ハイスペック退屈少女と陰キャで淫乱な黒い猫   作:カボチャスパークリング

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#3 初めてのカラオケ 波乱編

 

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 #黒猫さんの時間 #おまつりあつまれ

【オフコラボ】口下手2人で初オフってマジにゃ?【黒猫燦/世良祭】

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 黒猫 燦 
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「黒猫さん、お歌可愛い……」

 

バーチャルミャーチューバーのことなら私に任せると良いよ、と自信満々だった友人に散々な目に遭わされたため、友人を頼ることをしないと決めた私は、バーチャルミャーチューバーの動画をいくつか視聴し、王道のジャンルであるらしいお歌配信に乗り出すことにした。

折角3Dでの配信を準備したので、ライブみたいなことも出来そうであるし、ここは押さえておきたい。

 

これでも琵琶の伴奏で唄う琵琶歌は、長年やっていて評判も頗る良かった。最近の流行りの音楽は良く分からないが、練習すればそれなりに歌えるはず。

 

そこで練習の場として選んだのが、カラオケ。

人生で一度も行ったことがないが、黒猫さんも、世良祭さんと一緒に楽しそうに配信を行っていた。この動画を初めて見たときから行ってみたいと思っていたのだ。

 

調べたところ、ここから徒歩数分の駅前にカラオケ店があるとのことなので、そこへ向かうことにする。

 

カラオケ店について調べ上げて、準備万端な状態で、私は家を出た。

 

外を歩くとやはり私の容姿は目立つ。

 

この銀色の髪と青い瞳。

 

最近では日本でも外国人が増えてきたが、それでも銀髪というのは珍しいのだろう。物珍しそうな視線はあまり好ましくないが仕方がないことと諦めている。私だって、全員が全員、銀髪の中に黒髪の人間がいれば少なからず視線を送るだろうし、いちいち気にしていても仕方がないことだ。

 

昔は随分気にしていたし、自分のこの髪が嫌いだったが……今は、綺麗だとか宝石みたいだとか言って、頭を撫でてくる友人もいるので、少しだけ気に入っている。

 

ショートにしていた髪も伸ばし始めて随分経つし、私も少しは自分を好きになれているということなのかもしれない。

その点は友人に感謝するべきか。まあ、だからと言ってメントスコーラ事件を許す気はないので、次に会った時には頬を引っ張り尽くしてやるのだが。

 

どこで何をしているのかも分からない友人のことを考えつつ、か弱い私の肌を守るために差している日傘を、時折、くるっと回しながら歩くこと数分。

 

土曜日だからか、昼とも夕方とも言えない中途半端な時間だというのに賑わっている駅前の一角に、調べた通り、カラオケ店はあった。

 

店の前で深呼吸を一つ。

大丈夫、下調べは十分だ。

 

「いらっしゃいませ、何名様のご利用でしょうか?」

 

「一人です」

 

キリッとした女性の店員に問われるが、まごつくことなく堂々と答える。

 

 

「会員カードはお持ちでしょうか?」

 

「はい」

 

事前にスマートフォンのアプリで登録し、電子カードを発行しておくことが可能なため、ここへ来る前に登録を済ませておいた。スマフォの画面をリーダーで読み込めば、それでカードの提示は完了だ。

 

「ドリンクバーはお付けしますか?」

 

「はい」

 

この店舗ではドリンクバーか、都度単品で注文するか、プランを選ぶことができる。少々割高になるが、長くいるならドリンクバーの方がお得、という訳だ。今日は練習が目的であるため長期戦が予想される。ドリンクバーとやらも初めてであるし、迷わず頷いた。

 

「それでは猫屋敷様、108号室のお部屋になります」

 

部屋番号を教えてもらい、透明なグラスを手渡される。これに自分でドリンクを注ぎ、自由に飲んで良いということなのだろう。受付のすぐ横にドリンクバーのコーナーが設置されていたので、グラスを持ってまずはそこへ向かった。

 

氷が入っている冷蔵ケースが見えたので、そこから氷を数個グラスへ放り込み、いよいよドリンクを注ぐ時が来た。

現在私は、大量に注文してしまった炭酸飲料を片付けるためにも、炭酸克服に向けて目下訓練中の身であるため、コーラを飲むことに決める。

 

いざ注ごうとコーラのロゴが書かれたボタンを押す。が、特に注がれる様子はない。もう一度押してみるが結果は同じだ。

不可解な現象に私が首を傾げていると、受付をしてくれた店員さんがカウンターから出てきた。やはり故障だったのだろう。

 

「お客様、そちら長押しになっております」

 

「へっ?」

 

爽やかな笑顔で告げられ、ボタンを長押しすると、ドバドバと注がれるコーラ。

 

「お困りの際は何なりとお申し付け下さい」

 

そう言って、格好良くお辞儀する店員さんに、私はただただ赤面するしかなかった。

 

 

 

宿敵、コーラのせいで大恥を掻いた私は、そそくさと部屋へと向かう。

普通に考えれば分かったことなのに、初めての場所で緊張していたのか長押しという選択肢を思い付かなかった。

下調べをし、スマートに受付をこなしてしまったことも恥の上乗せだ。あいつ、滅茶苦茶調べてきてたんだな、という店員さんの優しい目が痛かった。いっそ、私の容姿を活かし、外国人を装って誤魔化す作戦が使えれば良かったのだが、受付の店員さんとはバッチリ日本語で会話をしてしまっているし、純和風の名前も知られている。

くっ、コーラめ。これで勝ったと思うなよ。

 

私は、手元のグラスを睨み付け、コーラへのリベンジを誓ったわけなのだが、それがいけなかった。

 

「あ!?」

 

「ひゃっ!?」

 

先程大恥を掻いて焦っていたのもあり、注意力が散漫になっていたのだろう。目の前の部屋からすっと出てきた女性と思いっきりぶつかってしまった。その衝撃で、手に持っていた、なみなみと注がれたコーラは見事にぶちまけられ、私達は二人してビショビショに。

 

「ご、ごめんなさい!」

 

とりあえず、完全に私が悪いので謝罪する。

見たところ少し年上の綺麗な美人さんなのだが、ぶちまけられた角度が悪く、髪まで濡れてしまっている。

 

「私も良く見てませんでしたから」

 

あはは、と微笑むように笑ってくれているが、実際問題、笑い事ではない。折角楽しい時間を過ごしていただろうに、私が台無しにしてしまったのだ。

 

「どうかなさいましたか?」

 

声が響いていたのか、プラスチック製のグラスが叩きつけられた音でも聞こえたのか、先程対応してくれた店員さんがやって来た。

床にも溢してしまっているし、私が女性とぶつかってしまったことを話すと。

 

「清掃は私がやりますから。お怪我はありませんか?」

 

と、笑顔で、こちらの心配までされてしまう。この方には格好悪い所ばかり見られている気がする。

 

「とりあえずタオル持ってくるよ」

 

「ごめん、お願い」

 

店員さんが親しげに女性に告げて、私に頭を下げると、タオルを取りに行ってくれたのか、少々小走りで受付に向かう。

 

「お知り合いなんですか?」

 

「あ、そ、そうなんですよ」

 

元々友達なのか、常連なのだろうか。二人の雰囲気的に知り合いかと思ったのだが、間違っていなかった。

 

「はい、タオル。お客様も、こちらお使い下さい」

 

「すいません、ありがとうございます」

 

タオルを受け取り、服を拭いてみるが焼け石に水。多少はマシだがベタベタしていて不快感は拭えないし、見た目も宜しくない。それは当然ながら、私よりもビショビショの女性も同じ。

 

「あの、良かったらシャワー浴びませんか。私の家、すぐ近くなので」

 

「えっ?」

 

突然、見ず知らずの人からこんな提案をされれば戸惑うのも無理はあるまい。若い女性なら警戒するのは当然だ。そう、思ったのだがどうやら彼女の懸念事項は私の考えるものとは違ったらしく。

 

「でも、友達が……」

 

彼女は友人と二人で来ていて、友達を一人にしてしまうことを気にしている様だ。

私の友人なんて、一緒に買い物に行って、私が試着している間に勝手に帰ったりするが、こう考えるのが普通なのだろう。

 

「彼女のことは私が気にかけておくから。行っておいで」

 

「うぅ、それはそれで心配だけど……」

 

店員さんは、女性の友人とも知り合いらしく、仕事中であるにもかかわらず、気にかけてくれるという。全く、この方には迷惑をかけてばかりで頭が上がらない。今度、菓子折持ってお礼に来よう。

 

「どうでしょう?」

 

折角、店員さんからのアシストが入ったので、ここで女性に再度問う。

彼女は自分のカラオケボックスに目を向けて、悩むような素振りを見せたが、やはり濡れた服でいるのは嫌だった様で。

 

「はい、お願いします」

 

そう言って了承してくれた。

 

一緒に来ている友人に伝えてきます、と女性が部屋に戻ったので、私はタクシーを呼ぶ。

距離的には近いが、濡れた女性を歩かせるわけにもいくまい。一応、タオルで拭いたとはいえ、タクシーの運転手には事情を話し、少し多めに料金を払っておくことにしよう。

 

最近なんだか、ビショビショになってばかり。

それもこれもコーラのせい。つまりはそれをすすめた友人のせいだ。

 

「お待たせしました」

 

十分程で彼女は戻ってきた。少しばかり友人の説得に時間がかかったとのことだが、その友人も彼女を心配してのことだろう。

 

「そういえば自己紹介がまだでしたね、私、猫屋敷 月華と言います」

 

警戒心を持たれないためにも、名乗ることが必要であるし、家に招くのにお互いに名前も知らないというのも変な話だ。

私が名乗ると、女性の方もパッと笑顔を浮かべて口を開く。

 

「私は暁 湊です。宜しくお願いします」

 

お互いに握手を交わして、タクシーを呼んである店の前に向かう。暁さんは私が車を出しますよ、と行ってくれたが、もう拭いたとはいえ、濡れた服で車に乗るのは申し訳ない。タクシー会社には事情は伝えてあるし、彼らはそれが仕事だ、了承してもらえた以上は申し訳なさを感じる必要はない。報酬という代価で誠意を示せば良いのだ。

 

それにしても、なんだか彼女の声をどこかで聞いたことがあるような気がするのだけど、どうしてなのだろう。私は一度会った人の顔は基本的に忘れないから会ったことはないはずなのに。

 

そういえば、受付の店員さんの声にも聞き覚えがある気がしたし、どうやら色々と動揺し過ぎて、錯覚してしまったのかもしれない。コーラの呪縛は根深い。

 

 

この時、なんかこの人の声聞いたことあるような?と、暁さんも私と全く同じ事を考えていた、と知ることになるのは少し後のことだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

▼おまけ▼

 

――とあるカラオケボックスでの説得から抜粋。

 

 

 

「十六夜桜花が気にかけてくれるから?死ぬが?私、死ぬが?」

 

 

 

「うわぁぁあ!ゆいまま!!行かないでぇ!」

 

「あ、コラ!私今ベタベタしてるから触らない!ママじゃないし!」

 

 

 

 

「ほら、好きなもの頼んでいいから」

 

「……ポテトとアイス」

 

「いいよ」

 

 

 

 

 

「……ちょっとだけだぞ」

 

 

許可が出た。





今話は時系列的には、原作#17部分での三人の対面後に該当します。
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