銀髪の少女の荷物を持って、一緒に歩いていた時だった。
「やめろよ!」
見知った声が聞こえてくる。
下を見ると、案の定そこにはチルノたちがいた。
放っておく理由もなく俺は土手を降りて行った。
「おいおいお前ら、また鬼に絡まれてんのか?」
「おっ、蓮!いいところに!」
チルノがトテトテと寄ってくる。
見渡すと、チルノの友達の・・大妖精だったか、
あと寺子屋の子供たちに小鬼が二人・・
「あれ、お前らは・・」
「あ、お兄さん。あの時はごめんなさい。」
どうやら以前チルノたちともめていた鬼たちのようだ。
(まさか本当に仲良くやっているとはな・・)
「ああ、こちらこそごめんな。ケガ、大丈夫だったか?」
「はい。俺たちも鬼なので。」
それを聞いて安心した。
(随分丸くなったな・・)
俺はふとチルノを見た。やはりこの子の影響がでかいのだろう。
種族間の隔たりなく仲良くなれるそんな力。
ある種のカリスマ性とでもいうべきか・・
「・・チルノ。お前はやっぱり最強だ。」
「?アタイは最強だぞ?」
(ああ、本心からそう思うよ。)
俺は心の中で敬意を示した。
さて、まずは状況確認だ。
「大妖精、何があったんだ?」
四人の中で一番しっかりしていそうな大妖精に聞いてみる。
「あの!私たちここで鬼ごっこをしていたんですけど、そしたらあの子たちが鬼にぶつかっちゃったみたいで、私たちも謝ったんですけど許してもらえなくて・・」
「なるほどな。」
ここは勇儀さんの管轄だったか・・
もしかするとだが、
「おい、あんたら。」
「んだてめえ。俺たちはそこのガキンチョに用があるんだすっこんでろ。」
「ここは勇儀さんの管轄してるところだろ?暴れてていいのか?」
「ッ!」
やはり・・か。
勇儀さんは人とも友好的な関係を望んでいる。それが鬼たちからしたら気に入らないのだろう。
自分たちの方が強いのにどうして仲良くする必要がある?
プライドを傷つけるには十分だ。
要するに、
「八つ当たりか・・」
鬼たちの顔がさらに赤くなる。
「もうやめとこうぜ?こんな子供たちを傷つけることには、あんたらにもメリットがないだろ?」
だが感情が高ぶっている鬼たちにはその発言は悪手であった。
「うるせえ!人間ごときが威張ってんじゃねえ!」
大声を上げ突進してくる。
(平和的に解決は無理か・・)
つくづくチルノがうらやましい。
彼らの眼を見る。そしていつもの構えをとる。
「死ねや!」
強烈な右ストレートだ。目では追えない。
もっとも、追う必要はない。
「なっ!!」
いつも道理、いつもどうり体が動く。
避ける。避ける。避ける。
「くそがッ!」「ちょこまかと!」
左アッパーに右ストレート、二人が同時に仕掛ける。
その速さはおそらく音速も超えていて・・
スカッ
けど当たらない。
「なん・・で??」
鬼たちは絶望する。無理もない。鬼である自分たちがただの雑魚のように扱われるから。
そんな彼らに俺は煽るように言う。
「言っておくが、俺は強くない。ならなんで当たらないかわかるか?」
鬼たちは俺の発言をこう思うだろう。
自分たちが弱いから当たらないんだと。
「何が、言いたい!!」
当然殴りかけられる。
俺はそこで初めて木刀をふるう。
「グッ・・」「ガハッ・・」
二人の倒れる音が聞こえた。
振り返り彼らに諭すように言う。
「アンタらが弱いわけじゃあない。事実アンタらは俺よりかは強いだろう。」
「だけど、アンタらは鬼にこだわりすぎた。だから負けた。・・勇儀さんに聞いてみろあの人なら教えてくれる。」
俺にはチルノのように平和的に問題を解決できる力はない。
だけど今の戦いで彼らが何かを感じてくれることを切に願った。
二人が気絶するのを確認し、俺はチルノたちのところまで戻った。
~~~~
「綺麗だ・・」
妖夢は土手上からその戦いを見下ろしていた。
師匠を除けば初めてだった。
自分と同じか、それ以上の剣術を見たのは。
剣術を極めようとしている自分にとって、それは妬ましいものであった。
だがそれ以上に妖夢はあの剣術を近くで見ていたかった。
ふと幽々子の言葉がよみがえる。
「一番のお気に入りならいいわよ。」
・・・
そして彼女は決心した。
「彼は絶対私のものにする」
子どもたちとはしゃいでいる男を見ながら、彼女はさらっと宣言した。
~~~~
チルノたちと簡単な挨拶を済ませ、土手上で待っている少女のところまで戻る
「ごめん。待たしちゃったな。」
「ううん、大丈夫だよ。」
怒っているかもと思っていたが、大丈夫そうだった。
心なしかうれしそうにも見える。
「さあ、行こうか。」
「うん!」
そうして俺たちは移動を再開した。
魔法の森の手前ぐらいだっただろうか、そこで彼女は止まった。
「ありがとう。ここまででいいよ!」
どうやらこの近くに家があるらしい。
あたりを見回してみる。
「・・何もないけど?」
すると彼女は恥ずかしそうにくねりながら言った。
「おうちの紹介まではまだ早いっていうか、もっと仲良くなってからっていうか///」
「?」
よく聞き取れなかったがとにかくここまででいいらしい。
荷物を渡すと彼女は俺にこう申してくれた。
「あの、何かお礼できることはない?」
「お礼、か・・」
人にお礼をされるのは、何気に初めてな気がする。ちょっとうれしい。
とはいえ、自分自身特に何か欲しいものはない。丁重に断ろうかと思ったが・・
(まてよ、この子ならアリスの手伝いができるかもしれない。)
普段から家事全般をこなす彼女なら、衣装作りもできるはずだ。
「なあ、俺にその体貸してくれないか?」
「へぁ!?」
俺は特に文面を考えずにそう申し込んだ。
~~~~
「幽々子様、私は今日大人の階段を上ります。」
妖夢は昨日の彼からもらった地図を持ちながら、地図がさしているであろう家の前で覚悟を決めていた。
体貸してくれ。世間知らずな妖夢でもその言葉の意味くらい分かる。
ああ、私は今日汚されちゃうのね・・
でもあの人なら・・
そんなことを想像しながら妖夢は扉を開けた。
「こんにちは!今日は優しくしてくださいね!」
「!?え??」
そこにいたのは彼でなく金髪の美少女だった。
「あ~アイツそんな説明を・・」
「うう~///」
金髪の美少女(アリスというらしい)からの説明を受け妖夢は赤面した。
彼(蓮斗というらしい)はある妖怪との戦闘で左手を骨折しているらしい。
そのせいで聖夜祭に向けての準備に支障をきたした。
私はそんな彼の代理でここに呼ばれたようだ。
左手を負傷した上で戦っていたことには驚いたが、それにしてもあの頼み方はないだろう。
「アイツ、賢いのにとことん世間知らずなのよね・・」
アリスは遠くを見ながらそんなことを言う。彼女も何かあったのだろうか。
・・・
そもそも彼女は何なのだ。
彼が住んでいると聞いてやってきたのに何で女の人がいるのだ。
彼女も彼を狙っているのだろうか。
だとしたら、私が彼を手に入れるまでの道のりはかなり険しいのかもしれない。
それでも・・
「私は負けませんよ!!」
負けるわけにはいかない。彼は私に必要なのだ。
隣で不思議そうにしているアリスを尻目に、妖夢は作業に没頭した。