東京ドラグナーズ   作:タク@DMP

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第3話:邂逅/ガールズハート

 ※※※

 

 

 

 朝陽に少女の銀髪が照らされる。

 仕方なく、ではあるが……咢斗はアパートに少女を連れ帰る事にした。

 先ず、見るからに日本人ではない。雪のように透き通った髪もカラーで染めた下品な色合いではなく、自然な色合いだ。その上服装は、汚れてこそいたもののNEO東京に似付かわしくないドレス。

 

(しっかし、他の住民に見られたら誘拐と思われてもしゃーねーなコレ……)

 

 もし見つかったら、どう言い訳すれば良いんだろうと咢斗は思案する。

 そもそも何処から来た? 何故空から降ってきた? あの火の球は?

 考えなければならない事は幾らでもあるが、すぐに思考を停止させた。全部この少女から聞き出せば良い事だ。

 幸い、知り合いには【SWORD】の職員がいる。あまり頼りたくないものの、彼女に任せれば後は万事解決だろう。

 

「……んー……?」

「よーう、起きたか?」

 

 呻くようなかわいらしい声が聞こえてきた。

 すっく、と起き上がる少女。

 翠の瞳が吸い込むようにこちらを見つめている。

 何処か不安、そして怯えが混じったような表情だ。

 

「……此処は……」

「あン?」

「此処は……独房ですか?

「違ェよ!?」

 

 工具や機材、書類で取っ散らかった部屋を指差し、少女は首を傾げている。

 確かに3畳間のこの部屋は狭いし汚いし古いしボロいし、一見牢屋か何かに見えても仕方ないが──

 

「俺様のアパートの部屋だッ! 悪かったな、散らかってて……」

「……アパート……一般庶民が住む集合住宅の総称……」

「庶民って……」

 

 少女は不思議そうに部屋を見回している。

 一人暮らしの男の部屋がそんなに珍しいのか、それなりに上流階層の出身なのか、慣れない空気に戸惑っているようだった。

 否、そもそも火球と共に現れ、火球が消えた場所に倒れていたのならば──少女は本当に空からやってきたことになる。

 

(ンな訳ねーか……流石に偶然と思いてェが……)

 

 しかし、日本語が通じるようで助かった、と咢斗は内心安堵する。

 これなら、万事上手く行きそうだ。

 

「とにかく嬢ちゃん、何であンな所に──」

「すっ、すごいっ、これって……カードですかッ!?」

「あ、こらっ──」

 

 言った先から、彼女は俺の布団の横に置いてあったデッキケースに目を輝かせていた。

 

「嬢ちゃん、デュエマやってんのか?」

「デュエマは……やってないです。家の決まりと言うか……厳しくって」

「……そうだったのか」

「でも、このデッキのカード達……嬉しそう。ケース越しにも伝わってきます」

「あン? 嬉しそう?」

「はいっ。皆、貴方の元で戦うのが大好きで……大切にしてもらってるって」

「ヒャハハハハハハ! 面白ェ事言うじゃねェか嬢ちゃん」

「むっ」

 

 デッキケースはずっと使い込んでいるものだ。

 それで年季を感じ取ったのだろうか。

 それにしても、まるでカードに心があるかのように彼女は言う。

 

「本当ですッ、本当に……カードは、喜ぶんですよ」

「ハイハイ、そういう事にしといてやるよ」

「信じてませんね? ……でも、許してあげます。貴方は、悪ぶってるけど決して悪い人じゃないって分かりますから」

「カードだけで判断してンじゃねェよ。この街は金と暴力、そしてデュエルで出来てんだ。俺様の事を信用し過ぎると、何時か痛い目に遭うぞ」

「カードはウソを吐きません」

 

 ホラや虚言ではない。彼女の声色はまるで、本当にカード相手に語り掛けているようだった。

 電波っ子ちゃんか? と首を傾げる。スピリチュアル系の新宗教か? とも疑った。

 しかし、それにしては──少女は余りにも純粋だ。あの手の組織にあるような濁り方をしていない。

 

(まあ感性は人それぞれだが……)

 

「それで、あんた──」

 

 ぐ~~~きゅるるるるる……。

 

 大きな音が少女のお腹から聞こえてくる。

 雪のように白かった頬が、急に熟れたリンゴのように赤くなった。

 

「やだ、私ったらはしたない……」

「カップ麺で良ければ食う?」

「コップメン……?」

「……カップ麺、知らねェの?」

「いっ、いえ! 存じてます! ジャパン特有の古き良き伝統の和食……でしたよね?」

「どっから仕入れたンだその知識……?」

 

 3分後。

 そこには、恐る恐るカップ麺をプラスチックのフォークで掬う少女の姿があった。

 「熱いから気を付けろよー」と注意を促しながらも、咢斗は自分も一緒にカップ麺を啜る。結局昨日はカジノに潜っていた所為で、何にも食べていなかったのだ。

 疲れにジャンキーな味が効く。

 

「ふー、ふー……」

「……口に合う?」

「はいっ、おいしぃです……!」

「火傷すんじゃねーぞォ」

 

 少女も、慣れない食べ物に息を吹きかけながらも、途中からは目を輝かせて食べていた。だが、その一挙一動からも何処か気品を感じる。

 ……その間、咢斗は何処から聞くべきかと考えていた。

 そして──

 

「嬢ちゃん」

「……何ですか?」

「これ、あんたのモンだろ?」

 

 テーブルに咢斗は《ガイハート》のカードを差し出した。

 少女は吃驚したように、そのカードをひったくる。

 そして、余程大事なモノだったのか祈るように胸に抱きしめていた。

 

「良かった……ガイハート……貴方は近くに居てくれたのですね……」

「カードは大事に持っとけよ。この街じゃあ、命より大事なモンだぜ」

「この街……あっ、そうだ! 他のカードはありませんでしたか!?」

「他のカード?」

「はいっ……《ガイハート》だけじゃなくて、他のドラグハートのカードは……!」

 

 急に慌てふためく少女。

 咢斗はふと思案した。

 

「待て待て。落ち着け。あんたの近くに落ちてたのは、《ガイハート》だけだ。それ以外は知らねェよ」

「っ……!」

 

 少女の顔が蒼褪めていく。

 デッキの超次元のカードを落としてしまったのだろうか。

 

「感じない……他の皆は居ない……」

「皆?」

「い、いえっ、何でも──私、失礼しますッ! 他の子達を探さないと、大変な事にッ……!」

「待てッ! カードが無くなって不安な気持ちは分かる、でも一人で出歩くんじゃねェ! あんた、此処が何処なのか知らねェのか!?」

「っ……此処は、何処なのでしょうッ!?」

「マジで知らなかったのかッ!?」

 

 首を傾げる少女に咢斗は頭を抱える。

 空からやってきたのかもしれない、という疑惑が益々膨れ上がる。

 昨日の火球だけでも十二分にファンタジー足り得るのに──

 

「とにかく、あのドラグハート達は……放っておいたらいけないのです……」

「まァ悪ィ事は言わねェ。落とし物なら警察に頼めば良い。NEO東京には【SWORD】って優秀な奴らが──」

「け、警察ッ!? 警察はッ……ダメですッ!」

「はァ!? だけど──」

「とにかく、ダメなものはダメなんです……」

「……もしかして、家出って事か? それで親が探してるとか?」

「……似たようなものです」

 

 今まで箱入りで育てられてきたお嬢様が、その境遇に耐えきれなくなって家出といったところか、と推測した。

 大方そんなところだろう。

 しかし、タダの家出にしては不可解な事が多い。

 先ず彼女が右も左も分かっていない事。この点から、彼女がNEO東京に来たのは全くの偶然、ただただ流れに任せてきた可能性が高い。

 次に、昨日のあの火球だ。本当に彼女はあの火の球と無関係とはどうにも思えない。

 そして何より、ドラグハートの件だ。デッキ丸々持ってるならまだしも、ドラグハートだけを持っているという点が少し気になる。

 

「はァーあ、仕方ねェーな。俺様も一緒に探してやるよ、テメーのドラグハートって奴」

「本当ですかッ!? でも、良いんですか……?」

「……カード無くした気持ちはよく分かるからな」

「……そ、そうですかぁ」

 

 その返答は「何か違うけどそういう事にしておいてあげよう」という少女なりの気遣いであったが、繊細さとは無縁な咢斗に伝わるはずも無く。

 

「じゃあ一緒に──」

「オイ待てやコラ」

「……?」

「流石にその恰好は目立つ。NEO東京で、そんな金を持ってそうな恰好してたら一発でひん剥かれるぞ」

「ひん剥かれる……?」

「誘拐されたり、危ねェ事されたり、とかな……何ならエッチなビデオの撮影に売り飛ばされたりなんてこともままある」

「ッ……!」

 

 ドレス姿の少女は身を強張らせた。

 

「言ったろーが、此処は金と暴力、デュエルが渦巻く街・NEO東京だぜ? もう一回言うが、例え相手が俺様でも信用し過ぎるなよ」

「じゃあ、どうすれば──」

「着替えンだよ、丁度俺が今使ってないコートと帽子がある。さっさとそのやたらと高そうなドレスを脱いで、それを羽織れ──」

「……い、今此処で、ですかッ!? で、では……」

「待て待て待て待てッ」

 

 ドレスに手を掛けようとした少女を全力で制止する。 

 やっぱりこの娘、何処かズレている。決して悪意があるとか、からかっているとかそういうのではなく、根本的に人を疑う心が欠けている。

 余程育ちが良いのだろう、と判断したがこれはこれで扱いに困る。

 結局、咢斗は部屋から一旦出て、少女が着替えるまで待っている事にした。

 

「えーと、お洋服を入れるクローゼットは……」

「そんな大層なモンはねェよ……」

「そうですよね……んっしょ……んぅ……」

 

 扉越しに聞こえてくる声。

 つい、彼女が着替えている姿を想像してしまう自分が居る事に咢斗は気付いた。

 何処の国の令嬢かは知らないが、そんな娘を自分のボロアパートの一室に仮にも連れ込んでしまっていることに背徳感を感じていた。

 興奮しつつある自分を諫めながら、瞼を閉じる。それでも浮かぶのは、少女の雪のような肌、宝石のような瞳、ガラスのような髪だった。

 

(なんなんだ、あの子は本当に……こんな街に居て良いような娘じゃねェぞッ……?)

 

 ……やっぱり、さっさと誰かに保護して貰った方が良いんじゃないだろうか。自分の傍に置いておくのは、色んな意味で危険だ。

 此処はNEO東京、金と暴力、SEX、そしてデュエル・マスターズが支配する街なのだから。

 少女には悪いが、早いうちに【SWORD】に連絡して琥珀辺りに対応してもらおうと考えていた所──

 

 

 

「やーあ、これからお出かけか、咢斗君ッ!」

 

 

 

 びくり、と今度は咢斗が肩を強張らせた。

 視線を上げると、そこには階段を登って来る黒髪の女性……他ならぬ剣 琥珀警部補が機嫌良さそうに手を振っている。

 見た所、オーバーコートの私服姿だ。昨日は遅くまでガサ入れだったのに朝から元気そうだ……と腕時計を見た所、もう昼の12時だった。道理で元気なはずである。

 しかし昨日の出来事を思い出し、思わず咢斗は身構える。また手錠でも掛けられたら堪ったモノではない。

 

「テンメェ……何しに来やがったッ……!」

「おいおい待て。昨晩は悪かった。久々に君に会えて興奮してしまってね。何せ私の守りを攻めだけで貫けるのは私が知る限り君だけだ、合法的に100先を挑むにはアレが手っ取り早かった」

「そうか今すぐにでも帰れ、そっから飛び降りろ」

「冷たいな」

「つか、非番か? よりによって何で俺の所に来たんだ」

「ああ……それについてなんだが……一応君にも関係する事があってね」

 

 言った琥珀は、ボストンバッグから大きなタブレットを取り出す。

 画面に映っていたのは【SWORD】の捜査調書だった。

 恐らく昨日の事件の捜査内容が書かれているのだろう。

 

「ッ……何か分かったのかッ!?」

「此処では何だ、中に入れて欲しい」

「あっ、中……?」

「そうだ。一応機密情報なのでな」

「……」

「どうした?」

 

 琥珀なら説明すれば分かってくれるだろうか、と思ったが……流石に女の子が生着替えしている現場に突入させるのはマズい、と本能が知らせていた。

 もしも見つかれば、誘拐の罪を吹っ掛けられて現行犯逮捕。そのまま留置所の中で合法的に彼女による100先が始まってしまう事は明白であった。

 そうなれば、どちらかが先に100回勝つまで帰ることは出来ない。それだけは絶対に避けたかった。

 

「すまん、今……散らかっててな」

「……何だ? 私と君の仲じゃないか」

「いや、実はその……だな、昨晩疲れからちょっと……昂っちまって……」

「ん?」

「ほ、ほら、男ってよ……溜まったら発散しねェといけねェだろ? だから、その、えーと……部屋ン中に山ほど()()()()()()……な」

 

 しどろもどろに説明してみせると、察したのか琥珀の目が年下の弟を見るそれに変化した。弱み握ったり、といった顔である。屈辱だった。

 だが一方で自分の尊厳と引き換えに、一人の少女は守られた。後悔は無かった。

 

「……破廉恥だな君も、ふっふっふ」

「やかましいッ! テメェにだきゃ言われたかねェッ! そもそも勝手にアポ無しで来る方が悪ィだろがよ」

「ハハハすまない、そういう事にしておいてやろう。やれやれ、デュエルにしか興味が無いと思っていたが、ちゃんと女にも興味があったんだな」

「で、さっさと本題に入れ。何なんだ? 変わった事でもあったのか?」

「この捜査調書を見て欲しい」

 

 彼女が見せたタブレットの画面には、昨日の違法カジノから押収した証拠品が陳列されていた。

 スロット、テーブル、メダル……そしてデュエル・マスターズのカードに、イカサマ用の手品用具まで。

 だが、問題はそんな玩具ではない。一番下までスクロールすると、書類の写真が目に留まった。

 

「何だこりゃ……?」

「【カジノ・ワイルドハート】の収入が何処へ献金されていたかが書かれている。送り先の口座の名義がそこに書かれているだろ?」

「……ッ!」

 

 咢斗は目を見開く。

 そこにあった名前は──【JOKER(ジョーカー)】。

 まさに自分が探し求めていた名前だった。

 

「琥珀、これって──」

「最近この街で起こっている金絡みの事件……詐欺、違法カジノ、強盗、これらは全て……この犯罪シンジケートが手引きしていると言われている」

「じゃあ噂の5つ目の組織(スート)ってのは──」

「都市伝説ではない。しかもただの犯罪組織なら私もそこまで警戒はしてないが……わざわざ彼らは【JOKER(ジョーカー)】と名乗っている。私達への()()()()()()()()

「ッ……マジかよ」

 

 咢斗は鳥肌が立つのを自分で感じ取っていた。

 全て繋がった。

 あの匿名のメッセージに書かれていたのは決して世迷い事やホラ話ではなかったのだ。

 そして、犯罪シンジケートと化した彼らは──NEO東京5つ目の組織(スート)として、空席に座ろうとしている。

 

「君もこの名前を追って此処に来たんだろ?」

「……ああ。俺様は新聞社のバイトをして、記者紛いの事をしてたんだがな……ある日俺様のパソコンに匿名のタレコミが送られてきたんだ」

 

 背筋が凍るようだった。

 まだ、過去は終わってはいない。

 【ワイルドハート】の頃の思い出は、最悪の形で再びNEO東京で惡の華を咲かせようとしている。

 

「君は恐れているんだな? 【JOKER(ジョーカー)】を作ったのが()()ではないか? と」

「ッ……!」

「だが、まだそうと決まったわけではない。そして、仮にあいつが一連の黒幕だったとしても……君の所為ではない」

「だとしても」

 

 咢斗は脱力したように扉にもたれかかった。

 

「組織の崩壊も、あいつも……俺様は止められなかった。その過去は変えようがねェ。【ワイルドハート】の空席が招いた事なんだ」

「……咢斗君」

「だから、せめてものケジメは付ける……ッ! 俺様が【JOKER(ジョーカー)】を潰す」

「君の力を借りねばならない時は──私の方から助けを求めるさ」

 

 琥珀の言葉は──「それは我々の役目だ。私に任せろ」と遠回しに言っているようだった。

 少しだけ寂しさを感じた。自分はもう組織の長ではないことを否応なしに突きつけられる。

 悔しかった。当時も今も、何も出来ないのか──と。

 

「それとだ咢斗君」

「ンだ……?」

「もう1つ、大事件だ。しかし、上からの指示でまだ大事にはなっていない」

「大事件?」

 

 彼女はタブレットのページを手繰る。

 そこに映されていたのは──ティアラを被った少女の写真。

 

「こっ、この子は……?」

「──日本に来日する予定だったアルカナ王国の第一皇女のリィンフォース・アルカナハートだ」

 

 咢斗はそれを聞いた時、体の震えが止まらなかった。

 第一皇女──正真正銘の王位継承者で、本物のお姫様だ。

 妖精のような顔立ち、翠の瞳。それら全てが誰もが一度見たら忘れられないだろう。咢斗を含めて。

 まるで、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()──

 

(何でっ、何であの子がッ……!? まさか、マジでお姫様だったのか……いや、いやいやいや──)

 

 咢斗は首を振るう。そんなはずはない。流石に偶然の一致だ。たまたま顔が似ているだけだ、と否定する。

 

「なあ、その姫様がどうしたんだよ?」

「ロイヤル投身自殺だ」

「……はぁ? 自殺? へーえ、お姫様でも思い悩む事でもあったのかね」

「上には上の苦悩があるものさ。君もそうだっただろう?」

「……」

 

 そうか、死んでるのか……と咢斗は安堵した。

 もう死んでいるなら、あの少女とお姫様はきっと無関係だ。そうに違いない、偶然だ、と自らに言い聞かせる。

 しかし──

 

 

 

「──で、その自殺というのが……昨夜、NEO東京上空で()()()()()()()()()()()()()。よりによって、国の宝を持ち出してな」

 

 

 

 ──そもそも偶然とは、そう何度も重ならないものである。往々にして。

 「衝撃的だろう」と琥珀は問うてくる。もう咢斗は頷く事すら出来なかった。

 確かに飛行船からパラシュートも無しに飛び降りたなら盛大なロイヤル投身自殺で済まされる。

 確かに流れ星が火の球に振ってきたなら愉快な面白天体ショーで済まされる。

 確かに女の子が落ちていて拾ったなら、それは只の迷子の保護か悪くて誘拐で済まされる。  

 しかし──咢斗は偶然を信じるのは2つまでと決めている。

 昨日たまたま火の球が廃港に落ちてきて? 火の球の近くにたまたま少女が落ちていて? 丁度同日、お姫様が飛行船から飛び降りた……。

 それら全てがよりによって、同日に起こった。おまけに拾った少女の顔は、お姫様と同じ──

 

「上からの依頼は、彼女が持っていた国宝と彼女の身柄の確保だ。生死は問わないと言っていたが、あの高さから飛び降りれば命は無いだろう」

「ハ、ハハ、そうだな……なあ、国宝とやらってどんなものなのか分かるか?」

「さあ。それは教えて貰っていないな。だが、不審なアタッシュケースがあったら報告してくれ。モノはどうやらその中に入っているようだからな」

「そ、そっかぁ……」

「何だ咢斗君? 大丈夫か? 顔全部から汗が噴き出しているぞ」

「い、いやいやいやいや! 俺様、ちょっと話のスケールがデカすぎてよ、頭がパンクしそうで──」

 

 黒鉄咢斗、19歳。

 彼は今、自らがとんでもない拾い物をしてしまったことを痛い程に自覚していた──

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