東京ドラグナーズ   作:タク@DMP

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第19話:龍解/爆銀一閃(後編)

 ※※※

 

 

 

<ギャッハッハハハハハハ!! このまま押し潰してやるッスよォォォーッ!!>

 

 

 

 荒ぶる生命と欲望の遺跡と化した《ボアロパゴス》。

 それを前に咢斗達は言葉を失っていた。

 

「2D龍解……ッ!」

「《ボアロアックス》は余りにも強過ぎる龍の魂を一度遺跡に封じ込めてから龍の姿と成るカード……アルカナ王国の国宝級ドラグハートの1つですッ……! 危険すぎるので、ずっと保管されていたんです。恐らく姫様が……ッ!」

「成程な。そっちでもヤベーカードだったかッ……!」

 

 咢斗は歯噛みした。

 このままでは、圧倒的な数の暴力を前に轢殺されるしかない。

 しかし、一気に攻め入ろうとしても《自撮の超人》によって相手のクリーチャーは全てブロッカー化している。

 そして三段階目の龍解を許せば咢斗に勝利は無い。そうでなくとも、《ボアロパゴス》はクリーチャーを自分の手札から召喚した時にコスト5以下のクリーチャーを場に出す能力を持つ──

 

<ザマァ無いッスねェ!! 黒鉄咢斗ッ!! 惨めだとは思わないンスかァ!?>

「……」

<俺みたいな奴に生き恥晒されるくらいなら、あんたなんてあの時焼け死んどきゃよかったんッスよ!! ヒャッハハハハハハハッ!!>

 

 ソラが怯えた顔で咢斗の腕を掴む。

 燃え盛る炎が、彼女の中で半ばトラウマと化しているのだろう。

 そして、炎がサクラに選んでもらった服を焼き尽くした事も──しかし。

 

「……不思議なモンだな。如月サンみてーに、人の事を笑顔にするのに夢中な奴も居れば、テメーみてーな奴もいる」

<あ?>

「だけどテメェは知らねェンだ。如月サンみてーな人が誰かの背中を押す力の強さってのを……知らねェンだな」

「私達は……負けません。サクラに……元気を貰ったから。何度も立ち上がるサクラに、強さを貰ったから」

 

 咢斗は手札を見やる。

 正直、あまりよろしくはない。

 しかし──此処で攻め立てなければ、次のターンでお終いだ。

 だが、ソラが怯え混じりの目ではあったものの──咢斗の袖を掴み、訴えた。

 

「……アギト! カードを、信じてあげて……! 私達は負けない……怨みの力なんかに……ッ!」

 

 ソラが必死に堪えるように咢斗に訴えかける。

 

「……おうよ。俺様、少なくともアイツよりは自分のデッキを大事にしてる自信があるからなッ!!」

<何をごちゃごちゃと……見た所5Cジャクポみたいだが、お得意の《ジャックポット・エントリー》は使えねェっしょッ! あのデッキは多色が多すぎるッスからねェ!>

「……確かにな。だけどよ、()()()()()()()()()()()()()、誰が言った?」

<あァ!?>

「散々神様に見放された後だ。運試ししても問題ねェ、よなァッ!! 5マナをタップッ!!」

 

 直後、咢斗のマナが5枚タップされる。

 迸るのは炎と稲光。

 音速さえも超える爆発龍が誕生しようとしていた。

 

「俺様の場にクリーチャーは居ねェッ! だから3コスト軽減だッ! 《雷龍ヴァリヴァリウス》召喚ッ!!」

<ッ……《ヴァリヴァリ》だとォ!?>

 

 コストが一気に5軽減されていく。

 それは、天空の遥か彼方から戦場目掛けて飛んで来た。

 

「《ヴァリヴァリウス》はマジボンバー7を持つッ! こっから……連鎖させるッ!」

「お願いッ……!」

 

 突貫する《ヴァリヴァリウス》。

 その攻撃に連なり、爆発が次々に連鎖していく。

 その勢いで咢斗の山札の上が捲れた──

 

「ッ……来た!」

「アギトッ……このカードは──!」

「……ああ。逆転の切札だぜッ!!」

 

 ──マジボンバー。

 それは指定されたコスト以下のクリーチャーを攻撃時に手札、または山札の上から場に出せる能力。

 《ヴァリヴァリウス》の効果で現れたのは──

 

「《龍素記号Srスペルサイクリカ》ッ! その能力で墓地から《龍秘陣ジャックポット・エントリー》を使って手札に戻すッ!」

<な……!? 墓地から呪文を……ッ!?>

「序盤の駄メンデルだって、生きる時があるンだぜッ!! 行ッッッけェェェーッ!!」

 

 山札の上から5枚が捲られる。

 その中から咢斗が選ぶドラゴンは──絶対必殺の龍戦士。

 あらゆるドラグハートを従えるドラグナー。

 

 

 

「場に出すのはコスト8以下のドラゴン──黒鉄の剣が紅く煌く時、龍の咢がテメェをブチ砕くッ!!」

「我が契約に法り、星の剣を手に戦い抜きなさいッ!!」

「──《最終(ファイナル)龍覇グレンモルト》、此処に見参ッ!!」

 

 

 

 天空より降りそそぐ無数の剣。

 そのうちの一本を取り、龍戦士は今此処に立つ。

 咢斗の高揚と戦意に満ちた叫びと共に、手に握られるのは核熱を秘めた銀河の剣だった。

 

 

 

「装備するのは──《爆銀王剣バトガイ刃斗(ハート)》だッ!!」

 

 

 

 ※※※

 

 

 

 ──数日前。

 

 

「アギト、《ガイハート》は使わないのですか?」

「あ? あー……連ドラ系のデッキには、《ガイハート》は相性が悪い。出来れば、ドラゴンを一気に展開してしまいたいからな」

「そうなのですね。デュエマはやはり、難しいです……《ガイハート》はとても強力なカードと聞いたのですが、相性が悪ければ入らないことも……」

 

 サクラがライブを予定通り開催するという知らせを発した後の事。

 何とか立ち直れたソラは、咢斗と一緒にデッキの最終調整を行っていた。

 犯人の目星がついた咢斗が決着を付ける為、5Cジャクポに《グレンモルト》を搭載した構築を作っていたのである。

 

「で、このデッキに入れるドラグハートなんだけどな……コイツだ」

「……《ガイハート》に似てる……!? こんなドラグハートは知りませんでした」

「ああ。ドラゴンを呼び出す勝利の剣……《バトガイ刃斗(ハート)》。《ガイハート》の派生カードの一つだ」

「……派生カード、ですか」

「俺様は一度《ガイハート》を、モルネクを手放した。だからこそ……あのデッキたちの分まで、今使ってるデッキは極限まで強化してやりてェンだ」

 

 何処か遠い目で彼は《バトガイ刃斗(ハート)》を見つめていた。

 そんな彼の手に──ソラの手が重なる。

 翠の双眸が、咢戸の顔を覗き込んでいた。

 

「では、《バトガイ刃斗(ハート)》に私の思いも込めさせてください」

「……!」

「私も、サクラの笑顔を……守りたいから。いつまでも挫けているわけにはいかないんです。だから……私の思いも、《ガイハート》の思いも、この子に託したいんです」

「……お前……」

 

 辛いのはソラだって同じはずだ。

 しかし、それでも──彼女もまた、再起を誓う。

 その先にある勝利を掴み取る為に。

 

「ッたりめーだ。俺様だけで戦ってる訳じゃねーからな」

「……ありがとう、アギト」

 

 

 

 ※※※

 

 

 

「お願い《バトガイ刃斗(ハート)》ッ! 力を貸してくださいッ!」

 

 

 

 鎖が弾け飛び、剣の瞳が光り輝く。 

 爆ぜる銀河の魂を秘めたその剣は、装備者であるクリーチャーが攻撃する度にドラゴンを呼び出す王の剣だ。

 

「先ずは《ヴァリヴァリウス》でW・ブレイクだッ!」

<チッ……その攻撃は受けるッスよ!>

 

 砕け散る2枚のシールド。

 しかし、展開力とブロッカーによる防御を重視しているからか、S・トリガーが現れる気配はない。

 追撃と言わんばかりに《グレンモルト》が《バトガイ刃斗(ハート)》を振るう。

 

「装備したクリーチャーが攻撃する時、《バトガイ刃斗(ハート)》の効果発動! 山札の上を捲って、それがドラゴンなら場に出すッ!」

<んなッ……!?>

「場に出すのは《メヂカラ・コバルトカイザー》ッ! そして、場にドラゴンが出た時、それがこのターン初めて場に出たドラゴンではないので──龍解条件を達成するッ!」

 

 次の瞬間、咢斗の腕、そしてソラの腕にある紋章が浮かび上がる。

 爆裂の炎に包まれた剣が天高く投げ上げられた。

 そして、太陽の如くそれは燃え盛り──縛龍の封印が解かれる。

 

「──龍解承認。立ちなさい、燃え滾る星の子よッ!」

「怒りがハートをメラメラ燃やすッ!! 銀河が真っ赤に燃え盛るッ!!」

 

 龍剣から解き放たれる魂を前に、北村は言葉を失うしかなかった。

 限界まで溜め込まれた龍達の魂が、勝利の星龍を呼び起こす。

 咢斗の手に、ソラの掌が重ねられた。

 互いの鼓動が、脈動が、最高潮に達する──

 

 

 

 

「「龍・解ッ!!」」

 

 

 

 掛け声と共に、龍は咆哮をその場に轟かせる。

 咢斗。そしてソラ。 

 二人の呼吸が完全に重なった時、それは爆誕した。

 

 

 

「「爆ぜる銀河は勝利の証ッ!! 《爆熱王DX(デラックス) バトガイ銀河》ッ!!」」

 

 

 

 鎧装束に身を包んだ熱血龍の王。

 阿修羅の如き四本の腕には、剣が次々に宛がわれていく。

 そして、剣は次元を切り裂き、龍を呼び出す──

 

<クソッ、何が《グレンモルト》だッ! 何が《バトガイ銀河》だッ!! ヒーロー気取りのつもりッスか! 元【ワイルドハート】のリーダーが、いつまでも未練たらしくドラグハートに縋ってんじゃねーぞッ!>

「せェなコラッ!! ヒーローなんてガラじゃねーんだよッ! 先ずは《グレンモルト》でW・ブレイクだッ!」

<その攻撃も通すッ!! トリガーは……クソッ!! 役立たずッス……!!>

 

 残る北村のシールドは1枚。

 だが、手札もブロッカーも大量にある為、彼にはまだ余裕が十二分に残っていた。

 しかし──残っているクリーチャーが《バトガイ銀河》であることが良くなかった。

 

「──《バトガイ銀河》で《サソリス》に攻撃する時、効果発動だぜッ!」

<なッ、何故《サソリス》に──ッ!?>

「もうテメェの好きにはさせねェッてンだよ。カードを1枚引いて、手札から進化じゃねェドラゴンを呼び出す! 《リュウセイ・天下五剣・カイザー》召喚だぜッ!!」

<なッ!?>

 

 元より──咢戸はこのターンで勝つつもりは毛頭無かったのである。

 そして、これ以上北村の自由にさせるつもりも無かったのだ。

 

「《天下五剣・カイザー》はバトルに勝てば、次のターン……相手はゲームに勝つことも負ける事も出来ませんッ!」

<ま、まさか、最初っからコレを狙ってて──>

「《サソリス》をバトルで破壊ッ!! そして、マッハファイターの《天下五剣・カイザー》で《自撮の超人》を攻撃だッ!!」

<《ウマキン☆プロジェクト》でブロックッ! くっ、クソッ……!?>

「オイオイオイオイ、どうしたンだァ? ボアロ龍解させて、場のクリーチャーの数もまだ負けた訳じゃァねェ。なのに、何で焦ってンだァ? ええ?」

 

 無理も無かった。 

 実質的な1ターン休みの上、北村のマナは《ボアロアックス》の展開で4枚まで減っている。

 その癖、次ターンには再び《バトガイ銀河》がドラゴンを引き連れて殴りかかってくる──

 

<《自撮の超人》召喚ッス……! 《ボアロパゴス》の効果で、マナゾーンから《雪精ジャーベル》を場に出すッ……! 龍解、龍解さえ出来れば……ッ!>

「させると思ってンのか?」

 

 ターン開始時。

 咢斗の超次元ゾーンから更なるドラグハート・ウェポンが現れ、《グレンモルト》に装備される。

 燃え盛る炎の剣が、一体目の《自撮の超人》を切り裂き、破壊した──

 

「龍解すれば勝てるだァ……? ンな美味しい話があると思ってンのかよ。テメェみてーな外道に」

<ッ……き、貴様ァ……!>

「《グレンモルト》はターン開始時にもドラグハート・ウェポンを呼び出せる。《覇闘将龍剣ガイオウバーン》の効果で《自撮》とバトルさせて破壊した。()()()ッ!!」

 

 咢斗は6枚のマナをタップする。

 唱えるのは──《ジャックポット・エントリー》。先程、《サイクリカ》の効果で手札に戻ったカードだ。

 そして、マナのドラゴン5体分だけ咢斗の山札が捲られる──

 

「場に出すのは──《龍の極限 ドギラゴールデン》ッ!!」

「その効果で、相手のクリーチャー1体をマナに送りますッ!」

「当然消すのは《自撮の超人》。さあ、一方的に蹂躙される覚悟は出来たかよ?」

 

 高く聳え立っていた壁は、全て瓦解した。

 残ったのは、彼のちっぽけな虚栄心と──1枚のシールドだけだ。

 対して、咢の場には──大量のドラゴン達が臨戦態勢に入っている。

 

「さっきオメーは俺様の事をヒーローだの何だの言ってたが、ヒーローは──生憎ガラじゃなくてな。ヒーローはこういう時、私情では動かねェ。でも俺様は私情でテメェをボコす」

<ヒッ……!>

「俺様は暴君……テメェの全てをブチ砕く、紅蓮の暴君ッ!! だから、やられた分はキッチリ返すぜッ! 喧嘩を売る相手間違えた事、後悔しなァッ!!」

 

 ブロッカーの居なくなった北村目掛けて、《バトガイ銀河》が剣を振りかざす。

 共に現れるのは《悪魔龍ダークマスターズ》。

 その黒き炎が彼の手札も一緒に焼き尽くした──しかし。

 

<ト、トリガー……ッ!? 来たッ!! 《得波!!ウェイブMAX》でお前のマナゾーンの枚数よりもコストの大きいクリーチャーを全部バウンスするッ!!>

 

 砕け散った1枚がS・トリガーとなって反撃する。

 突如現れた大波が咢斗のクリーチャーを流し去ってしまった。

 咢斗のマナは6枚。

 場に居るクリーチャーはそれよりもコストが大きいものばかり。

 問答無用で呪文の効果で次々に手札へと送還されていく──

 

 

 

<何が暴君だッ!! 脅かせやがってッ!! 形成逆転──え?>

 

「紅蓮の暴君を──()()()()

 

 

 ──ただし。今にも北村に斬りかかっている《グレンモルト》以外、であるが。

 

<待てッ、何でッ、何でェェェェェーッ!?>

「ドラグハートを代わりに墓地に送る事で《グレンモルト》は場を離れる代わりに留まる」

「龍の意思は……不滅ですッ!!」

 

 大振りの斬撃が──北村を、真っ二つに断ち斬る。

 その憎悪も、憎しみも、怨みも、全て──真っ直ぐに。

 

 

 

「──《グレンモルト》で、トドメだぜッ!!」

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