東京ドラグナーズ   作:タク@DMP

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第7話:龍解/斬鉄龍

 ※※※

 

 

 

 光、水、闇、火、自然……これら5つの文明のカードを操り、敵のシールドを全て破壊してトドメを刺すカードゲーム。

 それが、デュエル・マスターズ──

 

 

「──我が国では古くから魔力と魔法の札を用いて超獣を使役し、ぶつけ合う……それが決闘(デュエル)であるとされてきました」

 

 

 

 目の前に浮かぶ5枚のシールドがガラス状の結晶と化す。

 魔方陣の上に乗せられた残る35枚の山札。

 そこから5枚のカードが咢斗の手に渡る。

 力と力の殴り合いではない。知力と知力による殴り合い。

 デュエル・マスターズで決着を付けろと言わんばかりに──ッ!

 

「こりゃあ、マジでデュエルでケリ付けろってンのか!?」

「荒ぶる龍の心を沈めるのは、真の決闘(デュエル)……です。闘いを以て、荒ぶる心を浄化するのですッ!」

「──何だか分かンねェけどよ……要するに、デュエルで勝てば良いんだろッ!! 上等だぜ、此処はNEO東京……荒事は全てデュエルで解決する街だッ!!」

 

<貴様等ァ……ッ!! 厄介な事をしてくれたわねッ……!! さっさと終わらせて、クロニクルデッキを売りさばいてカジノ再建してやるわッ!!>

 

 唸るザンテツ・ビッグホーン。

 その身体から、取り込まれていたレッドクイーンが薄っすらと現れる。

 散々咢斗に邪魔されたからか、憎悪に満ち満ちた表情を浮かべていた。

 しかし、一方の彼も同じである。ケッ、と吐き捨てると咢斗は早速カードをマナゾーンに置いて、突きつけるように指差した。

 

「そいつはこっちのセリフだぜッ! テメェの所為で俺様はクロニクルデッキが買えなかったンだッ! テメェをぶちのめす理由はそれだけで十二分だぜッ! 《リュウセイ・天下五剣カイザー》をマナに置いてターンエンドだッ!」

「っ……私、デュエマのルールは分かりませんが……《リュウセイ・天下五剣カイザー》……早速凄そうなカードですね!」

「いやいや、嬢ちゃん。マナに置いたカードってのは、エネルギーみてーなモンなんだよ」

「あ、あれっ、そうなんですか!?」

 

 確かに《リュウセイ》自体は強いンだけどよ、と咢斗は付け加える。

 デュエマに於いては、カードを使う為のエネルギーがマナである。それは、1ターンに1回のみ行うマナチャージは、手札から1枚カードを逆さまにして置くことでマナの補給が出来るのである。

 

「カードの左上にあるのがコストなんだけどよ、この数だけマナをタップしてカードが使える。《リュウセイ》のコストは8。確かにコイツは強ェカードだが、序盤に手札に抱えるには重すぎる」

「出せるのは7ターン後、ですかッ!?」

「だからマナに置いたンだよ。デュエマってのは、コストが大きければカードも強くなる。でも、コストの大きいカードは序盤に使えねェ。温存し過ぎると、逆に動けなくなンだ。それなら、いっそマナに置いちまった方が良いってわけだ」

「な、成程……既に奥深いです……!」

 

<ええい、二人でぺちゃくちゃとやかましいわねッ! こっちは呪文、《ロジック・サークル》で山札の上に《ヘブンズ・フォース》をセットするわッ!>

 

 早速レッドクイーンは光のカードをチャージし、1コストの呪文の《ロジック・サークル》を詠唱した。

 その能力によって、彼女は次のターンに確実に2コストの《ヘブンズ・フォース》を唱えることが出来る。

 

「あ、あわわ、どうしましょうッ!?」

「落ち着け、まだ何にもされてねンだろーがよ。俺様は2マナで《メンデルスゾーン》を唱えるぜッ! こいつでマナを速攻で増やすッ!」

 

 火と自然のマナの紋章が現れ、それを龍のエネルギーオーラが噛み砕く。

 咢斗の山札の上から2枚がマナゾーンに置かれた。

 これにより、彼のマナのカードは一気に4枚まで膨れ上がる。

 それを見て少女は目を丸くした。

 

「マナチャージは1ターンに1回しか出来ないのでは!?」

「カードの効果でマナを増やすなら関係ねェ! 《メンデルスゾーン》は山札の上から2枚を見て、それがドラゴンならマナに置く!」

「っ……成程! それでコストが重いドラゴンを先んじて出すのですねッ!」

「そういう事だぜ! ガンガンマナを増やして、コストの重いドラゴンを出すッ! それがドラゴンデッキの戦い方だぜッ!」

 

 しかし内心、咢斗は焦っていた。確かに此処までの動きは最短最速の理想ムーブではあるが、相手の動きはそれ以上に速いと予測していたからである。

 《ヘブンズ・フォース》は手札からコストが4以下になるようにクリーチャーを出せる呪文だ。

 先んじてクリーチャーを出して畳みかける戦法、既に咢斗は相手のデッキが何なのか見当が付きつつあった。

 

<おほほほほほッ!! 遅い、遅すぎるわよッ!! 《ヘブンズ・フォース》で《爆龍覇 ヒビキ》を召喚だわよッ!>

 

 次の瞬間、天から光が降り落ちる。

 そこから現れたのは、右手に篭手を身に着けた龍戦士の少女だった。

 更に巨大な刀が稲光と共に現れ、華奢な左手に握られていく。

 ホログラム装置も無いのに目の前にクリーチャーが実体化したのに驚く咢斗。

 

(今更突っ込む方がヤボか……!?)

「コスト4ッ!? インチキです! しかもドラグナーのカード!?」

(オメーは驚くのそっちみてーだし……そういうモン、だと思って良いみてーだな)

 

 気を取り直して、咢斗は状況を整理する。

 手札を大量消費する代わりに現れたのは《ヒビキ》。

 クロニクルデッキに収録されていたドラグナーだ。本来は4コストだが、《ヘブンズ・フォース》の効果で先んじて場に現れたのである。

 

「インチキじゃねェよ……あれはそういう呪文なンだ。コストを無視して場にクリーチャーを出す、コスト踏み倒しって戦術だぜ」

「そうなんですか!? で、でも、インチキ臭いですッ!?」

<オホホホホ!! 《ヒビキ》に装備するのは、《斬鉄剣ガイアール・ホーン》! 装備したクリーチャーに「ガイアール・()()()()・ドラゴン」を付与して、パワーを+2000するのだわよッ!>

 

 ドラグハート・ウェポン。

 それは、デッキの外に用意された超次元ゾーンから呼び出される装備品のカードだ。

 その能力は、装備したクリーチャーに様々な効果を付与する。

 その中では、種族を追加してパワーを増やすだけという《ガイアール・ホーン》の効果は地味だ。

 地味だが──それならば、何故相手がそのドラグハートをチョイスしたのかを考えなければならない。

 

(デュエマに於いて、種族が増える事で意味を持つ効果……そう来たかッ!!)

 

「おいッ、ちょっとヤベェかもだぞッ……!」

「な、何かマズいんですかッ!? 種族が変わるのが……!?」

「見てりゃ分かるッ!」

 

 《ガイアール・ホーン》を装備した《ヒビキ》の頬に龍の鱗が浮かび上がった。

 斬鉄剣は龍の心を宿した妖刀。手にしたものも龍の心に蝕まれていく。

 それもタダの龍ではない。龍を統べる龍である指揮者(コマンド)……「コマンド・ドラゴン」と化すのだ。

 

<《ヒビキ》で攻撃するとき、()()()()()()が攻撃したので侵略発動だわよッ!>

「侵略!?」

 

 少女が素っ頓狂な声を上げる間もなく、《ヒビキ》の身体に鷹の紋様が浮かび上がった。

 速度は限界を超え、限界突破領域(レッドゾーン)へ突入。

 その全身に侵略ウイルスが侵食していく。

 華奢な身体は機械に覆われていき──轟速の侵略者と化した。

 

 

 

<侵略進化ッ!! 《熱き侵略 レッドゾーンZ》ッ!!>

 

 

 

 侵略──それは、攻撃した自分のクリーチャーを侵食して進化する能力。

 進化クリーチャーは、場に出るのに進化元となるクリーチャーを必要とする分、強力な効果と力を持つ。

 しかし、それには当然進化元を出してから進化するというプロセスを踏まなければならない。

 だが、侵略はそのラグを解決する──!

 

「いきなり大きなクリーチャーがッ……!?」

<《レッドゾーンZ》で相手のシールドを1枚墓地に送るわッ!>

「っ……クソッ!」

<そして、そのままW・ブレイクよッ!>

 

 地面を蹴った《レッドゾーンZ》は、そのまま手に掲げた《ガイアール・ホーン》で咢斗のシールドを両断した。

 水晶のシールドは一瞬で砕け散り──それが破片となって咢斗と少女に襲い掛かる。

 

「ッ……だぁッ!?」

 

 ガラスの破片が肉をすうっと静かに裂いた。

 そして程なくして痛覚に加えて生温さが肌を伝う。

 

「これって……ッ!!」

「真のデュエルは……攻撃を受ければ、デュエリストも肉体にダメージを受けるんです……ッ! 勿論、デュエリストに立ち会う、星の巫女たるこの私も……!」

「ンだそれ、ンじゃあ負けたらどうなるンだ……ッ!?」

「最悪……命を落とす事も考えられます」

 

 思わず額に伝う血を拭った。

 心臓がバクバクと鳴っている。

 

「こうなることが、分かってたのか……ッ?」

「ッ……は、はい」

「だから、戸惑ってたのかよ。俺様との契約を──」

 

 少女は怯えた様子で頷く。

 何だ、そんな事か、と咢斗は吐き捨てた。

 

「カッハハハハハハハハ!! 上等だぜッ!! 男同士のケンカで血が流れないなんて有り得ねェーんだからよッ!!」

「ッ……怒って、ないんですか? 怖くないんですか?」

「何? 俺様がビビってるってンのか? 言っただろ。荒事は慣れてンだ。流血デュエマくらい、今更何だってンだよッ!」

「ッ……!」

「テメェ、気合入れろよ。猶更負けられなくなっちまったからなッ!!」

 

 咢斗は再び状況を整理した。

 シールドを3枚葬り去った《レッドゾーンZ》には、進化元が装備していたドラグハートが引き継がれている。

 加えて、《レッドゾーンZ》はパワー11000(+2000)の大型クリーチャー。序盤に対処できるサイズのクリーチャーではない。だが、かと言って放置する事も出来ない。

 更に──

 

<さあ、ターンの終わりに、《ガイアール・ホーン》は龍解するわッ!>

 

 《レッドゾーンZ》の掲げた刀が牙を剥き、炎に包まれる。

 ドラグハート・ウェポンは条件を達成する事で、ドラゴンの姿へと目覚める。

 《ガイアール・ホーン》の龍解条件は、ターンの終わりに装備したクリーチャーがタップされている事だ。

 

<苦節20年、若造に見せてやるわオカマ道ッ!! 蝶になれなくとも蛾にはなれるッ!! 蛾も怒れば龍と成るッ!!>

「なって堪るかッ!!」

<燃えるわ、私の魂とケツアゴッ! パカッとひっくり返したるわッ!! アゴアゴアゴアゴアゴアゴアゴアゴアゴアゴアゴアゴアゴ、ケェェェツアゴォォォーッッッ!!

 

 レッドクイーンの瞳に尋常ではない気合、執念が灯る。

 龍の妖刀の咢が開き、爪が、牙が、剥き出しになっていく。

 《レッドゾーンZ》が空高く、刀を投げ飛ばした──

 

 

 

<──私のケツアゴ、龍・解ッ!! 《熱血龍 ザンテツ・ビッグホーン》ッッッ!!>

 

 

 ──妖刀が地面に突き刺さると共に炎に包まれる。

 鎧に身を包み、刀を咥えた巨大な龍がそこに立っていた。

 

「ハハハッ、コイツぁヤベェかもしれねェな!」

「やべぇッて……笑ってる場合ですかッ!?」

「あァ、俺様のシールドは今2枚。だけど、《レッドゾーンZ》も《ザンテツ・ビッグホーン》もシールドを2枚壊せるW・ブレイカーだ」

「あっ……!」

「バイクの侵略に合わせて、最速ムーブをキメながら場数まで増やせる……ドラグナーバイク、侮ってたぜッ……!」

 

 相手の構築に思わず咢斗は感嘆した。盗んだクロニクルデッキのカードでさえなければ、手放しでほめていただろう。

 赤白バイクは、2ターン目に侵略の最速ムーブを行った場合、場に残るのは1体の侵略クリーチャーのみだ。

 《ヘブンズ・フォース》と侵略は強力だが手札消費が大きく息切れしやすい。そして、手札が枯渇している中、1体だけのクリーチャーが立ちっぱなしであるのは非常に心許ない。

 除去されてしまえば、大きな隙が出来る上に後続が続かなくなってしまうのだ。

 しかし、レッドクイーンの構築はその弱点を埋め合わせるものだった。《レッドゾーンZ》のついでで、W・ブレイカーのコマンドである《ザンテツ・ビッグホーン》が付いてくるのである。

 大型クリーチャーの横に中型クリーチャーがもう1体付いてくるのだ。全て退かすのは当然、至難の業となる。

 

「あんなに自信満々だったじゃないですかッ!?」

「ジャンケンみてーに、俺様のデッキとバイクじゃあ相性が悪ィんだよ。バイクは速攻で打点を作るデッキだ。ドラゴンは間に合わねェ事の方が多い」

「ええッ……!?」

「デュエマってゲームは、シールドを全部割られた上でトドメを刺されたらお終いだ。あいつ、次のターンにはもうリーサル出来るって言ってるぜ」

「そ、そんなッ……! 諦めちゃうんですかッ!?」

「バカ言え、()()()()()()()()()()()()ッて言っただろーが。俺様は違う」

 

 根拠のない自信だった。

 【ワイルドハート】の長だったから? 違う。

 日本でもトップクラスのプレイヤーだったから? 違う。

 立場ではない。肩書ではない。

 

「俺様はな、あらゆるものを諦めてきた。だけどよ……自分のデュエルだけは諦めた事は一回も無ェッ!! 俺様が俺様である限り、そこに敗北は有り得ねェッ!!」

「っ……!」

<往生際が悪いわねッ! 次のターンで消し炭にしてやるわッ!! せいぜいカジノのように運頼みする事ねッ!!>

「ほざいてろよレッドクイーン。運頼みってのは最終手段だぜッ!!」

 

 咢斗は手早く4枚のマナをタップする。

 今この場で勝負を決めることは出来ない。しかし、時間稼ぎならば出来る。

 浮かび上がるのは光と水の紋章。

 群青の龍の視線が、刺し貫く──

 

「呪文、《アイド・ワイズ・シャッター》! 龍の視線で《レッドゾーンZ》と《ザンテツ・ビッグホーン》の動きを止めるぜッ!!」

<んまッ!?>

 

 2体のクリーチャーは一瞬にして凍り付いた。

 《アイド・ワイズ・シャッター》の能力は、相手のクリーチャー2体をタップし、次のターンにアンタップさせなくするというものだ。

 手札を消耗しているレッドクイーンは、次のターンは何もすることが出来ない。

 

「暴走はお終いだッ!! 一旦停止だぜェェェーッ!!」

<お、おのれェェェーッ! 私は2マナで《スニーク戦車オーリー》を召喚よッ!>

「ハハハハッ! じゃあ今度は俺様から仕掛けるぜッ!」

「あの猛攻を、完全に封じ込めたッ……!?」

「見てな、お嬢ちゃんッ!! さあ行くぜ、6枚のマナをタップ!!」

 

 マナゾーンに溜まりに溜まったドラゴン達が咆哮する。

 このデッキに入っているドラゴン達の殆どは7コストか8コスト。

 まだ手札の切札を出すには速い。

 だが、それならば──レッドクイーンのようにコストを踏み倒せば良いのだ。それも手札からではない。山札から。

 

「──教えてやるよ、真のギャンブルって奴をよッ!! 呪文、《龍秘陣ジャックポット・エントリー》ッ!!」

<んまっ!? 《ジャクポ》ですってェ!?>

「《ジャクポ》の効果で、マナのドラゴン6枚の数だけ山札の上から捲る! その中からコスト8以下のドラゴンを場に出すンだよッ! 効果で《龍素記号Srスペルサイクリカ》を場に出すぜッ!」

<んぎぎぎ……! そのクリーチャーは、墓地から呪文を唱えるドラゴン……!>

「そうだぜェ!! もう1回《ジャクポ》を使わせて貰おうかァ!!」

 

 水晶の龍、《スペルサイクリカ》は墓地からコスト7以下の呪文を唱えて手札に加える能力を持つ。

 それにより、咢斗は再びドラゴンの抽選を行う事が出来る──

 

「今度は《龍装の調べ 初不(ういず)》だッ! テメェのクリーチャーは次のターンも起き上がらねェぜッ!!」

<そ、そんなッ、この、この私が……!!>

 

 聖なる閃光を放つ《初不》によって、再び《レッドゾーンZ》と《ザンテツ・ビッグホーン》は機能停止してしまう。

 《初不》が場に出た時、相手のクリーチャーは次のターンもアンタップできない。

 そして今度は足止めだけではない。咢斗が2体のW・ブレイカードラゴンを並べる形になったのである。

 加えて、手札にはまだ《ジャックポット・エントリー》が残っているので、次のターンに後続を呼べるのだ。

 

「こ、これで二回休み……ッ! あれだけ厳しい猛攻を二度と封じ込めるなんて……ッ! 何ていやらしい戦法……ッ!」

「嬢ちゃんそれ褒めてねーな?」

<ぐ、ぐぬぬっ、この私がァ、追い詰められてるですってッ!? 追い詰めていたつもりが追い詰められていた……ッ!?>

 

 ギランッ、とレッドクイーンの瞳が輝く。

 相手は若造。

 例えかつての組織(スート)のリーダーだったとしても、負ける訳にはいかない。 

 負けられない理由が、レッドクイーンにはあった。

 

<おのれ……私はまだ負けてなんかいないッ!! この世は所詮弱肉強食ッ!! 弱い奴は踏み潰されるのよッ!!>

 

 尋常ではない様子で叫び散らす。

 その瞳に宿るのは憎悪、後悔、そして──執念。

 その気迫に咢斗も気圧されていた。

 しかし、少女は──思いつめた様子で零す。

 

「何故そこまで……弱肉強食に拘るのですか?」

「嬢ちゃんッ……!」

「独り占めにするのではなく、誰かと分け合う道は無いのですか……? 手を取り合う事は出来ないのですかッ!? 他の誰かを傷つける生き方は……悲しすぎますッ!!」

<黙れ小娘ッ!! 貴様に何が分かるッ!!>

 

 龍の悲しい咆哮が戦場に轟く。

 

<私がかつて経営していたオカマバーは……信じていた友達に騙されて、ぶっ潰れたわッ!!>

「騙された……!?」

<借金の連帯保証人にされたのよッ! 私のバーを担保にねッ! 私は搾るだけ絞られ、何も残らなかったッ……! だからその時から決めたッ! もう強さと金以外は信じないとッ!>

「それで金の亡者になったのかよ、レッドクイーンッ!!」

<あの頃は楽しかった……みんなで夜までドンチャン騒いで、ママと慕われていたあの日々……でも、それはもうお終い。終わった事なのよッ!! 私が、NEO東京の夜の王になるッ!!>

 

 咆哮を上げる《ザンテツ・ビッグホーン》。縛られても尚、熱血龍の加護は彼女の場の全てのクリーチャーに影響していた。

 裏切りの過去に縛られるレッドクイーンにより、再び略奪の号令が上がる。

 

<知っているかしら? 《ザンテツ・ビッグホーン》が居る限り、私のクリーチャーは全て「ガイアール・コマンド・ドラゴン」になるのよッ……!!>

「……ッ!?」

「も、もしかしてッ……!!」

 

 《スニーク戦車オーリー》に龍の鱗が浮かび上がる。

 そして手札に引いたカードを戦場に彼女は投げ入れた──

 

<《オーリー》が攻撃するとき、火のコマンドが攻撃したので──革命チェンジ発動よッ!!>

「革命チェンジ……だとォ!?」

「革命チェンジって──」

<特定のクリーチャーが攻撃した時、手札のクリーチャーと入れ替えるオカマの必殺技ッ!!>

「別にオカマ限定ではねーよッ!!」

<お黙りッ!! このケツアゴにかけて……負ける訳にはいかないのよッ!!>

 

 戦場を疾走する《オーリー》。 

 そして、そこに覆いかぶさる影。

 二つのクリーチャーが完全にバトンタッチし、入れ替わる──

 

 

 

<今こそ、私のケツアゴに革命を起こす時ッ!! ケツアゴチェェェェェェェンジッ!! 《轟く革命レッドギラゾーン》ッッッ!!>

 

 

 

 現れたのは、機械の羽根を生やした音速龍。

 その拳が突き上げられた瞬間、レッドクイーンの場のクリーチャーが全て起き上がる。

 まるで、全てを打ち壊す革命を鼓舞するかのように。

 

「クリーチャーが全て、起き上がるなんて……ッ!?」

「《レッドギラゾーン》のファイナル革命だッ!」

「ファイナル革命!?」

「革命チェンジで場に出た時、1ターンに1回使える必殺技だッ! あいつのクリーチャーは全てアンタップする!」

「どういうことですかッ!? 次のターンも一回休みのはずなのに!」

「《初不》の効果はターン始めのアンタップしか止められねェ!! まさかこんな力業で強行突破してくるなんてよ……」

 

 バトルゾーンには、攻撃中の《レッドギラゾーン》に加え──《レッドゾーンZ》、そして《ザンテツ・ビッグホーン》が残っている。

 対して、咢斗のシールドは残り2枚──しかも、《レッドギラゾーン》の能力でブロッカーは通用しない。

 だからだろうか。

 

 

 

「……俺様久々に、ゾクゾクしてきやがったぜッ……!!」

 

 

 

 咢斗は、久々に──燃えていた。

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