「アハハハ アハ!」
「くっ!!」
背後から爆発音が聞こえる。
(一瞬でも止まったら、死ぬ!)
レミリア・スカーレットの妹、フランドール・スカーレットは結論から言うと狂っていた。
彼女の部屋に入るや否や、十六夜が扉を閉める。手助けは一切期待できそうにない。とはいえ、先に説明くらいしておいてほしかったが・・
「壊れちゃえ!」
「ぐっはっ・・まじかよ・・」
左手が持っていかれた。体に当たらなかっただけましか・・
彼女の弾幕は止まる気配を見せず、さらに数を増していく。
「ちぃ!」
何とか蜃気楼を使い切り抜ける。だが背後に本棚。もう後がない。
「禁忌 レーヴァテイン」
「レーヴァテインだと!?」
瞬間、彼女の周りが赤く染まる。そして右手に持つ杖のようなものが剣へと変わっていく。
レーヴァテイン。北欧神話において、ロキ゚が鍛え上げたとされる剣だ。神話に出てくるだけあって、その威力は計り知れない。ただ・・
(いくら触媒があるからと言え、悪神の作り出した武器に制約がないわけがない。)
ならばその制約とは何か。
考えている間にも剣は振り下ろされる。
「耐えられるか?・人符 現世斬ッ!」
斬撃と斬撃がぶつかり合い拮抗する。
しかし、その拮抗も束の間。すぐに押し負け始める。
もとより、人のまねごとが神に通用するわけがないのだ。刀が弾き飛ばされる。
そして丸腰になった自分に刃がふりを下ろされ
バタン!
なかった。
見ると、フランドールはこと切れたように布団の上に倒れていた。
「ふえ、あれっ?寝てたんだ」
「おう、起きたか」
一時間ほどたっただろうか、彼女は目を覚ました。
こちらを見てきょとんとしている。
「あなたは?」
襲ってくるということはないらしい。どうやら、先ほどの記憶もなくなっているようだ。
「あなたの教育係だ。よろしくな。」
俺はできるだけ優しく言った。
すると彼女は少し笑って、そのあと少し悲しそうな顔をして言った。
「私はフランドール、フランって呼んでねお兄さん。・・その傷、私のせいだよね。
ごめんなさい。」
自分が狂っているときのことは理解しているのか・・
だとしたらやはりあれが原因だな。
「ああ、大丈夫だ。俺も無意識であなたのお姉さまを殺そうとしたしな。お相子ってことだ。」
俺はそれとなく返しておいた。
彼女、フランによると、地下に閉じ込められている理由は彼女の能力によるものらしい。
ありとあらゆるものを破壊する程度の能力
破壊という実に単純だが、それゆえに最強の部類に入り、一歩間違えば幻想郷すら破壊できる能力。
閉じ込められるのも納得がいく。
「それでね、することないからパチュリーの本を読んでたの」
彼女の知識量には驚かされた。一般的な人間が将来獲得するそれを遥かに凌いでいた。
魔法についてもしかり、魔法使いといっても謙遜のないぐらいだ。
「フランの魔法は誰かに教えてもらったものなのか?」
「ううん、フランが自分で覚えたの。」
普通魔法を覚えるには教師がいる。それをなくして覚えたとなると、彼女の才能は本物のようだ。
が、それゆえに覚える魔法に偏りができてくる。それは個人の適正からくるものだ。
そして彼女の場合は、破壊。
彼女の使える魔法のほとんどが禁忌魔法なのである。
だとしたら、彼女にしてあげられることは・・
俺は、彼女を正面から見ていった。
「フラン、その狂気、直してみないか?」
「えっ?」
彼女はすごく驚いたようだった。無理もないだろう。人間風情ができることなど計り知れている。だがこれならなんとかなる。
「あなたの狂気の原因はその魔法だ。禁忌魔法。その制約がおそらく理性。つまり使った数だけあなたに狂気が降りかかる。逆に言えばそれを使わずに、すべて吐き出してしまえばいいんだ。俺は魔法破壊ができる。そのための壁ぐらいにはなれる。」
もしかすればだが、破誕神殿も効果があるかもしれない。(後でレミリアに鬼の形相で止められます。)
しかし、フランは悲しそうな顔で言う。
「でも、その前にお兄さんが死んじゃうかもしれないよ。・・やっぱり私、お姉さまに教育係はもういいって言ってくる。」
そういうと彼女は後ろを振り返った。後ろにはたくさんのぬいぐるみの残骸。彼女自身自分の能力の危険性をわかっているようだ。
でもそれじゃだめだ。
俺は彼女の肩を抑えて言った。
「優しいんだな君は。・・でも、俺が聞きたいのはそうじゃないんだ。君はどうなんだ?直したくないのか?」
しかし彼女はうつむいたままで、
「駄目だよお兄さん。もう私、何人壊したかわかんないくらい壊しちゃんたんだよ。これ以上誰かを壊しちゃうくらいなら、もう一生ここで過ごした方がいいんだよ・・」
彼女の声にはあきらめの色がうかがえた。
「それは違う!!」
気づけば俺は、大声を出していた。
「君が本当に壊してきた人たちに対して罪悪感を感じているなら、直すことをあきらめちゃダメなんだ。じゃないとここで壊された人に何の意味も持たせられなくなる。君はそれでいいのか?」
失われた過去が影響したのかもしれない、俺はいつになく饒舌だった。
「それに、君みたいなちっちゃな子に俺が負けるわけないだろ。狂ったときは俺がぼこぼこにしてやるからな。」
俺は付け足すように言っておいた。
フランは終始はっとしていたが、やがてクスクスと笑って、それから頬を膨らませて言った。
「一応フランのほうが年上なんだよ。君が私のことお姉さんと呼びなさい。」
「いや、それはちょっと・・」
フランはアハハと笑っていった。
「あなたの名前は何というの?」
「蓮斗だ」
フランはすこし身だしなみを整えて、
「それじゃあよろしくね、蓮斗!」
太陽のような笑みを浮かべて言った。
「ああ、こちらこそよろしく」
俺もそれ相応の笑顔で返してあげた。