ブラウンシュヴァイク公が転生したけど、転生先はフォーゲルだった件 作:ひいちゃ
愁雨というキーワードから気づいた方もいるのではないでしょうか?
ただ、原作のあの戦いとは、行われた場所も、展開も、そもそも状況からして違いますがね!(笑
あと、ラインハルトのキャラがちょっと悪くなってしまいました。皇帝ファンの皆様、ごめんなさい(土下座
アスターテ会戦から1カ月後、時を経ずしてある報告が帝国軍を騒がせた!
叛乱軍が、ヴァンフリート、アルレスハイム、そしてティアマトに同時侵攻を図っているのが判明したのだ!
これに対して、統帥本部が死に物狂いで迎撃作戦を立案したのは言うまでもない。
そして……。
判明してから三日後、わしは宇宙艦隊司令長官に呼び出された。
「フォーゲル中将、参上いたしました。何事でありましょうか?」
わしがそう聞くと、ミュッケンベルガー宇宙艦隊司令長官は、信頼と心配をミックスしたような、複雑そうな顔を向けた。なんか、嫌な予感がするな。
「うむ。フォーゲル中将、叛乱軍がヴァンフリート、アルレスハイム、ティアマトに大侵攻作戦を行おうとしている、という情報は知っているな?」
「はい」
わしがそううなずくと、司令長官もうなずいて、話を続けた。
「それに対し、我が軍も一大防衛作戦をすることになった。今のところ、ヴァンフリートへはわし率いる6個艦隊が出向き、アルレスハイムにはミューゼル大将率いる6個艦隊を差し向けることで作戦案は固まっているが……」
ごくり。
「ティアマトには卿を含めた5個艦隊を向かわせようと思っている。卿にはそのティアマトでの防戦の指揮を担当してもらいたい」
「ティアマトですか。小官にとっては因縁の地ですな……、ってえ!? 指揮!?」
まさかわしに、5個艦隊の指揮をとるという大役が回ってこようとは!?
「何を驚く、フォーゲル中将」
「い、いえ、し、小官にそれが務まるでありましょうか……?」
今まで艦隊の指揮は散々してきたが、5個艦隊という複数艦隊の指揮をとるのは今回が初めてだ。しかも、わしはまだ中将。驚かないほうがおかしい。
「確かに第四次ティアマト会戦以前の卿のことを考えると、少し不安はあるが……」
あ、ミュッケンベルガー司令長官も、やっぱり不安があったのね。無理もないが、それでもわしに指揮を任せるなんて、さすが司令長官をするだけあって肝がでかいのかもしれない。
「だが、参加する中将の中で比較した場合、全体指揮については、卿がわずか、0.0001馬身、0.01mgほど勝っているとわしは判断した。これがただの気の迷いではないことを祈りたいが」
なんか喜ぶべきかがっかりするべきか判断に迷う評価だな。というか司令長官、言いながら胃薬をごくごく飲まないでください。
「だがこれは、メルカッツ提督の推薦でもあるのだ。気の迷いやわしの評価はちょっと信頼に欠けるが、メルカッツ提督が薦めるのなら、きっと大丈夫だろう、うむ」
「はぁ……」
メルカッツ提督がわしを推薦してくれたとは、なんとも嬉しい限りだ。前回のアスターテで抜け駆けみたいなことをしたことに対する意趣返しでなければいいが。
「わかりました。司令長官が評価し、メルカッツ提督も推薦してくれたとなれば、小官に否やはありません。その大任、喜んで引き受けさせていただきます」
「うむ。今回のことは、帝国の栄光はおろか、下手したら帝国の存続にも関わるかもしれん。卿の奮闘と手腕に期待する。無事、ティアマトを叛乱軍の手から守り切ってきてくれたまえ」
だから、胃薬を飲みながら言わないでください、司令長官!!
* * * * *
さて、帝都オーディンの宇宙港。わしは出発前に、メルカッツ提督の旗艦・ノートゥングを訪れた。
何回見ても、素晴らしい艦だ。新生フォーゲル艦隊に再編成するにあたって、わしがバッツマンから乗り換えたシェルフスタットも素敵な艦だが、このノートゥングは、さらに素晴らしい。他の門閥貴族の艦とは違い、豪華でありながらも、その豪華が目につきすぎることなく、機能性やシンプルさとうまくバランスが取れている。
なんでもこのノートゥングは、メルカッツ提督がこれまで多大な戦績を上げてきたことに対して、皇帝陛下自らが下賜してくださったとかいう話だ。わしも、確かにこの美しい艦は、メルカッツ提督の輝かしい戦績にぴったりだと思う。
さて、そのノートゥングの艦橋で、わしはメルカッツ提督と面会したのだが、そこには思わぬ客がいた。ミューゼル提督その人だ! そのわきには、副官のキルヒアイス大佐も立っている。
わしは表情が引きつらないようにしながら、メルカッツ提督に一礼した。
「メルカッツ提督、この度は、小官を、ティアマト防衛作戦の指揮官に推薦していただき、ありがとうございます」
するとメルカッツ提督は一つうなずくと、ミューゼル提督のほうに一度視線を向け、再びこちらに向きなおった。
「いや、わしの推薦だけではない。こちらのミューゼル提督も、貴官ならば作戦指揮官にふさわしいと推薦してくれてな」
「ミューゼル提督が?」
もしかしてミューゼル提督もわしのことを……? そう思って、ミューゼル提督を見たとき、わしは見た!
一瞬、それこそ0.01ミリ秒、ギャ〇ンが蒸着に必要なぐらいの短い時間ではあるが、彼の表情が皮肉と悪意に満ちていたのを!
それを見て、わしは悟った。
こいつ、わしがティアマトでやらかして降格するか、それとも戦死するかを狙って、作戦指揮官に推薦したな! もし仮に勝ったとしても、それはわしを推薦した奴の評価にもつながる。どちらにしても彼に損はない、というわけだ。
まさか、前世のアスターテで、わしやフレーゲルの奴が彼にしたようなことを、今世でわしがされるとは、なんという運命の皮肉か。
だが、悟ると同時に、わしの中で闘志が湧き起こってきた。よかろう。ならばわしは、お前の予想を上回るような戦いをしてきてやるわ! 何せわしが向かうのは、今世で二度も因縁がある、勝手知ったるティアマトだからな!
その美しい顔を、驚きで彩らせてやるわ! 見ておれよ、ラインハルト・フォン・ミューゼルめ!!
「メルカッツ提督、ミューゼル提督、私をそこまで評価していただき、ありがとうございます。その評価と期待以上の働きをするべく奮闘いたします」
「うむ、わしはミュッケンベルガー司令長官とともにヴァンフリートに向かうことになったが、お互い頑張ろうではないか」
そして会談は終わった。
* * * * *
帝都オーディン衛星軌道上、ブリュンヒルトの艦橋にて。
「ラインハルト様、フォーゲル提督の前で一瞬、悪い顔をしておりましたが、あまりそのような、敵を増やすことはやめたほうがよいかと」
「ん? あぁ、すまなかった。つい、顔に出てしまっていた。気を付けるよ」
キルヒアイスは、そのラインハルトの答えにほっとした表情を浮かべると、質問を投げかけた。
「ラインハルト様。もしかして、フォーゲル提督が失敗して降格なり戦死したりすることを期待して、彼を推薦なされたのですか?」
「いや、俺だってさすがに、そうなったらティアマトが叛乱軍の手に落ちるのがわかって、そんなことを考えたりはしないさ。それはあくまで、『そうなったらいいな』程度の話だ」
「ラインハルト様……」
「本当のところは、メルカッツ提督が彼のことを高く評価していたからな。それに乗っからせてもらったまでだ。これで奴がうまくやったら、俺の評価もいくらか上がるしな」
「それならいいのですが……くれぐれも、敵を増やすことは考えないほうがよろしいと思います」
「あぁ、わかってる。助言してくれてありがとう」
* * * * *
その一方、自由惑星同盟軍。ティアマト侵攻艦隊・ムーア艦隊旗艦・ペルガモンの艦橋。
「もうすぐティアマト星域だな。こちらに向かっているのは5個艦隊か」
ムーア艦隊司令官・ムーアの言葉に、スクリーンに映し出されたパストーレ提督が笑いながら答える。
「確かに数は、向こうが少しばかり多いが、指揮しているのは中将。しかも、フォーゲルとかいう提督だって話だ」
そのパストーレ提督の報告に、ティアマトに侵攻している3個艦隊の一つを指揮するルグランジュ提督も笑って返す。
「前回、ダゴンでボコボコにされたというあの提督か。これは楽勝かもしれんな。そんな奴に、二度も苦汁をなめさせられるなんて、ビュコックの爺さんもそろそろ老いぼれてきたか?」
そこで三人が三人とも大笑いする。
「だが、油断は禁物だ。気を引き締めていこうじゃないか。楽な登山で小石につまずいて怪我したなんて、しまらないからな」
「あぁ。好事魔多しというしな。油断禁物だ。これで勝ったら、ラームの黒ビールでいっぱいやろうじゃないか」
「いいな。では、それ目指して頑張ろう。では通信を切るぞ」
* * * * *
一方、イゼルローンとティアマトの境界付近。そこでわしは、ティアマトが既に叛乱軍の手に落ちたという凶報を受けたのであった。
「むぅ、一歩間に合わなかったか……。他の二星域はどうだ?」
わしの質問に、副官のバルトハウザー大佐が答える。
「はい。アルレスハイムでは既に、ミューゼル大将率いる防衛艦隊と、叛乱軍艦隊との戦闘が発生しています。どうやら、アルレスハイムに攻めてきた艦隊は少数のようで、今のところ、我が軍が圧倒的に優勢とのことです。一方のヴァンフリートは、まだ敵の襲来はないとのこと」
「ふむ……。ちょっと参ったな。事前に立てていた作戦は、ティアマトがまだ無事なことを前提に立てていたからな」
そのわしの独白を聞いた、バルトハウザーとナイゼバッハの表情が暗くなる。おっと、部下たちを不安にさせてはいかんな。気を付けなくては。
「心配するな。確かに目論見は外れたが、それでもまだ修正でどうにかできる範囲だ。今のうちに作戦案の修正を詰めるとしよう。ファーレンハイト提督、レンネンカンプ提督、アイゼナッハ提督、ミュラー提督に回線をつないでくれ」
わしは頭の中でさっそく作戦の修正をしながら、バルトハウザーにそう命じたのであった。
イゼルローン周辺宙域で降り出した愁雨。それが止んで晴れるか、それとも大嵐になるか、それはまだ誰にもわからない。
帝国軍と自由惑星同盟軍。両艦隊による6度目のティアマト会戦がまもなく、始まろうとしていた―――。
次回から、いよいよ第6次ティアマト会戦がスタートします!
いきなり5個艦隊を指揮することになったブラ公inフォーゲルの運命やいかに!?
次回、『みたび、ティアマト』
転生提督の歴史が、また1ページ