ではメルカッツ提督がミューゼルの指揮下であったな。

 にっくきミューゼルが総指揮官でないことに、溜飲を大いに下げたわしであった。

 

* * * * *

 

 そして出陣したアスターテ攻略艦隊5個艦隊であるが、手前のヴァンフリートでの作戦会議にて、メルカッツ提督は驚くべきことにこう言った。

 

「事前偵察によれば、敵艦隊は三つある惑星のうち二つに分散配置されているとのことだ。これはおそらく、どれかの惑星が攻撃された時点で他の惑星の艦隊がかけつけ、包囲殲滅を狙っておるのだろう。だが恐れることはない。奴らが包囲する前に各個撃破してしまえばいい」と。

 

 前世でミューゼルめが提示した作戦を、メルカッツ提督が提示したのだ!

 そういえば、地球時代のとある漫画では、『ある人物がいなくなっても、また別の人物がその人物の役割を負うようになる』という記述があったという。それと似たようなことが起こったのであろうか?

 

 そして反論するのは相変わらずこの男だった。

 

「机上の空論だ! 一歩間違えれば敵の思い描いたような見事な包囲殲滅が展開されるのみですぞ!」

 

 相変わらずの理論倒れぶりのシュターデンだった。だがわしは確信しておった。この作戦は必ずうまくいくと。何しろ、前世でその有様をアンスバッハから聞いてきたのだからな。だからわしは口を開くことにした。

 

「待たれよ。兵の一点集中は戦術の基本。メルカッツ提督の作戦は、実にその理にかなっておられる。そして、もし失敗すれば包囲殲滅されるというのであれば、私たちが奮闘して、そうならないようにすればいいだけのこと。違いますかな?」

 

 わしの発言に、メルカッツ提督はもちろん、ともに参戦していたファーレンハイト提督も、反対していたシュターデン提督も、何よりミューゼルめも、目を丸くしておった。愉快愉快!

 前世の知識があったればこそのこの発言! 他の提督の評価も少しか上がったことだろう。わしの悪巧みの巧みさを甘く見るなよ、ミューゼルめ!!

 

「フォーゲル提督の言うことだけあって、とても心配ではありますが、確かに私も、彼の言う通りであろうと思います」

 

 しかし、さすがはミューゼル提督。負けじとこう言ってきおった。く、やはりそれまでの評価は大事だな!

 だが、わしを甘く見てもらっては困る。ミューゼルめが言っていた決め台詞、今こそわしが奪って……。

 

「シュターデン提督。私もメルカッツ提督の作戦がいいと思う。それと、もしあくまで反対なさるなら、軍権をはく奪されて、後日軍法会議にかけられることになりますが、その覚悟はおありか?」

「「ぐ……」」

 

 うめきがシュターデンめと重なってしまった。なお、シュターデンめのうめきは、反論を封じられたことによるものだが、わしのほうは、奪おうとしていた決め台詞をファーレンハイトに奪われたことによるものだ。

 

 ……ともあれ、作戦会議はこれで決し、いよいよ艦隊はアスターテに入っていくのであった。

 

* * * * *

 

 アスターテ星域は、アトラ・ハシース、アスピリン、ウガリットの三つの惑星からなる恒星系だ。

 メルカッツ提督の作戦では、まずウガリットの敵艦隊を排除したのち、他の二つの惑星を攻略するとのことだったが……。

 

「違うぞフォーゲル提督。アスピリンだと抗生物質になってしまう。正しくはアスペルンだ。門閥の中でも学問の成績が低い私でも知っているのだから、提督にはもっとしっかりしてもらわないとな」

「うぐ……」

 

 ヒルデスハイム伯から指摘されるとは……。せめて、次席参謀のランテドルフ大佐に指摘されたらマシだったものを! なんというか負けた気分だ。というか伯、自分があまり頭よくない自覚はあったのか。

 

「ヒルデスハイム伯は、成績が悪かったのか。門閥だからよい方かと思っていたが」

 

 悔しくてヒルデスハイム伯に皮肉を言ってやるが、彼は計測不能なほど予想外な反応を返してきた。

 

「門閥のすべてが頭がいいわけではない。無念だが私も、頭が良いほうではない。だが私は、頭がよくない分、顔がいいからな。ふ、困ったものだ」

「……」

 

 さ、さて……。

 

「バルトハウザー、ウガリットに偵察隊を飛ばしてくれ。それと、ウガリットの敵情が知れたら、偵察隊はそのまま、アスベルン、アトラ・ハシースの敵情も調べさせてくれ」

「はっ」

「ん? フォーゲル提督。目前のウガリットを偵察するのはまだわかるが、なぜにアスベルン、アトラ・ハシースのほうまで調べるのだ?」

 

 ヒルデスハイム伯が、偵察について文句を言わない!? 学習している!?

 

「何を目を丸くしているのだ、フォーゲル提督。私とて選ばれた民である門閥の片割れ。少しぐらいは学習するのだ」

 

 おぉ、そうだったのか! わしは思わずヒルデスハイムを見直し……。

 

「まぁ、学習しても、それを活かすのはめんどくさくて嫌だがな、はっはっはっ!」

 

 ……そうになったが、一時の気の迷いだったようだ。そうだよな。こいつが覚醒するなんてありえないよな。わしがイレギュラーだっただけだ。

 

「それで、どうして他の二惑星の敵情を探るのだ?」

「なに、ちょっと悪巧みをしているのでな」

 

 わしがそういうと、ヒルデスハイムは愕然とした表情を浮かべた。

 

「わ、悪巧みだと!? ま、まさか、叛乱軍に寝返るつもりなのか!? な、なんてことを!?」

「そんなことするわけなかろう。さすがに、自ら喜んで銃殺刑の刑場に行くほど酔狂ではない」

 

 というか、不本意な死を迎えるのは一度でたくさんだ。

 

「利敵行為とか、そういう悪巧みではないから安心されよ。わしの言う悪巧みというのは、戦果を競い合ううえでのものだ。まぁ、その時になったら教えてやるからその時を楽しみにしていてくれ」

「うむ、安心したし、楽しみにしているぞ。はっはっはっ!」

 

 わしがヒルデスハイム伯と、そんな漫才をしているうちに、各惑星の情報が入ってきた。

 情報によれば、ウガリットに、ビュコック提督とホーウッド提督の二個艦隊、アトラ・ハシースにも二個艦隊がいるという。意外なことにアスピリンには艦隊は存在していないらしかった。

 

「だから提督、アスピリンではなくアスベルンだ」

「……あー、偵察隊は、再びアトラ・ハシースに行き、惑星上の二個艦隊の動きを探ってくれ」

 

* * * * *

 

 さて、艦隊はウガリット近辺に到達し、艦隊戦が始まった。我が艦隊はいつものように、戦場を迂回し、敵の後背に出て、奴らの背後から砲火を浴びせる。

 

 しかし、敵……特にビュコック提督は、同じ手にはまるほど馬鹿ではなかったらしい。

 

 戦艦リオ・グランデ艦橋内。

 

「またあの艦隊か。だが、同じ手が三度も通じると思ったら大間違いじゃ! 全艦、前方の主力から距離が離れすぎないように気を付けつつ、後背の艦隊が戦闘艇(スパルタニアン)隊の攻撃範囲内に入る位置まで後退! 後退し次第、スパルタニアンで一撃食らわせるのだ!」

「了解。それにしても、提督。今回はずいぶん熱くなってますね」

 

 かくして。

 

「うひょう!」

 

 わしは思わずそう声をあげてしまった。敵艦隊はこちらに向けて後退してきたかと思うと、戦闘艇を出してきたのだ! たちまち、戦闘艇の突入を許してしまった、いくつかの分艦隊に損害が出てしまった。

 

「慌てるな! 後退してきた艦隊とて、あまり後退しすぎると、もう一つの艦隊を孤立させることになってしまうから、そう後退することはできないはず! こちらも後退して、距離を取るのだ!」

 

 わしの読みと指示は正しく、我が艦隊はなんとか後退してきた艦隊と距離をとることができた。引き続き砲火を浴びせる。しかも、ビュコック提督の艦隊が後退してきたせいで、主力からの砲火がホーウッド提督の艦隊に集中していたらしい。ホーウッド艦隊は、かなり数を減らしていた。

 

 さらに攻撃は続き、ホーウッド艦隊は壊滅した。

 

 さて、そろそろ……かな?

 




ビュコック爺さんも、なんかブラ公inフォーゲルを宿敵として感じた模様……

次回はアスターテ会戦の後編です!

『ブラ公inフォーゲルの悪巧み、その結末』

転生提督の歴史が、また1ページ

※追記
第7話終了時点での、各艦隊の動きを図にしました。
赤が帝国軍、白が同盟軍です

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