ブラウンシュヴァイク公が転生したけど、転生先はフォーゲルだった件 作:ひいちゃ
後編での各艦隊の動きは、後で公開しますね。
叛乱軍二個艦隊が守るウガリットでの戦いは、帝国軍の有利に進んでいた。
ウガリットを守る艦隊のうち、ホーウッド提督の艦隊は既に壊滅し、ビュコック提督の艦隊も、多勢に無勢でじきに壊滅するだろう。そろそろ……かな。
「バルトハウザー、メルカッツ提督に回線をつないでくれ」
「了解しました」
副官のバルトハウザーが通信士に指示すると、少ししてメルカッツ提督がスクリーンに映し出された。
「何かな、フォーゲル中将」
わしは思わず顔が悪い笑顔にならないように気を付けながら言葉を紡ぐ。
「はい。見るところ、ウガリットの戦線は、こちらにかなり傾いて来ております。そこで我が艦隊は遊撃戦力として戦線から離れ、アスペルンの攻略に向かおうと思うのですが、いかがでしょうか?」
「むぅ……」
やはりというべきか、メルカッツ提督は顔をしかめた。そりゃそうだろう。いくら流れはこちらに大きく傾いているとはいえ、他の戦っている艦隊を後目に、無防備な惑星を獲りに行こうというのだから。
他の艦隊指揮官には気の毒だが、わしも時にはこんな楽もしたい。(え? いつも後背から攻撃したりと楽な戦いしてるだろ? な、なんのことかのう)
さらに続ける。
「もしアスペルンを攻略することができれば、我が軍は二方向から進軍することができるようになり、敵軍に大きな動揺を与えることができます。また、これによってウガリットの艦隊を、アスペルンに引き寄せたり、あるいはアトラ・ハシースの敵を引き寄せたりと、戦局をさらに有利に運べる可能性も多くなるかと……」
「……」
わしの提案を受けて、うなりながら考え込むメルカッツ提督。こちらとしては、あくまでアスペルンを獲りに行くための名分というか言い訳のようなものであるが、メルカッツ提督は真剣にこの提案を考えてくれているようだ。やがて。
「わかった。確かにそのほうが戦局をさらに有利にできるかもしれぬ。お願いしてもよろしいか?」
「喜んで」
メルカッツ提督の許可を得たわしはさっそく、艦隊に指示を飛ばす。さぁ、稼ぐぞお!!
「よし、戦闘態勢解除。後退したあと、逆時計回りに大きく迂回して、アスペルンに向かうぞ」
「了解!」
* * * * *
一方、ミューゼル艦隊旗艦・ブリュンヒルト。
「してやられたな、キルヒアイス」
「はい。フォーゲル提督に先を越されてしまいました」
キルヒアイスにそう言われると、ラインハルト・フォン・ミューゼルは苦笑をもらした。
「あぁ。状況が許せば、俺があれを言おうと思っていたのだがな。もっとも、俺たちの艦隊が主力に加わっている以上、ここを抜けてアスペルンに向かうわけにもいかんが」
「もしかして、フォーゲル提督は、こうなる可能性を見越して、後背からの攻撃を行ったのでしょうか?」
キルヒアイスがそう問いかけると、ラインハルトは、面白くなさそうに顔をしかめた。そして返す。
「あの男がそれを考えるほどに頭が回るようになった、とは思いたくないが……。だが、最近の戦果もあるし、ありえない話ではない。もしそうだとしたら、あのフォーゲルという男、侮れないな。本当に何があったのか」
そしてしばらく考え込むと、再び顔を上げた。
「それを考えるのは、今はやめておこう。今は目の前の状況が大事だ。奴が惑星占領で功績を稼ぐなら、こちらは敵艦隊の撃破で功績を稼いでおこうじゃないか」
「わかりました」
* * * * *
またまた一方、ビュコック艦隊旗艦・リオ・グランデにて。
「ビュコック提督。我が後背を攻撃していた艦隊が後退し、反時計回りに移動を開始しました」
副官のファイフェルの報告に、ビュコックは面白くなさそうな顔をした。彼も、メルカッツやラインハルトと同様、フォーゲルの狙いに気づいたのだ。
「わしらを主力に任せて、自分たちは無防備なアスペルンを占領する腹じゃろう。大変なことは友軍に任せて、自分は無防備な惑星をいただきに行こうとは、食えない奴じゃ。もっとも、おかげでこちらは後背からの圧力がなくなったから、少しは助かるがの」
「そうですね」
「うむ。奴の狙いは気に食わんが、おかげでもう少し粘れる」
* * * * *
さて、我が艦隊は、抵抗を受けることなく(通信妨害を取る必要すらなかった)、惑星アスペルンの3時方向に進出することができた。さて、と……。
「艦隊、一時停止」
「フォーゲル提督、いかがなされたのか?」
一時停止命令を出したわしに、ヒルデスハイム伯がそう聞いてきた。わしは、スクリーンを凝視したまま返す。
「このまま突撃するのは無謀だ。ここは、偵察隊の報告を見ながら慎重に行く」
すると、やはりヒルデスハイムは騒ぎ立ててきた!
「そんな弱腰でいかがなされるか! ここは攻めに行くべきですぞ!」
「いやいや、ヒルデスハイム伯。アトラ・ハシースには二個艦隊がいます。うかつに突っ込んではその艦隊に罠を張られてしまうかもしれませぬ」
「罠が何するものぞ、二個艦隊何する者ぞ! この門閥貴族ヒルデスハイムは、そんなものに恐れたりはしないのだ!!」
そう喚いているが、確かこの男……。
「ヒルデスハイム伯、確か先ほど学習したとか言ってなかったですかな?」
「そんなもの、トリプラ星域のブラックホールの中に投げ捨ててやったわ! とにかく、突撃ですぞ中将!!」
「はぁ……」
わしは少し疲れながら、ヒルデスハイム伯の背後に立つバルトハウザーに目くばせする。そして。
「突撃、突撃、とつげーき! 我が輝ける門閥貴族に敵はなーーーー!!」
ぷしゅっ。
「しっ!?」
ばたっ。
「ぐー、ぐー……」
超強力睡眠薬を打たれ、ヒルデスハイムはぶっ倒れて大きないびきをかき始めた。やれやれ。
「フォーゲル提督、どうやら今のところ、アトラ・ハシースの敵艦隊に動きはないみたいですぞ」
「そうか。よし、もう少し様子を見て、動きがなければ落としに行くぞ。……ところでバルトハウザー大佐。何ゆえ、ヒルデスハイムを椅子に座らせてその後ろに隠れ、変声機でしゃべっておるのだ?」
* * * * *
そして、アトラ・ハシースの敵に動きがないのを確認した我が艦隊は一気にアスペルンに急行。攻略を開始した。
だがその一方、ウガリットのほうでは大きな動きがあった。こちらにとっては嬉しくない動きだが。
ビュコック艦隊が後退する動きを見せたのに、シュターデン艦隊が反応したのだ。
「よし、いまだ! 後退した敵を追撃するのは戦理にかなっている。突撃!」
だがそれは、ビュコック提督の罠だった!
「よし、かかったな! 後方のパエッタ提督の艦隊、ウランフ提督の艦隊と呼応して、逆撃を加えるのだ!!」
いつの間にか、ビュコック艦隊の背後まで移動していたパエッタ提督、ウランフ提督の艦隊が、ビュコック艦隊とともに、突進していたシュターデン艦隊の頭を抑えるように先頭集団に攻撃をかける。案の定、シュターデン艦隊は動揺した。
「ば、バカな、このようなことが……! 戦理に反することだ!!」
そんなことは知らんとぱかりに、ここぞと猛反撃をかける同盟軍艦隊。シュターデン艦隊はたちまち士気を失い、崩れ、戦闘不能に陥った。
その様子を見ていた、旗艦ノートゥングのメルカッツ提督。
「奴らめ、粘るな……」
「はい。また、ここまでの戦いで士気がかなり落ちております。これ以上の戦いは……」
副官・シュナイダー少佐の報告と助言に、メルカッツ提督はため息をついた。そして。
「全くの無益、か」
「はい。例え、敵艦隊を撃退しても、惑星を攻略する余裕はないと考えます」
「そうか。仕方あるまいな。作戦は中止。アスターテ星域から離脱する」
メルカッツ提督が全艦隊に撤退命令を出したのは、我が艦隊がアスペルンを攻略した、ちょうどその時だった。残念だが、全軍が撤退する以上、我々だけが残るわけにもいかない。
「もう少し功績を稼いでおきたかったのだがな……。結果まで、前世でのアスターテのように痛み分けになるとは、なんともはや……」
わしはそうため息をつきながら、艦隊に撤退準備を命じた。
こうしてアスターテ会戦は、帝国軍が艦隊戦において有利にことを運びながらも、結局叛乱軍に粘られて撤退せざるを得なくなる、というパッとしない結果に至ったのであった。
第8話での各軍の動きを図にしてみました。よければ参考にしてくだしあ。
赤が帝国軍。白が同盟軍です。
【挿絵表示】
さて、無事にアスターテ会戦を終えたブラ公inフォーゲルですが、次回も、また大きな戦いが起こりますよ!
今回はブラ公がなんと……!
次回『愁雨降ってきたー』
転生提督の歴史が、また1ページ
追伸
投票ありがとうございます!
次の閑話のお題が決まりました!
一番投票が大きかったラインハルトの話、ということで、『グリューネワルト伯爵夫人誘拐暗殺未遂事件』をやろうと思います!
今回の閑話も、史実(原作)とは大きく異なるものになる予定!
そして、あのキャラが漂白&救われるかも!?
ご期待ください!
-追記-
閑話を書いているのですが、筆がのってきて、とても良い話(筆者視点)になっちゃいそうです。
とりあえず、ここまでのまとめ
・まだ生きてたのかグリンメルスハウゼン
・ラインハルト、キルヒアイスと一緒に、アンネローゼのごはんに舌鼓を打つ
・その様子を歯噛みをしながら見守る、道原版準拠なビッテンフェルト
・ブラ公、頑張る
・ケスラー「ブラ公はとんでもないものを盗んでいきました……あなたの心です」