転生者の戦車語   作:15cm列車砲

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多分タイトル詐欺。


幕間 戦車道と私

 大画面のディスプレイ。それを見る大勢の人々。そう。初出場で鉄獅子記念杯の決勝へと進出していた。母校が大会で決勝に進出したのに応援にも行かないというのは、学校に対する裏切りだろう。生徒会長として私は会場に行かねばならないのだ。

 

 初めて見るスポーツだが面白いと思った。試合序盤から打ち合い、そして全生徒が待ち望んだ瞬間がやって来た。

 

『ボリージャ学園フラッグ車74式戦車行動不能。よって大洗女子学園の勝利』

 

 大洗側の応援席が湧く。その反対にボリージャ学園の応援席が一瞬の沈黙後頑張ったぞー。とか来年は優勝だーと騒がしくなった。ディスプレイでは決勝打を放った車両の車長である赤星小梅がインタビューされていた。

 

「全国大会に出場する可能性はありますか?」

 

「はい。出場したいともいます。目標は打倒黒森峰です」

 

 

 ガタッと大きな音がした。七三分けのスーツ姿の男と更に年配の男が慌てた様子で立ち去って行った。何だろう?別段慌てるような事は言っていないのだが。ちらっと視線をディスプレイに戻すと、宮瀬ちゃんがインタビューを受けていた無難な言い回しに終始し、インタビュアーがどちらとも取れるような事を繰り返し言っている。まぁ、少しは話題にもなるだろうという感じだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あの決勝から数日後文科省某会議室に幾人かの役人が集められていた。その中に学園艦教育局局長の辻の姿もあった。というより当事者の一人として参加していた。

 

「・・・。当該少女が黒森峰及び西住流と相対する可能性もあり、早急に対応したいと思います」

 

「そうか。本当に黒森峰を倒すと言ったのかね?」

 

「その現場で耳にしました」

 

 ざわざわとする会議室。それはそうだろう。現黒森峰の主力は、世界大会の主力でもある。負けてもらっては困るのだ。そこで、以前から検討されていた廃艦という選択もある。どうあれ、全国大会に出場させなければいいのだ。

 

「それで、私が考える方策なのですが、廃艦を推し進めることかと思います」

 

「随分急で反発する恐れがあるが?」

 

「私が把握する中に大洗側に廃艦を押し進める大きな理由があります」

 

 私に視線が集まる。それは、簡単あことだ。戦車である。大洗単独では維持費やらで干上がってしまうが、そこを我々が支援しているのだ。そこを突けばどうとでもなる。我々は西住流に絶対に損はさせないのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 そして、根回しに次ぐ根回しで正式な書類が出来上がったのが新年を迎えてからだった。大洗学園艦に降り立ったのは、1月14日。その日の午後に大洗学園の生徒会長である角谷杏と風紀委員長の堀と『話し合い』の場に居た。

 

 

「大洗女子学園は廃校になります。今年度で、です」

 

「随分急な話ですね」

 

「そうですかね?長い間約束を反故にしていたのはそちらだと思うのですが?」

 

 と言った途端に会長の表情が変わった。やはり知っているのだろう。大洗と文科省が結んだあの約束を。約束を簡単にいうと、その昔学園闘争があった折。反学園派の勢力が強く一時学園艦の6割以上が占拠されそうになった時。当時の生徒会長が戦車道部の中立策を無視し、風紀委員会に戦車の所有権を移譲させたことに始まる。中立だった戦車道部の一部が反学園派となり激しく対立した。そして、文科省と大洗学園の間に秘密協定のようなモノが結ばれた。反学園派だった船舶科を船底に押し込め、抑止力として戦車を維持する。そして、維持費を文科省が出す。大まかな内容はそんな感じだ。大洗の会長は傑物がなるのだろうか?と当時の資料を読み込んだ私の感想だったが、それが仇になった形だ。

 

 

「約束ですか?」

 

「知らないとは言わせないが」

 

 これで終わりだ。忖度だと何だと言われようとも大洗は絶対に全国大会大会に出場せずだ。さぁいいたまえ。降参とな。

 

「どうすれば撤回してくれますか?」

 

「撤回などしないよ。決められたことなんだからね」

 

 まぁ。最後の足掻きくらい見てもいいだろう。こちらは粛々とやるだけだからな。国の決定には最終的には従ってもらうのだから。だが、この時の私は考えても見なかった。この場から逆転される秘策を持っていることに私は気づかなかった。





 その日プラウダ高校に入って来たのは男だった。特段珍しいことではない。プラウダ高校の学園艦にも10万を超える人間が暮らしているのだから。だが、珍しいのは何といってもその外見だ。女の子と見まがうほどの外見に150CMの低身長だが、制服は県内の男子校のものなので男であると思われる。彼は迷い無く戦車道部が活動している演習場に迷うことなく進んでいく。

「な、なんでアンタがいるのよ!」

「何でって?兄妹だからだろう?」

 そう。カチューシャの双子の兄であった。だが、一目見ただけでは双子だとは思わず、兄と年の離れた妹だと思うはずだ。

「私が呼びました」

「ノンナ勝手なことしないで」

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