ゴジラは魏怒羅を打ち倒し、大きく咆哮する。振動で地が身震いし、天が恐れ慄き、足元に踏まれる幻想郷が痙攣した。
先程まで轟々と荒れ狂っていた嵐と雷鳴はもうすっかり止み、雲の無くなった、黒洞の空の静寂に咆哮のみが響く様は、幻想郷が壊れてしまった事を示している様である。
煙が立ち上り、焼け焦げて炭化し、見る影も無く破壊された地上と地獄。中央に立ち、其れら全てを憎悪に塗れた眼で睨みつける巨大な怪獣は、見る者に畏怖と絶望を刻み付ける事だろう。
魏怒羅の放った雷霆により抉られた胸部すら恢復を始め、傷口は塞がってゆく。元の黒い表皮も再生し、傷はほぼ完全に見えなくなった。
その時、傷は再生を逆行する様に広がり始めた。
その速度はゴジラの再生速度すら上回り、最初に開いていた傷よりも大きく、深いものとなる。血が噴き出し、赤い血肉が露わとなる。全身が裂け、あっという間に大量の血液を撒き散らしながら水風船の如く破裂した。
血の雨の中、血染めになった黒い服を着た純狐が佇んで居た。
幻想郷はその住民のみならず、神々もが愛していた。
この現象を引き起こしたのは彼女である。彼女の能力によって魏怒羅の負わせた"疵"を純化したのだ。
純狐はゴジラが傷付いていた事を幸運に思いつつ、降り注ぐ血液を見やる。
ヘカーティアが到着する迄の時間稼ぎとして来たが、彼女の出る幕は無く、実にあっさりと終わった。
などと言う筈など有りはしない。
赤い雨の内より二つ並んだ鋭い光が見えたかと思えば、其れは猛烈な勢いで迫る。
純狐が下方に避けた直後、黒の怒濤が一瞬前迄純狐の居た場所を蹂躙し、生え並んだ牙が閉じられ、大扉が閉まる様な低い音で打ち鳴らされた。
あの場にあとコンマ数秒長く留まっていたなら、と想像しただけでも純狐の背筋が絶対零度に冷却された様な感覚が走った。
確かにその巨大な怪獣は疵に純化され、原型すら残らず血溜まりと肉片に沈んだ筈だったが、それは自身の血液で體を悍しい紅に染めつつも、完全な形を取り戻していた。
通り過ぎた怒濤は再び獰猛な怨念を湛えた貌を純狐に向け直し、腕を前方に構えて異常なまでの敵意と威圧を伴う攻撃を放った。
完全な恢復を遂げたゴジラには傷が存在しない為に先程の様な"疵"への純化は出来ず、粉々の肉片にして攻撃を中断させる事は出来ない。純狐が採った選択肢は、正面から攻撃を受け止める事であった。
然し純狐の姿は華奢な婦人のそれで、ゴジラは純狐の数十倍を優に超える巨体を持つ。更にその怪力は体格比で考えても常軌を逸するものである。
見る者からすればそれは愚策の極み、血迷い自殺を選んだとさえ思い、質量の暴力に血の徒花となって散りゆく純狐の姿が幻視された。
だが、そのヴィジョンは現実に顕現する事は無かった。理由は、純狐の特異に過ぎる力の為であった。その能力から示される干渉範囲は著しく曖昧で広く、不透明なもので有る。"純化"などと言うものの表す範囲は非常に広く、その範囲全てを司る純狐の能力は、神々をも容易に創り出す程の、強大極まるものである。
純狐は自らの腕を能力によって"力"に純化させ、更に自分の身体を"速"に純化させて突撃した。
光に肉薄する速度で、相対性理論に従った圧倒的な力でゴジラの豪腕を受け止めた。
その体格からは想像も付かぬ衝撃を受け、ゴジラの眼は若干の驚愕に見開かれた。
然し其れは純狐の方も同様だった。名の付く前の純然たる力は、名の付いた存在よりも不純物が無い分遥かに強大に成るが、ゴジラは名の付いた、多分に不純物を含む存在で在りながら、純狐の神をも産み出せる、強大な内在エネルギーを破壊に一点の濁りも無く純化した一撃を受け止めるどころか、純然たる腕力で勝っているのである。
このまま鍔迫り合いをしていては此方が潰されると考えた純狐は、"速"への純化で一旦後ろに大きく引き下がる。
見れば純狐の腕は砕け、肌はどす黒い紫に変色し、肩まで鮮血が滲む、直視も憚られる酷い怪我を負っていたものの、当の純狐自身は痛がる様子も無く、然し焦燥に顔を歪ませ、腕を一瞬で元の姿に修復した。
唸り声と振動と共に、ゴジラの尾が振るわれる。
その速度は純狐でも攻撃範囲から完全に避ける事は難しく、そして余波のみでも純狐の身を戦闘から叩き落せる威力を宿していた。
純狐がゴジラを"鈍"に純化すれば、威圧はそのまま、注視しなければ静止している様にしか見えない程動きが鈍くなった。その捷さと質量に裏打ちされた一撃は、押し出すトルクは有れども破壊力は無くなった鈍らと化した。
動きを殆ど停止したゴジラに向け、純狐は杜若色の九尾を象ったオーラを纏い、純化したエネルギーを放った。其れは完全な直線状に無色の濁流を生み出し、ゴジラを完全に呑み込んだ。
その破壊力は単純な広範囲破壊に使えば一撃にして強固な守りを持ち、地球など遥かに及ばぬ超技術で武装した月の都を火盡に帰す程である。
だが不純に無闇矢鱈な攻撃を仕掛けるのでは無くゴジラを狙い撃つ。
ゴジラとて伊達に幻想郷の実力者達の総攻撃を耐えた訳では無く、其れを受けても僅かに傷跡を付けるのみで、ゆっくりと咆哮し、勇猛果敢な突撃を完全に押し留める事は出来ていない。
一見して純狐には分が悪い様にも見えるが、傷を負っているゴジラには純狐は"疵"への純化が出来る。
削られながらも原型を崩す事無く再生を続けていたゴジラは、最初と同様に破壊する事はならず、全身から一瞬血が噴き出し、シルエットが僅かに歪んだのみであった。動きは蝸牛の如く緩慢であったが、完全に止まらないそれは却って恐ろしく感じられた。
だが純狐の目的はゴジラの討伐では無く、ヘカーティア到着までの時間稼ぎ、これでも十分と言えよう。
霊夢が意識を取り戻した後、最初に見えたのは、永遠亭の天井であった。
何故自分はこんな処で寝ていたのか、と混濁した記憶の奥底を探る。
確か、黒い怪獣と交戦して、魔理沙と赤い怪獣が出て来て、そして…そうだ。あの黒い怪獣は、どうなったのだろうか。
幻想郷はどうなったのだろうか。
そう考えた時、霊夢の脳裡は焦燥で満たされた。
体が上げる悲鳴も無視してがばりと身体を起こし、自分が寝ていた部屋から出ようとする。然し扉の先に見えたものは、何故かこの部屋のみだった。
空間が歪んでいると判断した霊夢は、無理矢理空間を繋ぎ合わせて部屋から脱する。
その先に居たのは永琳だった。立ちはだかる様な姿勢で、特に驚きもせずに霊夢を見ている。
霊夢は妨害の意志が在るとし、臨戦しようとするも、然し永琳は戦闘も妨害の素振りも見せず、泰然自若の体で近寄ってゆく。
毒気が抜かれた霊夢に、永琳は一包の薬を半開きになった霊夢の口に飲ませた。ここで、霊夢は初めて、まともに反応すら出来ない程に疲労していた事に気付いた。
薬が口の中に入り、溶けて拡散した途端、身体に溜まった疲労が抜け、霊力が漲る様な感覚が湧き上がった。
薬を飲ませた後、永琳は言った。
「幻想郷の異変を解決するのは主に人間よ。ゴジラであれば尚更、その決着は人間が付けなければならない。そして、それが出来るのは貴女だけ。
今、貴女には紺珠の薬を飲ませた。何としてでも奴を止めなさい。」
ゴジラなら尚更とはどう言う事だろうか。あの怪獣が人間と深い関係が有るのだろうか。
考えても一向解るものでは無く、それは余りに無謀、理不尽ですら有った。
此方の一切の攻撃を耐え続け、威圧一つで人はおろか、神々すら居竦み、一挙一動が容易く幻想郷を崩壊せしめる大怪獣。霊夢自身も一度、為す術も無為に帰して敗北を喫している。
今再戦した所で勝ちの筋は視えず、よしんば有ったとしても、光明が絶望の暗雲の隙間から差す前に叩き潰されるのが関の山だろう。
自然、霊夢はこれ以上自分一人でどうにか出来るものでは無いと反駁する。
「貴女と共に戦う者も居ます。彼らはくにを守る為に、共にゴジラに立ち向かうことでしょう。何も人間が一人で立ち向かうのでは無く、貴女が決着を付ければいい。最後は貴女独り、然し貴女を支える者は多く居る。」
永琳が言っている意味が何を指すのかは、霊夢には未だ解らない。
博麗霊夢は竹林の上空を飛ぶ。
針は効果を為す可能性は京に一つも無く、陰陽玉は叩き割られた。
備えているのは御幣と御札、巫女服のみであり、最初の戦闘よりも装備は少なく、一見弱体化している様にも見えるが、その身に満ちる霊力は、寧ろ上昇さえしていた。処方されたのは紺珠の薬のみで無く、複数の薬の複合であったのだろう。
竹林を抜けると、もう其処に在った全ての物は破壊の波に曝され、溶岩が噴き出、地盤が捲れ上がり、月明かりが瓦礫の凹凸を強調して悲惨さを際立たせる。
事前の避難で、死傷者が殆ど居ない事を理解していようとも、それに巻き込まれた、避難の術も無い数多の生物や自然を思えば、霊夢の心は痛んだ。
一段低くなった円形のクレーターの中央に、紫の光と、純粋なエネルギーの線、そしてそれに飲み込まれつつも聳立する黒い影が見えた。動きは殆ど止まり、然し殺意はその発生源へ向けられる。強い神力を纏う、肉塊と鮮血が悍ましくその場を彩り、凄惨さをいや増している。
霊夢は自身が縦に数人入る程度の光弾を生み出し、鋭い動きで叩き付ける。意識外からの攻撃であれば有効なのでは無いかと言う一縷の希望的観測と、牽制の意を込めたものである。多大な、全身全霊の霊力を以って、一撃で圧し潰そうと、時間を掛けた攻撃も通用しなかった為、力押しでは無く搦め手で攻める。それは着弾地点を強く叩き、更に多重の膜で上半身を包み込む。結界で"鈍"となったゴジラの身動きを更に制限する。
ごくゆっくりと、然し確かに霊夢に向けて、ゴジラの意識が向く。動く度に結界はメリメリと音を立てて軋む。世界そのものが頭蓋に質量を預けた様な重圧が空間全体に掛かるが、其れに縛られ潰される事無く、霊夢は
今代の博麗、霊夢のみが持つ特異な力。空を飛ぶと言う意味や能力も又、あらゆる法則や力からの束縛より開放される、非常に広範囲な能力である。
ゴジラの威圧からも同様に逃れ、そしてその身には強大な神気が宿る。
巫女としての技能、神降ろしをしようとしている。霊夢のそれは月の剣士の其れよりは幾分か劣るが、八百万の神の権能は多岐に渡り、霊夢はその中でゴジラに有効な可能性のある何柱かを降ろそうとしていた。祈りと信仰が神の分霊を呼び寄せる。
霊夢の周囲に渦巻く神力が急激に変容し、強大になる。其れは散らばった煌めく肉片の神気も巻き込んでより増大し、巨大な形を為す。
これは霊夢も予想外の事象だった様で、目を見開き三つの光を見上げる。
この巨大な神は、神降ろしの信仰と金の鱗の肉片の神力をジャックし、本来呼ばれる筈だった神々の代わりに顕現するという荒業をしてのけたのである。
其の神は護国の聖獣。ゴジラという未曽有の災害に対する霊夢というこの地そのものの意思と言っても良い者の信仰に際し、くにの危機と見た彼の神々は、失われ意図的に忘れられた力を取り戻した。
その神の形が明瞭になったかと思えば、ゴジラの足元から、巨大な炎と溶岩が全身を包み込む。その姿が見えなくなると、今度は全身が、ゴジラの二倍程の大きさの氷塊に閉じ込められ、完全に氷漬けにした。然し氷柱には徐々に罅が入って行く。氷塊が完全に砕け散ったかと思えば、ゴジラ一点に向けて突風が吹き、その氷片と火焔が高速で叩き付けられた。
明瞭となった神の姿を見上げれば、なんと三体の内一体のその姿は、魔理沙と共に姿を表した巨獣のそれであった。体表は燃え盛る溶岩の様に赤く光り、その神気も跳ね上がっていた。
残りの二柱も、巨大な獣の姿であった。七本の角を生やし、棘の甲羅を背負った冷気を纏う者、手足に翼膜を持ち、纏う風で飛行する者。
彼の神々はゴジラに、地中に潜り、四肢で駆け、空を躍して肉薄する。
赤い怪獣━婆羅護吽は、地中を揺るがし、溶岩と炎で襲い掛かる。
甲羅を持つ怪獣━庵魏羅珠は、足元の空間を凍てつかせ、冷気を放った。
翼膜を持つ怪獣━婆羅陀巍は、突風の鎌鼬を放つ。
純弧は、ゴジラの心臓ただ一点に向けて光線を撃った。
霊夢は、更に強力な結界を張り、ゴジラを完全に封じ込めようとした。
堂々と迎え撃つゴジラの咆哮は純化の影響で非常に遅く、低く、そして恐ろしいものであった。
ゴジラは一挙一動が壊滅的な被害を齎し、いくら瀕死にしたとしてもただ尾を薙ぎ払うだけでも戦況は引っ繰り返される。
其の為、出来るだけ動きを封じ、破滅的な一撃を放たれぬ様にする必要が有り、三聖獣と神霊と巫女が採った戦術もそれであった。
脚を踏み出そうとしたゴジラの周囲の地面が融解し、下半身が沈んだ。その直後地面を突き破り飛び出した婆羅護吽が左腕に組み付き、太陽に迫る炎熱で焼き尽くそうとする。
もう片方の腕が婆羅護吽を屠らんと、重々しく溶岩を散らし乍ら振り上げられる。尋常では無い力を籠め、その首に振り降ろされようとした瞬間、右半身が全て氷に閉じ込められ、勢いを殺される。庵魏羅珠が咆哮すれば、数多くの巨大な氷柱が襲い掛かった。
背鰭が爛々と青く輝き、口内にもチェレンコフ光が集中する。上空から残像が見える程の速さで飛来したのは婆羅陀巍である。風を操り、速さを極限まで上げた婆羅陀巍は、その身で突撃してゴジラの顎を押し上げた。星をも軽々と砕く熱線が、再び天へと伸びて行った。
出鱈目染みた力で溶岩の中を進もうとしたゴジラを、幾多の光線が貫いた。更に純化した拳を叩き付け、氷塊毎溶岩の中に沈めた。それと同時に婆羅護吽は牙を放した。反応は鈍への純化により届かない。
ゴジラが溶岩の中に沈んで行ったのを見計らい、霊夢は溶岩の表面に結界を張る。浮かぼうとしたゴジラの背鰭が結界に触れ、バチバチと霊力を散らす。
暫く音が聞こえなくなったかと思いきや、凄まじい轟音が鳴り、溶岩が波打つ。三重に張った結界の内一つが顎の力で砕かれる。
二つ、三つと結界は破られ、溶岩が盛り上がり、背鰭で引き裂き、黒の巨体が姿を再び現す。
非常な低速で溶岩から脱出しようと試みるゴジラの四肢に炎が絡み付き、氷がその場に体を磔にし、風が侵攻方向から押し戻す。全身が結界に包まれ、更に其れ等は全て"靭"へと純化され、ゴジラの怪力を以ってしても全て突破するのは困難となる。
動きが鈍くなった状態で、靭と化し、最早断つ事は神々でも不可能となった蠢く火焔、屹立する氷結、強固極まる結界の三重の拘束を引き千切るのはさしものゴジラも難しいと見え、怒りに満ちた唸り声を上げ、力を入れるも吹き荒ぶ突風に邪魔をされ、精々が軋む程度である。
然し其れは、裏を返せば破壊力が限界まで下げられた状態で、一瞬でゴジラを覆う程の規模の自然現象を起こす護国三聖獣、歴代でも稀代の鬼才と言っていい博麗の巫女、無名の神霊のどれか一つでも欠ければ、拘束すらままならぬ程ゴジラが強大という事とも取れる。
その馬鹿げた膂力に、額に冷えた汗を伝わせ乍らも、霊夢は結界を緩めぬ様に加減を調整しつつ、再び神降ろしの準備をする。堅牢極まるこの怪物の心臓を穿ち得る神を片端から呼ぶ。神力が捻り、分霊の形を取り始めた時、ゴジラの背鰭が光を持ち始めた。
霊夢は一時神降ろしを中断して放射線を防ぐ結界を張らねばならなかった。
熱線の脅威を防ぐ為、三聖獣は全力の攻撃を始める。歴史でもそうは無い程の、地球にさえ影響を与える規模の噴火と共に、ゴジラが高圧の溶岩の濁流に呑まれる。次に、妖怪の山が軽く数十は入る程の大きさの氷山が溶岩毎ゴジラを固め、-273.15摂氏度まで冷やした。その上音を上回る速度の大風が鎌鼬と化して氷山を粉々に細断した。更に純弧が、一直線にエネルギーを放ち、溶岩と氷塊と暴風の中の黒い塊を穿つ。
然し蒼い光の充填を止める事は出来ず、磔にされながらも、全身に燦然たる、核の後光を背負ったゴジラが無傷で炎を掻き分け、氷を溶かし、風を物ともせずに現れた。幾筋もの光がゴジラを貫いたが、一筋の血も流れる事は無い。
婆羅護吽は地中に潜り足元を破壊してゴジラに組み付き、庵魏羅珠は躰を丸め転がり、棘の生えた甲羅で突進し、婆羅陀巍は超速度でゴジラを殴り付け、顎が開かぬ様に抑えた。
背鰭の発光は全身に渡り、口が開かないにも拘らず着々と熱線は準備される。
何故発射口の顎は閉じられているのにも関わらず熱線が放たれようとしているのか。
答は単純、発射口は顎でなくとも良いためである。
全身に纏った熱線の光が、表皮から同心円状に放たれた。体内放射である。
先ずはその體を拘束していた靭の結界、炎、氷を消し飛ばし、次にゴジラを押さえ付けていた護国三聖獣を焼いた。三体共に表皮が炭化し、肉が爛れか溶けたか判らない程に破壊され、苦悶の呻き声を上げるも、その躰は確りとゴジラを抑える。
純弧は自身を"靭"へと純化して耐えるも、矢張り肉を焼く痛みと灼熱の感覚に悲鳴を上げ、ゴジラの"鈍"の純化が解けてしまった。 服は黒く焦げと同色だったが、焼け焦げた痕ははっきりと残っていた。
体内放射が霊夢を飲み込まんと襲い掛かるが、霊夢の『空を飛ぶ程度の能力』の極致、夢想天生により、衝撃波も熱も放射線も、完全にすり抜け、干渉する事は無かった。だが霊夢一人が幾ら干渉不可の無敵の存在と成ろうとも、広範囲に広がった体内放射を止める圧倒的な力は持たなかった。追い打ちを掛ける様に、破砕音が鳴り響き、地が捲り挙げられ蒸発した。
ゴジラは咆哮する。遅回しのものでは無く、以前と変わらぬ特徴的な咆哮。其れはゴジラが拘束を破った事を伝え、空気が音波の振動で轟いた。