東方蓮咲譚   作:インドぱん

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白玉楼の庭師

「アンタはねえ~」

「ごめん!」

アリスは頭を抱えた。目の前には左腕に包帯を巻いた男、魂魄蓮斗がすまなそうに謝っている。

「クリスマスまであと三日なのよ・・」

「申し訳ない。」

アリスは掛けられたカレンダーを見た。

クリスマスには人里で聖夜祭がある。

アリスはそこで人形劇をする予定であった。

今年は人手(蓮斗)が増えたため、いつもより派手なものを予定していたのだが・・

「細かい作業は手伝えそうにない・・」

机の上には大量の布が広がっている。

彼の仕事だった衣装づくりが半分しか終わっていない。

大体、この男は何をしているのか。

つい一か月前に体に大穴を開けられ、治ったと思えばもうこれだ。

「間に合う・・かしら」

私には人形作りという仕事が残っている。それに加えてこの量は・・

彼ができるようになってきたから、頼りすぎたのがあだとなったか。

「俺にできることなら何でもするよ」

とはいえ、止まっていても仕方がない。

「じゃあ、このメモに書かれているものを買ってきてちょうだい。」

「わかった」

彼にできそうな仕事を与え、自分の仕事に戻ることにした。

 

 

 

~~~~

 

 

「これと・・あとこれか。」

フランからの逃走で受けた傷は骨折していた。

(さすがは破壊神、といったところか)

左腕の修復のため、自らの能力を全力で使っているが、それでも一週間はかかりそうだ。

(アリスには本当に悪いことをしたな・・)

毎日、その頑張りようを見ていたがために、物凄く胸が痛い。

自分の意思がいろいろな負の感情を含んでいるのが分かる。

何か彼女のためにできることはないか。

(誰か代わりを探してみようか)

これまで知り合った人たちを思い出してみる。

(博麗、は駄目だな。彼女がそんなめんどくさいことをやるわけがない

霧雨。頼めば受けてもらえるだろうが、彼女は細かい作業には向いていない

十六夜は、まず俺の話を聞いてくれるかどうか。他は・・駄目だな。)

そもそも衣装づくりなんてめんどくさいことを受けてくれる人など、そういるわけもない。

当てを探し、周囲を見渡してみると大きな荷物を担いだ、銀髪の少女を見つけた。

 

 

~~~~

 

 

「はぁ~」

その大きな袋を持つ銀髪の少女こと魂魄妖夢は、思わずため息を吐いた。

彼女の背中には、自身の背丈の2倍はありそうな袋がある。

その内容は食料であり、そしてそのほぼすべてが彼女の主のためのものだ。

もちろんその大きさは周囲の注目を集める。

彼女はいろんな事情で憂鬱であった。

主、西行寺幽々子は冥界の管理人。

彼女は、幽々子の住む白玉楼の庭師であった。

そう、庭師なのだ。

幽々子は自分の気に入ったものにしか身の回りの世話をさせない。

だから、本来なら大人数でやる仕事も彼女のものとなる。

そして幽々子はとにかく大食いだ。

つまるところ彼女は大量の仕事を抱えていた。

以前、幽々子に聞いてみたことがある。

使用人の数を増やしてみてはどうか、と。

それに対し、幽々子はこのように返した。

「妖夢ちゃんの一番のお気に入りならいいわよ。」

この返答に彼女は悩まされた。

彼女は人生のほとんどを冥界で過ごしており、これといった友人などいないのだ。

(私が他人に興味を持てることなんて、家事や剣術のことぐらいだしなあ)

しかし、家事はともかく剣術に魅力を感じる人など、そういない。

彼女の能力、それは剣術を扱う程度の能力。

そんな彼女に刀で太刀打ちできる人など多いはずもないのだ。

 

 

「あの、大丈夫ですか?持ちましょうか?」

不意に声がかけられた。そこには白髪で色白な、コートを着た男がいた。

ああ、ナンパだろうか。

自慢ではないが容姿には自信がある。

街を歩いていて声をかけられることなどしょっちゅうだ。

とはいえ、こんな荷物を持っているときに話しかけてくる人がいることには驚いたが。

「結構です。」

私は振り払うように首をふり、ずんずん進んでいく。

ナンパをする輩などろくなものではない。早く立ち去ろうと歩く速度を上げる。

前しか見ていなかった。

「危ない!!」

「えっ!」

後ろからのこえに気づいたときのは遅かった。

私は石につまずき、無様にも土手から転げ落ちてしまった。

 

 

「申し訳ございません!」

「いえいえ、どういたしまして」

結局、この男に助けてもらった。

とはいえ、彼がいなければ食料がすべて駄目になっていたところだ。素直に感謝せねばならない。

自分は断ったのだが、彼がどうしてもというので途中まで運ぶのを手伝ってもらうことになった。

「食料が駄目になっていたら、私はどうなっていたことか。」

「ハハハ。厳格なお方なのですね。」

「いえ、普段は温厚な方なのですが、食事のこととなるとどうも・・」

夕食がなくなったと知ったら暴れだし、下手をすると力を暴走させるかもしれない。(さすがにしない)

「随分食いしん坊な方なのですね。」

そんな私の想像も知らない彼は、のんきそうに言った。

私は最初彼を警戒していた。弱みに付け込んで口説きに来るのではないか。

しかし、どうやら彼は本当に善意で手伝ってくれたらしい。彼の話には自慢や誇張が含まれない。

彼の暇つぶしにと語ってくれた神話は傑作であった。

私自身聞いたことの無いものであったので、おそらく彼が作ったものであろうが、彼が話すと実際にあったように聞こえる。

「俺もその神話の呪文を三つ使えるんだよ」

「アハハ、何それ」

気づけば私は彼に心を許していた。

 

歩き出してしばらくたった時だった。

「やめろよ!おい!」

近くから怒声が聞こえた。

下の方を見やると、人と妖精と鬼がいた

大きな鬼2人に対し、妖精二人小鬼二人がいがみ合っている。その後ろが人の子三人が震えあがっていた。

「アタイたちもあやまっただろ!」

「知ったこっちゃねえなあ。鬼が来たら道を開ける、常識だろう?それを教えてやるだけだよ」

どうやら鬼の怒りを買ったようだ。

彼女らはかわいそうだが、鬼と関わり合いになってもろくなことがない。

「行きましょう」

早く帰ろう。そう思って後ろを振り返る。

「あれっ?」

しかし彼の姿はそこにはなかった。

 

 

 

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