異変から一か月がたった。
この異変が終結して間もなく、紅魔館の住人は幻想郷のメンバー入りを果たし、この幻想郷のパワーバランスの一角を握るほどになった。
そんなある日、俺は紅魔館に呼び出されていた。
「お待ちしておりました。どうぞこちらへ」
玄関で十六夜が迎えてくれる。
紅霧異変以降よく彼女が人里にいるのを見かける。アリスと霧雨とお茶会をしたり、レミリアの付き添いで博麗神社に行ったりもしているようで幻想郷の住人ともいい関係が結べているようだ。
彼女たちとはタメで話をしているようだが、俺にはいつも敬語である。
どうも距離を置かれているようで、少し気まずい。
まあ今の俺の意思でないにしろ一度俺は彼女の命を奪いかけたわけなので、仕方ないといえばそうなのだが・・
「そんなに距離を開けなくてもいいんじゃないか?・・」
彼女は常に俺と10メートルほどの間隔をあけている。この広い館の中でこれだけ距離を離されたら、迷子になるかもしれない。
「いえ、このくらいが妥当です。いつあなたが襲ってくるかわかったものじゃないので」
いつもこのありさまである。原因はおそらくあの解呪の時だろう。あの後アリスたちからも、ないわーだのやっぱり男はすべて獣なのかしらだのさんざんに非難された。人命救助のあの行為でも気を付けなければいけないことがあったようだ。ふむ、一つ勉強になった。
「そういえばあなた、もう傷はふさがったのですか?」
ふいに十六夜がこちらに問うてきた。
「ああ、もうばっちしだ」
俺も胸をたたいて答える。
すると十六夜は気味の悪いものでも見るようにこちらを見ながら言う。
「・・背中から胸まで貫通して・・まだ一か月しかたってませんよ?あなた本当に人間なんです?」
「失礼だなあ」
おそらく彼女も俺が人間だとは理解しているだろう。そのうえで訝しんでいる。
この回復力は俺の
まあ、この力について理解するのは難しいだろうし、理解してもらうつもりもない。
十六夜は俺が話す気がないのがわかると、またもとのように館を進んでいった。
しばらく歩くと、ほかの扉より幾分か大きい扉の前で十六夜は止まった。
「失礼します。お嬢様、連れてまいりました。」
「通して」
中から声が聞こえる。
俺は十六夜に従い中に入る。
「ご苦労。さがっていいわ。」
「はい。失礼します。」
扉の中には齢500歳のちびっこ吸血鬼、レミリア・スカーレッドがソファーに腰かけていた。
「ようこそ紅魔館へ。どうぞ、座りなさい」
そういい彼女は椅子を指さした。いわれるままに座る。
博麗神社で博麗に甘えていた彼女も、ここでは威厳たっぷりの表情だ。
自分の背丈よりかなり大きなソファーは背伸びしてる感が否めないが・・
「異変振りね」
レミリアが紅茶を勧めながら話す。
実際には博麗神社で会っているのだが、わざわざいう必要もないだろう。
さて、ここで異変というワードが出てきたことで、俺は何のために呼ばれてきたのか大体わかってきた。
「罰のことですか?」
「そ。話が早くて助かるわ」
俺はこの異変で十六夜咲夜を殺そうとした。結局殺せてはいないのだが、紅魔館の主としては見逃せないだろう。
「咲夜の治療をしてくれたみたいだし、結局彼女は死んでないのだけど、それで許していたらウチのメンツが保てないからね」
当然の対応といえよう。俺としても言い逃れするつもりはない。
「わかりました。それでどういったことをするのでしょうか?」
吸血鬼からの罰としたら血の提供だろうか。もしくは肉体労働というのもあるかもしれない。
あれこれ想像してみたが、彼女の口から言い渡された罰に俺は拍子抜けしてしまった。
「なに、簡単なことよ。妹の面倒を見てほしいの」
「面倒を見る、ですか・・」
話によると、彼女の妹は495年もの間ずっと地下にいるらしい。それ故、彼女の教育係をしてほしいとのことだった。
「聞けばあなた魔法の知識があるらしいじゃない。妹に危なくない魔法を教えてあげてほしいのよ」
魔法使いにも適性があるらしい。
彼女の妹の話は1時間にも上った。シスコン具合は相当のようだ。聞けば聞くほど妹さんが優秀に聞こえてきて怖い。
「わかりました。誠意をもってお受けいたします。」
元々罰を受けるつもりであった俺は二つ返事で了承した。
まあ当然後で後悔したわけよ。
というか気づけよ俺。495年閉じこもってるやつが普通な訳ねえだろ!
十六夜に先導されるまま地下への道を進んでいく。
どうやらその部屋は図書室より下にあるようだ。
そういえば図書室にいた少女は元気にしているだろうか。機会があれば魔法談義をしてみてもいいかもしれない。
そうこうしているうちに一つの部屋の前に立つ。
「ここです。」
十六夜が言う。それと同時に彼女は深呼吸を始めた。
「一応、覚悟しておいてください。」
「えっ」
「失礼します」
その謎の言葉を理解する隙も与えず、彼女は扉を開けた。
部屋の中は薄暗かった。いたるところに人形が落ちていて、そのすべてが真新しい。奥には壊れた人形のようなものが積まれていた。まるで使うたびに壊れるような。
「だれ?」
不意に声が聞こえた。
そのほうを見ると、何かがうごめいているのが分かった。
幼女だった。しかし背中の異形な羽根がそれが人間でないことを告げる。
その目には狂気の色が満ちていた。
「あなたが私の新しい
それが彼女、フランドール・スカーレッドと俺の初めての出会いだった。
主人公は魔法の知識はあるけど、実際に使える魔法はほぼないです。
攻撃魔法は使えません。