東京ドラグナーズ   作:タク@DMP

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第14話:自由/アイドルの休日

「──ただいまっ、ルッピーッ!」

「ピッピーッ!」

 

 

 

 帰ってくるなり、ソラの胸元に小鳥が飛び込んでくる。

 咢斗が飼っている「ルッピー」だ。

 眠そうなソラだったが、ルッピーを見るなりはしゃいで戯れている。

 しかし、明日も仕事だ。オフのサクラを護衛しなければならない。

 そのため「早くシャワー浴びて寝ろー」と咢斗は促す。

 彼女がシャワー室に入ったのを見やると、部屋に座り込むなり咢斗は今日一日の事を反芻していた。

 

「しっかし参ったね……肝心のアイドル様は絶不調、仮にライブに出られたとしてもあの状態じゃァな……」

「ピー?」

「……オメーさんは良いよなァ、ルッピー。いっつも優秀、失敗なんかしねェモンなァ」

「ピッピー!」

「人間には、必ず調子の悪い時があるんだよなァ」

 

 咢斗はルッピーの頭を指で撫でてやりながら──昔の親友の言葉を思い出す。

 

 

 

(人間には必ず、調子の悪い時というものがあるものさ)

 

 

 

 ……そのまま彼は口を閉ざしてしまった。

 どうやっても、当時の事を、そして親友である彼の事を思いだしてしまう。

 

「サクラは……頑張りすぎなんだと思います」

「頑張りすぎ?」

 

 シャワー室越しに飛んで来たソラの声に咢斗は何となく返す。

 

「きっと、次のライブに並々ならぬ思いを掛けてるんだと思います。でも、それで空回っちゃってるんです。きっと」

「俺様あの後調べたけど、次のネキバライブは普通の定例ライブだろ? 何の特別な事はねェンじゃねーか」

「多分、私達から見たらそうなのかもしれません」

「?」

「でも、そうでなければ……説明が付かないんです。私も、儀式の前に張り切り過ぎて失敗した事あったから……サクラの気持ち、分かるんです」

「……スランプの原因は気張りすぎ、か」

 

 ヒアリングしてみる価値はあるかもな、と咢斗は蝉の鳴き声を聞きながら頷いた。脅迫状の件と相まって、それが彼女のストレスとなっている可能性は高い。

 

「……あっちぃなー……それにしても」

 

 蝉の鳴き声というものは不思議である。

 同じ部屋でも、これがあるか否かで大違いだ。

 より暑さが増して来る程に騒々しい。そして憎たらしい。

 今日は熱帯夜なのだろうか。妙に暑苦しかった。

 まるで──燃え上がるようだった。

 

 

 

 ※※※

 

 

 

「ピッピーッ!」

「ふふッ、ルッピーは本当に可愛いなあッ、うふふっ」

 

 シャワーから上がっても、まだソラはルッピーと遊んでいた。 

 ルッピーを紹介してからずっとこの調子なので、余程気に入ってしまったらしい。

 しかし、明日は早い。寝てしまわなければならない、のだが──この蒸し暑さでは咢斗も微妙に眠くならないのだった。

 

「もーッ、くすぐったいよー」

 

 放っておけばすぐ寝るか、とソラを横目に咢斗はテーブルに向かってカードを並べだす。

 アイドルの護衛の件で忘れていたが、5Cジャクポも引き続き組み直さなければならない。

 新しく手に入ったクロニクルデッキのパーツで、このデッキもかなり強化されていた。

 

「アギトッ、それは──」

「あ? あァ……俺様の5Cジャクポだよ」

「5Cジャクポ……色んなドラゴンさんが入ってるデッキなんですね。文明も種族もバラバラだけど……不思議と調和がとれている気がします」

「バラバラだけど調和が取れてるか。カッハハハハハ! そりゃそうだ。5Cジャクポは、《ジャックポット・エントリー》で出せるクリーチャーをただただぶち込めば良いって訳じゃねェ」

 

 防御を担当する《ザ=デッドブラッキオ》や《メヂカラ・コバルトカイザー》。

 速攻の起点役となる《ヴァリヴァリウス》。

 相手の手札を削り取る《ダークマスターズ》。

 そして、一番新しく手に入った切札の《王牙》。

 一見、文明も種族も統一されていないように見えるデッキだが、それらは全て異なる役割を分担させるために投入されている。

 それらをバランス良く構築させたのが──このデッキだった。

 

「多色が多くても、《フェアリー・ミラクル》や《メンデルスゾーン》でマナ加速も無茶が利くからな。ごり押しが利く。それに、《グレンモルト》が加われば──このデッキはもっと強くなる、と思う。今は微調整を何度も繰り返してるけどな」

「《グレンモルト》……」

 

 《最終(ファイナル)龍覇 グレンモルト》。それは、クロニクルデッキ最大の目玉カードだった。

 このカードを5Cジャクポに投入する事で、ドラグハートを導入することが出来るようになるのである。

 しかし、そのカードを──ソラは複雑な顔で見つめていた。

 

「……どうした?」

「いっ、いいえ! 何でもないです……で、なかなか完成しないんですか?」

「入れるカードがあるッて事は、必ず抜かなきゃいけねェカードが出てくるだろ」

「確かに……」

「こういう時が一番悩み所なんだよな……お前、カードの言葉が分かるンだろ? もしかしたら俺様、抜いたカードに恨まれてるかもってな、カハハッ!」

「そんな事は無いですッ!」

 

 叱るような目でソラは咢斗を睨む。 

 

「カードに恨まれるだなんて、言わないでください……アギト」

 

 今まで見せた事の無い程声を張り上げる彼女に、咢斗は思わず目を見開いた。

 

「バカ言え、俺様はお前が思ってる程、人が良いわけじゃねェ。周りが思ってる程──良いプレイヤーだとも思わねェ」

「どうして? アギトはこんなに強くて、優しいじゃないですか。カード達も──」

「やめろよ」

 

 思わず、咢斗は零していた。 

 強くて優しい?

 ()()()そうだったなら──今頃、自分の周囲にはもっと人が居たかもしれない、と思い直す。

 

「もう良いンだ。懲り懲りなンだよ。カードに好かれたッて、仕方ねェだろ……オメーはカードの言葉が分かるかもしれねェ。でも、俺様には何も聞こえはしねェンだよ。俺様は……こいつらの期待に何時までも応え続けられねェ」

「……どうして。アギトはいつも、自分のカードを大事にしてるじゃないですか。カードの事が大好きなんじゃないんですか?」

「俺様は昔、一番に使ってたデッキを──カドショに売り払ったンだ」

 

 それは過去から解き放たれるためだった。

 決別する為だった。

 組織の長としての座も、立場も、象徴として、そして戦友としてのデッキも──捨て去った。

 

(そればかりか──)

 

 一番嫌な過去を思い出す。

 デッキばかりか、仲間に背を向けた裏切り行為だった。

 

「俺様はよりによって──自分の手で自分の一番のデッキを捨てた。そんな奴が……カードに好かれる資格なんてあるわけねェだろ」

 

 過去から逃れるため選んだ選択。それで、少しは楽になるかと思っていた。

 しかし、後から襲ってきたのは強烈な後悔と罪悪感だった。

 

「アギトが苦しいのは──自分のカードが誰よりも好きだったからじゃないですか?」

「……やめろよ。ガラじゃねンだ」

「カードには……1枚1枚に、その人の思いが込められるんです。ううん、それだけじゃない。その人が関わった人との思い出が込められてるんです。アギトが苦しんでるのは、自分のカードと自分のカードに込められている思いが好きだったから──」

「ッ……」

 

 脳裏に過るのは親友の影。  

 そして彼の言葉。

 

(咢斗なら、絶対にNEO東京で一番のプレイヤーになれるよ。きっと!)

 

(咢斗! 二人で作ったデッキなら、絶対に勝てるよ!)

 

(僕は絶対に信じている。咢斗なら、やり遂げるってね)

 

(何でッ! 何でなんだよ、咢斗ッ!! あのターン、《モルトNEXT》で攻撃していたら君は勝ってたッ! そのはずだろ!?)

 

(──僕は常々思ってたんだ。【ワイルドハート】を愛していたわけでも、ましてやデュエマを愛していたわけでもない。)

 

(君は自分が可愛かっただけだッ!! 君は──立派な背信者だッ! リーダーの立場でありながら、君は自分可愛さにあの試合にわざと負けたんだッ!!)

 

 

 

(君も、君の作った生温い組織(スート)も、このNEO東京には要らないッ!!)

 

 

 

「……わりーな。本当に、ガラじゃねンだ」

「アギト……」

 

 

 

 何処か、懐かしむような咢斗の瞳の裏には──哀愁が横たわっていた。

 

 

 

 ※※※

 

 

 

 ソラはタオルを自分の体に掛けると──疲れていたのか、そのまま寝てしまった。

 

(思い出……そンなモン、俺様には必要ねェンだよ)

 

 思い出が、もし尊いものならば、どうして自分はずっと苦しんでいる?

 カードが全て好きだったのならば、どうして自分は一番好きだったデッキを全て売り払った?

 矛盾した感情が咢斗の胸を締め付け続ける。

 ソラに悪気があったとは思えない。

 だがそれでも──土足で自分の中に踏み入られたような気がした。

 

 

 

「ピッピー……」

 

 

 

 そんな咢斗を──ルッピーは不安そうに見つめていた。

 

 

 

 

 ※※※

 

 

 

 アイドル──如月サクラはかく語りき。

 

 

 

「あたしはアイドル。だけど、自分に振られる仕事に妥協はしたくない。仕事ならカエルの卵で作ったタピオカを食えと言われても食うわ」

「腹壊すぞ」

 

 

 

 翌日。

 咢斗とソラはオフのサクラの護衛をすることになっていた。

 向かったのはNEO渋谷。オシャレと若者の街だ。

 最大クラスの商業テナントであるシブヤ901を中心として発展してきたこの街は、常にファッションとデュエマの環境の最先端を行く。

 荒くれ者も昼間ならば少なく、比較的治安は良いとされている。

 サクラが休日にこの街を訪れるのは、決して単に買い物がしたいからではない。

 街を巡るのは、流行の最先端をこの目で確かめる為。つまり、自分のファン、顧客のニーズを調べる為なのだ。

 

「だから、これも仕事の一環って訳。モデルの仕事も最近よく入るしね」

「す、すっごい……服が沢山あります……ッ!」

「こういう所にはあんまり来ないかンな……服を買うくらいならカード買うし」

「私も、ファッションの事は全く……」

「噂に聞く通りのデュエマバカね……女の子に服くらい買ってあげなさいよ」

「俺にそういうのをハナから期待すンじゃねェ」

「そんなんだからチームの女子が”カードのテキストは分かる癖に女心は分からない”とか言ってたのね」

「余計なお世話だッ!」

「あんたがそんなんだから、この子のセンスまであんたに寄ってるじゃない。折角こんなに良い逸材なのに、勿体ないわ」

 

 言った彼女は咢斗のお下がりのTシャツ姿のソラを指差す。

 

「見なさいよ、この銀髪! そして翠の目! こんなの芸能界探しても、なかなか見つかりっこないんだから!」

「ふぇっ!? あ、ありがとうございます……?」

「だから猶更気に食わないわ。あたしより可愛い子がそんなダサい服着てたら、宝玉の持ち腐れって奴! 例えるなら《ウマキン☆プロジェクト》を【赤白レッドゾーン】にぶち込むようなものよ!」

「テメェも大概にデュエマバカだろ……」

「よく分からないですけど……」

「如何に高額でつよつよなカードでも、合わねえデッキにぶち込んだら機能しねェってことだろ」

「その通りよ。センスがボーイッシュなのは否定しないけど、折角だしこのあたしがもっと良いのを見繕ってあげるわ!」

「わ、私の服はアギトがむぐっ」

「分かった、折角だし合わせてやってくれねェ? 俺様もあんまり服の事分かンねェし、餅は餅屋って言うだろ? な?」

 

 流石にお下がりのTシャツを着せていることがバレたら、軽蔑されかねない。

 自分が女物の服を持っていない事に加え、服屋へ行く暇も無かったので良い機会かもしれない。

 

「あ、お金はちゃんとあんたから出しなさいよ」

「……ッたく、趣旨変わってねェか?」

「文句ある? このあたしが代わりにこの輝ける原石の服を選んでやるッて言ってんのよ」

「うっへぇー……自信過剰な奴……」

「ハッ、アイドルなんてのは自信過剰じゃなきゃやってらんないっての」

 

 言った彼女は、すぐ近くにあったブティックにソラの手を掴んで入っていく。

 店内には、マネキン達が夏時に合わせた服を着ている。

 しかし、いずれも背の高いモデルが着るような大人っぽいものばかり。

 素人目に見ても、ソラに着せたらアンバランスではないか、と咢斗は感じていた。

 

(かと言って、子供っぽいデザインにすると怒るだろーしな……)

 

「これっ! 今の時期なら、こういうのとかどうかしらッ!」

「えっ、で、でも、ちょっと恥ずかしい、です……」

「何言ってんの! ちょっとくらい背伸びした方が大人っぽく見えるわ!」

 

 ……服を次から次へととっかえひっかえされているソラを眺めながら、改めて咢斗は彼女の頭抜けた容姿に感嘆した。

 並大抵のファッションでは、ソラのガラスの銀髪と宝石のような瞳に敗けてしまうのである。

 服と本人が馴染まないのだ。それをサクラも分かっているのか、眉間に皺を寄せて服を選んでいた。

 しばらくしただろうか。

 ガララッ、と試着室の幕が開き、ソラがパッと明るい顔で飛び出す。

 

「これよッ! これこれ! 海外に引っ越してしまった幼馴染と、夏休みに駅で久々の再会的なサムシングッ! まさに、ひと夏の恋ってやつ!? 久々に決まった気がしたわ!」

「おぉ……」

 

 現れたのは、涼し気な薄い水色のオフショルダーワンピースに身を包んだ彼女。

 頭には帽子が被せられている。 

 いかにも、異国からやってきたお嬢様という雰囲気を醸し出しており、彼女がリィンフォース姫の影武者であったことを咢斗は突きつけられる。

 

「アギト、アギトっ! サクラ、すごいですッ! 私もこのワンピースを見た時、ビビッて来ちゃいました!」

「おお……すげーな……」

「ボキャブラリー無さ過ぎでしょアンタ。可愛い従妹が大変身したんだから、もっと言う事あるんじゃないの?」

「う、うっせーな……俺様にそういうのを期待すンじゃねェ。そりゃあ綺麗なのは……綺麗だけど、俺様それ以上は言葉を捻りだせねえッていうか」

「綺麗? アギトっ、私綺麗ですか? 大人っぽく見えますかっ!?」

 

 はしゃぎながら聞いてくるソラ。

 その仕草が既に子供っぽく見えるのだが、微笑ましい。

 その隣で、一仕事終えたと言わんばかりにサクラはドヤ顔で腕を組んでいた。

 そんな彼女に、咢斗は心からの賛辞を惜しまなかった。

 

「悪ィな、如月サン。服選びなんかさせちまってよ。最高にキマってるぜ」

「いーのいーの、あたしの趣味もあるからね」

「趣味?」

「ええ、そうよ。服選びは自由、そして──その人の数だけ存在するもの。デッキの構築と同じだわ」

「……デッキ構築と同じ……か」

 

 そう考えると、似通ったものを咢斗は感じ取れた。

 思わぬ接点に咢斗はハッと気付かされた。

 一見、繋がりの見えないものにこそ繋がりはあるものだ、と。

 

「ま、デュエマバカのあんたには、そう言った方が伝わりやすいと思ってね」

「……うっせー、余計なお世話だッてンだよ」

 

 お値段も買えない程高くはない。

 その辺りも考慮して選んだのだとすれば、サクラはコーディネイトに関しての才能は一流だ、と咢斗は唸る。

 そして、ソラの服を選んでいる時の彼女の顔に──昨日のような憂いは無かった。

 

「アギトッ、アギトッ、買いに行きましょうっ! 私、これを着て歩いてみたいですっ!」

「おう、そんなに急かすンじゃねえよ──んッ……?」

 

 ソラに押された拍子に振り替える。

 売り場の衣服の合間に、凡そブティックには似つかわしくない黒服が見えた。

 頬に電気が走る。身構えようとしたが、周囲にはあまりに人が多すぎる。

 

(警備員か……? いや、しかし──)

 

「もうアギトッ、早く早くっ!」

「わ、分かったから押すんじゃねェッ!」

 

 もう一度振り返る。

 そこに、黒服の姿は無かった。

 

 

 

 ※※※

 

 

 

「如月サンって、何で()()()()を始めたンだ?」

「え?」

 

 

 

 昼時は一先ず喫茶店で休憩することになった。

 隣では、特大パフェを前にして目を輝かせているソラがアイスクリームをスプーンで掬って頬張っている。

 

「何? プライベートとか気になっちゃうカンジ?」

「……いや、ちょっと気になっただけだぜ」

 

 もっと言えば、サクラが【ワイルドハート】に所属していた理由も知りたかったが、それは敢えて聞きはしなかった。

 【ワイルドハート】は言ってしまえば、デュエマプレイヤーの超大型共同体。

 そこに所属する理由も目的も別々だったことは確かだ。

 自分が過去に深入りしないように、他者の過去にも深入りしない。それが咢斗のスタンスだった。

 

「……自由が欲しかったのかな」

「自由? あんたの仕事なんざ、自由とはかけ離れた職業だろ」

「ふふっ、傍から見れば……そう見えるかもね。でも、あたしの生まれた家は──とにかく、雁字搦めだったから。外に出たかった。自由になりたかった」

「……自由」

 

 ソラが何処か哀しそうにその二文字を呟く。

 出奔した姫様の事を思いだしたのだろうか。

 

「雁字搦め……厳しい家だったってことか?」

「そうだね……イヤになっちゃったのかな。お父さんも、お母さんもキライじゃなかったんだけど……とても厳しかった。家の決まりをあたしに守るようにずっと言ってた。ある日、些細な事でケンカしちゃって……それっきり。あたしの故郷はクソ田舎だったから閉鎖的で……東京にずっと憧れてた」

「それで此処まで来る行動力には感服するぜ」

「かと言ってお金も何も無くって……世間知らずで身を護る術も無いあたしは、あてもなく歩き回ってたところをゴロツキに絡まれて、そこを琥珀さんに助けられた」

「じゃあ、それがきっかけで【ワイルドハート】に?」

「うん。ずっと……自由って何なんだろう、って思ってた。だから、自由な組織(スート)の【ワイルドハート】に引き寄せられたのかもしれない。それに、琥珀さんには色々お世話になったから。家に泊まらせてくれたり、助けて貰ったり……ちょっとでも恩返ししたくって」

「あいつも()()()()()()()だからな……あんたに思う所があったンだろ」

「……でも、ずっと負い目があったんだ。両親に心配かけちゃったのは分かってるからさ。こんなに後ろめたい自由って何なんだろう、って」

 

 彼女はずっと、家出をしたことを心のどこかで後悔していた。

 ずっと心の底から自由を求めていたはずなのに、両親の影がちらついていた。

 

「【ワイルドハート】が無くなった後、自分が何をしたいのか真剣に考えるようになった。あたしはスカウトされたのがきっかけでアイドルをやるようになったけど、仕事は何でも受けた。妥協しなかった。あたしのやりたい事がその中にあるかもしれないから、我武者羅でやった」

「でも、それって両親の問題から逃げてただけなのかもしれないって思うようになって……その矢先だったんだ」

 

 

 

「──両親が、次のライブを見に行くってメールを送ってきたのは……」

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