東方呉爾羅伝   作:2147483647の塊

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ぶっちぎり最強だからと描写持ったらインフレし過ぎた…


誅す神

暗黒の中、光がうねる。

 

蒼い光は蛇の様に長く、ゆっくりと上下に揺れ動き乍ら尾を左右にしならせる度、ドンと言うオノマトペで示される音を、普段よりも重く低く響かせる。

 

光が恒星の如く青白く輝きを増すと、それに照らされ周囲が明瞭となった。

 

光の元には照らされようとも墨を垂らした様な漆黒の体表の怪獣の姿が露わとなる。反射した光を受け、巨大な双眸はギラギラと怒りに燃える。

 

その空間にはゴジラ以外に目を引く物は無く、無機質な色と起伏こそ有るが、不気味な程平坦と感じさせる地面が何処までも広がるばかりである。地平線は数千万(キロメートル)の彼方まで続き、空にはただゴジラの体表にも勝るとも劣らぬ黒が広がる。余りの無機質さと異常さに、並の存在であれば、この場に投げ出されただけでも気が狂う程の異質な場所である。

 

ふと、ゴジラは真上を見上げた。その先には月。先程まで顔を出していたそれよりも遥かに美麗で、大きく見える。そしてその月は、刻一刻と視界の占有率を増し、ゴジラにその痘痕顏を近づけて行った。今はもう既に視界は直径三千五百粁の岩塊で完全に埋め尽くされ、クレーターも視界中の面積を広くしていった。

 

畢竟、月は落下していた。ゴジラと言うその体積に比すれば塵芥も同じ目標を確実に潰すべく、その大きさにも拘らず肉眼でも容易に観測出来る程の速度で、ゴジラに向けて突進していた。それは質量兵器として破格の性能を持ち得る事は明らかである。キロメートル単位でも桁が六つ必要な程長い距離も数秒で詰められ、これを見ればまず間違いなく、百人中百人が叩き潰され肉塊となる怪獣を幻視する事だろう。

 

 

 

 

 

 

蒼い恒星の如き光を背負ったゴジラは、どんどん迫る月を、怒りを込めて睥睨こそすれ、全く動揺する素振りすら無い。その姿はとても目の前の脅威を認識出来ぬ盲のそれでは無く、然し自らよりも遥かに巨大な月を、道端の石ころに向けるそれと変わらぬ眼で見ると、下顎を開き、全身に満ち溢れるこの空間に於ける唯一の光源を集中し、轟音と共に放った。燐光が暗闇を照らし、無機質な世界を憤怒と生命の脈動に照らす。それと同時に、巨大な質量を支える脚は反作用により楔の如く打ち込まれ、長大な尾はアンカーの様に地を砕き埋められ、砲台であるゴジラの巨体を支える役割を果たす。

 

絶大な威力を以って打ち放たれた放射熱線は、指向性を持ってただ一点に向かって光速で進み、一瞬で月に到達した。丸い月の中央は蒼い閃光に穿たれ、見えていた数多のクレーターは熱線により生じたクレーターに更新されて消えてゆき、綺麗な球体であった月は形を大きく歪ませる。

だがその程度で終わるはずも無く、数瞬の後、更に核熱の濁流が勢いを増すと、それからコンマ数秒も経たずして光の柱は月を完全に貫き、蒼い軌跡を残して空へと消えて行った。

 

月は貫かれると同時に急速に形を失い毀れて行き、裏側に光明が差したと時を同じくして重力による支えを熱線のエネルギーに上塗りされ、完全に砕け散り幾つもの破片と化した。

 

巨大な月をいとも簡単に迎え撃ったゴジラは、バラバラになった月が衝撃によって四散する様を何の感慨も無く見上げ、開いた顎を再び閉じる。月だった岩塊は重力に従い大量の隕石となって地上に降り注ぎ、当然その内の幾つかの軌道にはゴジラも入っていたものの、当のゴジラは一切気に留めた様すら無い。

 

降り注いで来た岩片は強固は表皮に弾かれ硬質な音を立てて軌道を変え、勢いを失い地面に落ちて行った。ある程度大きな岩塊もゴジラに当たれば逆に砕け散り、傷一つとして負傷を負わせられない。

 

空を完全に覆い隠していた月が無くなり、開けた空には、天体が三つ浮いていた。まず一つが、月。そう、先程ゴジラによって砕かれたはずの月が、今度は常日頃程度の大きさで、何事も無かったかの様に鎮座している。

 

もう一つは地球。青々とした、普段であれば見れぬ、そして先程までゴジラが居た丸い地の玉が、宇宙におわしている。

 

最後に、異常な雰囲気を醸し出す赤い惑星。太陽系のいずれの惑星にも見た目の特徴は当てはまらず、毒々しい程赤々と、ほのかに光っている。

 

そこに浮かぶ天体は全て空に浮いている事そのものが異常であり、又天体そのものからも何か巨大な力がひしひしと伝わる。空にはそれだけしか無かったが、寂寞の感など無く、ただ圧し潰されそうな程の威圧が発せられている。

 

三つの天体の下に、何かが形作られる。球体を不気味で悍ましいオーラが包み込み、支える様に下へ降り、そして人の型となって行く。

 

黒い霧が晴れれば、髪と瞳の色こそ三様に異なるが、それを除くと全く同じ風貌をした少女が三人、先の天体を頭に載せる形で浮かんでいた。

 

肌は清廉と神聖を感じさせる白磁、瞳は奥深く怜悧に怪獣を映し、黒いキトンの下には蠱惑的で妖艶ささえ感じさせる、均整の取れた體が覗く。身に纏う雰囲気は淑やかで落ち着いた、淑女のそれであったが、それと同時に圧倒的強者の風格も、溢れんばかりにか細い三人の少女の周りを渦巻いている。

 

彼女等こそがこの無機質な世界を創り出し、ゴジラを強制的に呼び出した張本人である。それはゴジラの被害を最大限に食い止め、安全に、確実に抹殺するのに最も適した策であった。尤も、それを片手間に行えてしまうのは彼女程度のものだろうが。

 

その美貌はあらゆる者を魅了するのに充分過ぎるものであったが、今この場において羨望と恋慕の視線は無く、在るのはただ進撃と憤怒を阻害されたゴジラによる殺意のみ。

 

三身一柱の女神━へカーティア・ラピスラズリは、獣性のままの剥き出しの殺意を微風の如く受け流し、ゴジラに相対する。

相手が言葉を解さぬ以上、何を言っても虚空に消えるだけであるが故、言葉の手向けも無く、神罰は始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ゴジラが、やおら足を踏み出し、へカーティアに吠える。大気を震わせ、地を揺るがし、鬼気迫る勢いの大音声は、しかし女神には届かぬ。

 

へカーティアは対照的に、静かに、目の前の物を手に取るが如く片手を上げると、視界に映るゴジラが歪み、捻れる。手を軽く振るえば、ゴジラは次元ごと潰され、捩じ切られ、切り刻まれ、圧縮され、それに留まらず、際限無く自ら創った世界諸共、ゴジラを捏ね繰り回す。

 

原型も判らぬ程に壊れ、蜃気楼とミンチ状の形に、空間に沿って変形したゴジラをふと眺めると、蒼い光がへカーティア目掛け進んできた。あの月を物理的に一撃で粉砕する程のエネルギーの塊である。へカーティアとて無事で済む保証などどこにも無い上、当たらぬに越した事は無く、自分の手前の空間を歪めて軌道を逸らす。衝撃を逃がす為に歪ませた空間の上から、熱線が手を弾いた。その威力はへカーティアも予想外であった様で、少々驚愕の表情を浮かべ、次元への干渉を中断して熱線を打ち消した。

 

歪まれた空間が戻り、捻れたゴジラは即座に再生し、再び鼓動を始めた。

 

行動が可能となったゴジラは、目の前の赤いへカーティアを叩き落さんとするも、突然黄色の閃光が走り、側頭に絶大な衝撃が走る。その一撃によって莫大な風圧が生み出され、周囲数キロが融解し、吹き飛び、削れる。意識外からの攻撃を受け、ゴジラは大きく押し出され、横倒しに倒れた。

 

腕を支えにして身体を起こしたゴジラの視線の先には、月を象徴した黄のへカーティアが、打擲した姿勢のまま、ゴジラを睨み据えていた。更にゴジラに向け異常な速度で移動し、もう一撃を繰り出す。ゴジラも身を起こす勢いで尾を振るう。足の爪が地面に食い込み広範囲に亀裂が走り、尾に押し出された空気が速度と巨大さ故衝撃波となり襲い掛かり、摩擦熱によって地面が蒸発してゆく。

 

尾と拳が交差し、絶大な衝撃が互いに伝わり、熱を伴わぬ爆風が数百キロもの範囲を巻き込み、少女と怪獣という奇妙な鍔迫り合いとなるも、ゴジラの方がトルクは一回り上回る様で、暫くの均衡の後、ゴジラは歯を剥き悍ましく太い唸り声を発し、尾がへカーティアを押し出し、再び超音速に加速した尾が、ゴジラの極めて高い視界の分解能の限界まで吹き飛ばしていった。

 

憤怒の形相で再び異界のへカーティアに向き直る。瞳、頸、身体の順に向きを変えて行き、最大限の威圧を放つ。それと同時にゴジラは何か巨大なものに叩き潰された。それは恐ろしく巨大な球形であり、美しい白であり、表面には大量のクレーターがある、月であった。

 

叩き付けられた月は地殻津波と岩石蒸気、溶岩を撒き散らし、滅茶滅茶に半径数千粁の全てを蹂躙する。ただへカーティアのみが岩塊も隕石も熱も意に介さず、昼を凌ぐ明るさとなった宙に留まり、着弾地点を見下ろし、一分の油断も無く注意深く観察する。

 

更に巨大な影が複数、数千度まで熱せられた地に落とされる。空には今落たんとする月が十近く。今度こそ決まった月落としにより手傷を負ったゴジラを、肉片の一片たりとも残さず消し飛ばす算段なのだろう。

 

しかしそれは目的を果たす事は無かった。溶岩の海の中より突如として極大のエネルギーが撃ち出されて月の内一つを粉砕し、更に薙ぎ払われた熱線は、全ての落下する衛星の脅威を排除した。

 

そして何事も無かったかの様にゴジラが現れ火の粉と炎の岩の中で咆哮すれば、応える様に視界を埋め尽くす光弾の海原がゴジラを呑み込んだ。上空に鎮座する、青い髪をした地球のへカーティアの周囲には、一つでも国一つを滅ぼす、大妖怪と言われる様な存在そのものを詰め込んだが如し力を内包する光弾が、億、兆、京、或いは垓程も並び煌々と光り蠢き、エネルギーの流転する音が響き、正しく弾幕の海原と言って差し支えの無い光景が広がり、それはゴジラに、万物を押し流す凄まじい勢いで流れ込む。

最初こそ咆哮により掻き消されていたものの、その勢いの減衰と共に、一挙に殺到した。

 

一発一発が直撃する度、強い衝撃と破壊を引き起こし、一切の絶え間なく爆轟と爆音が響き渡る。硝煙と散る溶岩や塵芥に覆われゴジラの姿は完全に隠され、地面が削れてゆく。

 

僅か数秒で数百京もの光弾が叩き込まれ、ただの一分で数垓の弾は全てゴジラに撃ち出された。焦熱が空気をぶわりとはためかせ、頬を熱風が叩く。

 

土煙を体内放射が吹き飛ばし、光弾と相殺して再びゴジラとへカーティアを隔てる物は無くなった。へカーティアがゴジラに指を指せば、そこから幾多もの光線が放たれ、ゴジラを貫通した。夥しい数の風穴を開けられて尚もゴジラは生命の炎熱を吐き出し、光線を熱線で打ち消し、焼き尽くさんとするも、何時の間にか復帰した月のへカーティアに軌道を逸らされ、熱線は虚空へと消えて行った。

然し、見れば肘から先が煙を上げ、綺麗さっぱり消えていた。即座に修復されるものの、彼女はゴジラの暴威を再認識せざるを得なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

へカーティアは表情には一切出さぬが、内心には幾ら攻撃しても斃せないゴジラに対し、焦燥と辟易とが募っていた。

 

ゴジラの周囲の空間を分子が完全に停止する絶対零度まで冷却し、直後にプラズマが発生する程の高温まで熱する。

 

何の効果も無い様に見える。

 

三つの身体を全て動員し、打擲し、蹴撃し、突進する。余りの速度に暴風が巻き起こり、その威力は惑星を破壊して尚有り余るものであった。

 

打撃を受け、大きく仰け反ろうとも、体勢を立て直すゴジラには、全身全霊の気迫はあるものの、生命の危機と言う風には感じられぬ。

 

指を振れば、神経を掻き乱し焼き切り、身が繰り返し滅せられると錯覚するばかりの苦痛を持続して与える。

 

最初こそ苦痛に耐えかね、耳を劈く悲痛な咆哮を上げて身を捩るゴジラであったが、或る時点を境に俯き、身じろぎを止めた。へカーティアがおやと思えば、ゴジラは顔を上げて咆哮し、それ以降神経に干渉しようと怒りを強めるばかりであった。

 

空間を切断し、切り飛ばした身体を結界で隔離する。

 

元の肉体と、隔離した一部分が両方とも再生し、完全な個体と成らんとしている様子を見て、へカーティアは即座に元の座標に戻す。戻された途端に即座に接合した。

 

重力を極限まで高め、圧し潰さんとする。ゴジラは圧縮され、地盤が捲れ上がる。然しその規格外の膂力を用い、耐え続ける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

このままやっていても埒が明かないと見たへカーティアは、一気呵成に電光石火の如くゴジラの背後に移動して、後頭部に絶大な魔力と神力を込めた一撃を叩き込む。数百粁の遠方まで衝撃波が届き、超重力を両の脚のみで耐えていたゴジラは俯せに倒れた。衝撃を受けた瞬間に、尋常では無い強さの重力の為、ゴジラは実に音速の数千倍の速度で地面に叩き付けられた。

 

しかし驚くべき事に、へカーティアの創った、ゴジラの立つ天体の質量は、とうの昔に銀河の中心部に存在するブラックホールのそれを上回り、へカーティアの力で潰れずに星としての形を保っているだけだと言うのに、ゴジラは尚も立ち上がろうとし、現にその剛健なる四肢を使って身を支え、重力に逆らっている。

 

へカーティアは完全に拘束する為、魔力の綱を何万重と縛り付け、更に強固極まる結界を張り、地面に押し付ける。その直前に振られた尾がたまたまか或いは意図的か、地球のへカーティアに直撃すると、その肢体は粉々に砕け散った。矢張り幾ら行動を制限し何重もの拘束を施そうとも、一度牙を剥けば、その力は圧倒的。少女の姿とは言え、三界の地獄を統べる女神の身体をいとも簡単に打ち砕いた。

 

だがへカーティアの破壊された肉体は即座に消滅し、直後に何処からとも無く傷一つ無い、五体満足のへカーティアが出て来る。二人のへカーティアの表情にも、驚きこそあれど、恐怖は無い。何故ならへカーティアにとって少女の身体は遠隔操作の子機の様な物であり、本体は月、異界、地球の地獄それぞれに存在するのだ。

詰まる所、ゴジラが幾ら暴れ周りへカーティアを破壊しようと、彼女は微塵の痛手も負わず、彼女が完全に殺される事は無く、従って兆に一つたりとも負けは無いのである。

 

完全に拘束されたゴジラに、凄絶と言う様な表現すら陳腐でしか無い力の塊が殺到し、重力と合わせてゴジラを滅多打ちにする。直径数万粁、深さ数千粁ものクレーターが一瞬にして生じ、拘束の為かはたまた攻撃の為か、ゴジラは怒気と苦痛の綯い交ぜになった唸り声を上げ、身を捩ろうとするも、すぐさま飛んできたへカーティアに叩き伏せられる。更に無数のレーザーと光弾が襲い掛かり、その非常に大きな質量を持つ体を、その重力にも反し毬の如く吹き飛ばす。が、ゴジラもただでは転ぶ心算など毛頭無く、体内放射で拘束を全て破壊した。

 

へカーティアは空間を切り裂いて難なく体内放射を避けたが、ゴジラの暴威は止まらない。

 

尾を振るえば、地獄の女神の攻撃の痕を磨り潰し、鼓膜が破裂する程の爆音を鳴らし、遥か地下の地殻を引っ繰り返して津波とし、莫大な衝撃が遥か広範囲に広がる。

 

手で切り払って切り裂くも、衝撃を殺し切るには至らず、両肩が削がれる。

ゴジラが地面に叩き付けた尾を後方に回し再び軽く叩き付けると、其処の背鰭から頭にかけて発光し、三人のへカーティアを全て薙ぎ払わん勢いで熱線を発射する。熱が陽炎となりてゴジラを悍ましく歪ませ、威圧がそのまま形となった何の様に見える。

 

数千粁の高さの地殻の津波に轟音と共に大穴を開け、更に横に薙ぎ払えば、地殻は完全に蒸発し、あらゆるものを焼き貫かん光の柱を振り回す破壊の権化が示威するが如く地を吹き飛ばす。吹き荒れる暴風を貫き、迫る業火も塵芥の如く飛ばし、魔力の塊も青い光には到底及ばず、女神が異空間に回避するより遥かに速い。

 

忽ちにして一つの熱線により三体の女神の全ての五体は形を喪い、その力の残滓も消え去ってしまったものの、彼女からすれば然程の被害では無く、即座に何の瑕疵も無い女神が出現する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その力は両者ともに強大極まり、創り出される光景と事象は到底常識の範疇などに収まるものでは無い。ある種の超越者でも無ければ、全く為す術も無く、膝を付いて絶望に打ちひしがれる他は無い程の存在。

しかし互いにその力が幾ら強大であろうと、目の前の同じく規格外中の規格外の存在を滅せ無ければ、それは全く無用の長物でしか無い。

 

ゴジラが幾ら強力無比な力を持って居ようと、目の前の小さな存在すら潰す事が能わない事に対し、バックアップなど知る由も無いゴジラは、へカーティアが滅され復活する度、元々の怒りを増幅させ、狂気に近い苛立ちと憤激を強めた。

 

へカーティアが幾ら手を尽くそうとも、ゴジラはその異常なまでの力と、頑強さと、執念染みた再生力のみにおいて難なく跳ね返され、へカーティアは心底辟易し、又本来この空間に長時間、死線の中に居続ければ、精神的にも弱って然るべきものを、肉体のみならず精神までもが金剛不壊かと錯覚せらるゴジラに相対し、寧ろへカーティアの方が参っていた。

 

憎悪と憤激に身を委ね、狂気の沙汰にも何の躊躇も無く足を踏み入れる気質は、それこそ彼女自身の友人、純狐も持って居るが、長きに亘る月への復讐により感情が純化され、却って襲撃を楽しむ余裕さえ有る彼女と違い、只々破壊のみに現れる憤怒。純狐のそれであれば親身になって聞いたであろうが、言葉も通じぬゴジラのそれは、彼女には、到底理解しようと言う気にもならない。

 

何時間か、何日か。随分な長さに亘る闘いは、未だ終わらぬ。この世界は時間の流れが通常から弄られている為、外の時間を気にする必要は無いが、それでもこの場の者は早期の決着を望む。

 

何度目か、ゴジラが咆哮し、へカーティアが体内の力を何かに形成し始めた。

 

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